――『アナハイム・エレクトロニクス』代表が『クワイエット・ゼロ』の詳細を正確に推測し、この極秘計画を私的目的の為に悪用出来ると判断、自社にて技術検証が行われ――ベネリットグループ内の仕事の片手間に宇宙要塞『クワイエット・ゼロ』を制圧に取り掛かる予定だったが、それはミオリネ・レンブランとグエル・ジェタークが同時に意識不明になるという原因不明の事件によって中断される。
偶発的事故ではないと即座に判断した『彼』は、自身の『ニュータイプ』感知能力をすり抜けて行われたであろう大胆不敵な犯行に最大限の警戒心を抱き、2人への護衛の数を3倍に増量し、犯行可能と思われる関係者全ての聞き取り捜査を行い――不本意ながらも事件性無しと結論せざるを得なかった。
とある『迷子』曰く、「此処で『彼』の行動を浪費して貰わないと宇宙要塞『クワイエット・ゼロ』を制圧されて完全に詰みだからね!」と事後承諾で行った模様。
『アナハイム・エレクトロニクス』社専属の艦隊に完全委任するという選択肢は、あるにはあったが――要塞を無傷で接収する事が大前提であり、重要な高難易度ミッションは自らの手で完璧に行いたがる現場主義的な一面が強い為、「別に後回しでも良いか」と優先順序を入れ替える。
ベネリットグループ『総裁代理』を名乗ってしまった以上、意識不明のデリング・レンブランの代役を務める義務が生じており、アスティカシア高等専門学園のオープンキャンパス特別イベント、制限時間30分のバトルロイヤル方式のエキシビション『ランブル・リング』の開催宣言をする役割があり――これを機に、先の『プラント・クエタ襲撃事件』の締めとして学園に存在するテロ分子の全粛清を執り行う予定である。
「これを実行されると宇宙議会連合への宣戦布告&国家解体までノンストップ状態になる為、介入タイミングは此処しかないんだよね! 『A.S.(アド・ステラ)』宇宙でも『U.C.(ユニバーサル・センチュリー)』感覚で敵陣営を虐殺しようとするとかやめて欲しいね!」
『ランブル・リング』前日にアスティカシア高等専門学園に現地入りし、シャディク・ゼネリ一派の粛清準備を着々と進め――時間的猶予は作れたが、多忙を理由に敢えて地球寮に顔を出さない事にした。
今生の別れになるが、後腐れ無い方が良いだろう。特にスレッタ、彼女の物語を最後まで見届けたかったが――。
「まぁミオリネがいれば問題無いだろう。お互いに支え合って進んでいく、か。……しかし、誰もツッコまなかったから敢えて放置したけど――『A.S.』って同性婚ありなの?」
そういえば火星でもありだったような……根本の感性が『オールドタイプ』なだけに、ジェネレーションギャップに思い悩む事となる。
下世話な事だが、世継とかどうするんだろう? 養子前提? 肉親を『血の繋がった赤の他人扱い』する『自分』のような価値観じゃないのに、心底疑問に思う。
――もっと、話し合いたかった。
――もっと、今を生きる者達の物語を眺めたかった。
――願わくば、その苦難の道程を、ほんのちょっとだけ手助けしたかった。
未練は、女々しいほど無限に湧いてくる。
この宇宙の『主人公(スレッタ・マーキュリー)』を認識してから、この物語の軌跡は光り輝いていた。
彩る星々も、宝石の如く煌めいていて――グエル・ジェタークに、『自分』越えの機会を与えられなかったのが心苦しい。
ミオリネに関しては、特に心配は無い。彼女がどんな手腕でスレッタに纏わる呪いをぶっ壊していくのか、非常に興味深かったが――。
「……あれほど疎んでいたのに、いざ終わるとなると――」
「――『アナハイム・エレクトロニクス』代表ッ!」
「……ミオリネ? 色々ツッコみたいんだけど。原因不明の意識不明状態からいつ回復したの? いつの間にアスティカシア高等専門学園に? あと此処、ブリュンヒルトの艦長室なんだけど?」
いない筈の人物が目の前に元気良く現れ、色々理解が追いつかない。
意識が回復したのならば、護衛として配置した元強化人士4号、現『レイヴン』からの報告が無いのはおかしいし、爆心地から遠ざける為にベネリットグループ本社に隔離していたのに誰の許可を得てアスティカシア高等専門学園に帰還している? 更にはどうやってブリュンヒルトの艦内を自由に闊歩している? 一体誰の手引で?
全ての疑問が結び付いて隠された真実を暴き立てる前に、ミオリネは『彼』に堂々と指差し――。
「――『アンタ』に決闘を申し込む!」
「……? ――は……? 何でまた?」
『彼』を更なる混乱の渦に叩き落し、正常な思考を徹底的に妨げるのだった。