アスティカシア学園の『決闘』では見慣れた存在――主に『アナハイム・エレクトロニクス』社のせい――である次世代群体遠隔操作兵器であるが、当然ながら一般生徒が対応出来る類の攻撃ではない。対応出来る上位層が基本的に頭おかしいのだ。
『――え、ちょ、無理……!?』
3割の生徒は、何も対応出来ずに頭部と四肢を同時に撃ち抜かれて完全無力化され、初撃に反応出来た2割の生徒は無情な追撃であっという間に蜂の巣となる。
残り4割の生徒は幸運にも初見殺しを回避出来る状況だったが故に地獄の只中におり――対応出来る残り1割の生徒は、回避&迎撃を同時進行で実行する。
『――『皆』!』
ガンダム・エアリアル改修型の『コンポジットガンビットシールド』が分離して11基のガンビットとして展開し、無機質な動きのファンネル/ビット/ファング/ドラグーンを生物の如き有機的な動きで次々と撃破していく。
『――あれ……? 普通に撃ち落とせる……?』
そう、余りにも簡単に撃ち落とせる。あの『彼』が直接操っているとは思えないぐらい一方的に。
グエル・ジェタークとの『決闘』でのファンネル捌きは、こんな体たらくではなかった。迎撃しようとしても、その迎撃を的確に回避してオールレンジ攻撃を叩き込んでくる印象しかない。
『――おいおい、何だこのやる気のねぇファンネルはァッ!』
迫り来るファンネル/ビット/ファング/ドラグーンをビームライフルで的確に狙撃し、低出力・広範囲の『V.S.B.R』で纏めて処理しながら、グエル・ジェタークは煽る。
『……うん、実際問題、やる気が出ないのは認めよう。流石の俺も100以上の操作となるとかなり雑になるし、雑でも問題無いのがねぇ? 更にテンション下がるって訳よ』
対する『∀ガンダム』本体は、無手のまま、微動だにせずに静止している。
戦場のど真ん中で何もせずに浮かんでいるだけという、究極の舐めプに対して『――ふざけんじゃ、ねぇぇぇぇっ!』と、名無しの生徒達の『意地とプライド(ビームの砲火)』が炸裂する。
『――は……?』
その悉くが見事直撃する結果となり、それもその筈――『∀ガンダム』は回避行動すら取らない。
撃って照準を外さなければ確実に当たる状況で、当てられないのは単なる射撃ミスであり――ほぼ命中した事実は、アスティカシア学園の生徒の練度を褒めても良い出来だろう。
――尤も、直撃しても有効打になるかは別問題だ。全てのビーム攻撃が『∀ガンダム』の装甲に弾かれ、無常に四散する。
『――戦場で棒立ちするって事は、撃ち落としてくれって事だぜ? まぁ君達の方は物理的に不可能だけど』
呆然とする生徒達に、9門のビーム砲台を有するドラグーン10基が一斉に乱射される。『∀ガンダム』本体を巻き込む形で――MSのダルマが量産される中、『∀ガンダム』は全てのビームを弾いて無傷のまま、この阿鼻叫喚の戦場を静かに支配していた。
『――『∀ガンダム』の駆動方式は『IFBD(Iフィールドビームドライブ)』、細かい原理の説明は省くし、正確な内容でもないけど、ビーム兵器に絶対的耐性のある『ナノラミネートアーマー』と物理兵装に絶対的耐性のある『フェイズシフト装甲』を足して『N乗』したような超性能だよ!』
『割らねぇとか身も蓋もねぇ!? それでその『最強無敵の装甲』に弱点とか無いのかっ!?』
『ごめんねぇ、弱点とか設計段階から盛り込んでないんだ! エネルギー切れでも狙ってみる? 無限増殖するナノマシンを焚べて半永久的に稼働する縮退炉2基持ちだけど!』
『トランザム』したファラクトMk-A.Eの最大出力のロングバレルビームライフルの直撃を受けても無傷だったのは、単純にそのコロニーレーザー級の火力すら通らなかっただけに過ぎず――。
最初から消化試合だという『彼』の認識は残酷なまでに正しく――あと数分足らずで雑魚を駆逐し終えて、生き残りを自らの手で葬ってエアリアルを撃破する道程が、嫌になるほど明確であり――『∀ガンダム』のコクピット内に、想定外の緊急事態を知らせる警告音が鳴り響く。
『……緊急コール? はいはい、何があった?』
『――『社長』、L1方面から戦艦35隻からなる大規模艦隊の反応を探知、パーメット識別コードは宇宙議会連合のものですが、生体反応が一切ありません』
このタイミングで宇宙議会連合に動きありで、尚且つ生体反応皆無? この奇妙な情報を繋ぎ合わせて――『彼』は即座に真実に至り、『彼』すらも全力でドン引きする。
『……ミオリネ、一応聞くけど、あれも君陣営の援軍かな?』
『そうよ。――『アンタ』の助言通り、この宇宙の全てをぶつけてやるわ。文句ある?』
『マジかよこの女、イカれてんのか!?』という罵詈雑言をぐっと押し殺し、デリング・レンブランすら実行しない強硬策に『一体誰を参考にしたんだ?』と内心訝しむ。『彼』は気づいてないが、当然『彼』の日々の悪行の数々である。
『ごめんごめん、君の事を過小評価していたようだ。いやぁ、流石に此処までやらかすとは思わなかったね! 『決闘』の裏で『クワイエット・ゼロ』を使って宇宙議会連合の全戦力を俺1人にぶつけてくるとは思わなんだ!』
保留していた考察に『まさかエアリアルの他に『クワイエット・ゼロ』を起動出来る『未知の『魔女』』と共謀しているとはね? 俺好みの強かな戦略だ』と一定の答えを得て、『未知の『魔女』』に対する脅威度を個人的に跳ね上げる。
『クワイエット・ゼロ』制圧を後回しにした事が此処まで響くとは、踏んだり蹴ったりである。
『事後処理が非常に面倒だけど、自業自得だし、色々頑張ってね?』
『他人事? 『アンタ』が率先して片付ける事になるんだけど?』
『自分』でやらかすならまだしも、流石にこの『婆』は引きたくない罰ゲームである。
さて、もう此処までの大艦隊なら初手『月光蝶』での殲滅で良い気がするが、動けずに漂っている生徒を巻き込む可能性が大きい為、迂闊に起動出来ない。
元から使う気が無いものなので、早々に選択肢から除外する。なので――『最新の機能』で対応しよう。
『いやいや、これからいなくなる俺を当てにしては困るさ。――パーメットスコア・8(エイト)』
明日の御飯、何にしようレベルの気軽さで、即死の領域を遥かに超越した絶死のスコアまで急上昇させ――『∀ガンダム』の空っぽの内部構造に新規搭載されたシェルユニットが白金に光り輝き――。
『強制介入(ハッキング)完了、自爆コード入力――3、2、1、0』
宇宙議会連合の戦艦35隻及び搭載機1500機余りが一瞬にして宇宙の藻屑と化し――。
『……は?』
『――これでも『魔女』と呼ばれていてね? 『贋物』だけど、本物より劣るとは限らないだろう?』