Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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134/目一杯の祝福を『君』に

 

 

 

 

『――おー、完全にクリティカルヒットやん。『あれ』の唯一の『嘘』を指摘するなんて、ミオリネも鬼畜だなぁ』

 

 ケラケラと、『協力者』の無機質な嘲笑が響き渡る。

 その余りにも人とは思えぬ機械的な仕草に恐怖を抱きつつも、この『決闘』を観戦しているヴィム・ジェタークとサリウス・ゼネリは流れが変わった事に興奮を隠せずにいた。

 

 ――このフロント外宙域に存在していた、『∀ガンダム』が展開した全ての遠隔操作端末兵器の挙動が著しくバグり、支離滅裂な動作を繰り返して機能不全に陥っている。

 

 原因は解らずとも好機と見た生徒達の手によって――ビームライフルやらビームサーベルなどで一方的にファンネル達が駆逐されていき、同じく機能不全に陥って完全停止している『∀ガンダム』に砲火が集中する。

 

『精神的動揺でサイコミュの操作を完全に手放すなんて史上初の事態、正常な判断力を失って武装選択も行えないから『DOC(デバイスオペレーションコントロール)』も機能不全に陥り、追加武装も望めない』

 

 『こんな精神状態では精密な空間転移も行えないでしょう』と続け――機体制御にもサイコミュを用いている云々の話もあったと、2人は気づく。

 

「つまり――?」

『今の『彼』は『∀ガンダム』の性能を九割九分九厘発揮出来なくなりましたね。余りにも高すぎる性能が逆に枷となり、更に自縛しているとか中々笑える惨状ですね!』

 

 ミオリネからの言葉で何故此処までの精神動揺が起きたかの理解はさておき、棒立ち同然という千載一遇の機会を見逃す手は無い。

 生き残っている生徒達が総出で総攻撃し――ガンダム・エアリアル改修型からの最大砲撃、全てのビットステイヴを接続したガンビットライフルの最大出力のビームが直撃し――決闘出力でも直撃すれば相手パイロットに命の支障が出そうな一撃にヴィムとサリウスすらドン引きしたが、全ての攻撃を無防備に受けたのに関わらず、『∀ガンダム』は無傷で佇んでおり――。

 

『――しゃらくせぇ! 接近戦なら――ッ!』

 

 グラスレー寮のパイロット科2年、シャディクを支える女子生徒の1人であり、『彼』との『決闘』で苦渋を舐め続けたレネ・コスタは此処ぞとばかりに突進し、ベギルペンデの巨大な盾によるシールドバッシュで『∀ガンダム』のブレードアンテナ?……ヒゲ部分をへし折ろうとし――。

 

 

『――まぁ残った『一厘』でも全機撃墜してお釣りが来るんですけどね?』

 

 

 超人的な反応速度で、迫り来るベギルペンデの頭部を右拳で掌握し、そのデュアル・アイを紅く光らせる『∀ガンダム』は紙切れの如くあっさりと握り潰し、そのまま無造作に蹴り飛ばす。

 

 ――別に、不思議な事でもない。

 機体操作のサイコミュが機能不全に陥っても、通常の操縦系統は健在であり、精神的デバフにデバフを重ねても『彼』が宇宙随一のパイロットである事に変わりはないのだから――。

 

「貴様、これはどういう事だ!?」

『どうもこうも、見ての通りですよ? 『IFBD(Iフィールドビームドライブ)』という異次元の装甲に、無限に積み重ねた戦闘経験が立ち塞がっているだけですとも』

 

 ヴィムの怒号に対して柳が如く『無手でも『ビスト神拳』やら『ルビコニアン格闘術』で何とかなるもんですねー?』と他人事のように語る。

 迂闊に自前のビームサーベルを使っては万が一が有り得るので使用不可となり、生徒達の生命を最優先とし、手加減する為に無手での格闘戦という選択肢になる辺り――守るべき子供に対する生命倫理感は筋金入りである。

 

 ――此処でヴィムの懐から着信音が響き渡り、『最後のダメ押し』が宙域近くに到着した事に『協力者』はほくそ笑む。

 

『――おっと、事前に地球に艦隊を派遣していたとは言え、流石は仕事が早い。折角の『地球からの贈り物』ですし、『最後の一押し』として盛大に使い潰しますか!』

 

 

 

 

『嘘ぉ!?』

『レネ!? ――突っ込むぞ……!』

 

 一蹴されたとは言え、全火力を用いても無傷である以上、接近戦による打撃しか活路が残されておらず、――グラスレー寮のサビーナ・ファルディン、イリーシャ・プラノ、メイジー・メイ、エナオ・ジャズのベギルペンデ4機が四方から同時に突撃し――手刀による頭部切断、キックによるシールド及び左腕部全損、拳打による頭部全損、飛び膝蹴りによる頭部全損によって返り討ちに遭う。

 

『……うわ、グラスレー寮の腰巾着どもが一瞬で全滅とかマジかよ? って、4号? それ、何?』

『何って、ガンビットを全装着した複合実体剣だけど? ――突っ込むからフォローよろしく』

『随分と便利に、いや、何で平然と付き合う前提で語って――ってやっぱり話聞いてねぇ?! 相変わらずだなテメェ!?』

 

 『A.E』の社名ロゴを付けたファラクトが先陣を切り、背後にファラクトが追随して露払いに一対二挺のビームカリヴァを乱射する。

 24基のガンビット集合体である複合実体剣で全力で斬り掛かり、『∀ガンダム』はその振り下ろしを左腕一本で受け止め――即座に24基のガンビットが分離――ファラクトのゼロ距離からのビーム狙撃&ガンビットの電磁ビームが照射されるが、予想通り回避行動すらせず直撃するも全く通用しないものの、ファラクトは一撃離脱に成功しており、致死範囲に入った敵を初めて見逃す。

 

『――ビーム射撃全般には全く反応しないが、接近戦による打撃には対処する?』

 

 それはつまり――接近戦による打撃ならば、あの余りにも強固過ぎる装甲は貫けずとも、ヒゲじみたブレードアンテナをへし折るぐらいは可能であると『彼』が見積もっていると強化人士5号は冷静に分析し――同時に瞬殺された面々を思い浮かべて余りにも無理ゲーだと内心毒突く。

 

 『彼』との接近戦で、まともに立ち回れる人物など――。

 

 

『―――ふざけんじゃねぇぞ、『テメェ』……!』

 

 

 この『決闘』において最初から、『彼』が『脅威』として認定している存在は唯一つ、精神的動揺が頂点に達して機能不全に陥っている今でも無意識下で警戒している相手――それは、ガンダム・エアリアルを駆るスレッタ・マーキュリー、ではなく。

 

『――グエル……!』

 

 青い流星となりて突撃してくるダリルバルデMk-A.Eに反応し、ベギルペンデ撃破時に盗んでいたグラスレー社規格のビームサーベルを我が物顔で展開し、ダリルバルデMk-A.Eのビームジャベリンと切り結ぶ。

 『∀ガンダム』が携行するビームサーベルでは切り結ぶ事無く一方的に切り裂いてしまう為、精密動作が不可能になった『彼』の苦肉の策だった。

 

『――『テメェ』は、このグエル・ジェタークが絶対倒すと宣言した! 勝ち逃げなんざ絶対許さねぇ……!』

 

 『∀ガンダム』を蹴り飛ばして一撃離脱し、即座にビームジャベリンを分離して二刀流状態とし、ドローン兵装を本体から全分離し、自立攻撃状態にしてから再突撃する。

 

『――勝ったら一発返済、達成したら一生サポート! あれはその場凌ぎでほざいた虚言か!? 内心でぬか喜びした俺が馬鹿だったって事か!?』

 

 並のパイロット相手なら無手で一蹴していた『彼』と、グエル・ジェタークが止め処無く切り結んで行く。

 『彼』と誰よりも『決闘』したのはグエル・ジェタークであり、誰よりも『彼』に敗れたのもまたグエル・ジェタークだった。――だからこそ、今までで最強のMSを使っておきながら自分如きを瞬殺出来ない、最も弱い状態の『彼』が許せない。……此処までしないと、戦いにすらならない、自分の弱さが何よりも許せなかった。

 

『――『テメェ』はッ! 『テメェ』が消え果てるのを、俺達に平然と押し付ける気かァッ! 『テメェ』自身は末代まで引き摺っている癖によォッ!』

『――ッ!?』

『――『テメェ』を『友』だと思っていたのはッ! 俺だけかと聞いてるんだよォッ!』

 

 その言葉の刃は、『彼』にとって何よりも深く突き刺さるものであり――即座に、ビームサーベルの出力を0にして空振りにさせ、『∀ガンダム』が回避行動を取る。通り過ぎた射撃物はビームではなく――。

 

『兄さん!』

『グエル先輩! 援護するっすよぉ……!』

『ラウダにフェルシー!? って、何だそれ?』

 

 二人の駆るディランザが後続として駆けつけ――その手に持っているのはジェターク社製のビームライフルではなく、見慣れぬ小火器のようなものであり――。

 

 

『――消火冷却剤にトリモチランチャーさ。通常のビーム射撃兵装では実戦出力だとしても脅威にすらならないようだけど、こっちはどうやら当たりさえすれば通用するようだね』

 

 

 グラスレー寮で唯一生き残っているシャディク・ゼネリは前線に出ずに後方指揮に回り、『生き残っている全生徒に配布中さ』と、前線に出て直接戦えない苦々しさを悟られないように笑う。

 パイロット科だけでない。この短時間であの『∀ガンダム』に通用する武装を経営戦略科の者達が必死に模索し、メカニック科を総動員して用意して前線のパイロット科に届ける。脱落したパイロット科の生徒達も様々な形で協力し、中には緊急修理の継ぎ接ぎ機体で再出撃した者も存在した。

 

 ――文字通り、アスティカシア学園の全生徒が一丸となって『彼』に対抗している。

 取るに足らぬと認識していた有象無象の蟻が、明確な脅威になった事を『彼』自身が不本意ながらも認定する。

 

 更には――再び、自社の艦隊管制部から緊急連絡が入る。

 

『――『社長』、今度は地球方面から艦隊反応。パーメット識別コードはジェターク社の護衛艦隊。ただ、発進したMS全機の生体反応無し、機体名は――』

 

 『∀ガンダム』からフロント外宙域に接近する新たな機影の数々を直接捕捉する。その機体は――。

 

 

『――ガンダム・ルブリス量産試作モデルだと?』

 

 

 地球に隠れ潜むオックス社の亡霊が密かに量産している事は把握しており、宇宙議会連合を弾劾する材料にしようと思っていたが、此処で全機投入してくるとは流石に予想外である。

 先程の宇宙議会連合の量産型MSのカラゴールとは違い、純正の『GUND-ARM』、パーメットスコア・8でもその機体制御を奪う事は難しく――。

 

 

『――ああもう鬱陶しいッ! パーメットスコア・9(ナイン)!』

 

 

 事前のテスト運用でも試さなかった領域までスコアを向上させ、『∀ガンダム』から発せられるシェルユニットの白金の輝きが『虹色』に変化し――。

 

 

 ――虚空から『迷子』がほくそ笑む。勝利の方程式は全て揃ったと――。

 

 

 

 

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