Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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17/『魔女』と4枚羽の天使

 

 

 

 

 ――決闘委員会のラウンジにて、エランと『彼』との決闘を、グエルは不機嫌極まる顰めっ面で眺めていた。

 

「あーら、グエル先輩。そんな物欲しそうな顔で見ても『先輩』はグエル先輩に愛想尽かしちゃったみたいですよぉ? 今はエラン先輩に夢中ですって! 捨てられちゃいましたね?」

 

 セセリアのキレッキレの煽りにぎりっと歯軋り音を鳴らすものの、グエルは無言で押し黙る。

 スレッタ・マーキュリーとの決闘後、父から直々に決闘禁止令を出され――『彼』に挑む事も出来ない日々は歯痒いの一言に尽きた。

 あの決闘で一瞬掴んだ感覚を試せないのは、どうにも我慢出来ず――更に苛立つのは、自分の居場所を奪ったが如く『彼』に決闘を申し込むエランの存在である。

 

「しかし、まさかエランがグエルと同じ真似をするとはねぇ」

「グエル先輩の悪い処だけ似ちゃったんじゃないですかー?」

 

 今まで何事に対しても無関心を貫いていたエランが、『彼』と決闘し続けるのは一体何故か。エラン本人の意思か、それとも、彼の背後にあるペイル社の思惑か――。

 

「俺も真似するべきかなー?」

 

 真顔でそんな事を言いだしたシャディクに、グエルとセセリアは二人一斉に、驚愕しながら振り返る。

 

「冗談だよ、冗談」

 

 何処かの『誰』かを思わせるような胡散臭い顔で、シャディクは笑っていた。冗談なのか、本気なのか、全然解らない顔だった。

 今回の決闘場のフィールドは低重力環境下であり――。

 

「エランの方はいつものザウォートで、『彼』の方は――今回のはデカいな? 『四枚羽』? 高機動型の重MSかな? 武装は……ビームサーベルのみ?」

「あの成りで近接タイプ?」

「……いや、違う。絶対『ドローンもどき』持ちだな――完全に舐めてやがる」

 

 4枚の羽を思わせる巨大なバインダー4基からなる大推力スラスターを全力で吹かし、一直線に舞う『彼』のMSに対し、引き撃ちに専念するザウォートでのビーム射撃は、僅かに回転するのみで躱され、圧倒的な推力の差から距離を詰められる。

 

 ――4枚羽のMSが、その大出力のままにビームサーベルを振り上げ、ザウォートは同じくビームサーベルで応戦、する事無く機体を大きく後退させて回避する。

 

 真正面からぶつかれば、呆気無く粉砕されるのは目に見ているので、真正面から衝突せずにいなすのが正解――だが、相手は最初から遊んでいるとは言え『彼』である。

 

『……!?』

 

 4枚羽のMSとザウォートが交差する瞬間に、4基のバインダーから24基全部の遠隔操作射撃端末が本体から切り離されており――。

 

「……いやぁ、あれ、どうしろと?」

「遠距離からビームサーベルを見せつけ、接近戦を狙うかの如く急接近。エランは乗らずに射撃兵装で応戦、全弾避けてからの大振りの近接攻撃はエランに回避され――置き土産に遠隔操作端末兵器24基によるオールレンジ攻撃、か。完全なる初見殺しだね」

 

 全周囲から繰り出される怒涛の波状攻撃により、ザウォートの四肢がもがれ、頭部も撃ち抜かれ、ブレードアンテナも消失、今回の決闘も『彼』に軍配が上がる。

 

「あんな小さな的、当てられっこ無いって」

「いいや、エランは2発当てていた。『アイツ』は2発とも回避させただけだ」

「え? 嘘ぉ?」

 

 セセリアの諦め同然の言葉を、グエルが否定し――動画を巻き戻し、スローで見てみると、最後の抵抗とばかりに遠隔操作端末を2回射撃し、2回とも遠隔操作端末が横にズレて回避し、逆に撃ち抜かれる始末となっている。

 あんな小さな的に当てられる方も当てられる方だが、元々小さい的なのに回避行動すら行うとか、もうどうしようもない。普通の感覚の者ならお手上げだが――。

 

「――グエルならどうする?」

「あのタイミングじゃどの道、何処にも逃げようがねぇ。――意地でも離れずに斬り続けて、超接近戦での乱戦にして自爆の危険性に賭ける。ただし――」

「それで仕留められると確信したのなら、躊躇なく自爆打撃つからなぁ、『彼』の性格上」

 

 決闘において『彼』の意表を突く事は未だ嘗て誰も達成出来ておらず、「誤爆は絶対しない癖に、有効な自爆打は平然とやるんだから性質が悪い」とシャディクは溜息を吐く。

 そして期待するような眼で、グエルを改めて見る。

 

「……何だよ?」

「いいや、やっぱり『彼』に一番近いのはグエル、君なのかなぁって。もしくは、水星ちゃんかな?」

 

 『彼』との決闘を幾度となく行い、グエルは見違えるほどの成長を果たした。

 それは当人の資質もさる事ながら、グエルが誰よりも貪欲に『彼』に食らいついていった結果であり、誰にでも真似出来る事ではない。

 そして、自分の意思か、それとも背後のペイル社の思惑か――グエルの真似をしているエランは果たして、グエルのように食らいついていけるのだろうか?

 

 ――氷の君は、一体何を想うか。近い内に確定で起こるであろう『波乱』に、シャディクは胸を躍らせていた。

 

 

 

 

『それでは今回の『プレゼンテーション』を開始しましょう! 今回の機体は型式番号『NZ-666』クシャトリヤ、とある『先天的資質』持ち専用MSでございます!』

『……あぁ、はい。パーメット流入値もデータストームも検出されてませんよ……』

 

 事実上の敗北宣言を涙ながら言う担当者を尻目に、『彼』はいつも通りの胡散臭い笑顔で説明を進める。

 

『本機は40メートルに達していた『とあるMS』の大火力を20メートル大のサイズで再現するという『最初からトチ狂ったコンセプト』で開発され、多数の難題を解決して八割近くは達成されたんじゃないかな、って機体です。それでも平均的なMSの大きさと比べれば段違いですが』

 

 『彼』は笑顔で『最初からトチ狂ったコンセプト』を強調し……ああ、今回はそういう回か、と全員が一瞬で何かを悟る。

 

『決闘では披露されてませんが、当機は多数の本体内蔵武装が装備されており、胸部粒子砲一門、手首部ビームガン及びビームサーベル2門、バインダー部粒子砲が合計8門、バインダー部ビームサーベル4門、バインダー内部に小型攻撃端末『ファンネル』が合計24基収納されています』

 

 これでもかと搭載された大火力に『良くこんなに一機のMSに詰め込んだな?』『……ま、そういう事なんだろ』『オチが見えたな』と上位企業の代表達は口々に言う。

 

『その圧倒的火力は言うまでもありません。率直に言って――整備性、劣悪過ぎね? 運用面も最悪だよこれ!? 機体がデカすぎるせいで既存の規格で運用出来ずに専用艦艇が必要となる上に、何、この雑多な火器の数々。多ければ良い? んな訳あるかっ! 少しは厳選しろや!』

 

 全員が『知ってた』という反応を持って終わる。なお、相変わらず開発者の名義は『彼』自身である。

 

『……ああ、うん、そういうのはどうでも良い。それで、この機体、『貴様』以外に動かせるのか?』

『一応動かせますよ、『ファンネル』以外は』

 

 いや、それ動かせないなら意味ないだろと、全員が一斉に突っ込んだのだった。

 

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