Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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23/呪いのMSに呪いの『システム』

「……い、いつの間にか、こんなに強く――」

「言ってる場合か!? どうすんのよ!?」

 

 地球寮にて、スレッタはグエルvsエランの決闘を見届けており――どういう訳か、エラン側を応援する『彼』とミオリネは、酷く動揺しながら叫ぶ。

 

「いやぁ、これ無理だろ。もうビット7基撃ち落としてやがるよ? ファラクトのあれ、スタンビットで、エネルギー消費少ないから本体に戻す頻度少ないのに何故か全部捌き切ってるんだよ?」

「あの手の攻撃に慣れさせた『アンタ』のせいじゃない!?」

「初見殺しの代名詞を此処まで上手く処理出来るとか、予想外も良い処ですー」

 

 決闘に目がいって、二人のやり取りが横から抜けるが――前より気安いような気がする?

 

「……あ、8・9基目。胸部ビームバルカンでも落としてやんの。一回でもスタンさせれば決着なのになぁ?」

 

 またしてもエランのMSのビットが撃ち落とされ――スレッタは思わず身震いする。

 

「本来は詰み相性なんだがな。重MSのディランザじゃ、ファラクトの機動性の高さに付いて行けないし、一回でもスタンビットの餌食になれば、装甲の上から狙撃で撃ち抜かれるのに。……というか、あのディランザにはまともな射撃兵装はビームライフル一丁しかないから、それ削れば終わりなんだがねぇ?」

「パイロットの性能だけで覆してるって事……?」

「……素直にグエルの腕前を褒めるべきだな、こりゃ」

 

 『彼』の解説に耳を傾けながら、スレッタは「エランさん……」と呟く。

 

「――まぁでも、性格の悪さはペイル社の方に軍配が上がるね。俺では到底思い付かない仕様だわ、これは」

 

 普段より1トーン低い声で『彼』は無表情で決闘を眺める。

 スレッタには『彼』の様子を読み取れなかったが――ミオリネからは「余りにも愚か過ぎてやろうとすら思わない」という意味合いである事を感じ取ったのだった。

 

 

 

 

 14基目のビットが落とされ――残り10基、半分以下となる。

 常にディランザの周囲に舞い、容赦無く電磁ビームを照射し続けているのに、何故、ディランザを捉えられずに逆に撃ち落とされていく?

 

「――っ!」

 

 最初の頃と比べて半数以下となったビットによる電磁ビームの結界は、密度が低くなり――ロングバレルのビームライフルによる遠距離狙撃も叩き込んでるのに、的確に回避されるどころか、反対に牽制のビームライフルの射撃をファラクト本体に撃ち込まれ――回避したと同時に、意識が一瞬薄れた隙を穿たれ、また電磁ビットが撃ち落とされる。残り9基。

 

(……不平等すぎるだろ――)

 

 『彼』とグエル・ジェタークの決闘を、エランは冷めた眼で眺めていた。

 絶対に敵わぬ相手に何度も何度も挑み続ける蛮勇は、見ていて痛ましく――最初から全てを持つ者と持たざる者の、絶対に覆らない宇宙の縮図を見せつけられているかのようで気分が悪かった。

 

(――最初は瞬殺だったのに、『ヤツ』との決闘の時間は、一戦毎に伸びていった……!)

 

 だが、グエルは違った。倒れる度に立ち上がり、何度も何度も挑み続けた。

 それがどれだけ辛く、苦しい事なのか、エランもまた実体験として理解しているだけに――嫉妬する、憎悪する。

 

 ――普通の人間の身でありながら、『例外』たる『彼』の領域に一歩足を踏み入れたグエル・ジェタークを、心底嫉妬する。

 

(……僕には、其処まで至る時間が、残されてない――!)

 

 体の中身全てを弄くり回され、顔も体も声すら変えられ、記憶すら操作され――呪いのMSに搭乗して呪われて命を削られてるのに、普通の人間が乗る『ガンダム』以外のMSに負けようとしている。

 

 ――そんなの、許されない。何もかも捧げたのに、唯一望んだ勝利すら奪われるなんて、あってはならない――!

 

(――負けたくない。このまま、無意味に死ぬのは嫌だ。例え、どんな代償を支払おうが――!)

 

 その瞬間、ファラクトのメインモニターが光り輝き――。

 

 

 

 

「――え? 何が起きたの?」

 

 ミオリネがそう呟くのも無理はない。大多数の者は何が起こったのか、理解出来なかった。

 

「エランさんの、勝ち、です……」

 

 表示される決闘の勝利者はエラン・ケレスであり――ファラクトの頭部はディランザの持つビームパルチザンに貫かれ、現在は完全に機能停止している。

 右腕部はビームライフルで蒸発し、左脚部は無惨に千切れ、両肩部バーニアは限界を超えて自壊しており――反面、ディランザはほぼ無傷であり、とても敗者の姿には思えず。

 

「17基目のビットが破壊された時点でエランが勝負を賭けた。ディランザに向かって一直線に突撃飛翔、残りのビットで電磁ビームを乱射するも、グエルは潜り抜けて――まぁこれは意図的にディランザの進行方向を誘導して固定したな。上手い使い方だ。――共に一歩も譲らず正面から射撃戦――ファラクトの方が『何故』か一方的に撃ち負けてロングバレルビームライフルごと右腕部が蒸発、殺人的な速度での飛翔中に左脚部が千切れる勢いで地を蹴り上げて速度変化、ビームサーベルでの刺突突貫し――真正面から受けて立ったディランザのビームパルチザンの刺突で返り討ちに遭うのだが、最後の最後でグエルはしくじったな。うん、心底惜しい。相手を仕留める直前が最も無防備になるからな」

 

 ディランザの唯一の被弾箇所は、ブレードアンテナであり――。

 

「この無謀とも思える突撃突貫は全部囮。一基だけ、電磁ビームを撃たずにディランザの背後に回り込ませていたビットを、ファングのように直接衝突させてディランザのブレードアンテナを折った訳だ――何から何まで『未来予知』でもしてない限り、無理だなこれ」

 

 それを可能とする悪魔の『システム』を、『アナハイム・エレクトロニクス』社はペイル・テクノロジーズに技術提供していたというオチである――。 

 

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