「――ブリーフィングを開始しましょう。今回の決闘相手はペイル寮の決闘委員であるエラン・ケレス。搭乗MSはペイル・テクノロジーズの最新鋭MS、型式番号『FP/A-77』ファラクトです」
決闘当日、地球寮には『アナハイム・エレクトロニクス』社製の巨大なディスプレイが設置されており――社外秘のファラクトの設計資料が堂々と掲示されていた。
……なお、敢えて『ガンダム』及びGUND-ARM関連のデータが消去及び改竄されているのは仕様である。
「……どうして決闘前に敵MSの全情報入手してんのか、ツッコミ待ち?」
「そりゃあの『アナハイム』だしな……」
「……これ、良いのかなぁ……?」
チュアチュリーが呆れ顔で呟き、お調子者のオジェロさえドン引きし、地球寮寮長のマルタンは『ペイル社』との契約に引っ掛からないか、青い顔で1人危惧する。
「――グエルとの決闘で手札全部見せちゃってるからね、知っていて当然の情報を改めて説明するのは何も問題ありませんね!」
それに答える『彼』は、そりゃもう胡散臭い事この上無い笑顔で答え、「うわ、物理的な証拠以外は全部すっとぼけるつもりかよ……」「汚い、流石『アナハイム』汚い」とチュアチュリーとヌーノは呟く。
「ペイル社の特色である機動性に特化した機体であり、24基の電磁ビットで相手MSの機能を一時的にスタンさせ、狙撃特化のビームライフルで仕留める、典型的な高機動狙撃MSです。性格の悪さが滲み出た鬱陶しい戦法ですが、それなり以上に厄介ではあります」
……なお、先のグエルvsエランでの決闘で、一度たりとも電磁ビームが直撃してスタンしてない事については、話すのも野暮な事だろう。
「電磁ビットは照射した対象の機能を装甲の上から数秒間スタンさせる電子機能妨害特化型であり、従来のビットによるビーム射撃をするよりも燃費が格段に宜しく、本体に戻して補給する頻度も少ない仕様ですね。――我が社もビット・ファンネル・ファングには定評がありますが、この発想は素晴らしいですね。何でこれを使っておいて量産型をカスタムした程度のMSに圧勝出来ないのか、理解出来ませんね!」
チュアチュリーが「褒めるのかディスるのか、どっちかにしろよ」とツッコミ、「両方しないと気が済まないんでしょ」とミオリネが締める。
「一つ助言を加えるなら、あの電磁ビットは2つ一組運用、点じゃなく線の攻撃だ。電磁ビットと電磁ビットの間にしかスタン効果のビームは照射されない。――そう考えるのなら相手の手数は半分の12に減り、尚且つビットの機動・挙動はとてつもなく読み易い」
画面が切り替わって、ディランザと決闘するファラクトの動画が映し出され、単体での独立運用でなく、2つ一組で動く電磁ビットの様子が克明に表示される。
「そう考えると、対処しやすい?」「いや、騙されてるから」「常人には為にならない、超人向けの助言過ぎる……」と、それぞれ感想を呟く。
「超人向けの助言? 照射されてからスタン効果が出るまで僅かに時間差あるから、その猶予に撃ち落とせばいいじゃない」
いや、何で前回の決闘で実際に起きてない着弾結果についての詳しい見識があるんだよと突っ込む間もなく「『アンタ』以外無理だから」「というか、24個同時操作で全ての電磁ビットを経由する千変万化の結界作ればいいのに」「そんな馬鹿げた事が出来るのも『アンタ』ぐらいでしょ……」と、呆れ顔のミオリネとのいつものやり取りが繰り広げられる。
「あとは今回の戦場を上手く使う事。比較的、障害物が少なく綺麗に整備されている領空内で――わざわざ相手が有利な場所で戦ってやる義理もあるまい。領空塔の外にファラクトを追い込め。障害物だらけで、ヤツ自身の高すぎる機動性が逆に足を引っ張る事になる」
続いて今回の決闘場であるフロント外宙域が表示され――領域外のデブリ帯がピックアップされ「ああ、やっぱりこの『人』、MSの操縦に企業経営だけでなく『戦術予報』まで出来るから――」とマルタンはペイル社との契約の不備を目の当たりにする。
今回縛ったのは『アナハイム・エレクトロニクス』社からの支援であり、『彼』個人の関与を縛るモノでは無かった事に尽きる。
――更に言うならば、ペイル社に契約を持ちかけた前段階で、此方側の推薦企業を通して『アナハイム・エレクトロニクス』社の資本が事前投下されており、地球寮の全生徒を通してグエルvsエランでの決闘にエランの勝利に全額投資された事で資金洗浄され、エアリアルの推進ユニットを地球寮で用意する資金源となっていた。
例え、その事をペイル社が指摘したとしても、契約前の支援行為としてしらばっくれる気満々だろう。過去に遡って支援を打ち切る契約でもないので、文句すら言えないだろうが――。
「また、ファラクトには『正体不明のシステム』が急遽搭載されたという情報を『とある筋』から入手しましたが――スレッタ・マーキュリー、貴女ならば何の問題も無いでしょう。今回の決闘に対して細かな作戦プランはありません、全て貴女にお任せします。ご健闘を」
その『正体不明のシステム』の提供主である『彼』にはどんな『システム』なのか筒抜けであり、尚且つ問題無いと断言しているからには、此処では敢えて明かさない、何か明確な絡繰りがあるのだろうとミオリネは1人読み取る。
「――結局は『鬼ごっこ』をして捕まえろ、だもんね」
「皆様が造られた推進ユニットとエアリアル、そしてスレッタさんの腕前があれば、十分可能でしょう」
人事尽くして何とやら――あとはパイロット次第。全員の視線がスレッタに集中する。
「――大丈夫? スレッタ」
「――はいっ、ミオリネさんも、『アナハイム』さんも、皆さん、ありがとうございます!」
前日までにあった迷いは吹っ切れており、スレッタの笑顔に『彼』もまた破顔する。
「今日という日をエランの誕生日にしてやりましょう! ――あ、ちなみに『私』の誕生日は365日、毎日該当しますよ! 毎日祝ってね!」
「どんだけ『頭ハッピーバースデー』なのよ!?」