Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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27/その『魔女』は『ガンダム』を駆る

『――これより双方の合意の下、決闘を執り行う。勝敗は通常通り、相手MSのブレードアンテナを折った者の勝利とする。立会人はグラスレー寮・寮長シャディク・ゼネリが務める。両者、向顔』

 

 目の前の『敵』を、エランは見据える。自分と同じだと思って――自分と違った者の顔を。

 

『水星ちゃん、決闘に賭けるものは決めた?』

『……はい、私が勝ったら、エランさんの事、教えて下さい』

 

 最後のピースがかちりとはまる。――昨日の、あの『鬱陶しい歌』から、薄々勘付いていた。

 『ゼロシステム』が最後に見せた未来は、スレッタ・マーキュリーに敗北した先の未来であると。

 

 

 ――ああ、それでも解らない。彼女に負けておいて、何故、あの『鬱陶しい歌』を口ずさんで、『お前(自分)』は満足げに逝こうとしているのか。

 

 

 同時に、あの未来だけは絶対に訪れない未来だと悟った。思わず自嘲する。たかが『システム』の癖に、随分と悪辣じゃないか。

 造った『者』の性根がそのままなのだろうか――この『ゼロシステム』がある限り、あの未来は訪れない。何故ならば、自分の命は、恐らくこの決闘で燃え尽きるからだ。

 

(ベルメリア・ウィンストンは次はもつと言ったが――)

 

 残酷なまでに甘い嘘だろう。いつ『ゼロシステム』が外部発動されるかは解らないが、間違いなく決闘中に発動し――GUND-ARM共々、自分の命を最期まで使い切るだろう。

 

 ――それでも構わない。最期の相手がスレッタ・マーキュリーであり、彼女にとって大切な家族を奪い、あの『男』を最期に出し抜いてやれるのならば、せめてもの慰めになるだろう。

 

 今回、あの『男』はペイル社との『契約』に縛られて、動けない。

 

『――勝敗はMSの性能のみで決まらず』

「――操縦者の技のみで決まらず」

 

 『契約』のみに縛られて自滅するのは、実に『悪魔』らしい落ち度ではないか。

 

「『――ただ、結果のみが真実』」

 

 決闘開始と同時に、フルスロットルでバーニアを吹かせて突撃する。

 

「――僕の事を教えてくれ? 僕は『ガンダム』の為に造られた使い捨ての駒だ。そう答えれば君は満足なのか?」

 

 ファラクトのコクピットの中で、エランは1人呟く。

 エアリアルからのビームライフルの射撃を躱し、その応酬にロングバレルビームライフルの射撃を撃ち込み――。

 

「意外と意地が悪いじゃないか、スレッタ・マーキュリー!」

 

 躱し、撃ち、避けられ、躱し、撃ち、ファラクトの腕部に収納されたビームサーベルを取り出し、握り、刀身を展開――。

 彼女もまた、推進ユニットの下部からビームサーベルを取り出し、即座に展開、ファラクトとエアリアルのビームサーベルが交差して衝突する。

 

「――君は何でも持っている。友達も家族も、過去も未来も、やりたい事リスト――希望だって――」

『エラン、さん――?』

「だったら、勝利ぐらい僕にくれよ。――じゃなければ、不公平すぎるッ!」

 

 エアリアルの胸部を蹴り飛ばし、前面ブースターを点火して一気に急速離脱、ビームサーベルを投げ捨てて即座にロングバレルビームライフルを連射し――。

 

 ――エアリアルの機体からビットが分離し、前面に展開され、此方の射撃を完全に弾く。

 

 構うものか、と何度も何度も撃ち放つ。頭に血が上り過ぎて冷静じゃないと自己判断出来るぐらい、子供の癇癪じみた愚かしい行為だが――!

 

 ――前面ブースターを吹かせ、回転しながら引き撃ちし、魚群が群がるように群体制御されるエアリアルのガンビットに全部弾かれ、反撃のビームライフルが放たれる。

 

 だが、ファラクトの機動性を見縊って貰っては困る。

 出力任せに急加速して回避する。この広大な『フロント外宙域』こそ、高機動狙撃機のファラクトの本領を発揮出来る、最高のフィールドであると――!

 

「――だが、思った以上に速い。急造の推進ユニットではない……?」

 

 頭のネジが全部外れている『アナハイム・エレクトロニクス』社製ではないが、最新鋭の推進ユニットと遜色無い性能を発揮している。

 それでも機動性はファラクトの方が若干、上回っている。更には――。

 

「――パーメットスコア3」

 

 此方も電磁ビットを全部展開、飛翔するエアリアルに電磁ビームの嵐が殺到する――。

 その網目を掻い潜るが如く、エアリアルは前に飛翔しながら全部回避していく。本来は完全な初見殺しなのだが、こうも容易く対処されるとは――。

 

「っ、逃さない……!」

 

 グエル・ジェタークとの一戦で、重MSのディランザ如きに全対処された苦々しい経験が脳裏に過る。

 余りにもオールレンジ攻撃を経験しすぎた故の特異事例として処理したかったが――電磁ビームの波状攻撃をエアリアルは易々と潜り抜けるも、ガンビットが一基、避け損ねて電磁ビームの餌食となり、機能停止する。

 

「そのガンビットは此処で潰す――!」

 

 すかさずロングバレルビームライフルで停止したガンビットを照準・発射し――残り10基のガンビットが電磁ビットに囚われたガンビットを守るように周囲に展開されてビーム攻撃が弾かれ――即座に拘束していた此方の電磁ビット2基をビットによるビーム射撃で撃墜され、自由を取り戻す。

 

「――ガンビットの制御は向こうが上か……!」

 

 あの『男』と比較して、スレッタ・マーキュリーが操るガンビットの動きは非常に有機的であり、今の自分でも捉え切るのは非常に困難だと把握する。

 

(『ヤツ』の場合は無慈悲なまでに無機質で、なのに変化自在で精密無比だったが――)

 

 だが、ファラクトの速度の方が上である以上、エアリアルは追いつけず、此方からの有利な遠距離射撃戦に一方的に付き合うしかない。

 疲労が蓄積し、致命的なミスを犯すまで引き撃ちするだけで良い――エアリアルの周囲に展開していたガンビット11基全部がエアリアル本体に装着、同時にエアリアルが急加速する……!?

 

「本体に装着したガンビットのスラスターで更に加速? 汎用性も向こうが上か……! ――鬱陶しさも此処まで来れば筋金入りだよ……!」

 

 速度という最大のアドバンテージが喪失した事をエランは瞬時に悟り――。

 

「パーメットスコア4!」

 

 今までとは比較にならない殺人的な負荷が自身を襲い、ファラクトの全性能を発揮して最大加速する。

 電磁ビットで牽制を加えながら一気に距離を取る――否、追い縋るエアリアルを引き離せない……!?

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっっ、っっ――!」

 

 ……恐らくは、許容値を遥かに超えたデータストームだったのだろう。

 頭を掻き乱す激痛は過去最大規模で襲い掛かり、心身ともに秒単位で蝕む。それでも追跡するエアリアルを振り切れない……!

 

 余りの激痛に反射的に両眼を瞑って堪え――生じる接近警報の警告音、眼下には小規模の隕石が立ち塞がっており、反射的に回避し、速度を著しく落としてしまう。

 

(いつの間にか領空外に……まずい!?)

 

 この致命的な隙を、見逃してくれるほど相手は容易くない!

 

 ――即座に本体からガンビットを分離させ、容赦の無いオールレンジ攻撃が行われる。

 躱し切れないと一瞬で悟り――ファラクトのメインモニターがまた、光り輝いた。

 

 瞬間、脳に直接、数多の情報が押し寄せる。莫大な情報量はただでさえ脳を蝕んでいた現状を上書きする形で駆逐し――。

 

「――見える」

 

 今まで有機的過ぎて全体像を捉え切れなかったガンビットの動きが、全て感じ取れる。どういう風に動くのか、全て『予測』出来る。

 最小限の姿勢制御だけでガンビットの射撃を掻い潜り、迫り来るエアリアル相手にロングバレルビームライフルで射撃する。エアリアルも迎え撃つが、当たる気がしない。

 

 ――エアリアルの動きが全部読み取れるのならば、あとは詰将棋だ。

 

 ロングバレルビームライフルと電磁ビットの全てを駆使し、馬鹿げた反応速度と機動性で回避し続けるエアリアルを、その都度、『未来予測』して的確に追い詰めていき――遂に、電磁ビットがエアリアルを捉え、推進ユニットに照射される。

 

「――捉えた! この『システム』を提供したのは失敗だったな『アナハイム』――!」

 

 『ゼロシステム』が見せる勝利の未来をはっきりと観測し、エランは勝利を確信し――。

 

 

 ――それ、『オリジナル』の『ゼロシステム』なんだけどさ、この宇宙独自の要素である『パーメット』関連の技術、当然の事ながら初期入力してないんだよね。

 

 

 その『悪魔』が真に『悪魔』を超える『何か』である所以を、味わう事となる。

 

 

 ――エアリアルと11基のガンビットが光り輝き、正体不明の粒子らしき渦が全周囲に拡散される。

 それに触れた瞬間、ファラクトの電磁ビットの制御は全部失い――。

 

「動かない!? 何をした!? こんな事、『システム』の予測には――ぐううううううううううぅ!?」

 

 更には、その粒子の渦はファラクトにも届き――瞬間、機体の全制御を喪失すると共に、全身の中身という中身を直接ミキサーにかけられて掻き回されたが如く大激痛が生じ――。

 

 

「――え?」

 

 

 そしてエランは見た。青い粒子が人の形となり、虚空の宙に浮いている姿を。

 

「――君、は……?」

 

 恐らくは、幼い少女――少女の笑い声が聞こえる。それも複数。それらは笑いながら自身の周囲を無邪気に走り回り――いつの間にか、11基のガンビットがファラクトを囲んでおり――。

 

「――!?」

 

 ガンビットによる無慈悲なオールレンジ攻撃が一斉掃射され、ファラクトはロクに回避出来ずに、羽虫の如く、その手足を撃ち抜かれてもぎ取られ、成す術無く蹂躙され――。

 最後の一撃を決めたのはファラクトの電磁ビットに一度囚われたガンビットであり――的確にブレードアンテナを撃ち抜いて、この決闘に幕を降ろしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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