Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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03/『魔女』と摂理

 

 

 

 

「……前のルール改定でMSと同質量の武器コンテナを決闘場に輸送出来ない、となっていたよな?」

 

 第七決闘場、グエル・ジェタークは改めて前回のルール改定について触れる。苛立ちで痛む頭を押さえながら。

 

 

『そうだねぇ、どういう意図でそんな無駄な改定をしたのか、皆目見当も付かないけど!』

 

 決闘相手はいつも通りの『彼』で、そしていつも通り、また新型MSの上に――。

 

「ああ、お前にとっては無駄だっただろうな。引っかかるのは開幕時の武器コンテナの輸送だけで、最初から決闘場に用意しておけば良い話なんだからよぉ……!」

 

 『彼』のMSの背後から特殊な粒子が一斉に解かれ――唐突に、何も無かった空間から全長100メートル大の超巨大な追加武装ユニットが悠々と姿を現し、『彼』の新型MSは即座にそれとドッキングしたのだった。

 

「その、ルールの抜け道を考える頭は規制出来ねぇんかよ!」

『やだなぁ、ルールに不備があるのがいけないんだよ! 穴があれば徹底的に突けって親が教えてくれたっしょ?』

 

 両腕のウェポンアームの先端部から対艦用のビームソードが展開され、威嚇するように2・3回素振りし――背部の全スラスターをフルスロットで点火、100メートル大の巨体が殺人的な速度で宙を飛翔する。

 

「父さんはそんな事言わねぇっ! というか普通に決闘しやがれェッ!」

『あっはっは、全ての戦いは戦う前に決しているものなのだよ! ちなみに今回用意したのはMS埋め込み式戦術強襲機『M.E.T.E.O.R.』、通称『ミーティア』だよ!』

 

 

 

 

「……これより審問会を開始する。『アナハイム・エレクトロニクス』代表に問う。あれは『ガンダム』か?」

 

 もはや恒例のやり取りになってしまっているが、本来は、いや、今回も普通に命懸けの魔女裁判である事には変わりなく――。

 

「いいえ、型式番号『ZGMF-X13A』、ドラグーンシステム搭載型対MS戦用MS『プロヴィデンス』です」

 

 いつもと変わらぬ様子で『彼』は笑いながら答えたのだった。ちなみに決闘結果はいつも通りだが、いつも以上に時間が掛かったとだけ先述しておく。

 

「……また『G』が入っているようだが?」

「何の『G』なんでしょうね? 普通に解んないです」

 

 普通に不思議そうな顔で「『Z』はザフトの『Z』なんだろうけど、あとのは何だろ?」と『彼』はのたまう。

 

「いや、そんな事よりもあの『ステルス』は何だ!? あそこまで隠匿性の高い光学迷彩技術など見た事が無いぞ!」

「当然、あの技術も我々グループに共有してくれるんでしょうねぇ?」

 

 久々の当たり技術回だと認識した各企業の代表は熱烈なアプローチを行う。

 ――そう、今回の決闘場に突如現れた100メートル大の『異物』は、決闘が始まるその瞬間まで各種センサーをすり抜けて発見出来なかったのだ。

 その素晴らしい秘匿性を前に『ガンダム』関連の事すら文字通り霞む。むしろ、あれこそ世界を一変させる新技術の一端と察して興奮を隠せずに『彼』を見下ろし――。

 

 

「一体何を言ってるんですか? あれは単なる舞台装置、ダンボールと同程度の迷彩に説明なんていらんしょ?」

 

 

 無下に切り捨てられた。狂人は常人の価値観など持ち合わせてない。

 

「それでは『今回』のプレゼンテーションを開始しましょう。まずはMS埋め込み式戦術強襲機『M.E.T.E.O.R.』から! ……結論から言いますけど、これを一機作る資金でMSを量産した方がコスパ良いです」

 

 あいた口が塞がらない者が多い中、『今回』の弁明もとい紹介は、明らかにテンション低めに行われた。

 

「その大火力と機動性は些か以上に脅威ですが、一戦限りの使い捨て運用となると生産コストと戦果の帳尻が合わず、非常に割に合わないです。いっその事、火力部分を全て排除して機動性特化の外付け背部ユニットとして使い捨てた方が大変効率的じゃないですかね?」

 

 自分で指摘しておきながら「戦場への片道切符とか素敵ですよね! 本気で『V.O.B.』作ろうかな?」と、『彼』は割りと本気でそんな結論に至った。

 

「あ、あれだけ派手に暴れておいて、出た感想がそれなのか……?」

「大火力を以って複数殲滅というコンセプトだったのですが、小回りが利かなくなる事で対MS戦闘が不得手になる木偶の坊の評価なんてその程度で十分なのでは? 対艦対拠点用には良いかもしれませんが、これを使うぐらいなら最初から戦艦使えって話ですよ」

 

 結局、ミーティア搭乗状態では今回のグエル・ジェタークのMSは仕留めきれず、途中で乗り捨てて決闘するという本末転倒っぷりをお見せする事となる。

 

「さて、『今回』のメインディッシュである『プロヴィデンス』ですが――従来の『GUNDフォーマット』を使わない、新たな無線ビーム砲端末『ドラグーン・システム』を搭載したMSとなっております。前回の『フラッシュシステム』と違い、『今回』は希少な『先天的資質』が無くても使える兵装となっております! やっぱり兵器という物は万人に等しく扱えなくてはね!」

 

 言うに事欠いてそんな戯言を自信満々に宣言する『彼』に「大丈夫? 『アナハイム』製のMSだよ!」「その技術はともかく、作った自社製のMSに関しては相変わらず欠片も信用ねぇ!?」と各企業の代表達は若干以上錯乱した。

 ……『アナハイム』製の量産型MS? あるにはあるけど、残念ながら誰も受注しなかったよ。当人曰く「普通に無難な名機なのに」とちょっと落ち込み気味である。

 

「パーメット流入値は今回も検出されませんでした……くそぉ、何でだよぉ!?」

 

 まるで科学の敗北を宣言するが如く、今回もパーメット流入値に関する証言をする者はヤケクソ気味に叫ぶ。

 

「9門のビーム砲を備えた円錐形大型タイプが3基、2門のビーム砲を装備したスクエア型小型タイプが8基搭載されており、『プロヴィデンス』は合計43門のビーム砲をもって戦闘区域を単機で完全制圧する事をコンセプトとしております!」

 

 これによる飽和攻撃はまるで花火みたいに綺麗であり、ハリネズミが如く撃ち放たれたビームの乱射は点ではなく面での制圧そのものだったとか。

 なお、この手の攻撃に慣れてきたのか、決闘相手のグエル・ジェタークはドラグーンを2基、自身のビームライフルで撃ち抜いていたりする。

 

「……まぁ改めて言うまでもないですけど、超人的な空間認識能力が無けりゃ扱えない代物になっております。自分のオールレンジ攻撃で自分のドラグーンを落としちゃ世話無いよね」

 

 先の決闘で撃墜されたドラグーンは合計4基、残り2基は『彼』自身の乱射で破壊されていたりする。

 

 「『先天的資質』が無くても使えるとは一体……」「いつも通り、人を選ぶ兵器じゃないか」「扱える奴が『変態』なだけでは?」と審問会場から野次が入る。

 

 

「まぁ、この通り、微妙極まる欠陥機ですので『ガンダム』では――」

 

 

「――いいや、あれは『ガンダム』だ。私がそう判断した」

 

 

 だれた空気の中、デリング・レンブランは変わらぬ様子で断言した。

 

「……一度、デリング総裁の中の『ガンダム』の定義を詳しく知りたいなぁ!」

 

 実際問題、『彼』でも扱いきれない『ドラグーン・システム』を真に完成させる為に最も手っ取り早い技術が『意思拡張AI』&『GUNDフォーマット』なので、デリングの判断は完全無欠なまでに間違ってなかったりする。

 

「ちなみに! この機体に搭載されているOSの名称は『General Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuver』――単方向分散型神経接続による汎用自動演習合成システム、その頭文字を取ると――」

「やはり『ガンダム』ではないか。――『ガンダム』の廃棄及びプロジェクトの全凍結を命ずる」

「開発者の遊び心をまるで無視!?」

 

 

 

 

「――はい、この度は『アナハイム・エレクトロニクス』のご利用、誠にありがとうございます。いやはや、まさか『Vanguard Overd Boost』の発注をする企業が現れるとは思ってもいませんでしたよ。実に実にお目が高い」

 

 光無き暗室にて、『彼』はぷかぷかと逆さに浮かびながら笑う。

 外付けの強襲用ブースターが必要な状況など、言うに及ばず――。

 

「ええ、ええ、勿論、他言無用ですとも。顧客のプライバシーを死守するのも我々『アナハイム』の社訓でして。――如何なる運用も、我々の関与する処ではございませんしね?」

 

 自社製の兵器が止事無き事に使用されても全く構わないのが『アナハイム』クオリティである。自社の兵器の性能を態々買って宣伝してくれるようなものだ、非常にありがたい限りである。

 

「それでは、今後とも貴方の良き隣人であらん事を――我々『アナハイム』は、我々の技術をより高く買ってくれる御方を優先的に優遇しますとも」

 

 

 

 

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