Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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31/『魔女』と自由の翼

「――勝敗はMSの性能のみで決まらず」

『――操縦者の技のみで決まらず』

 

 ――『フロント外宙域』で『ヤツ』と決闘したのは唯一度のみ。

 文字通りの瞬殺であり、無重力空間の宇宙こそが『ヤツ』が最も得意とする戦場だと否応無しに思い知らされた。

 

 あれから十数度の決闘を経て、操縦者の技とやらは自分でも実感出来るぐらい成長し、――今回、MSの性能も、ディランザの時と比べて段違いなまでに向上し、『ヤツ』の超高性能のワンオフ機に限り無く近づいていると確信する。

 

「『――ただ、結果のみが真実!』」

 

 『決心解放(フィックス・リリース)』という掛け声と同時に、一条の光が宇宙の闇を駆ける……!

 

「当たるかよォッ!」

 

 決闘開始と同時に姿勢制御だけで機体を反転させ、頭部目掛けて撃ち放たれたビームライフルによる超長距離狙撃を回避する。

 ロックオン出来ないであろう決闘開始位置からの精密狙撃ぐらい、想定内の行為に過ぎない!

 グエルは推進ユニットをフルスロットルで稼働させ、『ヤツ』のMS目掛けて突撃する!

 

「ぐぅぅ、凄ぇ加速力だ……!」

 

 『ヤツ』が殺人的な加速と評価するだけあって、とんでもない加速と機動性だった。元々ダリルバルデ単体の機動力は高く、Mk-A.Eに至っては更に機能強化されており、今回の推進ユニット『バックパックバーニア』も加わって未知の領域に達している。

 

「――これならァッ!」

 

 全体に掛かる負担は桁違いだが――これだ。『ヤツ』の動きに食らいつくにはこれぐらい必要不可欠だとグエルは判断する。

 

「――チィッ、『ウイングバインダー』とやらにしなかったのは、意外と正解だったかァ!?」

 

 ある程度動かす事で実戦での『ヤツ』ご自慢の大推力・機動性を実機確認し、続いて新規購入した白い銃身が特徴的なビームライフルを試し撃ちする。

 驚くほど素直な挙動で遥か遠方の『ヤツ』のMSに向かい――『ヤツ』のMSの前腕部に装備されたビームシールドに弾かれる。簡単に避けられる癖に態々防御する――?

 

「はんっ、最初から避ける気すらねぇってか! だったらァ!」

 

 一直線で飛翔する『ヤツ』のMSの動きを見て、『ヤツ』の意図を察する。

 此方も一歩も引かずに全速力で前進飛翔し続ける。互いにビームライフルを撃ち続け、『ヤツ』は瞬間的に前腕部のビームシールドを発生させて弾き、ダリルバルデMk-A.Eは背部から分離した2機の肩部シールドで自動的に防ぎ――ビームライフルを背部に収納し、ビームジャベリンを取り出し、即座に分離して二刀流にし、同じくビームライフルを収納してビームサーベル二刀流になっていた『ヤツ』のMSと真正面から激突する――!

 

 ――桁外れの大推力持ちのMSが真っ向から衝突、ビームサーベルとビームサーベルが相手MSを切り裂かんとせめぎ合って拮抗し――。

 

『それじゃ――』

「ああ――」

 

 『ヤツ』のMSの翼部から8基のドラグーンが本体から一斉分離し、ダリルバルデMk-A.Eの背部から4基のドローン兵装及び2基の肩部シールドが本体から一斉分離し――。

 

「『派手にやり合おうかァ!』」

 

 

 

 

「わぁ~、二人とも派手にやりますねぇ!」

「どっちも自社製なのに平然とぶっ壊すんかよ。金持ちめ」

 

 共に武装を打ち砕き、各部を損傷させながらも激烈なまでに正面衝突する『アナハイム』製のMS同士の決闘を眺め――地球寮所属の経営戦略科1年リリッケ・カドカ・リパティは大いにはしゃぎ、パイロット科1年のチュアチュリー・パンランチは「金持ちの道楽め」と罵りながらも目が離せずにいた。

 

「……凄い、『アナハイム』さんも、あの人も――!」

「アンタと決闘した時より強くなってるし、機体性能に至っては段違い」

 

 スレッタも決闘から目を離せずに、食い入るように見て――ミオリネは冷静に分析する。

 今のグエルを相手するには、スレッタとエアリアルでも非常に危ういだろう。

 

「やっぱり『あれ』はまずいって……! ジェターク社を挑発しすぎだよぉ……!」

「正面から押し潰す算段でも付けたのか、或いは――いや、『アイツ』に限って無いか」

 

 『彼』と同じ経営戦略科3年の、地球寮の寮長マルタン・アップモントは、この決闘がただの決闘ではなく、ジェターク社への嫌がらせも兼ねている高度な経営戦略である事を察して顔を青くし――『彼』らしくない直球過ぎる挑発にミオリネは首を傾げる。

 まさかとは思うが――そんなに友情に熱い性質でも無いし、有り得ないだろうと切って捨てたのだった。

 

 

 

 

『――『アナハイム・エレクトロニクス』代表に問う。あれは『ガンダム』か?』

 

 決闘後の恒例行事、前の決闘ではヴィム・ジェタークの怒号で遮られて不発に終わった台詞を、デリング・レンブラン総裁は重々しく告げたのだった。

 

『はい、型式番号『ZGMF-X20A』ストライクフリーダムガンダムです』

 

 担当者は『パーメット流入値とデータストーム? ねぇよ!』と凄くやぐされて言い捨てる。

 

『――ヴィムCEO、とびきり優秀な『テストパイロット』を融通して貰い、誠にありがとうございます。いやはや、久方振りに実戦の空気を堪能しましたよ』

『貴様、嫌味かッ!?』

『いえいえ、純度100%の賛辞ですとも! ――良かったんですか? 彼ほどの腕前を持つパイロットを無料で手放して。勘当するしないかは家庭の事情ですが、せめて『首輪付き』にすれば良かったのでは?』

 

 壮絶なまでに顔を歪ませるヴィムCEOの姿を堪能した後――面子とか気にせずに家族の好で呼び戻せば良いのに、と内心思いつつ。

 

『本機はとある『個人』専用機であり、最新技術を惜しみなく投入した超高性能ワンオフ機で――物凄く使い辛いです! もうちょっとこう、余人に扱える余地をね?』

 

 『彼』は珍しく2回も使ったそのMSを、テンション低めに、そう評価したのだった。

 それを聞いた上位企業の代表達は『は? 『ヤツ』専用機じゃないの?』『『お前』以外の誰が使えるんだよ?』と一斉に突っ込む。

 

『『特定個人』の為だけに、持てる全ての技術を結集させるコンセプトは嫌いになれないのですが、その『特定個人』の為を思うなら最新鋭の量産型MSの一個師団を用意した方が良いのでは? 今でも『歌姫』さんの考える事は解らないですねぇ』

 

 『身も蓋もねぇ事を言いだしたぞ?』『普段の貴様の行いを顧みて言え!』『……『歌姫』?』と、あんな超高性能のMSをお披露目したのに反して、『彼』の様子は下降気味である。

 

『その圧倒的火力で敵を単機で殲滅する運用思想通り、それを可能とするだけの数多の武装を詰め込められるだけ詰め込んでいますね。でもこれ、致命的な欠陥機なんですよ!』

 

 『は?』『また変な機能でも付けたのか?』『やっぱりいつもの『アナハイム』か?』と、欠陥機である事を喜んで披露する『彼』の様子を不審がる。

 

『いや、単純明快な問題ですよ。こんな武装を扱えるだけの『ジェネレーター』なんて、この宇宙に存在しない事ですよ。無限のエネルギーでもあれば話は別なんですけどね!』

 

 確かに――ストライクフリーダムに搭載された射撃兵装全てがビーム兵器であり、あれら全てを賄える『ジェネレーター』など、それこそ戦艦サイズになるだろう。

 

『……つ、つまり、あれは――』

『はい、決闘出力だから運用出来た、ハリボテの幻ですとも! ざぁんねんでしたー! 『アナハイム』マジックです!』

 

 『ドッキリ成功!』のプラカードをあげていつもの胡散臭い笑顔を浮かべる『彼』の余りの蛮行に、流石にマジ切れする者が続出し、今回のプレゼンテーションはいつも以上に大いに荒れたのだった。

 

 ――『ハイパーデュートリオンエンジン』を採用し、各種兵装に必要な莫大な電力を半永久的に賄えるのは公然の秘密である。

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