「ジェネレーターは擬似太陽炉2基、装甲材質はガンダニュウム合金、本機の武装はGNロングバレルビームライフル、手部足部内蔵GNビームサーベル4本、GNガンビット12基にGNファング12基です」
外見はファラクトに瓜二つであり、呪われたMSに乗っていただけに忌避感が強いが――。
「擬似太陽炉、GNドライヴ搭載機についての基本情報は『GN粒子』の項目を参考にして下さい。――当機にはGNフィールドと『TRANS-AM SYSTEM』が採用されております」
『GN粒子』……Gundam Nucleus、ガンダムの中核? 未知の粒子が当然のように登場して、頭が痛くなる。更には――。
「……総重量が10t未満だけど、これは誤表記……?」
「いいえ、ガンダニュウム合金製の特徴です。詳しい説明は省きますが、異常に堅く、異常に軽い希少素材です」
いや、元が57tだったのになんで5分の1以下になっていて……言う事が異常に堅く、異常に軽い素材だと?
紙のような装甲で、軽くなった分、より機動性が増して勝手に空中分解するハリボテの疑惑が……。
「GNロングバレルビームライフルは威力調整可能な可変式ビームライフルです。通常出力なら連射可能で、高威力になるほどインターバルを必要としますが――『TRANS-AM SYSTEM』と併用して使用すれば、その制限も取っ払えますし、最大出力はコロニーを一撃で破壊出来るほどの超威力となります」
……いや、MS1機に持たせて良い火力じゃないし、真面目に此等の話、事実なのかと頭痛が激しくなる。
「……ビームサーベルが内蔵型なのは?」
「取り出す手間も無ければ、投げ捨てる手間も省けますよ。まぁ当機のコンセプトは高機動・狙撃ですから、メインウェポンを失った際のサブウェポンという認識で良いでしょう」
足部のビーム砲が取っ払われて、ビームサーベルになっているのは……いや、最早突っ込むまい。
「ガンビットが半数に減って、半分置き換わっている理由は? ……そもそもガンビットは、もう使えない筈――」
「オリジナルを拝見した『代表』が2組1つ編成でなく、1基でも電磁スタンビームを照射出来るように改良しましたので、半数でもオリジナルと同じパフォーマンスを発揮出来ます。なので、余った残り半数の枠を直接的な攻撃に使えるGNファングに置き換えた訳です」
全く説明になってない説明をされても困るし、そんな短期間で劇的なまでに改良出来るものなのだろうか?
ペイル社の技術者が聞いたら、間違いなく発狂するだろう。パイロットだった自分さえ受け入れ難いのだから当然だろう。
「そして後半の答えは――今の貴方なら使える筈です。いやぁ、楽しみですねぇ! これが成功すれば脳量子波関連の技術検証が格段に捗りますよ!」
ペイル社では見られないタイプのマッドがいる、と彼は冷や汗を流し――。
「最後に、当機には『ゼロシステム』が搭載されております。任意でON・OFF出来る仕様に改良しましたので、使うなら自己責任でお願いしますね!」
――ファラクトのコクピットに座り、またあの脳を直接掻き回される忌々しい感覚を覚悟するが――。
「――パーメットリンク……が、無い……?」
『うちのMSにはありませんよ。パーメット識別コードだって後付ですから』
一見していつものコクピットだが――GUND-ARM特有の感覚は無く、むしろ別種の違和感が付き纏う。
感覚的な話になるが――こんなにも宇宙空間は明るかっただろうか? 隅々にまで手が届くかのような違和感が常時蔓延る。
『それではガンダムファラクトMk-A.Eの戦闘テストを開始します。まずはトーラス6機の撃破から始めましょうか』
眼下に展開されたのは黒色の、妙に頭が尖った1つ目のMSが6機。量産機だと思うが、見た事の無い機種だった。
『――MD(モビルドール)、言わば無人機ですのでお好きに料理して下さいね。肩慣らしには丁度良い相手でしょう』
開始の合図も無く、トーラス6機が散開し――一糸乱れぬ挙動で同時に大型ビームライフルを撃ってくる。
此方もファラクトのバーニアを瞬間的に吹かし、規律正しく撃ち放たれるビームの乱射を次々と回避していき――この時点で色々おかしい。瞬間的な加速力、機動力が桁外れなまでに向上しているのに、身体の負担を一切感じない。
(――相手のビーム射撃は決闘出力ではない、か……)
当たり前のように実戦仕様の、コクピットを簡単に貫く、殺傷力ありの出力だが――何もかも遅く感じるし、相手の一挙手一挙動を鮮明に捉える事が出来る。早くも無人機特有の規則性らしき感覚を掴む。
(所詮はドローン兵器という訳か――)
あとは簡単だ。無機質なビーム射撃を最小限の操作で回避しながら一発一発、相手のコクピットにロングバレルビームライフルの射撃を撃ち込むだけの作業だった。
一射一射、MSの性能、自身の状態を確認するように丁寧に撃ち――僅か一分足らずでトーラス6機は宇宙の藻屑と消えていた。
『パイロットデータ、全て正常値――ふむ、相手になりませんか』
感心したような声が響き、自分自身でも驚きを隠せない。
GUNDフォーマット無しのMS操縦にも関わらず、反応速度・認識処理速度が桁外れに向上しており、自身の感覚に自分自身が追いついてない状態である。
『続いてMDビルゴ3機を投入します。――ガンダニュウム合金製であり、防御兵装のプラネイトディフェンサーは通常兵器での突破は極めて困難です。GNガンビットかGNファングを使用して撃破して下さい。――今の貴方なら出来る筈です』
試しに、新たに現れた重装甲のMDにロングバレルビームライフルで牽制してみると――自動的に展開された敵MDの防御兵装によって全部弾かれる。
――GUNDフォーマット無しで、どうやって遠隔操作端末を動かすのか。疑問が過るも、あの『感覚』だけが残っている事に気づく。
脳を直接ミキサーするような激痛など無いのに、幻肢痛が如く、ガンビットを自在に動かす感覚だけが――。
「やれる、のか――?」
従来では『パーメットスコア3』まであげて使えるガンビットを、何の痛みも無く展開する。
……普通に動く。自在に動かせる。それも前よりも鋭利に、正確に、精密に!
更には空間認識能力も格段に広がっており――十二基のガンビットが戦場に舞い、敵MDの防御兵装の隙間を縫うようにスタンビームが照射されて即座に機能停止し、すかさずロングバレルビームライフルを3射して全機撃破する。
『――素晴らしい! これで脳量子波で動く遠隔操作端末の研究が――『代表』?』
『やぁやぁ、見ていたよ! ビルゴ程度ではウォーミングアップにもならないようだね! それじゃ――『悪魔(ガンダム)』の相手は、やっぱり『天使』ぐらいじゃないとね!』
オペレーターの通信から割り込むように『アナハイム・エレクトロニクス』代表の声が聞こえ……その時点で猛烈なまでに嫌な予感がしたので瞬間的に回避行動を取り、眩いビームの光が暗黒の宇宙を太陽の如く照らす。
「――っ!」
『厄祭戦時代に産み落とされた自立型無人兵器・大量殺戮機構――MA『ハシュマル』。コイツは少しばかり手強いよ? 小型随伴機は無しにしておいたから大丈夫、君ならやれる、幸運を!』
現れたのは純白の巨鳥であり――黒い鳥(ファラクト)の3~4倍近くある巨体は、暗黒の宇宙に羽搏き、桁外れの出力を誇るビーム兵器という名の雄叫びをあげるのだった。