本編で描写する機会が無いですけど、作中でガンダム世界以外のものが出た時は基本的に外側だけで、中身が別物です。
ほぼ確実にガンダム世界の技術で再現した『何か』となっております。
――おや、保護者の『彼』はいないのかい?
何故、あの時、シャディクが――御三家の一角がわざわざ付け加えて言ったのか、深く考慮すべきだった。
そして推測する材料も最初からあった。エラン・ケレスがかつての彼じゃない事を自分は知っているのに、スレッタを1人にしてしまって――ペイル社にまんまとハメられたのは自業自得の失態だ。
――あら、『彼』はいないのね。
事前に連絡していれば、防げる問題だった。この手の問題において『彼』以上の曲者は他におらず――だからこそ、訪れる可能性が最初から低いインキュベーションパーティに御三家が一丸となって罠を張り巡らせていたのだろう。
『――ガンダムの製造・所持はカテドラルの協約違反だ。ペイルはこの責任をどう取る?』
『事の重大さを鑑みて、弊社は機体の廃棄と――』
『当該開発部門の解体をお約束します』
『――であれば、シン・セーも同様の処分を受けるべきだな?』
最初から決められていた事を白々しく語り――この魔女裁判において、人の悪意によって晒し上げられているスレッタを守れる者は、誰もいない。
――貴女は地球に行きたい。『私』はスレッタさんをサポートしたい。目的は違えど、利害は一致してますね! まぁ所謂『仮面砕けるまでの付き合い』ってヤツですよ。
……何で、『アイツ』の意味解らない言葉を今、思い起こすのだろうか?
確かに、自分とスレッタは『花嫁』と『花婿』であり、自分が地球に行くまでの仮初めの関係である。
――ちなみに、このまま地球に行く、という選択肢もありますよ?
貴女の弁護がなくとも、『私』1人で何とでも――ふむ? そうですか。余計な荷物を背負い込む性質なのかな、君は?
エアリアルが審問会にかけられた時に、『彼』自身から語られた言葉が今更蘇る。
地球に行く事を第一目標としながら、それを蹴ってまでスレッタの擁護を行ったのは何故だったか。
――親の肩書を見ず、ホルダーに捧ぐトロフィーとしても見ず、精一杯の勇気を絞り出し、損得抜きで助けてくれたのがスレッタだけで――。
「――エアリアルは廃棄させないわ!」
思考は纏まらずとも、やるべき事は最初から決まっている。後悔や躊躇なんてゴミ箱に捨てる。やらないという選択肢は無い。とにかく、やってから考えろ……!
「エアリアルは、ペイル社にもジェターク社にも勝った、優秀な機体よ! 廃棄するなんて勿体無いわ!」
「何故、貴女が? ――ミオリネ様」
「決まっているでしょ、あの子の『花嫁』だからよ!」
『――ありがとう、ございます! 株式会社『GUND-ARM』は――』
……万雷の拍手が鳴り響く。
この『魔女』、プロスペラ・マーキュリーが会場外に居た段階から予想出来た未来の中で、最悪の可能性に至る。
ミオリネが動くのは、当初の予想通りであった。だが、『彼』の想定では父との確執を乗り越えられず、膝を屈するものだった。彼女は自分の最大の武器を活用出来ない。この見立ては間違いではなかった。
未確定だった要素が埋まり――焚き付けたのはこの『魔女』で、デリング・レンブランの思惑を読み違えていたのが最大の敗因だろう。
「これはこれは、凄い事になったものですねぇ?」
どの口が言うのやら。此方はいつもの笑顔の仮面を何重にも貼り直して、何も察知出来ない状態にする。そうでなければ、漏れた感情だけで殺せそうだから――。
「そうですねぇ、本当に――」
――何も知らない子供に『呪い』を押し付ける無責任な大人(人でなし)など、一人残らず鏖殺されるべきでは?
自身の思考は暴走するように『大量殺戮及び無差別破壊』のプランを幾千幾億と量産する。が、結局は結果が伴わない非効率的な代償行為として、自分自身で否定するのだから、何とも度し難い。
(こんな最低最悪の未来に投資出来る訳無いだろ、――クソがッッッ!)
虫唾が走る。宇宙の悪意が目に見えるようで、何もかも壊したくてたまらない。何度もブチ切れて逆に冷静になってから即座に再噴火という終わりのないサイクルを繰り返す。
計画の修正が必要だ。それも大幅なまでに。複数の計画を立ち上げ、同時進行・並行並列で組み上げていく。あらゆる事態に対処出来るように。最悪の未来を回避出来るように。
――スレッタとミオリネがこの『呪い』の真実に辿り着く前に、早急に何とかする必要があるだろう。
手段は最早選んでられず、猶予もまた少ない。自身の判断の是非すら再確認出来ない中、思考だけは無限に加速し続けたのだった――。
――株式会社『GUND-ARM』を設立し、何とかエアリアル破棄を阻止して興奮冷めぬ中、『ソイツ』は有り得ない事に、スレッタ・マーキュリーの母親と一緒にミオリネ・スレッタの元に現れて……開幕、二人の前で腰を90度折って謝罪した。
「ミオリネ、スレッタ、遅れて申し訳無い。――遅参は兵の恥だ。さぁ何とでも罵るが良い!」
速攻で居直り、堂々と佇む『彼』の姿と――付き添いに奇妙なマスク姿の変態を連れている。あれは、まさか、エラン……!?
「お母さんに『アナハイム』さん!?」「やぁやぁ。ドレス、素敵だね! グッドだよ!」「あ、あありがとうございます!?」と、ミオリネが放心する間に『彼』は社交辞令を交わす。
「……『アンタ』、どうして此処に? 私は何も、言ってなかったのに――」
「? 来るのが当然であって、必要な時に居なかった俺を存分に罵倒して良いんだぞ?」
不思議そうに首を傾げて『彼』は此方を見る。……見ている? 確かに、此方を、ミオリネ自身を『彼』の目は捉えていた。
焦点が合わずにぼやけているのではなく、スレッタと同じように的確に。
「? ――ふむ?」
すると、『彼』は何か察したのか、珍しい事にころころと表情が変わり、少し考えた後――。
「――これは独り言なんだが、とある友が言うには、俺には言わずに伝わってない事が多いらしい。何とも不思議な助言だ。敢えて言うまでもない事を態々言語化する必要は無いと常々思うのだがね?」
……いや、普段が胡散臭い上に隠し事も多いから、何考えているか全く解らないんだけど?
「我が社の『社訓』には『過酷な運命の試練に立ち向かう『少年少女』を強力に手助けすべし』とあるけど――実は君も最近該当するようになっているよ、ミオリネ・レンブラン」
……どうしてこの『男』は、よりによって、このタイミングでその事を――!
咄嗟に後ろをむいて、顔を大きくそらす。こんな顔を見られたら、どう反応されるか、解ったもんじゃない!
「――っ、随分大きな独り言ね!」
「うん。大きな独り言だから気にしないでくれ。……だから、まぁ、頼ってくれたまえ」
と、此処でいつもの調子に戻って「スーパーアドバイザーの席は空いてるかな!」「言うに事欠いて厚かましい!」といつも通り返す。
「そうそう、言い遅れたけど、ドレス、素敵だよ。月並みの感想だけど、物語のお姫様みたいで綺麗だよ」
「……世辞は――」
「言う性格に見える?」
……『コイツ』、いつか絶対、とっちめる。