「――依頼主はいつもの『アナハイム・エレクトロニクス』、今回は6対6の団体戦をやろうぜ!」
グエルが唖然とする中、「はい、これ、差し入れ!」と今日もまたアナハイム製の便利キャンプ道具を勝手に置いていくのだった。……簡易シャワールーム&浴槽は重宝しているし、色々便利で文句は言えないが――いや、こんな日用品的な商品を『アナハイム』が造っている事に驚くべきか?
「はぁ? 一体誰を加えるつもりだよ? ……お前、まさかスレッタ・マーキュリーを巻き込むつもりか……!?」
確かに決闘では個人戦の他に団体戦もある。人数も自由であり、1対3というような人数差のある決闘も可能である。双方の合意があれば、の話だが――。
「いや、お互いの陣営に5機ずつうちの開発した『MD(無人機)』を追加するだけだよ。まぁ所詮は無人機だ、苦戦すら論外だけどね! MDの修理費も此方持ちだから安心してね!」
「……一体何の意味があるんだよ?」
訝しげな顔を浮かべたら「あれれー? 『僕』と同じぐらいの速度で処理出来ないのかな! ハンデいるー?」「あぁ!? んなもんいるかよぉっ!」と、挑発に即座に乗ってしまう。
そもそも決闘を受ける受けないのも此方の自由意思だが、売り言葉に買い言葉、もうその段階を過ぎてしまったので無言で飲み込む。
「今回のボーナス対象はMDのコクピット部分の破壊だ。積極的に狙ってね!」
「コクピットの破壊? そりゃ有人機じゃないから問題無いだろうが――」
そもそも何の為にビームの出力調整が掛かっていると思っているのか。コクピットに致命的な損傷を与えない為であり、決闘での死人を出す事を防ぐ意味合いが強く、無人機だから問題無いだろう――にはならないと思うが。
「それと我が社からの要望は唯一つ、派手に破壊してくれたまえ。これも査定要素に入るよ、以上!」
「……決闘に不純物を持ち込むのはいつも通りだが、今日は随分と――いや、なんでもねぇ」
決闘に関して珍しく要望が加えられる。普段は「貴方に全て任せます、ご武運を!」などと言いながら平然と陥れてくるだけに、今回は複数の政治的な意図を感じる。
が、『コイツ』が何を考えているのか、それは考えるだけ無駄であり、決闘でやる事は特に変わらない。『自分』が負ける訳が無いと確信しているそのすまし面に、手痛い一撃をお見舞いしてやるまでだ――!
「やっぱり『テメェ』! 単にストレス解消したいだけじゃねぇか!」
『あれれ? バレちゃった? やっぱり暴力は最高の『共通言語(コミュニケーションツール)』だよね!』
なお、此方側のMDトーラスの破壊手段は執拗なまでに陰湿で、見る者全員がドン引きするやり方だったのは言うまでもない。
グエルがMD5機を破壊し終わっても『無邪気な子供が虫の手足を引き千切るように遊んでいた』のだから、余程腹に据えたものがあったのだろう――。
『……『アナハイム・エレクトロニクス』代表に問う。あれは『ガンダム』か?』
『はい、型式番号『RX-105』Ξガンダムです!』
デリング総裁の疲労感漂わせる声に『彼』は画面越しに元気良く答え、『……ええ、パーメット流入値にデータストームは検出されませんでしたよ? いつも通りですので、私に話振らないでくれます?』と担当者は即座に顔を背けた。
『……あー、その、何だ? 幾ら無人機とは言え、コクピットを執拗に狙うのは――』
『何か問題ありましたか、ヴィムCEO? 決闘出力でビームの威力が調整されている以上、コクピットを狙ってはいけないという決まりなどありませんが?』
決闘のリプレイでは、ダリルバルデMk-A.Eのビームジャベリンでコクピットを一刺しで貫かれ、分離した二刀流の状態でコクピット部分を十字切りにされたり――有り得ない軌道で飛翔したミサイルがコクピットに直撃して一撃で爆散したり、接近戦からのビームサーベルで一突きでコクピットを穿たれたり、四肢をもいだ状態で横たわっているMDに、至近距離から何度も何度もビームライフルを撃ち放つ『悪魔』の如きガンダムが映し出されており――。
『――まぁ所詮は無人機、場当たり的な行動しか取れない雑魚でしたねー』
これが誰に対するデモンストレーションなのかは、前回色々と仕掛けた御三家の者達に心当たりが多すぎる事だろう。……ちなみに今回の『彼』は胡散臭い笑顔どころか、最初から笑ってすらいない。
『本機は『先天的な資質』専用試作MSであり、大気圏での空中戦に比重を置いた機体となっております。まぁ様々な先進的機能を詰め込みすぎたせいでやや大型化してますがね』
やや目を細めて『個人的にMSの恐竜的進化は好みじゃないですがね。MDと合わせてエレガントじゃない』と率直な感想を述べるが、誰一人まともに聞いていないだろう。
『……ところで、当機には決闘でのレギュレーション違反の質量兵器が多数搭載されていたようですが……?』
『ああ、ついつい外し忘れてましたよ、ニューゲンCEO。まぁ折角外し忘れたんだから、使わないと勿体無いですよねぇ! ――実を言うと実弾兵器の方が好きなんですよ、撃った感触が癖になるので。何もかも黒く焼き尽くすには最適なMSだと思いますよ?』
最終的に超機動で旋回しながらミサイルカーニバルし、AI操作のドローン兵装をすり減らしながらも切り抜けたダリルバルデMk-A.Eの姿が映り――互いに武装を全部使い切って殴り合い宇宙となっていた。
この巨大なMSの運用思想は明らかに、単機強襲用の高機動・重武装という殺意の塊であり、その殺意が何処に向けられているのか、誰の目から見ても明々白々だった。
『……『アナハイム・エレクトロニクス』代表、このミサイルについてだが――』
『はい、サリウスCEO――『ファンネルミサイル』ですかね? 発射後に一定の軌道変更及び追尾運動を可能とした『先天的な資質』専用の誘導式ミサイルですよ! これで憎いあん畜生が何処に逃げてもイチコロですね!』
無人機相手に必要もないのに5基も使って四肢粉砕&コクピット胴体爆破している映像が映し出され――。
『――あれはGUNDフォーマットを使用した遠隔誘導兵器の一種か?』
人は自分の見たいものしか見ない。自身の眼を最も曇らせるのは自身の思想に他ならず、最も狂信的なGUND-ARM否定派であるサリウス・ゼネリの眼には根絶すべき忌まわしき技術にしか見えず――。
『勿論違いますとも。先程説明した通りですよ。グラスレー社ご自慢の対GUNDフォーマット兵器『ノンキネティックポッド』でも試してみます? 無効化出来なかった場合は搭載機がガラクタになると思いますが。――ああ、無効化出来ない時点で単なるガラクタ以下の塵屑に成り下がりますねぇ!』
株式会社『ガンダム』の設立が大々的に宣伝される中、シン・セー開発公社の造ったガンダム・エアリアルのパイロットを擁護する『彼』が新たにガンダムらしきMSを披露した理由は複数の政治的要因が絡んでおり――御三家への意趣返しの他に、ガンダムを喉から手が出るほど欲している者達の眼を『アナハイム・エレクトロニクス』社に集中させる事も含まれている。
……内実は単なる時間稼ぎであり、ガンダムを求めて直接交渉してくるような『害虫』を、ミオリネ達から遠ざける意図が一番強かったりする。残念な事に、その『彼』の真意に気づけた者は此処には『1人』しかいないが――。