Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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46/『魔女』と運命

「……やはりと言うべきか――MS戦における前提がそもそも違う」

 

 確かにグラスレー寮は集団戦において無類の強さを誇るが、それは同格の敵を効率良く撃破する程度のものであり、突出した『個』を仕留める為の技術ではない。

 対して『ヤツ』は最初から一対多数である事が前提。ただ一機で戦況を覆す事をコンセプトとしており、それが可能なだけの卓越した性能を事前に用意出来るのは『アナハイム・エレクトロニクス』社だけだろう。

 

 ――散開し、四方八方から仕掛けられたビーム射撃を、『彼』のMSは正面から被弾する事無く突破し、最寄りの敵MSをすれ違い様にビームサーベルで四肢切断、手頃な大きさに加工して拾い上げて『肉盾』とする。

 

「圧倒的な技量に加え、外道戦法もお手の物――って、此処、背中に眼でもあるのか?」

 

 これ見よがしに掲げた『肉盾』によって射撃を躊躇させてまた一機、四肢切断して葬り――背後からの不意打ち気味のビーム射撃はまるで予知していたが如く『肉盾』を放り込んで防ぎ、同士討ちしてしまった動揺を見逃さずにビームライフルで頭部を貫いて撃破。

 

「そして……途中で飽きたな、こりゃ」

 

 背部のウイングユニットから『光の翼』が生じ、これまでとは比較にならない馬鹿げた大推力・機動性でリーダー機のミカエリスに接敵、その頭部を掌で鷲掴みにしたと思ったら頭部が木端微塵に弾けて決闘終了――掌にビーム砲でも仕込んでいたのか?

 

「視野の広さが違う。反応速度・対応力も桁外れ。戦術の組み立て方など神業と言って良い……同じ事が、俺にも出来るか? いや、出来なきゃ『ヤツ』に追いつけねぇって事か」

 

 コーヒーを一口含み、再度、グエル・ジェタークは先の決闘を検証し直す。一対多数における最新の教科書を何度も何度も見返すのだった。

 

「……それにしても、シャディクは何がしたいんだ?」

 

 誰の眼から見ても、スレッタ&ミオリネに仕掛けようとしているのは解るが――。

 

「アイツなら『ヤツ』との交渉などお手の物だろうに……?」

 

 

 

 

『――『アナハイム・エレクトロニクス』代表に問う。あれは『ガンダム』か?』

『はい、型式番号『ZGMF-X42S』高機動試作機デスティニーガンダムです!』

 

 画面の向こうには、『いつものフェイス』で大暴れする『ガンダム』が映し出されており、四肢切断した後に『肉盾』運用する悪役もドン引きの行為が――。

 

『……撃破した敵MSを『肉盾』にするのは、その、道徳的にな? 会社の外聞的にもどうかと思うが……?』

 

 ヴィムCEOもこの蛮行に引き攣りながら苦言を呈するが――。

 

『あれが実戦なら敵に投げて纏めてビームライフルで貫いてますよ! 決闘で良かったですね!』

 

 それに答える『アナハイム・エレクトロニクス』代表は、安定の『悪魔』ぷりを言葉だけで披露するのだった。

 『真の『エースパイロット』にとって数なんて無意味な概念なんだな……』『いや、落ち着け。『アレ』が異常過ぎるだけだろ?』『もう一周回って高性能ワンオフ機が正義なのでは?』『冷静になれ。それを実践する場合の問題は『ヤツ』に匹敵する『エースパイロット』をどうやって用意するかだぞ?』と喧々囂々とする。

 

『……ちょっと待て。その型式番号、以前のストライクフリーダムと似たものではないか――!』

『良く覚えてましたねぇ! 流石はヴィムCEO! ええ、後にジェネレーター問題はある程度解決出来ましたので、今回は大丈夫ですよ!』

 

 これまた胡散臭い笑顔を浮かべ『うわぁ、二重の意味で信用ならねぇ!』と全員が混乱に陥る。

 

『デスティニーはあらゆる戦局に対応し得るMSとして開発された最新鋭の高性能機です。まぁ元々換装によって3分割していたフォース・ソード・ブラストの機能を再集結して一纏めにしただけなんですがね?』

 

 空中及び機動戦・近接戦・遠距離戦の、3つの換装シルエットがデータ上、表示される。

 

『武装は豊富で、ビームライフル、ビームブーメラン×2、実体盾、ビームシールド発生装置、対艦刀アロンダイトビームソード、高エネルギー長射程ビーム砲、掌部ビーム砲×2ですね』

 

 なお、決闘で実際に使っていた武装はビームサーベルとビームライフル、そして最後に掌部ビーム砲のみである。つまりは――。

 

『ビームシールドがあるのに実体盾まで必要なのかが果てしなく謎ですね! このビームブーメラン、普通のビームサーベルも兼ねてますけど、投擲での紛失率が高いので取り回しの良い武器を自分から失いやすい構造なのは何かのギャグかなぁ! あと掌部ビーム砲、いつ使う機会あるんだよ? ああ、ビームサーベル失ってから? 本末転倒じゃねぇか!』

 

 恒例の、開発設計者が『彼』自身なのにディスりまくるという奇妙な光景に『……あー、久々の駄目出しだなぁ』『懐かしい流れだ……』となる。

 

『そしてこの対艦刀は、えぇ、動きが鈍重な巨大兵器専用で、対MSに関しては非常に取り回しの悪い近接兵装ですね。――使わない重荷を背負うのが嫌いだから必要な武装を必要な時に換装していたのに全乗せで劣化させたのは、言うまでもない退歩ですよね?』

 

 一応『まぁ戦場は水物ですから、どの武装が必要になるかは解らないですがね』と補足するが、戦場に合わせて換装する形式を全乗せで解決する事は出来ないと戒める。

 

『なんか色々と勿体無い機体ですね、痒いところに手が届かないところとか、まさに』

 

 『運命』を名乗る割には自身が縛られて乗り越えられない象徴という辺りがまさに。

 

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