Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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47/『魔女』の決心

 

 

 

 

 

「……それで、何で『アンタ』も着いてくるの? シャディクに夢中だったんじゃ?」

「口説き文句の下手な男を振ったら粘着されてね――あと、ペイル社相手に隙を見せるな、何をしてくるか解らない連中だぞ?」

 

 頼んでいないのに着いてくる『不審者』に対し、ジト目で睨んでいると、『彼』は大袈裟な仕草で不本意さをアピールして苦笑する。

 

「……スレッタが本社の母親の処に訪ねる時は付き合わなかった癖に」

「俺にだって直接会いたくない人物ぐらい存在するさ」

 

 あの『仮面の女』は、あの『アナハイム・エレクトロニクス』代表にとっても会いたくない存在だという事が改めて判明し、ミオリネの中での警戒度を更に上げるに至る。

 何方も胡散臭い事、この上無い存在である為、同族嫌悪の可能性も高いが――。

 無重力帯の廊下を突き進んでいると、目的の人物に漸く遭遇する。ペイル社のガンダム・ファラクトを開発した技術責任者である女性に。彼女は自分の姿を見て、そしてその背後にいる人物を見て目を見開く。

 

「――『アナハイム・エレクトロニクス』代表……」

「どうも、ベルメリア・ウィンストン。『私』の事に関してはいないものとして扱って下さいね。彼女、ミオリネの付き添いに来ただけの非公式の来訪ですので」

 

 顔見知り……恐らくは『強化人士4号』の件で、だろうか? かなり気まずい空気が流れているが、それに気づいた『彼』はミオリネだけに見えるように人差し指を自身の唇に当てて「しーっ」とジェスチャーする。……エランの件は当然、喋れる訳無いだろうに。

 

「そちらの受け入れ体制が整い次第、ペイルの開発チームとファラクトは正式に譲渡される事になっているわ――それで、今日の御用は何かしら?」

「『GUND-ARM』について知りたくて」

 

 途端、彼女の表情が強張る。動揺を隠せずに目が動き、最終的に『彼』に向く。

 

「気にせずどうぞ。『私』の口からは『GUND-ARM』が何なのかは言うべきでもありませんので」

 

 逃げ道を『彼』に塞がれたベルメリア・ウィンストンは自身の唇を噛む。

 ……この表情は、何とも言えない。『強化人士』を造ってるぐらいなんだから、倫理観の狂ったマッドが出てくると思ったが、思った以上にまともな精神構造をしている……?

 

「――搭乗者の体と精神を蝕むMS『GUND-ARM』とそれを造った『ヴァナディース機関』、『魔女』と呼ばれる人々は忌むべき存在だ。これが世間の認識です」

 

 『彼』は情報を一切明かす気が無い。シンセー開発公社の、スレッタの母は説明せずに徹底的に誤魔化す。ならばこそ、この一番突きやすい情報源は逃せない。

 

「欠陥があれば改良すれば良い。なのに、それすら認めず、協約がどうとか理由をつけて排除しようとするのは何故なのか?」

 

 父・デリングは有無を言わさず、根絶やしにした。この『GUND-ARM』には、一体何があるのだろうか?

 

「そもそも『魔女』達は何の為に『GUND-ARM』を造ったのか――」

「――やめて。『魔女』なんて言い方はやめて……」

 

 『魔女』という言葉に対する反応、これが持つ意味合いは、今の世代では全く価値観が引き継がれていないので、良く解らない事の1つだ。

 

「貴女も『魔女』の1人なんですか?」

「私はただ、GUNDの理想に魅入られて――あの人達の真似事をしているだけよ……」

「GUNDの理想……?」

 

 それについては初耳だ。そもそも『GUND-ARM』は何を目指した技術かすらも、今の自分は理解していなかった。

 

「その話、詳しく聞けますか?」

 

 

 

 

「GUND医療……」

「それがGUNDの最初の姿。正確にはオックスアース社に買収されて軍事転用される前の姿だね。21年前の『ヴァナディース事変』で途切れた技術系統でもある」

 

 ベルメリア・ウィンストンから話を聞き終わり、帰りのシャトルで色々悩んでいると『彼』は補足説明をする。

 

「――それで、『アンタ』の危惧している事は何なの?」

 

 此処からあと3枚ぐらい覆い隠されたヴェールを脱ぎ去らないと見えないので、手っ取り早く聞く事にする。

 此方が見ている事を察してか、『彼』に特に変化は見られない。自分の前で胡散臭い笑顔の仮面を被らなくなったが、素の『彼』は感情の変化が乏しく、中々読み取れない。

 

「――『GUND-ARM』の生命倫理に関する問題、ペイル社のアプローチはパイロット側の肉体的脆弱性の解消、つまりは『強化人士』だ。非人道的な割にはお粗末な結果だったがね」

 

 呪われた『GUND-ARM』に乗る為の『強化人士』、名前の割には運用期限が極めて短く、『GUND-ARM』の欠点を克服したとは言い辛い。

 

「――では、エアリアルはどのようなアプローチで解決している?」

「……スレッタはぴんぴんしているから、MSの方が生命倫理問題を解決している?」

「そうだね、エアリアルの中にある『何か』がデータストームを肩代わりしてるんじゃないかな」

 

 MSがデータストームを肩代わり? なるほど、それが出来ているからこそ、スレッタに異常はなく――。

 

「……『アンタ』にしては、随分と曖昧な表現ね?」

「曖昧になるさ。パーメット関連の技術と『GUND-ARM』に関しては宇宙一遅れている企業だからね、『アナハイム・エレクトロニクス』は」

 

 更に「その何方も宇宙一の厄ネタだと思っているからね!」と楽しげに付け加える。

 

「うちの会社が真っ当な手段で『GUND-ARM』の生命倫理問題の解決を目指した場合、パーメットの大量流入を抑制する『AI』の作成を第一目的とする。パーメット流入値の詳細データがあれば此処に時間を取られずに済むが――何らかの成果が出るまでは2~3年ぐらいは必要かな?」

 

 あの『アナハイム・エレクトロニクス』と言えども、未知の技術の解析から始めるとなれば、結果らしい結果が出るまで其処までの時間が要するのかと驚愕し――。

 

「……真っ当な手段を取らなければ?」

「一ヶ月以内に生命倫理問題を解決出来るよ。その場合、『魔女裁判』は避けられないけどね!」

 

 その真っ当じゃない手段が本当にろくでもない事のオンパレードだと思うので、詳細は聞かないでおく。

 

「なので、思い詰める前に報告・連絡・相談をよろしくね。……毒を食らわば皿までだ。君が思っている以上に――」

「ガンダムの呪いは重いって……? 『アンタ』もクソ親父と同じ事を言うのね」

「逃げたくなれば逃げれば良いさ。諸々の後始末は『大人』が引き受けるからさ――」

 

 あのクソ親父は「逃げるなよ」と念を押したのに、『コイツ』は――。

 

「……『アンタ』も子供でしょ?」

「『自分』と子供の尻拭いが出来てこそ『大人』と言うべきなんだよ? この宇宙には残念ながら該当者が余り居ないようだけど――」

 

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