Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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05/『魔女』と一角獣/不死鳥

 

 

 

「……今回のMSは、いつもと違って地味だな? ……擬態しないと一発で駄目なぐらいヤバいのか……!?」

 

 今回の『ヤツ』のMSは一見して他社のような量産型MSに見える。

 一本角のブレードアンテナに純白一色というシンプルな色合い――今までトリコロールカラーで派手なのが多かっただけに、一周回って逆に特徴的に映る。

 

『一体何の事か解らないなぁー! まるで我が社のMSが毎回ヤバいみたいな言い回しじゃないか、風評被害も良いところだよ! 訴えたら勝てるかな!』

 

 勿論、100回やって100回敗訴するのは向こう側だろう。

 

「……いや、出てくるMS、全部ご禁制同然のヤバいMSだけだろ……」

 

 今回の武装はシールドとビームライフルのみという、極めてシンプルな構成であり、逆に何か仕込まれていると疑いたくなる。

 決闘が始まれば、すぐに解る事だが――。

 

『……』

「? どうしたんだ?」

『ヒャッハー! 我慢できねぇ! 『NT-D』発動だァ!』

 

 ……始まる前に判明した。今回もやっぱりヤバい機体だったようだ!

 

「何その無駄に凝った擬態からの本性暴露はァ!? つーか、何の光ィ!?」

 

 

 

 

「……これより審問会を開始する。『アナハイム・エレクトロニクス』代表に問う。あれは『ガンダム』か?」

 

 審問会場に設置された大画面には、緑色に発光しながら大暴れする『ガンダム』の姿があり――。

 

「いいえ、型式番号『RX-0』ユニコーンです」

 

 恒例の白々しいやり取りに、ベネリットグループの上位企業の代表達は緊張感無く溜息を吐いたのだった。

 

「『ユニコーン(一角獣)』とは良く言ったものだ」

「その擬態も含めて、ですけどね」

 

 一見して他社の量産型MSのような特徴無いフェイスだったが、一本角のブレードアンテナが割れていつものV字となり、あの特徴的なフェイスが展開される。

 実に凝ったギミックだと関心する――決闘開始する以前に自ら披露しなければ、と付け足したくなるが。

 

「……型式番号に『G』が付いてない……!?」

「え? いや、そこ、驚くポイントですか?」

 

 まるで信じられないものを見るかの如く、デリング総裁は困惑する。

 中々珍しい顔を見れたなぁと『彼』は思いつつ、咳払いして気を取り直す。

 

「本機は特殊構造材『サイコフレーム』で機体の駆動式内骨格の全てを構築した、史上初の『フル・サイコフレーム機』でございます」

「その『サイコフレーム』とは?」

「『とある』基礎機能を持つコンピューター・チップを金属粒子レベルで鋳込んだMS用の構造部材です。……まぁ、機体の軽量化に役立ったんじゃないですかね?」

 

 その『とある』基礎機能は、この世界には存在しない概念なので省略する。

 

「……随分と曖昧な説明だな?」

「この『サイコフレーム』は我が社にとっても『未知』と言わざるを得ないほどの『可能性』を秘めているとお考え下さい。……純度100%の厄ネタですけど」

 

 最後だけ『彼』は小声で付け足す。……本来は作る予定無かったが、実益無視で趣味を優先させた結果である。ちなみに普段は実益も趣味も兼ねている。

 

「通常形態においてもそれなり以上の性能を誇る本機ですが、搭載された特殊システム『NT-D』が発動する事によってリミッターを全解除、本領発揮という訳です」

 

 各種装甲が展開されて、展開部分から緑色の光が発光し、フェイスがフルオープンする光景は、凄まじく絵になっている。

 

「『NT-D』とは何の略称か?」

「はい、『ニュータイプ・デストロイヤー』です。――特殊な感応波を感知する事で『デストロイモード』を強制発動させ、『ある種の電子装備』の操作権を強制的に奪取して自在に操る事も可能な代物となっております」

 

 この説明に特に反応したのは御三家の一角、グラスレー社のCEO、サリウス・ゼネリであり、自社のMSに採用された『GUNDフォーマット』のリンクを阻害する『ノンキネティックポッド』に類似した効果を持っている事に驚きを隠せずにいる。

 

(ニュータイプ……新たな『GUNDフォーマット』殺しと言ったところか)

 

 ――『GUNDフォーマット』に関連する高い技術を持っているのだから、対抗策筆頭の技術を研究しているのは当然の結果であるか、とますます不信感を募らせる。

 

「『一本角』が割れて『V字アンテナ』になり、各種装甲が展開されて『いつものフェイス』が現れた形態か。……ちなみに、あれは何で緑色に発光しているのだ?」

「さぁ? それすら原因不明ですよ。そもそも『サイコフレーム』は発光する素材じゃありませんのに何で光ってるのやら?」

 

 審問会場にいる全員の思考が「はァ?」と一致する。光っている原因すら解らないとは一体どんな冗談だろうか?

 

「……一つ良いか? ビームガトリング搭載のシールドだが、推進装置は何だ? 何も付いてないようだが」

 

 今回のこのMSに搭載された遠隔操作兵器はビームガトリング搭載のシールドが3枚、縦横無尽に飛翔して相手の攻撃を防ぎ、ビームガトリングでの攻撃も行える攻防一体の兵装に「その発想は無かった」と多くの者が素直に称賛する。

 これならば前回のビーム砲のように撃ち落とす事は難しく、より多種多様の戦況に適応出来る万能兵装だろう――だが、肝心の推進装置が見当たらない。意図的に技術隠蔽を行ったのだろうか?

 

「……無いですよ」

「は?」

 

 無い、無い無い無い? 一体、何が無いのだ? まさか推進装置が無いのに勝手に動いているとでも――。

 

「何故動いているのか、我々にも解らないですよ。宇宙空間限定の未知の事象かと思いきや、コロニー内でもファンネルとして活用出来るとか訳解んねぇ……」

 

 「何か動いた。怖っ」と『彼』はげんなりした表情で身震いして見せる。

 

「……あれは『アナハイム・エレクトロニクス』社のMSであるのに、随分と性能把握が成されてないようだが?」

「仕様通りに作った結果、『技術的特異点』が誕生してしまったんですよ、開発側の思惑を明後日の方向に超えてね」

 

 MSの性能説明かと思いきや、何故か真逆の超常的なオカルトの話じみてきて、ある種、不穏な喧騒が鳴り止まずにいる。

 

 と、その時、審問会に非常に不穏な機械音が鳴り響く。

 アラート、それもほぼ最上位に位置する危険報告音が、『彼』の懐から止め処無く鳴り響く。

 

 

「――失礼。……何があった? ――! 解った、『プランD』を発令せよ、すぐ戻る」

 

 

 その報告を聞いた瞬間、『彼』の顔から笑顔が完璧に消え去り、あらゆる感情が消え去り、鬼気迫るものに一変する。

 

「誠に申し訳ございません。自社にて可及的速やかに解決すべき緊急案件が発生しまして、今回は此処でお暇させて貰います。釈明と弁明は後日にて。――現時点を持ちまして『UC計画』関連のMS及び関連技術の永久封印を此処に宣言します」

 

 一方的な宣言を前に、審問会の面々はどよめく。

 

「なっ、仮にも審問されている身で何を勝手な――」

「良い」

「は?」

 

 誰がそんな不条理を許可した――その発言主が誰なのか、悟った途端、会場の誰もが絶句する。

 

 

「――私が許す。此度の『審問会』はこれにて閉廷する」

「格別のご配慮、誠にありがとうございますデリング総裁、それでは後日――」

 

 

 デリング総裁自ら異例とも言える退出の許可を下し、一礼した後に即座に行動に移す『彼』の姿を、全ての者が違和感と共に見届ける事しか出来なかった。

 

(何なのだ、このやり取りは――いや、この違和感は、まさか……!?)

 

 

 

 

「――やっぱり『3号機』は暴走する定めかぁ。誰も乗せた事が無いのにこうなるとかどんなホラーだよ……」

 

 無重力に身を委ねながら、『彼』は格納庫に配置された一機のMSを見上げる。

 気怠げにヘルメットを脱ぎ、保水パックを口にする。久方ぶりの『実戦』は『彼』を極度の疲労困憊状態に追い込んだのだった。

 

「代表、やっぱり此処でしたか。全作業完了です」

「あいよ、ご苦労さま。身から出た錆が一番厄介とは難儀なものだわ」

 

 社員の最終報告を聞き届け、緊急事態に伴うオペレーションの完遂を認める。

 

「――それも『フルサイコフレーム』機ですよね? 『フェネクス』みたいに独りでに動き出したりしません?」

「これは動かないさ。何せ『パイロット』が居ないからね」

「『フェネクス』も元々居なかったんですけど?」

 

 そんな揚げ足取りに「ああ、『私』すら乗らないから当然居なかったね」と、『彼』は思考停止気味に流す。

 

「珍しいですよね、わざわざ機体を一から再設計し直して『コアブロックシステム』を搭載するなんて。前から聞きたかったですけど、何か理由でも?」

 

 『コアブロックシステム』は『とある作戦』で開発されたMSの統一規格コクピット。『コア・ファイター』と呼ばれる戦闘機が機体のコクピットになり、緊急時には合体部位を破棄して脱出する事が出来る。

 生存率は後に出た脱出システムより遥かに高いが――生産コストが嵩む上に、機体の初期設計に大きな制限を与える事となり、宇宙世紀では廃れていったものである。

 

 ――こんなモノを、『宿敵』を倒す為だけに最適化して設計した『このMS』にわざわざ搭載した理由なんて、言語化しようとして一瞬情報量が多すぎてバグる。

 

 ただの――つまらない、くだらない、悲しいまでの――感傷だ。

 

「――これを駆る『パイロット』に、帰ってきて欲しかったからさ。……帰還せずに『神話』になるよりも、帰還して『駄作』になれば良かったのさ」

 

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