「――双方、魂の代償を『天秤(リーブラ)』に。場所は――」
「『フロント外宙域』」
元気良く場所を指定したのはセセリア・ドートであり、幾ら決闘場所の指定は決闘委員の専権事項だとしても其処を敢えて選ばない情ぐらい、ジェターク寮の寮長ラウダ・ニールにもあった。
「場所は――」
「『フロント外宙域』!」
だが、またもや彼女の大声で阻まれ――ラウダが無言でシャディクの顔を伺い、シャディクは引き攣った顔で了承する。
今回の決闘は一体何分で決着がつくのやら。
「『フロント外宙域』ならジェガンで十分だね!」
「あらあら、良いんですかぁ? 『先輩』、あんまり舐めプしていると足元掬われますよぉ?」
「宇宙空間じゃ足なんて飾りだけどね!」
余りに酷すぎる会話に、思わず同情したくなる。
兄、グエル・ジェタークなら『フロント外宙域』でも互角以上に渡り合えるが、得意の集団戦でも『1人』に蹂躙されるシャディクでは厳しすぎるの一言に尽きる。
「……この前みたいな規格外武装を使用する気は?」
「残念ながら永久禁止されたんだよね。――あれ、まだ『まともな方』なのに」
……あの130門のビーム砲を一斉に撃ち放つ、頭のネジが存在しない規格外兵器が、まだ『まともな方』? やはり『アナハイム・エレクトロニクス』代表は、人間的な思考を一切してない、人の形をした『何か』であろう。
「ほ、他には何があったのかな?」
「『対警備組織規格外六連超振動突撃剣』とかオススメだよ! 使用する為に左腕パージしちゃって、機体が大破するまで止めれない決死兵器だけど、当たりさえすればどんな機体だろうが葬れるよ!」
最早字面だけで想像する事を拒否するような文面はやめて欲しい。
……しかし、シャディクはいつまでこの茶番を繰り返すつもりだろうか? 兄とは違って決闘内容に一切進展が無いし、そもそもシャディクなら決闘するまでもなく『彼』と様々な分野で対抗出来るだろうに。
どうも普段と様子の違うシャディクの様子に、ラウダは首を傾げたのだった。
『――先天的資質専用ジェガン戦地改修最終決戦仕様。本機はジェガンに積められるだけ武装を積めた『フルアーマー構想』の機体であり、『本命』を最終目的地点に届ける為だけの随伴機です』
決闘の映像には、武装を乗せれるだけ搭載して重量過多状態になりながらも、外付けの2つのブースターロケットで無理矢理爆走するジェガンの姿が映し出されていた。
『ビームライフル2門、ハイパーバズーカ2門、ビームサーベル2本、ファンネル12基、2連ミサイルランチャー内蔵型シールド2門、両肩にビームランチャー2門、腰部にミサイルポッド2基、此等の重武装を大型のブースターロケット2つ装備させる事で無理矢理動かせます。邪魔な装備や使い切った武装からパージすれば機動性は上がっていきますよ!』
……なお、決闘のレギュレーション違反である実弾兵装は一切使われず、尚且つ最初にパージもされてないので、ハンデを意図的に背負った状態で決闘し、被弾1つ無く粉砕したジェガンの姿が非常に印象的であり『……ジェガン、採用しようかなぁ?』『おい、正気に戻れ!?』と一部血迷ったCEOの姿がちらほら現れ出した。
『……1つ、良いか? これは、どんな戦場を想定したんだ?』
『地球に小惑星が落とされる『戦場』を想定し、防衛する敵艦隊・敵MSの大部隊を潜り抜けて露払いする事を目的としております。敵MSはジェガンと同等の性能を誇る量産型MS、エース機に先天的資質専用巨大MAとの戦闘も想定してますね!』
やけに具体的な戦場設定であり『ああ、あくまでも『本命』の為の露払いですので、敵総帥専用機との戦闘は想定してません。『本命』を無傷で損失無く送り出せれば、その時点で勝利ですので』と、『彼』はうきうきと語っており――。
『……ちょっと待て。『お前』の想定する戦場は、もしや全部『アナハイム』製のMSなのか……!?』
『え? 何でそんな『当たり前』な事を聞きます?』
その今更な質問に『彼』は首を傾げ、他の企業代表達は絶句する。
これが『彼』が想定する未来図なら、味方陣営も敵陣営すらも、MSシェアを全部奪う気満々という事になり、それを隠す気すら無いという『彼』の認識が恐ろしかった。
『ファンネルは充電式で6基ずつの運用を前提としてますが、背部コンテナも即座にパージ出来る仕様にしております。邪魔になったらパージ、基本ですね!』
なお、決闘では12基同時運用したので、再充填していく長期戦想定でなく全部一気に使い潰す短期戦前提の使い方をしていた。
『……これ、ブースターロケットに一撃でも被弾したら、どうなりますの?』
『勿論、機体諸共消し飛びますよ。被弾する前にパージするか、敵戦艦に投げ捨てたら効率的ですよ!』
『戦地で急造したフルアーマーですからね、多少の欠点は目瞑らないと!』と『彼』は楽しげに語る。
――決闘の動画が進み、馬鹿げた推進力で宇宙の闇を駆けるジェガンから、12基のファンネルが展開され、それを見逃さなかったミカエリス及びベギルペンデ5機の全機が対『GUND-ARM』専用の妨害電子機器『アンチドート』を同時発動、ファンネル12基全部が範囲内に入り――何の支障無く敵MSの頭部及び四肢を撃ち抜いて次々と解体していく。この宇宙で誰よりも正確で無慈悲なオールレンジ攻撃を前に『アンチドート』を使用して動きを止めれば、まぁそうなるのも仕方ないだろう。
『……対『GUND-ARM』用兵器『アンチドート』でもあの次世代群体遠隔操作兵器システムの動きを一切阻害出来なかった。あれには『アンチドート』対策が盛り込まれているのか?』
『サリウスCEO、無意味な骨董品に固執するの、もうやめません? これ、GUNDフォーマットとは別系統の機体制御システム『サイコミュ』という先天的資質専用の遠隔操作システムですのでお門違いですよ』
サリウス・ゼネリの怨念に満ちた言葉に、『彼』はこれ以上無い嘲笑をもって返す。
散々遠隔操作兵器を使わずに煽ってきたのは、使えば通用するかもしれないという儚い希望を持たせる為。……その煽りに飽きた結果、『彼』が我慢出来ずに使っただけであるが。
『――そもそも、うちの技術で『アンチドート』に阻害されるもの、1つたりとも存在しませんよ? むしろ、もっと良い『妨害技術』なら幾らでも紹介出来ますよ? わざわざGUNDフォーマットだけに絞らずとも、もっと広範囲の分野を妨害・無効化した方がよろしいのでは?』
この『彼』の言葉が真実であり、何気無く運用している無人機――MDが『アンチドート』で無力化されない事実に誰が気づこうか。
『強力な電磁衝撃波を発生させ、電子機器を徹底的に破壊する戦略兵器『グングニール』とか如何ですか? コロニーで使ったら全電子機器が破壊されて大惨事になりますけど!』