Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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 あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。
 なるべく毎日更新する、感想返しもする、この2つを目標に頑張っていきたいと思います。
 見間違いだと思いますが、500件ぐらい未返信ありましたけど!


55/『魔女』の解体新書

 

 

 

 

「――戦場の悪夢『ニュータイプ』とはどんな存在か、徹底解析ー! どんどんぱふぱふー!」

 

 わざわざキャンプ地に巨大なディスプレイを持ち込んだ『彼』は「宇宙一為になる授業だよ! まぁこの宇宙に『ニュータイプ』なんて俺1人しかいないけどね!」と付け足す。

 ……それはそうと、一人称が『僕』から俺に変わったのは何だろうか? 他にも『私』とかも使っていたような気がするが。

 

「理想論としての『ニュータイプ論』は無視して、戦場における『ニュータイプ』は一般兵にとって死神同然、遭遇したらほぼ死確定の理不尽の権化! 新人類と呼ばれるだけあって、超人的な直感力と洞察力を持ち、時空を超えた非言語的コミュニケーション能力を持っていたりするよ!」

 

 巨大ディスプレイの画面には、見た事の無いトリコロールカラーのMSが無人機をばっさばさ切り捨てる動画が流れており……このPVを造る為に実写で自社の無人機を撃ち落としているのかと、無駄に手の込んだ無駄に金の掛かったPVにグエルは色んな意味で驚愕する。

 

「……その『ニュータイプ』とやらは、空想上の超能力者とかサイキッカーみたいなもんなのか?」

「そこまで人間離れしてはいないね。銃で撃たれたら同じく死ぬから結局は人間だよ!」

 

 グエルはその返答に「……大雑把すぎねぇか? その分類」と返し、「人種だとか肌の色とか居住区で細かく分類するの、無駄過ぎね?」と『彼』は言い捨てる。

 アーシアンとスペーシアンの区分すらなく、平等に全て見下している『彼』の言う事はある意味究極的な公平さだが、徹底的なまでに無慈悲である。

 

 ――続いて、巨大ディスプレイの画面が移り変わり、『ニュータイプの特性』という欄に入る。

 

「1つ、普通の人間とはかけ離れた強い脳波を発する。この感応波によって『ニュータイプ』専用兵器である『サイコミュ』を動かす事が出来る。――我が社の遠隔操作端末兵器の大半がその『サイコミュ』だよ!」

「……いや、『お前』1人専用のシステムを会社の総力をあげて造って、一体どうしたいんだよ!?」

 

 動画が差し込まれ、『ヤツ』がその『サイコミュ』とやらで遠隔操作端末兵器を操る実地映像が流れ……って、全部自分との決闘じゃねぇか!と内心突っ込む。

 一応補足として「この宇宙では欠陥兵器の『GUND-ARM』じゃないと出来ない事なんだぞー?」と注釈するが、その辺はいまいちピンとこない。最近まで『アナハイム・エレクトロニクス』社が造る規格外のMSが『ガンダム』だと認識していただけに――。

 

「この強い脳波によって『ニュータイプ』は通信機器を使わずに『ニュータイプ』と感応出来る。テレパシーみたいな感じに。……まぁこれは俺には出来ないけど」

「相手がいないからか?」

「相手に送信する事は幾らでも出来るよ。SAN値直葬のイメージを無理矢理送りつける感じで。……ただ、チャンネルが合わないのか、後天的にぶっ壊れたのか、悪意以外は受信出来ないだけで」

 

 説明されても良く解らなかったので、グエルは軽く流す事にする。

 ――なお、意図的に省かれた言葉が幾つもあり、その悪意の受信は、相手が『ニュータイプ』でなくても可能だったりする。先天的ではなく、後天的に変化した能力の一端であるが。

 

「――俺が『ニュータイプ』の出来損ないであるのは、相手が同じ『ニュータイプ』であっても解り合う事が出来ないからだよ」

 

 ……何とも意味深に「まぁ解り合えたら解り合えたで、最期まで殺し合うしかないってなるんだけどね!」と笑いながらのたまう。

 ……やっぱり良く解らない。この宇宙に『自分』1人しか該当しないと言っておきながら、他の『ニュータイプ』の存在を言及しているようなもので――今は他にいない、つまりは嘗ては存在したという事だろうか?

 

「2つ、常人とはかけ離れた空間認識能力を持つ。俺個人のそれは戦域1つ程度だね」

「……いや、それ、まるで意味が解らねぇよ!?」

「感覚的な話だからね。普通の人間と比べてどう違うのか、俺も言語化して説明出来ないぞ!」

 

 顎に人差し指を当てて思案する素振りを見せて「無理矢理言語化するなら、脳に専用の戦域マップが常時表示されている感じ? 常時更新されるタイプの。これも正確には違うけど」とあやふやに表現する。

 ……確かに、『コイツ』の空間認識能力は異常の領域であり、MSに搭載されているレーダーよりも正確で、レーダーの射程外の遠距離の事も認識しているのは確実だろう。

 そして、その超常的な感覚は、宇宙空間が一番冴えている。『コイツ』がフロント外宙域で無敵を誇るのは、そういう事からだろう。

 

「3つ、予知能力に似たものを持つ。ルーレットの出目を当てたり、敵の行動や位置を予測して行動したり、巨大な危険事象を悪意として事前に感知したり。――これについては俺は知らん。大体の出来事は『経験則』で予測出来る範囲だから区別付かないんだよね」

「……『お前』にとってMSの動きは――」

「『経験則』で大体予測出来る範疇だよ?」

 

 ……だから、MSでのあらゆる戦闘行動を『経験則』で片付けるその戦闘経験は、一体何処で積んだんだよ……。

 全性能で劣っているのに、『ヤツ』のMSがモニターの視界から簡単に消え去るのは、此方が右方向に転進したら、『ヤツ』のMSは同時に左方向に転進するからだ。

 どうして此方の瞬間的な方向転換を予測出来るのかは理解出来ない。理解出来ないが『経験則』で予測して誤差無く行えると認識して良いだろう。

 

 ――幾度無く決闘を挑んでいるグエルは、『彼』の無意識の内にコックピットを狙い、意識的に抑制する癖を知っている。

 

 極稀にしか出ない癖で、攻撃動作が一瞬鈍る弱点みたいなものだが――無意識下にコックピットを撃ち抜こうとするほど殺し慣れている事に、最近勘付いて冷や汗を流したものだ。

 

「――俺という『ニュータイプ』を総評するなら、持てる可能性を全て『闘争』に全振りした欠陥品だよ。調和と協調には無振りだね!」

「いや、自信満々に言う事かよ!?」

 

 うん、大体知っている。『コイツ』は人の話を大抵聞かず、人の顔を一切見ず、大切な事を絶対言わずに好き勝手に振る舞う。

 どういう環境でこんな存在不適合者が誕生するのか、何度も不思議に思った事か。

 

「俺の憧れの『先輩』はまさにその類のキリングマシーンで――如何に少ない手順で相手MSを仕留めるかで競い合ったら絶対勝てないよ! 直接対決もまず勝てないかな!」

「『化け物』以外の言葉で表現出来ねぇんだが!?」

 

 『コイツ』の語る『宇宙で1番目のパイロット』とやらは、間違いなく人間ではないだろう。『コイツ』を超えるという時点で、もう想像の限界が先に訪れる。

 

「……それで、その『ニュータイプ』ってヤツに、普通の人間が勝てるのか?」

 

 従来の人間を旧人類、オールドタイプにすらしかねない新人類相手に、どうやって打ち勝てば良いのか――ヤキが回ったのか、そんな弱音を吐いてしまった。一生の不覚である。

 それを聞いた『彼』は、きょとんと、心底不思議そうな顔をしたのだった。

 

「何を言っているのやら。――俺の当初の見立てでは、グエル・ジェタークという人間は2戦目で心折れて終わりだったんだぜ? それを覆して此処まで喰らいついているのは何処の誰やら」

 

 ……確かに、自分と『ヤツ』との決闘の2戦目は完璧な敗北だった。前回も前回だっただけに、何も出来ずに開幕狙撃で終了とか、これまで築き上げたプライドが木端微塵に打ち砕かれたとも。

 それでも諦める事無く食らいついたのは、もう意地としか言いようがない。

 

「本来なら一期一会、戦場で遭遇したのならば、二度目などありはしない。コックピットを撃ち抜いて終わりだからね。――決闘というルールに守られながらも、有り得ざる経験を積んで此処まで成長出来たのは割りと奇跡の産物なんだぜ?」

 

 ……やはり、『彼』の根底の基準は決闘ではなく、実戦。実際に生命を奪い合う戦場が『彼』の魂の場所であり――。

 

「パイロットとしての俺は既に完成していて劣化するのみ。それに対してグエル・ジェタークは未だ完成せず、成長し続けている。――過去の『亡霊』ぐらい、超えてみせろよ。お前には、それが出来る筈だ」

「……けっ、言ってろ」

 

 

 

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