Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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57/『魔女』は戦術予報士の資格持ち

 

 

 

 

『――君達がこれを見ている時、『私』は既に亡くなっているだろう――という映像を10回以上作っているけど、後から自分で処理する事になる事を含めて面倒臭いね!』

 

 指定された空き教室にて、地球寮の全員で見るように指示された動画を視聴するミオリネ達は、最初にその胡散臭い笑顔の『彼』を見る事となり、初めからげんなりとする。

 『冗談なのに遺言扱いになって騒ぎになった事が同じ回数あったよ! HAHAHA!』「……やっぱ『社長』、ジョークのセンスだけは無いわ」「ほぼほぼ完璧超人だけど、それ故に常人の心が解らない系だと思うよ……」と、チュアチュリーとマルタンが呆れ顔で話す。

 殺しても化けて出てくる系の人間だと思うが、流石にこのブラックジョークは笑えないものである。当人の為に、全く受けなかった事は後々直接伝えた方が今後の為になるだろう。

 

『さて、グラスレー社の見え透いた陰謀で2・3日遠出する事になったけど、その間にシャディク・ゼネリが間違いなく色々仕掛けてくるだろう。……いや、彼が何を目的としているのか、全部が全部、中途半端過ぎて心底理解出来ないけどー?』

 

 ……個人としての行動パターンは完璧に把握しているのに、その内情に一切興味を示さないのは『彼』ならば、と言った処だろう。

 『彼』の目にはシャディク・ゼネリという男は一切映らなかった。それだけの事だろう。

 

『まぁ結局は決闘で決着つける事になるから、その過程は至極どうでも良いね! ――どうせ、校内規則を書き換えて株式会社ガンダム設立の邪魔をした挙げ句、自分だけが救えるなんて詐欺師的な顔するんじゃないかな?』

 

 ……まさにその通りであり、解り切った戯言を聞く前にミオリネはシャディクに決闘を申し込み、正式な手続きとして受理された後の事である。

 「……やっぱ『社長』って未来見えてね?」「決闘賭博、100回やって100回当てそう」「それ、全部『自分』賭けじゃね?」と、オチまで完璧である。

 

『相手のとれる選択肢を全部奪ってからマッチポンプすれば良いのに、下手だなぁ。――決闘制度を悪用出来るんだから、単純明快、決闘で全部奪えば良いだけの話なのにね?』

 

 流石はマッチポンプに定評のある『アナハイム・エレクトロニクス』社の代表、言う事が違う。……年季も桁違いに違うので、比較対象にする事自体が可哀想な話である。

 

『次に決闘に関してだけど、間違いなく6対6の集団戦を選んでくるだろうね。シャディク以外の敵パイロット5人は素人に毛が生えた程度だけど、素人には若干荷が重いから『特別仕様』のジェガンを4機置いていったので活用してね! チュチュ先輩用にチューニングした狙撃&近接兵装バージョンも用意しといたよ!』

 

 決闘のオッズで上位にいるパイロット達を『素人に毛が生えた程度』と評するのは番外扱いになっている『彼』ぐらいだろう。

 『彼』に決闘を挑むまでは集団戦において無敗を誇っていたのになぁ、と全員が思う。

 

「……あれ、4機?」

「あーしの分も用意してるのに数少ない……?」

 

 『彼』らしからぬ不手際に何か意味があるのか、全員が考える中――。

 

 

『――残りの1機に関しては、飛び切りの『助っ人』を用意したので、ミオリネの裁量次第で使ってやってね! 参加させりゃ100%勝てるようになるよ!』

 

 

 ……何やら、ミオリネの独断と偏見によっては却下されるような強力な『助っ人』を独自に用意していたらしい。

 

『その『助っ人』を参戦させた場合と、不参加の場合の、両方の作戦プランを幾つか用意したから、後で目通してねー! ついでに相手の使用するMSの全データも別ファイル参照で!』

 

 動画は此処で終了となる。ついでに用意された決闘相手のMSの全データはついでで用意されるレベルの機密情報ではないのだが、いつもの事なので全員にスルーされる。

 

「……『助っ人』?」

「誰か、いましたっけ?」

 

 ミオリネが難しい顔で首を傾げ、スレッタも心配そうに語る。

 御三家の最後の一角、グラスレー寮と事を構えるのに、『助っ人』に来てくれるような気概のある生徒なんて心当たりは無いし、『彼』に太鼓判を押されるような人材など――。

 直後、動画の終了を見計らったのか、あるいは終了時間まで計算して時間指定されたのか――その『助っ人』は空き教室の扉を堂々と開き、驚く彼女達の前に現れたのだった。

 

 

「――『助っ人』はこのオレ、グ……謎の凄腕仮面パイロット・ボブだっ!」

 

 

 それは『奇妙な仮面』をつけた、制服の上着を羽織るという特徴的な着方をする男子生徒であり――。

 

「いや、グ――」

「ボブ!」

「どう見ても、グエ――」

「ボブだ! 決してジェターク寮を追放された元ホルダーなどではない! ……くそぉ、オレに何を言わすんだあの『野郎』ォ!」

 

 ……確かに、諸々の問題を見て見ぬ振りをすれば最高の腕前を誇る『助っ人』だろう。

 ミオリネの裁量に任せると言うだけあって、多大に問題ある人選であるが。

 

「ボブさんですね! よろしくお願いしますっ!」

「あ、あぁ、宜しく頼む、スレッタ・マーキュリー」

 

 グエ……もとい、ボブに対して見た事の無いほどの笑顔で一礼するスレッタの姿に、グエ……ボブは一瞬以上見惚れる。――当人が意図してないものの、どうにも高圧的な態度を取ってしまいがちなので、大体は怖がる姿しか見れず、スレッタの自然な笑顔を見る機会は絶無だった。

 その様子を見た地球寮の面々は「え? スレッタ、マジで……?」「き、気付いてない……!?」と、スレッタが『怪しい仮面』をつけたグエル・ジェタークをグエルだと気づいてない事に驚愕する。

 

「……どういう風の吹き回し? 『アイツ』に雇われたの?」

「……はんっ、依頼という形なら絶対受けねぇよ。……シャディクの手管が気に食わねぇ、で納得しろは無理があるか」

 

 ミオリネは訝しみながら問い質し、グエ……仮面の男ボブはつーんとした表情で言い返す。口元しか露出してないが、それだけでも「不本意だ」という色は察して余る。

 グエ……仮面の男ボブは若干言い淀み――観念したのか、溜め息一つ吐いて白状する。

 

「――『アイツ』に友人として頼まれたからな、断るに断れん。……『アイツ』に貸し1つ作るという貴重かつ希少な機会、見逃す手は無いだろ?」

「……! そうね、とんでもなく貴重で希少な機会だもんね。――それじゃ、短い間だけどよろしくね?」

 

 ――此処に、嘗ては不倶戴天の関係だったミオリネ・レンブランとグエル・ジェタークの二人が、『胡散臭い男』を経由する事で一時的に結託するという世にも奇妙な状況が生まれるに至る。

 

 

 

 




 『彼』がわざわざ用意した仮面は、ゼクス・マーキスの仮面です。
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