Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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 先に学園側の描写をしようと思いましたけど、アニメ本編12話があらゆる意味で素晴らしかったので、触発されて此方の描写を優先。


59/『魔女』は嘲笑う

 

 

 

 

「――原因不明の通信障害?」

『はい、内部の通信だけはかろうじて無事ですが、各種多様の精密機器に深刻な障害が発生しております。個々の機器ではなく、同時に、となりますと偶然の故障ではなく、作為的な何かを感じずにはいられませんが――』

 

 社員からの報告に、グラスレー社CEOのサリウス・ゼネリは不穏な気配を感じ取る。

 『ヤツ』をアスティカシア高等専門学園から離れさせる為に、事実上の偽りの依頼を高い報酬を掛けて依頼した矢先の出来事であり――何でもかんでも『彼』の関与を無意識の内に疑ってしまうが、即座に馬鹿馬鹿しい妄想だと切って捨てる。

 

「原因究明を急がせよ。敵対勢力による内部工作の可能性もある」

 

 とは言ったものの、9割は無いものだと考えている。

 此処はベネリットグループ御三家の一角であるグラスレー社の本社コロニー。グラスレー・ディフェンス・システムズの名の通り、堅牢な要塞となっており、平時においても防衛設備は随一の物となっている。

 常に厳重な防衛網が敷かれているグラスレー本社を襲撃しようとする無謀な者などこの宇宙には存在しないだろう。

 

(……それはそうと、何故『ヤツ』は此方の誘いに乗った――?)

 

 あんな解り切った工作など『ヤツ』なら即座に見抜いて当然であり、敢えて乗ったからには『ヤツ』なりの思惑があるのも当然だろう。

 自分がいなくても問題無いと思ったからか――『ヤツ』の邪魔さえなければ、義理の息子のシャディク・ゼネリは事を容易く達成させるだろう。

 その優秀さはサリウスも認める処であり……最近の義理の息子が『ヤツ』に執心し過ぎたが故の失敗は、若さ故の過ちであろう。『アレ』を同年代の存在と認識する事自体が間違いなのだ。最初から『規格外の怪物』として隔離・区別するべきである。

 

(――しかし、『ヤツ』は誰との契約で自身の決闘を不成立にさせている? ジェタークか? いや、あの粗暴な男には『ヤツ』を縛れない。ペイルは違う。ならば、デリングか?)

 

 デリングが『ヤツ』を御せるかと問われれば、否だろう。……いや、常に衝突して仲違いを常時起こしているように見えて、裏で繋がっている事を匂わせる事が何度かあった。

 裏で繋がっている前提ならば、何故デリングは『ヤツ』に破格なまでの自由を許しているのか。それこそ、事実上黙認している『GUND-ARM』、エアリアルと同じように――。

 

(――あの『規格外の獣』に自由など1秒たりとも与えるべきではない。本来ならば『魔女狩り隊』で狩る対象だろうに)

 

 その異端とも言える破格の技術力でグループ全体に恩恵を与えているが故に、特別扱いされているのか。あるいは、此方も知り得ぬ事情があるのか――。

 

 

『――あーあー、マイクテスマイクテス、あーあー。感度良好だね! おはようございますこんにちはこんばんは御機嫌よう! この度は『アナハイム・エレクトロニクス』社のサービスをご利用いただき、誠にありがとうございます!』

 

 

 不調をきたしていた筈の通信設備が強制的に立ち上がり、忌むべき『魔女』の嘲笑が画面に映る。

 その胡散臭い笑顔はいつに増して胡散臭く、サリウス・ゼネリは真正面から睨みつける。

 

「これは何の真似だ、『アナハイム・エレクトロニクス』代表」

『はい、グラスレー本社の通信回線を直接乗っ取って独占サービスと洒落込んでます! こうでもしないと『ミノフスキー粒子を散布した環境下での通信』なんて出来ませんからねぇ』

 

 ……諸々の通信障害の原因が『彼』だと判明し――直接乗っ取っているという言を真に受けるのならば、既にグラスレー本社の宙域に到達している? 距離的に考えて余りにも早すぎるが――。

 

『――『常識』という言葉は非常に厄介なものです。人によって誤差が明確にあるのに明文化されておらず、それ故に悲しいすれ違いもあるものです。降伏の証たる『白旗』が、違う異文明では『徹底抗戦』を意味していたりとか目も当てられないですよね?』

「……一体、何が言いたい?」

 

 いつに増して何を言いたいのか、要領を得ず――嫌な予感だけが募る。いや、後々から考えても致命的なまでの判断ミスだった。

 この時点で明確なまでに敵対行為を取っている『彼』に対しての適切な対応を取るべきであった。……後々から考えたのなら、既に詰んでいる状況下であるが――。

 

 

『――『私』どもの『常識』では、報酬を全額前払いする高額依頼ってのは、美味い餌で呼び寄せて対象を抹殺する、所謂『騙して悪いが死んで貰おう』という意図の依頼なんですけど』

「……は――?」

 

 

 ……一体、この『男』は何処の異世界の常識を『常識』として語っているのか、正気を疑う。疑って、最初から『常識外』の存在だったと苦々しく再認識する。

 

『実は『私』、その手の『騙して悪いが』は大好物なんですよ。依頼主の思惑を全部踏み潰して『依頼達成』するの、凄く快感なんですよ? ――本日は、グラスレー本社をこの宇宙から塵一つ残さず消滅させる準備を整えてから来訪しました!』

 

 この時点で、本社に在中する守備隊を第一級戦闘配置にしていなかったのは、致命的なまでに判断が遅いと言わざるを得ず――。

 

『――事実上の『最後通告』ですので、細心の注意を払って答えて下さいね? 『私』どもの『常識』ではそうですが、そちらの『常識』ではどうなってますかな?』

 

 

「ふざけるな、言い掛かりも甚だしい! そのような『常識』が何処にある……!」

 

 

 ――画面越しの『彼』は、全てを見透かすような、神の如き尊大で無機質な眼で此方を眺めて――。

 

『良かった良かった。些細なすれ違いで『大虐殺』に発展する緊急事態は幸運にも回避出来ましたね! それじゃ当初の予定通り――そちらの防衛設備の不備を直接指摘する『大規模演習』を始めましょうか、実戦形式で!』

 

 胡散臭い笑顔を浮かべた『彼』の画面が途切れ、代わりにグラスレー本社を中心とした宙域マップ、否、戦域マップと複数の現地映像がわざわざ送られ――正体不明の『白い戦艦』から、多数のMSの発進が確認される。

 

「な――『貴様』、何を……!」

『全力で抵抗して良いですよ? 此方はなるべく殺さないように、全力で手加減して蹂躙しますので!』

 

 

 

 

 

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