Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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60/『魔女』の引き金は軽い

 

 

 

 

 現在の――グラスレー本社を捉えている――ラー・カイラム級機動戦艦13番艦ブリュンヒルトには、その美しい純白の素肌の外部に急設されたMSコンテナが12個繋がれており、パイロットが必要無いが故に乱雑に扱っても問題無い『主戦力』が搭載されており――簡易的な造りのMSコンテナが一斉に解体され、中から白いMSが12機、一糸乱れず緊急発進する。

 

『――外付けMSコンテナ、全パージ。Gビット12機発進完了――両カタパルト展開完了、MS隊の発進、順次どうぞ!』

 

 白い船体の左右が大きく開き、元のラー・カイラム級の名残とも言える2つのカタパルトが展開され――。

 

「――『レイヴン』、ファラクト、出る……!」

 

 型式番号『A.S-002』ガンダムファラクトMk-A.Eが真っ先に発進し、次いで『アナハイム・エレクトロニクス』社の量産型MS、特務仕様でより高機動型となっているスタークジェガンが次々と発進する。

 その数、合計12機、3個小隊が瞬く間に戦場に投入される。その手際の良さは先陣を切り、先頭を走破する『レイヴン』すらも感心する具合だ。

 

『――予定通り、ジェガンの3個小隊は港を制圧、Gビット12機とファラクトでグラスレー本社の防衛設備を潰しながら遊撃だ』

「了解」

『――『レイヴン』、君にとって初の実戦だが、気負う必要は無い。君は実に運が良い。殺さなくて良い戦場なんざ遊びみたいなものさ!』

 

 ……いや、殺害を許可しないのは制約であって、むこうは構わず此方を殺しに来るんだから、ハンデ&デバフ以外の何物でもないのだが。

 グラスレー本社周辺には実戦仕様のビームの光、無数の爆発が生じており、先行していたGビットが本社の防衛設備を潰している事を意味していた。

 

 ……なお、『彼』はブリュンヒルトの艦橋の艦長席に座りながら12機のGビットを操作し、オペレーターまがいの助言を『レイヴン』にしていたりする。

 

『――相手のMSの展開が遅いなぁ。この時点で練度が低いと評価せざるを得ないな。ミノフスキー粒子を戦闘濃度まで散布した時点で戦闘行為が始まっているというのに暢気なものだ』

 

 ……いや、異世界の『常識』をこの宇宙での『常識』扱いするのは酷な話だろう。

 グラスレー社側からしたら、全く未知の技術で通信及びレーダーがほぼ全て無効化されているという異常事態に見舞われているので、内部の混乱は察して余る状況だ。

 ――GNロングバレルビームライフルでグラスレー本社に設置された防衛設備を射程外から次々と撃ち落とす。事前の資料通りの性能しか持ってないらしく、脅威らしい脅威を感じない。実に作業じみていた。

 

 

『――『アナハイム・エレクトロニクス』社に告ぐ! 貴様等は重大な協約違反を行っている! 直ちに戦闘行為を中止せよ! 繰り返す、直ちに戦闘行為を中止せよ!』

 

 

 オープンチャンネルから流れるグラスレー社側からの警告は、余りにも手遅れであり――。

 

『――やっと御出座しか。ベギルペンデ8機、後続にハインドリー16機、ハインドリーは全部片付けるからベギルペンデを全機排除しろ』

「了解」

 

 さらっと無理難題を押し付けてくるが――既に『彼』のGビット12機がハインドリーの4個小隊に群がっており、瞬く間に頭部&四肢損失のMSを量産していく。

 数の上では負けているが、12機が12機、操作しているのが『彼』となれば、この結果は余りにも当然だろう。逆に敵側が哀れ過ぎる。

 ……どうして遥か彼方の戦艦にいるのに、此処まで精密にビットを操作出来るのかは、最早考えるだけ野暮な話だろう。

 

「……対GUND-ARM用兵器、アンチドート搭載機――今となっては、何の意味も無いけど」

 

 威力を抑えて連射性能を優先させ、牽制でGNロングバレルビームライフルを連射し、GNガンビット12基とGNファング12基を出し惜しみせずに展開する。

 

「――ガンダム・ファラクトMk-A.E、目標を駆逐する」

 

 頭部被弾、右腕のビームライフルごと撃ち抜き、撃破判定1機――次のは大型のシールドを構えながら愚直に突撃してきたので、ビームの威力を上げてシールドごと撃ち抜いてから頭部と右腕のビームライフルを撃ち抜き、撃破判定2機。

 

『――な、GUNDフォーマット……!? 『GUND-ARM』だと!?』

 

 『GUND-ARM』ではなく、2基の擬似太陽炉搭載の『ガンダム』であるが、グラスレー社側からは判断も区別も付かないのだろう。

 

 決闘出力ではない、高濃度に圧縮したGN粒子によるビーム射撃だ、生半可なシールドぐらいは容易く撃ち抜ける。……かつての常識は既に無く、異常極まる『アナハイム』の常識に染まってきたと『レイヴン』は自覚する。

 

「――脆いし、反応が遅い」

 

 ベギルペンデ6機が射程距離に入り、ファラクトにむけてビームライフルを一斉に撃ち放ってくるが、射線も安直なら命中精度も微妙、持ち前の機動力で余裕で回避しながら展開し終わっているGNガンビットの電磁ビームを斉射、6機のベギルペンデのコクピットを捉えて一時的に全機能を停止させ――ビーム刃を展開したGNファングを突撃させて頭部及び四肢を引き裂いて蹂躙し、戦闘不能にする。撃破判定8機。

 

「……こんなものか。むこうは――既に終わっている、か」

 

 ――16機のハインドリーの方は、既に全機頭部破壊及び四肢損失で戦闘不能。自分を上回る殲滅速度で撃破されたようだ。不甲斐ないとは絶対言わない。12機になった『彼』が相手なのだ、何も出来ずに瞬殺されるのは仕方ない事だろう。

 

『良い手際だ『レイヴン』、お代わりが来たぞ。ベギルペンデ4機にハインドリー8機、情報通りならこれで打ち止めだね』

 

 ……もう既に12機のGビットが猛烈に襲撃しており、言っている間に4機が四肢損失のダルマになっており、此方もGNロングバレルビームライフルで狙撃しながらGNガンビットとGNファングを全力駆動、2機撃破判定する内に『彼』のGビットは残り全部片付けていた。余りにも早すぎる……。

 

『ジェガン小隊が港を制圧、防衛設備も大方破壊完了か。――本来なら、此処ら辺で不測な事態の1つや2つでも起きるもんだがねぇ。グラスレー社にそれを求めるのは酷な話か』

 

 ……『彼』のような『例外(イレギュラー)』が戦場に突如現れるなど、あってはならない事だと思うが――。

 

『各小隊及び『レイヴン』に通達、戦闘不能にした敵MSの回収作業に移れ。――最後の余興に巻き込まれたら、折角の不殺が台無しだからね? あ、油断するなよ。自爆装置は無いみたいだけど、無駄な抵抗をする馬鹿は少なからずいるだろうしね』

 

 

 

 

「……馬鹿な。何故これほどの差が――」

 

 港に存在する戦艦は、出航前にジェガン隊によって大口径のトリモチランチャーを撃ち込まれた為、全艦航行不能。

 グラスレー本社を護衛する精鋭部隊は、ペイル社の『GUND-ARM』と瓜二つのガンダム・ファラクト――此方は右肩に『アナハイム・エレクトロニクス』社のエンブレム、左肩に焼け焦げた『黒い鳥』に『星』が付いたエンブレムが施されている――と、以前に審問会で紹介された無人MS型端末12機によって一方的に駆逐されるに至る。

 

『――口だけ達者な素人でも雇ったんですか? 新人の教育マニュアルを無料で配布しておきますので是非とも参考にして下さいね!』

 

 『ヤツ』の皮肉に言い返す気力さえ湧かずに絶句する、グラスレー社CEO、サリウス・ゼネリはひたすら困惑していた。

 ファラクトと似た『GUND-ARM』らしきMS――いや、ジェターク社のダリルバルデと一緒で外側だけ似せた全く別物のMSなのだろうが――には、アンチドートの間合いに入れる事すら出来ずに一方的に撃ち落とされた。

 『ヤツ』が操作していると思われるGビットの何機かはアンチドートの効果範囲内に入ったのに関わらず、何の支障無く戦闘行動を続行されて尽く撃破された。

 

 ――やはり、アンチドートを打ち破る新機軸の技術を開発したのか、或いは最初から通用しない別系統の技術の産物である可能性が脳裏に過る。

 

『――ああ、そうそう、以前紹介した型式番号『GX-9900-GB』、無人MS型端末『Gビット』の事を『戦略級兵器』と評した事は覚えていますかな? 実はあの時の審問会で説明しきれてない『機能』がありましてね、これなくして『戦略級兵器』と嘯く事は出来ませんから!』

 

 ――『アナハイム・エレクトロニクス』社の技術は既存の物とはかけ離れた発想の代物が多く、決闘で紹介される超高性能のMSの大半は、決闘出力でのみ運用出来る、ハリボテの幻であるというのが通説である。

 

 裏での技術提供は数多く行われているが、実際は決闘で紹介されたほどの革新的技術ではない。これは決闘という場で魅せるのが上手く、誇大広告が甚だしいものだと周知されており――もしもこれが意図的に仕組まれた偽装工作の一環であり、誇張表現と思われた各種機能が真実であるのならば。

 

 

『――『サテライトキャノン』、元々は衛星に搭載された大型単一砲台砲でしたが、固定砲台なんて時代遅れ、多少出力を落としてでもMSで運用出来るまでに小型化・縮小化した『対スペースコロニー用超高出力砲』を本機は搭載しております』

 

 

 『ヤツ』自身の手で配信される外部の戦闘映像には、背中のL字型バインダーを展開してX型のウィングとなり、巨大な砲塔を構える12機のGビットの姿が映し出されており――。

 

 

「待て、やめ――」

『――まぁ口で説明なんて無粋、実際に見て貰いましょうか』

 

 

 ――宇宙の闇が、それを引き裂く青白い巨光によって照らされる。

 

 出撃前にチャージ済みだった12門の『サテライトキャノン』の引き金は、余りにも軽く、あっさりと引かれた。

 グラスレー本社のコロニーの外縁を僅かに削るように撃ち放たれ――史上最大級の衝撃を内部に伝播させる。

 

「――……!?」

 

 誰しもが悲鳴をあげ、それを上回る破滅の暴威が全てを打ち消し――。

 

 ――30秒か、或いは1分程度か。時間間隔が狂うほどの、恐ろしいほど長い照射時間を経て、永遠に消えぬ恐怖と衝撃をグラスレー社の人間に刻み込み――。

 

『――状況終了。これにて『大規模演習』の全工程は終了です、お疲れ様でした! それでは後片付けしながら総評と行きましょうか。――論外ですね! 『私』どもがテロリストなら一方的に鏖殺されてましたよ?』

 

 この宇宙で最も傑出した――最も肥えさせてはならない、最も邪悪な『テロリスト』は、全てを嘲笑いながらそう締めたのだった。

 

 

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