Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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61/『魔女』と楽しい戦後処理

 

 

 

「――我が社の独占技術である『ミノフスキー粒子』の基礎学、ミノフスキー粒子環境下前提のダウングレードしていない『ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉』搭載のジェガン4個小隊、全方位光波防御帯『アルテミスの傘』、無人軍事衛星システム『アルテミスの首飾り』――お買い上げ、ありがとうございます。これで我が『アナハイム』社とグラスレー社の関係は盤石ですね!」

 

 初の実戦を無事終えた『レイヴン』は、余りにも悲惨な戦後処理を戦々恐々と眺めていた。

 この『大規模演習』でのグラスレー社の被害額は天文学的数字であり――その被害を巻き起こした元凶でありながら更に搾り取りに行った悪徳企業があるらしい。

 この支払金額の中には、御三家を御三家たらしめる最大の要因であるベネリットグループの株の譲渡もある程度含まれており――万が一、シャディクがスレッタに勝利してホルダーになり、不慮な事故でデリング総裁が死去した場合、グラスレー社とミオリネの保有株を合わせても50%を超えないように意図的に調整されて搾取されるに至る。

 

「いやはや、どういう訳か、基本中の基本である『ミノフスキー粒子』の技術をお求めになる企業が何故かほぼ絶無でして! この宇宙の企業、大丈夫なのかなと内心思っていた処ですよ!」

『……意図的に説明していない、未知の最重要項目をどうやって察しろと?』

「この基礎技術は我が社にとって当たり前の『常識』ですから、その『常識』を態々説明する機会なんて――『常識』を知らない無知な者から説明を求められた時のみですよ?」

 

 ……通信先のグラスレー社CEOのサリウス・ゼネリはブチ切れて良い。

 

 十年単位の後退を余儀なくされても、十年後以降の優位を取りに行ったのは経営者として素直に尊敬出来る手腕だろう。

 自分の死後も見据えて動ける辺り、賢者は老いても優秀だったという事だろう。……今回は、相手が余りにも狂人的で悪辣過ぎたとしか言えない。

 

『……最後に1つ聞きたい。『アナハイム・エレクトロニクス』社は、『GUND-ARM』に対してどのような考えを持っている?』

 

 ――『GUND-ARM』に対して妄執に近い執念を抱いて、その眼を曇らせているサリウスCEOも、薄々勘付いているだろう。

 『アナハイム・エレクトロニクス』社における『GUND-ARM』の認識、それは――。

 

「此処まで大口のお客様は久しぶりですので、掛け値無しの本音で語りましょう――パイロット殺しの欠陥技術、それ以外に何かありますか?」

 

 余りにも意外な事に――サリウス自身と同じく否定派。

 

 『GUND-ARM』らしき『ガンダム』を大量生産し、株式会社ガンダムの設立に強力に手助けしているように見えるが、その実情は『GUND-ARM』に非ず、株式会社ガンダムに対して一銭も投資していない。

 

「それはそれとして、今回の一件で『私』個人が最も不快に感じたのは『スレッタ・マーキュリーの決闘のリアルタイム視聴』を邪魔された事ですので!」

『――は? ……は?』

「ミオリネに感謝して下さいね? 『騙して悪いが』が一般常識じゃないかもしれないという指摘をくれなければ、事前勧告無しで初手殲滅戦でしたよ!」

 

 今回の事件において、最大級の驚愕的真実が明かされ、サリウスCEOの顔が凄い事となる。

 狂人の物差しを常人が計れる訳が無い。今回の『大規模演習』における最大の戦訓がそれとはお労しすぎる。

 

 

『……まさか、知らんのか? 今回の決闘がベネリットグループ外部にも中継配信される事を』

 

 

「……え? マジで?」

『……ミオリネ様が直々に条件付けした事だが――まさか、本当に知ら』

「この度は『アナハイム・エレクトロニクス』社の出張サービスをご利用いただき、誠にありがとうございました! 何に増しても優先すべき急用が出来ましたのでこれにて失礼しますね!」

 

 『彼』は笑顔で通信を即座に切り……もしかしなくてもこの『大規模演習』、やる必要無かったんじゃ……?

 

「はいはい即座に撤収! いやぁ、ミオリネも気が利いているね! もう最高!」

 

 さっさと安全で邪魔が一切入らない場所でスレッタの決闘を鑑賞する事を決め込んだ『彼』は無邪気な笑顔を浮かべ、ラー・カイラム級機動戦艦13番艦ブリュンヒルトを最高速で出航させる。……お披露目する予定の無い、ミノフスキー・ドライブ搭載艦の超性能の一端を見せてしまっているが、最早些事だろう。

 

「……良かったの? これ、後々からグラスレー社に訴えられるのでは?」

「自分の無能をベネリットグループの全企業に晒して、御三家の椅子から降りる覚悟があるなら訴える事も出来るね。その場合、かわりに御三家の椅子に座るのは『アナハイム』社になるから、弱小企業の訴えなど即座に却下するよ! ――勿論、我が社は御三家がそれぞれ受け持って自己負担している義務を背負うつもりなんて欠片も無いけど」

 

 ……なるほど、グラスレー社からすれば、正式な法的手続きに基づいて『アナハイム』社を訴えた瞬間、自身の弱体化及び脆弱性を周知させる事となり、全企業が無慈悲なハイエナに早変わりする事となる。

 「我々は技術供与を目的とした出張サービスで『大規模演習』を行っただけだからね!」と、その上辺だけのお題目の為に態々不殺という面倒な条件を貫いていたのだと今更ながら納得する。

 

 ――つまりは、経済的に破滅的な損害を被ったグラスレー社は、その破滅的な損害を与えた『アナハイム』社に縋るしかない訳だ。余りにも酷すぎる自作自演(マッチポンプ)である。

 

「……あの『アルテミスの傘』と『アルテミスの首飾り』の事は? 現状の防衛設備とは比較にならないほど厄介な代物だと思うけど?」

 

 今回『アナハイム・エレクトロニクス』社がグラスレー社に売り渡した2つの防衛システムは、既存の防衛網とは比較にならないほど強力で堅牢な防衛システムだ。

 

 『アルテミスの傘』はコロニー全体を全方位光波防御帯で覆う絶対防衛システムであり、その堅牢な盾はサテライトキャノンであっても防げる、かもしれない。……何処の矛・盾の逸話か、実際に試した事が無いので微妙な話であるが。

 

 『アルテミスの首飾り』は複数の無人軍事衛星による最終防衛網であり、衛星大の質量に迎撃兵器を積められるだけ搭載しており、射程距離に入った侵入者を無慈悲に蹂躙する自動迎撃機構だ。

 

 ――処女神の名を謳うだけあって、絶対防衛網と絶対迎撃機構を組み合わせた、余りにも堅牢過ぎる代物だろう。

 

 此処まで舐めた事をやらかしたからには、グラスレー社が将来的に反旗を翻す事は現段階でも確定事項であり、そうなった際に厄介な技術を渡しすぎたのでは?と『レイヴン』は指摘する。

 

「いや、別に。ミノフスキー粒子環境下において『アルテミスの首飾り』の自動防衛機能なんてレーダー機能喪失で全性能激減するだろうし」

「……え? そっちは対応してないの?」

「ぼったくる為に適当な技術で組み上げた欠陥機構だよ、あれ。そんなのに態々対応させる訳ないでしょ?」

 

 ……わざわざジェガンの説明でミノフスキー粒子環境下前提の、という言葉を枕詞にしていたのは、後半の商品もそうであると錯覚させる為の詐欺師的手法であり――。

 

「そもそもあんな無駄金食い虫、攻撃と防御を上回るほどの圧倒的な『質量兵器』で押し潰せば良いだけの話じゃないか。――この宇宙ではその発想すら無いのかな?」

 

 その『質量兵器』に心当たりが全く無く、『レイヴン』は心底不思議そうに首を傾げる。規格外の兵器を大量開発している『アナハイム・エレクトロニクス』社でも、其処まで巨大な『質量兵器』は無かった筈だが――。

 

「――小惑星に核パルスエンジンを搭載して直接衝突させるだけだよ!」

「――は?」

「うん、言葉にするだけで腸が煮えくり返るね! 今ならDX込みのサテライトキャノン最大出力でふっ飛ばしてやれるのに!」

 

 待て、まさかその『質量兵器』というのは……! いや、有り得ないだろう。それを居住区にするスペーシアンの発想じゃない……!

 

「ところで『レイヴン』、軍事拠点攻略用の基本項目に『コロニー落とし』があると思うのだが、君はどう思う?」

「何それ怖い」

 

 

 

 

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