Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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65/地球寮vsグラスレー寮

 

 

 

 

「……は?」

『……ルール上は、何も問題無い。――まさか、あのグエルがミオリネに手を貸すとは思わなかったが』

 

 サビーナの発言が耳に届かないほど、シャディク・ゼネリは驚愕していた。

 

 ――その可能性については、案としては存在していたが、実際は不可能だと認識していた。

 

 ジェターク寮から放逐され、キャンプ生活を送っているグエル・ジェタークに手を差し伸べ、グラスレー寮に誘ったとしても――彼は間違いなくその手を跳ね除けるだろう。下手な同情など彼のプライドを傷つけるだけだ。どん底まで落ち込んだとしても、その誇り高さは変わらない。解り切った結末である。

 ならば、グエル・ジェタークに直接的及び間接的にも援助している『アナハイム・エレクトロニクス』代表はと言うと、依頼人として要請する事は出来るが、グエルは間違いなく拒否するだろう。幾ら『彼』とは言え、グエル当人の矜持を曲げる事は出来ない。

 

 ――この決闘に、グエル・ジェタークが関与する事は無い、とシャディクは結論付ける。

 

 勘当紛いな扱いになっているとしても、グエル・ジェタークはジェターク社の御曹司である事は変わらず、今回の決闘に対しては政治的にも個人的にも動かないだろう。

 それなのに、何故、そのグエル・ジェタークが地球寮側の助っ人として自分の前に立ち塞がっているのだろうか――?

 

『いやいや、まずいっしょ……』

『今のグエル君の相手は、ちょっと以上厳しいかも……』

 

 グエルを此処に導いた未知の要因は解らないが、現実として敵側として参戦している以上、地球寮側の他の4人が素人同然のパイロットだったとしてもお釣りが来る。いや、この学園で『彼』と唯一張り合っている以上、1人でも数の不利を覆せる可能性がある。

 

 

 ――じゃあ、アンタはホルダーにならない訳?

 

 

 どうして、あの時、致命的なまでに間違ってしまった問いが、脳裏に蘇るのか。

 誰も彼も、ミオリネ・レンブランの事をトロフィー扱いし、彼女本人の事をまるで見ない。

 そんな奴等と自分は違う。自分は、自分だけは、彼女の事を――。

 

 

 ――実際、グエルにどう立ち振る舞っても勝てないから、ただの都合の良い言い訳ですよね?

 彼ならば安心して任せられる? そうだよね、何処ぞの出かも解らない元アーシアンの養子の君とは違って御三家の本当の御曹司で、ホルダーとして相応しい腕も持っている。――自分自身を納得させて諦めるには十分過ぎる理由で気が楽だったでしょ?

 ミオリネが望んでいないから、ホルダーの座を目指さない。実際に決闘で勝てない現実から目を逸らすには最高の言い訳だよねぇ!

 

「――ッッ!」

 

 不意に生じた『ヤツ』の声での幻聴に対して、シャディクは歯軋りを立てる。

 そのグエル・ジェタークがぽっと出の『水星の魔女』なんかに敗北しなければ、『彼』がスレッタ・マーキュリーを強烈に擁護しなければ、『彼』が何の後ろ盾も無いスレッタ・マーキュリーからホルダーの座を奪っていれば――!

 

「……プランCで行く」

『シャディク、だが――いや、それしかない、か』

 

 サビーナが躊躇するが、現状ではそれぐらいしか突破口が無く、覚悟を決めて了承する。

 

「グエルとて、集団戦の経験は少ない。――それに勝利条件はリーダー機、『ガンダム』のブレードアンテナだ」

 

 

 

 

『……これより、双方の合意の下、決闘を執り行う。立会人はジェターク寮・寮長ラウダ・ニールが務める。決闘方法は6対6の集団戦、勝敗はリーダー機のブレードアンテナを折る事で決するものとする。――両者、向顔』

 

 この決闘の張本人であるミオリネとシャディク・ゼネリの姿が表示され――。

 

『――勝敗はMSの性能のみで決まらず』

『操縦者の技のみで決まらず――』

 

 様々な思惑が過るも、2人の視線が交わる事無く――。

 

『『――ただ、結果のみが真実――』』

 

 此処に至った時点で全て終わっており/此処に至った時点で全て手遅れであり――。

 

『決心解放(フィックス・リリース)』

 

 既に決まった結末を解り易い形で披露する決闘の開始は、静かに切って落とされた。

 

 

 

 

 ――集団戦、グエル・ジェタークにとっては経験の少ない条件である。

 

 『彼』とのMDを使った集団戦の経験は余り当てにならないだろう。敵・味方の動きなんて気にせずに殲滅しただけであり、的が多いだけの個人戦同然だった。

 

(『ヤツ』なら平然と熟すんだろうが――けっ、頼まれたからには完璧に熟してやるさ……!)

 

 他機に気を配りながら連携する――言葉にすれば至極簡単だが、うち3名は素人同然であり――今回のジェガンPD型の仕様を見れば、撃墜される訳が無いだけに、1機でも撃墜されれば「あれれ? グエルどうしたの? 素人のお守りは荷が重かったかなぁ?」なんて腹立たしい顔で嘲笑われるのは必至だろう。

 

『――スレッタは前衛、チュチュは後方から皆のサポート! ヤバくなったらマルタン達を盾にして!』

『解りました!』

 

 それが真に叶うジェガンPD型という仕様とは言え『……鬼畜かよ、お前等……』と、メカニック科なのにじゃんけんで負けて決闘に出る事になったオジェロ・ギャベルは苦々しく呟く。残りの2人は寮長のマルタンと経営戦略科1年のリリッケ・カドカ・リパティである。

 ……心底同情するが、あのジェガンPD型を決闘レギュレーションで撃破する事は非常に困難だ。事前に仕様を理解している自分すら苦戦するのに、初見で何とか出来る仕様には到底見えない。

 

『ボブは遊撃! 好きに動いて、以上!』

「おう!」

 

 最前列にスレッタ・マーキュリーが駆るエアリアル、後方に3機のジェガンPD型が追随し、最後方にボブが駆るジェガン後期型……もとい、ジェガンカラーに塗装したダリルバルデMk-A.Eを配置させる。遥か後方で狙撃型のチュアチュリーが狙撃銃を構えている。

 

 ――さて、グラスレー寮の連中はどう出る?

 

『――全員突っ込んできた!? 迎撃!』

 

 愚直に突っ込んできやがったか……! 『ヤツ』が事前作成した敵作戦のDパターン。つまりは斬首作戦。大将首一点狙い――させるかよ!

 

『うわああぁ! 突っ込んできたぁー!?』

「とにかく撃て! 当たらなくても良い!」

 

 即座にビームライフルを連射モードに切り替えて牽制する。

 が、此方には素人が3人、射撃の腕は当てにならないし、いきなり実戦で敵MSに当てる事は不可能だろう。相手からしたら注意すべきはエアリアル・チュチュが乗る狙撃機・ダリルバルデMk-A.Eだけなので回避は容易だろう。

 

『――『みんな』!』

 

 対して相手はスレッタ・マーキュリーが駆るエアリアル一点狙い。集中砲火に晒されるが、エアリアルのガンビットが全基展開して数多のビームを弾く。

 

(攻守万能の遠隔操作端末――いや、攻撃と防御は同時には出来ないのか)

 

 防御させている限り、攻撃は出来ない――今回は味方なのに、どうも攻略対象として見てしまう。

 防御も攻撃も何でも出来るとは聞こえが良いが、防御も出来るせいでガンビットの行動を意図的に固定される可能性がある。今回はまさに、それが狙いであり――ミカエリス及びベギルペンデ5機から半透明な光の渦が発せられ、範囲に飲み込まれたエアリアルと11基のガンビットが制御を失い、ガンビットはそのまま落下し、エアリアルの動きが停止する。

 

『――ふぇ? 『みんな』……?』

 

 スレッタ・マーキュリー当人も予想外だったらしく、動揺の声が流れる。

 

(おいおい、話が違うぞ。骨董品じみた対『GUND-ARM』用の対策兵器が普通に通用してるじゃねぇか……!?)

 

 最前線にいながら機能停止に陥ったエアリアルに攻撃がそのまま集中し――。

 

 

「――『ALICE』! スレッタ・マーキュリーを全力で守れッ!」

 

 

 一瞬だけダリルバルデMk-A.Eのモノアイが赤く変光し、両肩の装甲板『アンビカー』が即座に分離し、シールドビットとして独自の意思を持つが如く飛翔し、ビームライフルの雨雪崩の餌食になる直前のエアリアルの眼下に割り込み、グラスレー寮のMSのビーム攻撃を全部弾く。

 

 

 ――ああ、そうそう。成長段階的に、もうやれると思うけどさ、発展型論理・非論理認識装置『ALICEシステム』って、実は高度な自我を持つAIなんだよね!

 

 

(――ったく、そんな重大な事を今の今まで隠してるんじゃねぇよ!)

 

 ――これが『ヤツ』に事前に伝えられた、ダリルバルデMk-A.Eの最後の隠し機能、自己判断・機体の自律操縦さえ可能とする、自己意思を持つAI、『ALICEシステム』の真骨頂であり――。

 

『なっ、アンチドートの範囲内なのに何――きゃっ!?』

 

 まず1機目、隙だらけのベギルペンデの頭部をビームジャベリンで正面から穿ち貫き、即座にビームアンカーとビームクナイに分離して相手MSの四肢を引き裂いて完全無力化する。

 

『グエル、邪魔を――っ!?』

「ああ、片付けて構わないぞ『ALICE』。いつもの『アイツ』と比べれば雑魚だろう――」

 

 2機目、既に分離しておいた背部サブアームのビームサーベル内蔵型2基が自動的に殺到して四肢を切り裂き、もう1基の可変速ビームライフル『V.S.B.R』を頭部に撃ち放って片付ける。

 

「こんなもんかよ――おい、スレッタ・マーキュリーを連れて一旦下がれ! 狙撃機は援護! アンチドートの範囲内を抜け出せば動けるようになる筈だ!」

『りょ、了解ぃ!?』

『あーしに命令すんな!』

『ボ、ボブさんありがとうございます!』

 

 まさか、スレッタ・マーキュリーの窮地を自分の手で救う事になるとは予想外も良い処だ。口元がにやついて仕方ないが、それを突っ込む者は、今は誰もいない。

 残り4機となったグラスレー寮のMSを見据える。『アイツ』は1機で蹴散らせるんだから――グエル・ジェタークが、同じ真似が出来ないとでも思ったか!

 

『グエル――!』

「――オレとの決闘を避けた臆病者共が、オレに勝てる訳ねぇだろォが!」

 

 

 

 

 

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