『――いやぁ、こうして揃うのも実に久方振りですねー! ところで、プレゼンテーションするほどの物は披露した覚えないんですけど?』
『当人』が決闘に出てないのに関わらず、久方振りにベネリットグループの上位企業の代表が全員揃った緊急遠隔会議が開かれ、『アナハイム・エレクトロニクス』代表はいつも通り胡散臭い笑顔を見せるのだった。
『どの口がほざく!? 何なのだ、あのジェガンの防御兵装及び装甲技術は! あとあの紛い物のダリルバルデのイレギュラーな自律動作もだ!』
『あんなに便利で革新的な技術を秘匿していたなんて人が悪い。是非ともグループ内で技術共有して貰いたいですわぁ』
今回の外部にも中継配信された地球寮vsグラスレー寮の決闘において、最も宣伝効果があったのは言うまでもなく『アナハイム・エレクトロニクス』社のMSであり、株式会社ガンダムをそっちのけて話題を独占してしまったりしている。
――株式会社ガンダムを隠れ蓑にする『者達』にとっては許容範囲内の予想外の出来事であるが、結果は変わらないので静観の構えを取る。
『いやいや、『ナノラミネートアーマー』と『ALICEシステム』、3分の2は過去に披露してたじゃないですか? 何言ってんの?』
なお、その『当人』は今更感が強く、乗り気じゃない様子であり――。
『……説明が足りない、と言っている。『アナハイム・エレクトロニクス』代表、新規技術を含めて、もう一度詳しい説明を頼む』
珍しい事に、御三家の一角であるグラスレー社CEOのサリウス・ゼネリがフォローを入れる。
――今までのように『アナハイム・エレクトロニクス』社の頭おかしいやらかしに関して思考停止の静観の構えでなく、積極的介入による情報収集へと方向性を変えたのだった。
『……ふむ、まぁ解りましたとも、グラスレー社CEO、サリウス・ゼネリ殿。――それはそれとして、決闘の集団戦とかいう幾らでも自社のMSを差し込めるクソレギュレーション、そのままで良いのですか? うちが肩入れした方が100%勝ちますよ!』
『……悪用する『狼藉者』が学園から居なくなるまで、実質選択禁止で良いのでは?』
――満場一致で、『彼』が在学する間に集団戦を行う者など『彼』以外居なくなる。これを持ち味としていたグラスレー寮は全力で泣いて良い。
『さて、それでは過去のおさらいから始めましょうか。ジェガン『P.D.(Post Disaster)』型は特殊な動力炉『エイハブ・リアクター』を採用しており、それ由来の装甲加工技術が『ナノラミネートアーマー』です』
ちなみに説明してないが、ジェガン『P.D.』型の兵装は狙撃ライフルと――近接格闘戦用の100%レギュレーション違反疑惑のある一撃必殺兵装、パイルバンカーが隠し武器となっている。これは本仕様を『正攻法』で破ろうとした敵対者を穿つ為の死の宣告である。
『決闘出力のビームでは何一つ参考にならないので、実戦仕様で撃ってみた結果の動画を持ってきましたよ! VTRどうぞ!』
『彼』が用意した動画には、何処かで見た事のある『いつものフェイスの黒いMS』がロングバレルビームライフルを構えている姿が表示されており――。
『はいちょっと待ちなさい。――何故、我が社のファラクトが『貴方』の動画に?』
『はい、『アナハイム・エレクトロニクス』社は貴社のMSのコンセプトを高く評価してますよ! ああ、勿論『GUNDフォーマット』とかいう欠陥技術は論外ですので、中身は全くの別物ですよ!』
『ジェターク社に続いてまたやりやがりましたね!? 肖像権違反で訴えますよ!?』
『彼』が平然とペイル社からの追及にしらばっくれる中――『またか』『またやりやがった!』『ファラクトMk-A.Eって事か……』と、全員いたたまれない気持ちで、本物より性能が上回ると思われる贋物を眺めたのだった。
『……話が進まん。後にしろ』
サリウスが些細な事だと切って捨てて――超圧縮した粒子のビームが撃ち放たれ――巨大な白い鳥の如くMAに直撃するも、ビームが四方八方に霧散し、無傷に終わる。
『……いや、その――あれ、何?』
『そりゃ『悪魔』が狩るべき『天使』ですよ! 万が一、討伐出来たら七星勲章物ですよ!』
なお、その後に、頭部ビーム砲から遥かに凌駕する高出力のビームが宇宙の闇を照らしたが、この『天使』の討伐は本筋とは関係無いので此処でカットされる。
……以前の『悪魔』を紹介した際の与太話が真実であると悟った者は、思わず目眩を起こしたのだった。
『――素晴らしい! この『ナノラミネートアーマー』を採用すれば、我がグループのMSは無敵になれますな!』
『これこそ我らが切望していた『ゲームチェンジャー』に成り得る新技術! 是非ともこの技術を提供して頂きたい!』
プレゼンテーションする『当人』のやや低めのテンションとは違い、今回は何故か大好評であり――。
『……まぁビーム兵器に対する絶対的耐性と実体弾耐性はそれなりの代物ですけど、無敵じゃないんだよなぁ』
『……少なくとも、決闘においては突破する手段が皆無だろう?』
ただでさえビームの出力が調整される決闘において、対抗手段が無いように思えるが――『彼』は首を横に振る。
『特殊塗料が塗布されている装甲材なんか無視して関節部斬れば問題無いですよ!』
『……動き回っているMSのそれを正確に断てる『人外』など然う然う居てたまるか』
『決闘じゃないなら集中砲火して焼き殺せばいいですよ! MSは無事でも中の温度上昇まではどうにも出来ないので』
ニコニコと対処法を述べる『彼』に一部の者達が戦慄する。それはまるで実際に行ってきたかのような生々しい対処法であり――。
『あと許容量を超える衝撃を与えれば良いですよ! 主にコクピット付近に』
大多数の者は首を傾げるが、一部の者はそれが意味する事を即座に理解して青褪める。
『――装甲を破壊出来なくても『中の人』をミンチにするのはそれに比べて遥かに簡単ですので!』
仮に『彼』に決闘で『ナノラミネートアーマー』採用のMSをぶつけた場合、決闘なのに関わらず死人が確実に出る事を認識する。
『あと、もう1つ致命的な欠点がありまして』
『ははは、ご謙遜を。この革命的な新技術を前に多少の代償など些細な――』
『コスパが最悪なまでに劣悪、従来のジェガンより10倍以上高いですよ。1機揃える金銭で他社の量産型MS40機以上揃えた方が良いんじゃね?』
この相転移変換炉の製造は太陽近傍の専用工場でないと行えず、自前で造るのは採算が全く合わず――。
『そ、それでも、エース専用の超高性能ワンオフ機なら――!』
『40人分以上の働きを期待されるとは、そのエースパイロットも大変ですね』
『アナハイム・エレクトロニクス』社でも採用しているMSは少なく、採用している戦艦ではメンテナンスフリーとなるUG細胞と併用しており――。
『戦闘の衝撃によって塗膜の剥離や破損は多少なりとも生じますから――この金属塗料を再度行える企業、この宇宙で『アナハイム・エレクトロニクス』しかいないけど、末代まで我が社に貢いでくれるの?』
『あ、はい、すみません遠慮しておきます……』
相転移炉『エイハブ・リアクター』を量産出来る、桁外れの工業力を持つ『超巨大武装組織』が無ければ正式採用など夢のまた夢、『ちなみに我が社でも運用するだけで赤字垂れ流すので採用してませんよ?』と付け足す。
『……決闘での『ナノラミネートアーマー』の採用を禁止する』
これも満場一致で採択される。『アナハイム・エレクトロニクス』の独占技術で有利に立たせない事と、決闘で死人が出る事を防ぐ為の配慮とも言える。
『続いてダリルバルデMk-A.Eに搭載されている発展型論理・非論理認識装置『ALICEシステム』ですが――前に説明してなかったっけ? 自己判断・機体の自律操縦機能を有する人工知能だって』
『一言も説明してない新事実をぶっこんできた!?』
名だたる上位企業の代表達が騒然とする中、『彼』だけは平常運転であり――。
『――『父親』であり『恋人』でもある教育役と共に学習し、成長する――明確な自己意思を持つAIですよ!』
『人の息子が乗るMSに奇妙極まる『システム』を独断で組み込むなァ!?』
グエルパパ……もといヴィムCEOからの抗議は当然のものだったが、普通にスルーされる。
『多分次回辺りの決闘でその真価を見せてくれるでしょう。エアリアルとは違う意味での『人機一体』、実に楽しみですね!』
『ちなみに馬鹿げたコストの一品物なので、量産は不可能ですよ!』と注釈する。
『そして最後にジェガンPD型の防御兵装『プラネイトディフェンサー』ですけど、実戦出力のビーム及び実弾兵装、更にはビームサーベルも防げる強力な防御兵装ですね』
『どうせお高いんでしょ?』
『普通に量産型MSに採用出来るほどコスパ良いですよ。ただし――』
元々『プラネイトディフェンサー』は量産機に採用された防御兵装であり、万能性の割にはコスパは非常に良好であるが――このA.S宇宙においては厄ネタの極みになるのが残念である。
『これ、一品物で量産不可能な『ALICEシステム』とは違って量産可能ですけど――技術的に『無人ドローン兵器』の応用なんですよね。というか、元々は無人自律型兵器である『MD(モビルドール)』の兵装で、更に言うなら、うちの製品なのでグラスレー社のアンチドートに阻害されませんよ!』
かつて地球を戦場にしたドローン戦争は、パーメット・電子対抗装備であるアンチドートによってその機能を無力化されたが――最後の最後に待ち受けていた、自らを破滅させかねない『パンドラの箱』に全員が戦慄する。
この技術が万が一外部に漏れたら、対抗装備の通用しない無人ドローン兵器が再び牙を剥く事になり――。
『――当プロジェクトの凍結及び関連技術の拡散を禁ずる』
『了解です。此方としてもMD(モビルドール)なんてエレガントじゃありませんしね!』