Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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70/別の宇宙での結末(1)

 

 

 

 

「――実を言うとね。今の状況に『幸福』を感じている。不謹慎極まる話だけどね」

 

 ――敵戦線への単騎駆けを見事果たし、『最終目標』に接敵出来た。これ以上の邪魔はもう入らないだろう。宇宙革命軍の『残党』は既に作戦行動を終了し、撤退済みである事は確認済みであり――。

 

『何をしている――早く退避しろ! 月の『送電施設』が既に存在しない以上、その小惑星は――!』

 

 最後まで貧乏籤を引き続けた『彼』からの通信に、思わず安堵する。

 『彼』のMSは道中で被弾済みなので、追いつかれる心配は無い。――十数年前と一緒で、『彼』はそういう役回りなのだろう。

 

「阻止限界点を遥かに超過しているな。うん、だからと言って、諦める理由にはならない――」

 

 最初からこのMSに乗った時点で――またこのMSに乗る時など、あの時の『再現』に他ならない。

 その小惑星の先端部に張り付き、全スラスターをフルスロットルで噴射させる。あの時、『彼』がそうしていたように――。

 

 

「――地球にはあの『2人』がいる。君達の紡いだ物語は、人類の業程度に踏み潰されていいものじゃないさ」

 

 

 胸に去来するは、オールドタイプの『少年』とニュータイプの『少女』の心躍る『恋物語(ボーイ・ミーツ・ガール)』であり、物語が終わった後も生き恥を晒して生きていた甲斐があったと歓喜する。

 

 ……『月』の脅威が消え去ったからと言って、今度はシリンダー型のコロニーじゃなく小惑星を落としにくるとか『頭U.C.』か『頭ジオン』かよ? 何処の宇宙でも『残党』はろくな事をしない。

 

『馬鹿な真似はやめろ――1機のMSで押し返すなど無茶だッ!』

 

 全く、あのサングラスは忌々しい『赤い彗星』を連想させるのに、役回りは『先輩』に近いとは――この宇宙での『友』が最後の交信相手で良かった。

 

「奇しくも同じ状況さ。――たかが石ころ一つ、押し返してやる。『νガンダム』は伊達じゃない、とね!」

 

 『NT-D』を任意発動させ、ユニコーン・ガンダム4号機としての全性能を発揮させる。機体が緑色に発光し、サイコフレームの共振現象を意図的に引き起こす。

 

「――なので、あとはパイロットの問題だ。……いや、割と最大の問題要素だけど。正直『先輩』の真似が出来るかなと言われれば全力を持って断言出来る。わかんないって! いやぁ、大抵の無茶振りには答えてきたつもりだけど、『アクシズ・ショック』の再現は未知数だからね、何が起きたかという結果でしか語れないし」

 

 少しだけ不安に思いながら「それだから俺はいつまでも、いや、永遠に『出来損ない』なんだよね」と自嘲する。

 まぁ『先輩』はフル・サイコフレーム機じゃないのに『奇跡』を起こしたから、フル・サイコフレーム機なら楽勝楽勝と全力で自己暗示しとく。

 

 ――閉ざしていた感覚を無理やりこじ開けて、周辺宙域及び地球上のあらゆる思念を感知して、片っ端からそれを薪にして焚べる。

 ユニコーン・ガンダム4号機の背後に結晶状の擬似的なサイコフレームである『サイコ・シャード』を無限増殖させ、感応波の増幅炉として更に無限循環させる。

 

「君達から貰った『暖かな光』が、この虚ろな胸に残っている。なら、ニュータイプの先達として『奇跡』の一つぐらい起こして返礼しないとね!」

 

 機体が負荷に耐え切れずに次々と破損していき、通信機能も亡くなり――自らの全生命を薪に焚べながら、こういう感覚だったかな?と『友』に最期の交信を試みる。

 

「――遺言なんだけどね、『2人』には俺の事、言わなくていいよ。傍迷惑な後方保護者面の不審者が勝手に行方不明になるだけだからさ。未来に『過去の亡霊』など必要無いだろ」

『――! ――!』

 

 むこうからのニュータイプ的な交信は煩雑としていて言語化出来ないが――まぁ何を喚いているかは、大体想像出来る。

 けれども、『君』は俺とは違う。過去に囚われて一歩も進めなかった『自分』とは違って、それを糧に次に進める人間だ。――過ちは繰り返さない。それを実践出来る『大人』だよ、この宇宙で唯一の『友』である『君』は――。

 

 

「――楽しかった、面白かった、微笑ましい『恋物語』で心洗われたよ。だから、この物語に俺の存在は何よりもいらない」

 

 

 ――願わくは、小惑星アクシズを押し戻した『先輩』と同じ場所に、今度こそ逝ける事を願って――。

 

 

 

 

「――アイムシンカァ、トゥトゥトゥトゥトゥ~」

 

 散布される『虹色の光』が、人の文明の全てを無条件に分解していく。

 最大出力での射程、地球圏から木星圏に及ぶ『虹色の奔流』を、執拗なまでに丁寧に塗り潰していく。

 

 ――文明を失った人類は99%はそのまま死滅するだろうけど、特に感慨が浮かばない。絶滅したとしても次世代の霊長が台頭するだけの話だし、どうせ人類はしぶとく生き足掻くのだろう。

 

 人の悪意という名の雑音が徐々に小さくなって消えていき、無音の静寂に近づく。いつもいつも鬱陶しくて鬱陶しくてたまらないけど――消え去る時だけは痛快だ。

 少しでも雑音があると眠れない、繊細な性質なだけに、今夜は、ぐっすりと眠れそうだ――。

 

 

 

 

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