Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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71/別の宇宙での結末(2)

 

 

 

 

 ――そして、数多の妨害を全て除去し、その第三射が『地球大西洋連邦首都ワシントン』に向けて解き放たれる。

 

 射線上の敵・味方含むMS及び戦艦が悉く消滅し――進路上のあらゆる存在を薙ぎ払い、最終目標である『青き清浄なる世界』である母なる地球に直撃する。

 宇宙要塞ヤキン・ドゥーエからでは目視出来ないが、現在の地球は過去5回起こった『大絶滅』に匹敵する規模の大災厄に見舞われ――。

 

 

「――おめでとう。『創世の光(ジェネシス)』は見事、最大出力で地球に照射された。世界を滅ぼした感想、是非とも聞かせてくれるかい?」

 

 

 コクピットを貫いて沈黙した『裏切り者』のMSの骸を投げ捨てて、この結末を目指して暗躍した、人類種を滅ぼした『一個人』に通信する。

 

『――終わってみれば、何とも呆気無いものだ。本当に愚かなのだな、人間とは――』

 

 先程までの狂気に飲み込まれた狂騒具合とは一転し、普段の冷静さに立ち戻った『彼』は数多の人間を嘲笑いながら、名残惜しそうにそう締めた。

 

「――そうだね。この宇宙は、俺の巡ってきた中で1番救いの無い地獄だよ。『ナチュラル』と『コーディネイター』で種が滅亡するまで殲滅戦を繰り広げるなんて愚劣極まるとしか言えない。同じ人間なのにね」

 

 本当に、この宇宙は度し難いものだった。数多の宇宙を巡った『自分』が過去最悪と言って良いほどまでに。

 「その『コーディネイター』を上回る『ナチュラル』が存在する時点で笑い草なんだがね」と、その実証例である『彼』に言う。

 『彼』からの反応は簡素なものであり、当然と言えば当然だ。既に『彼』は自らの復讐を果たしており、その後の暗躍は単なる八つ当たりに過ぎない。更に言えば――。

 

 

「――止めて欲しかった、という本音は、残念ながらお門違いだよ。『君』が暗躍せずとも、俺がいる限り、この結末は変わらない。『創世の光(ジェネシス)』で一瞬で滅びるか、『月光蝶』で全部奪われて滅びるかの違いでしかない」

 

 

 『彼』の暗躍は、この狂った宇宙に対する『賽を投げる(ダイスロール)』であった。

 失敗しようが成功しようが、どっちでも良い。それなのにどんどん成功してしまうのは、『彼』としても「世界が滅ぶ事を望んでいる」と全力で悲観せざるを得なかっただろう。

 

『――そういえば、『君』の方は結局語ってくれなかったな。――どうして、この世界を滅ぼしたいと願った? 誰もが羨む、完璧な『コーディネイター』である『君』が』

 

 対して、今回の『自身』の暗躍は、不確定要素を徹底的に取り除いた上での確定的な干渉だった。

 最初から唯一つの目的に辿る為の行動だった為、出目任せなど一回も行わなかった。なので、運否天賦など起きよう筈が無い。

 

「――その『コーディネイター』だからだよ。俺が数多の宇宙を巡っている、という与太話は覚えているかな?」

『信じ難い事に、真実なのだろう? 『アナハイム・エレクトロニクス』社のMSは、まさに別宇宙の技術系統そのもの、それの証明だろう――』

 

 ――この結末に持っていく為に地球連合軍及びZAFTに強力に支援し、その資本を徹底的に搾取し、この宇宙の富で肥え太った『アナハイム・エレクトロニクス』社はもう1つの『終末装置』を完全再現するに至る。

 

「――生まれ変わって別個体になっても能力の限界は変わらない。行き着く果てはいつも同じだ。けれども、この宇宙では『例外』が発生した。――受精卵の段階で人為的な遺伝子操作が施された結果、この宇宙の俺には他の宇宙では絶対に備わっている『先天的資質』が完全に欠如していた」

 

 ――産まれる以前に切り刻まれた感覚を、今でも覚えている。

 絆と呼べる『先天的資質』を無意味な要素として切除された感覚を、今でも覚えている――。

 

「――良く解らないものを良く解らないまま適当に弄り回している結果がこれだ。『出来損ない』をそれ以下の『欠陥品』にされたら、そりゃもう何もかも滅ぼすしかないだろ?」

 

 精神の摩耗も押し寄せる精神的発狂すらも凌駕・超越する『憎悪』が『亡霊』を全力駆動させ――。

 

『――なるほど。『君』は自身の『意図的な欠落』を憎悪し――』

「そういう点では『君』と同じだね。似た者同士、思惑は違えど世界の終焉まで連れ添うとか中々素敵な運命じゃないか、ねぇ我が『悪友』よ?」

 

 その道中で、『自身』と同じぐらいの『憎悪』を抱いている『人間』がいれば、「――やぁやぁ、初めまして。一緒に世界滅ぼさないかい?」と、格別に優遇するのは当然だろう――。

 

『――全く、酷い『悪友』も居たものだな。普通は『友』が間違えた道を進むのなら体を張って止めるものだろう?』

「アクセル全開で後押しするから『悪友』なんだよ。知ってただろ?」

『ああ、最初から知っていたとも――』

 

 それを最期に、『彼』からの通信は途絶える。『先天的資質』が無くても理解出来る。『彼』はやっと、死の休息に微睡む事を許されたのだろう。実に羨ましい話だ――。

 

「――涙と悲鳴は新たな戦乱の狼煙となる、という趣向は嫌いじゃないけどさ……ごめんね、『悪友』に配慮する必要無くなったから自らの手で全て滅ぼすよ」

 

 今回最後に選んだMSの背部から膨大無数のナノマシンが散布され、完全な状態の『月光蝶システム』が発動する。

 世界の破滅に呆然とする友軍及び敵軍を等しく飲み込み、全身PS装甲で地球連合軍及び『三隻同盟』でも破壊出来なかった戦略級兵器を一瞬で飲み込み、その背後のプラントの次世代コロニー群を全て飲み込み――新たな『黒歴史』を告げる『蝶』は地球に向かって羽撃いた。

 

 

 

 

「……そんな、馬鹿な。今まで積み重ねてきた『アナハイム・エレクトロニクス』社の技術が、全く通用しないッッ!?」

 

 宇宙に浮かぶネオ・ジャパンコロニーの『全容(日本列島そのもの)』を認識してしまった『自分』は1d100のSAN値チェック……44、アイデアロールは自動成功で一時的発狂及び不定の狂気を見事併発し――。

 

「重力制御の基礎定理って何!? 何この奇抜なコロニー!? ナノテクノロジーのシールド技術って何!? ディマリウム合金――精神に反応して重力を発生させる上に形まで変える、非オカルトで暴走しないサイコフレームじゃねぇか!? 何これ超欲しい!」

 

 『F.C.』の歴史を紐解く毎に正気が削られる。『先天的素質』が無くとも精神感応して操作出来る技術系統を目の当たりにした事で拍車が掛かり――何よりも、この宇宙の軍事産業で入り込む余地の無い現状に驚愕する。

 

「そんな魔法の如き技術系統でやるのが『ガンダムファイト』……!? あ、頭がおかしくなりそうだ……!?」

 

 混乱が頂点に達した瞬間、何か色々見える。『刻』が見えた時の感覚に似ていたような……実際に見えてないのに『先輩』が物凄い顔で苦笑していた気がする。

 

「――良し、この宇宙での起業は不可能だから、適当に就職して新規技術の獲得に一生費やすかー」

 

 何はともあれ、未知を既知にする習得作業は初心を思い出して楽しく――後に馬鹿馬鹿しい茶番劇だと見下していた『ガンダムファイト』にどっぷりハマり、MFのテストパイロットを務められるぐらいには肉体を鍛えたのは秘密である。

 

 

 

 

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