Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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73/『魔女』は新しい宣伝方法を取り入る

 

 

 

「――それに、しても、何というか、ええ、皆様らしい、唯一無二のPV映像だったかと!」

 

 地球寮にて、『ガーンダムーガーンダムー、希望の光~!』という気の抜けた合唱が響く中、『アナハイム・エレクトロニクス』代表である『彼』は笑いを必死に堪えながら称賛の声を掛ける。

 ところどころ露骨な編集の後があったり、ヤギが歩いていつの間にか消えていたり、時間経過と疲労で徐々にキマっていくスレッタの顔芸が見所であり――。

 

「『社長』が忙しい時に手伝わなかったせいだろうがぁっ!」

「それに関してはシャディクに文句言って下さいな、チュチュ先輩。……『私』、粘着ストーカーされた被害者ネ!」

 

 こんな天然物の面白いものを下手な横槍で台無しにするなど勿体無いったらありゃしない!

 シャディクとの決闘が無くても間違いなく介入しなかっただろう。良い物を見れたぁと、久しぶりに腹の底から爆笑したのだった。

 

「――しかし、1番の目的は果たせているので、良いPVだと思いますよ。歌って踊れる『ガンダム』なんていう発想は『私』にはありませんし。……『戦乙女』じゃないと出てこない発想ですね!」

 

 実際の『GUND-ARM』の実態はともかく、呪われたMSである『ガンダム』に対する悪いイメージを払拭するという最大目標は楽に達成しているので、及第点は与えられるだろう。

 なお、『アナハイム・エレクトロニクス』代表からの『ガンダム』のイメージは『彼』の『先輩』基準なので、身構えていても容赦無く来る死神扱いである。

 

「『社長』さんならどういうPVに?」

「そりゃニカさん、100%、MS同士の戦闘映像になりますとも。MSが最も映えるのは『戦闘』ですからね!」

「そんな贅沢な使い方出来るのは『社長』ぐらいだろ……」

 

 言葉を飾らずに言えば、MSなど殺し合いの道具に過ぎないのだから、生命のせめぎ合いの時が一番輝く事を実体験で知っているので、それ以外の見せ方という発想がそもそも存在しない。

 戦闘以外の活用方法と言えば「まぁ中にはMSで『洗濯』したり、『橋』になったり、崩れそうなマスドライバー支える為の『鉄骨の一部』になったり、『対話』したりするのもいますけど」「何じゃそりゃ?」と、極一部の例外だけなので、尚更の事だろう。

 

「……うむ? 考えてみれば、PVとして宣伝するという発想は無かったなぁ。案外面白いかも?」

 

 思い立ったら吉日、善は急げ。悪も急げ。手間とかコストとかを後先考えずに、まずは色々試行錯誤しながら雛形を造ってしまおう。

 

 

 

 

『――ミッションを説明しましょう。依頼主は『アナハイム・エレクトロニクス』社、目標は当輸送船を追撃するMS3機の撃破です。敵MSは我が『アナハイム・エレクトロニクス』が誇る汎用量産型MS『ジェガンD型』2機、1機は対艦攻撃能力を付与した特務仕様の『スタークジェガン』ですが、そちらの機体ならば物の数では無いでしょう。目的地到達までの10分以内に片付けて帰還して下さいね――』

 

 

 

 

 

『……それで、このPVは一体何が目的で?』

『何って、一目瞭然じゃないですかー。うちのジェガンの格好良い勇姿を描いた、迫真のPV映像ですよ!』

 

 ……いい加減、ベネリットグループの上位企業の代表達はちゃんと仕事をしているのか、疑問に思いたくなるほどの出席率を誇る音声オンリーの通信会議にて、『アナハイム・エレクトロニクス』社からのほぼ実写のPV映像が公開された。

 上映時間は僅か3分だったが、ジェガン3機と以前紹介した『4枚羽』――クシャトリヤとの戦闘は見応え満点であり――。

 

『……いや、全機やられとるじゃないか』

『当たり前じゃないですか。汎用量産型MSが『先天的資質専用機(クシャトリヤ)』と遭遇したら一方的にやられるに決まってるじゃないですかー。むしろ、此処まで善戦出来た事を褒めるべきでは?』

 

 なお、2機はほぼ何も出来ずにファンネルの餌食となって爆散(本当に撃破している訳でなく、おそらくは映像加工であるが)し、最後の特務仕様との一騎打ちに尺を取っている形だった。

 『両陣営とも『アナハイム』製MSなのを突っ込むべきか?』『今更では?』『それ以前にさらっと初出された『D型』と『特務仕様版』についてもっと良く突っ込むべきでは?』と、興奮気味の声が多方面から漏れる。

 

『――それはそうと、この女性パイロットは何者だ? 『アナハイム・エレクトロニクス』社専属のテストパイロットか?』

『残念ながら『私』の他に任せられるパイロットはいないですね。クシャトリヤのパイロットであるマリーダ・クルスの容姿・声は全部合成ですよ!』

 

 さり気なく、サリウスCEOが探りを入れ――ファラクトMk-A.Eのパイロットが『彼』の他にいる以上、胡散臭い笑顔と同様に信じられる言葉では無かった。

 『美人さんなのに残念』『まぁムサい男とか『胡散臭い男』よりは映像映えするのでは?』と好き勝手な感想を話し――。

 

 

『――MSの提供は『アナハイム・エレクトロニクス』社、パイロットは全部『私』ですよ! フラッシュシステム積んで動かしているので、操るファンネルの数が増えた感じですね!』

 

 

 一番どうでも良い情報を投げ捨てた『彼』は『うん、結局は一人遊びな気がするけど、虚しくなるから気にしないでおこう!』と自分を納得させる。

 

『ちなみにオマケ映像もありますよ! 題して『クシャトリヤ3分クッキング』! いや、3分も掛からないけど』

 

 続いて放送されたのは、3機との戦闘後の消耗したクシャトリヤに強襲する『先天的資質専用ジェガン』であり――クシャトリヤの『4枚羽』から即座に展開された12基のファンネルを、『先天的資質専用ジェガン』もファンネルを6基展開して迎撃し――ビームライフルの射撃もあわせて、ものの2~3秒足らずでクシャトリヤ側のファンネルを全基叩き落とし、ジェガン側のファンネルの射撃がクシャトリヤに集中し――。

 

『……聞いて良いかしら? 実戦仕様のビーム、ねじ曲がってなかったかしら?』

『クィン・マンサのものとは性能が若干落ちているとは言え、メガ粒子偏向器――特殊電磁場効果でビームを弾く『Iフィールド』が搭載されてますよ!』

 

 『4枚羽』に装着されたメガ粒子偏向器によってファンネルのビームが全部弾かれ――。

 

『以前の説明で聞いてないんですけど!?』

『あれれ、言ってませんでしたっけ? そういえばエラン君が一発も当ててくれないからお披露目出来てなかったですね! その存在をすっかり忘れてましたよ!』

 

 ファンネルでの乱射は目潰し程度の目的だったらしく、同時にありったけのミサイル&ハイパーバズーカによる質量兵器の数々が同時に着弾し、呆気無く撃破されるクシャトリヤの無惨な姿(多分、合成。多分)が早くも宇宙の闇に晒され――。

 

『――『アナハイム・エレクトロニクス』代表、ジェガン一個小隊分、発注お願いします』

『おま、マジで!? 以前から欲しがっていたけど、マジで買っちゃうの!?』

『わぁお、毎度ありですとも! いやぁ、良い買い物しましたねー! 宇宙一拡張性のある汎用量産型MS、ご堪能あれー!』

 

 

 

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