Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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75/『魔女』のジェガン愛は割りと重い

 

 

 

 

「……改めて言うまでもないですが、『社長』はジェガンをこの上無く偏愛してましてね」

「うん、知ってる」

 

 月の『アナハイム・エレクトロニクス』本社にて、社員の1人の胡散臭い男(『社長』に似てほぼ全員が胡散臭い)と元エラン・ケレスで現在本社の空気に馴染みつつある元強化人士4号『レイヴン』は、何度目かなる社内研修に励んでいた。

 

「我が社の傑作量産型MSであるジェガンは宇宙一拡張性があり、複数のバージョンが存在します」

 

 それは元の設計思想が優秀なだけでなく、ジェガンにこだわり続けた『社長』の執着及び妄執の方が色濃く反映された結果じゃないだろうか?

 

 ――なお、ジェガンの他にも量産機のデータは山ほどあり、それでも実際に造っているのはジェガンだけの時点で色々察せられるだろう。

 

 話の腰を折るのは悪いし、『レイヴン』は口に出さずにしまい込む。基本的に『彼』の破天荒さを常識で測る行為は無駄極まる。

 

「まずはジェガンA型、所謂初期量産モデルであり――『ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉』を搭載せずにダウングレードしている廉価版が一般流通している正式モデルですね」

 

 聞けば聞くほど酷い話である。それなのに性能面は突き抜けているのが性質が悪い。

 

「本来は操縦方式に球状操縦桿『アーム・レイカー』を新規採用していたみたいですが、衝撃で手が滑りやすい欠点が現場から不評を買い、従来のスティック方式に戻された経緯があるようですね」

 

 見慣れない球状の操縦桿がタブレットの資料に表示され「スラスターからマニピュレータといった殆どの操作を手元で行う事が出来る画期的な物だったらしいですが、『社長』は物凄く文句言ってましたねぇ」と残念がる。

 先進的な技術が好きそうで、意外と堅実というか現場主義的な一面もあるんだな、と『レイヴン』は感心する。

 

「――ニュータイプ専用ジェガンA型。まぁ実質『社長』専用機ですね! コクピット周辺にサイコフレームを採用し、充電可能なファンネル・コンテナを装着した事以外は変わりないですね」

「……とてもそうとは思えない……」

「まぁ乗っているのが『社長』ですからね! テストパイロットとして破格過ぎるせいでMSの性能が逆に解らなくなるので失格という『人』ですから!」

 

 現在、学園の方に持ち出しているので資料だけだが――鬼に金棒、『彼』にファンネルと言った処か。

 他の資料ファイルに、物凄く大きな背部ユニットと『大型の放熱板』を装着した『ロズウェル・ジェガン』なるバージョンもあるようだが――これは実際には造られてないようだ。

 

「そしてこれがニュータイプ専用ジェガン戦地改修最終決戦仕様。……一体何と戦うつもりなんですかね?」

「僕に聞かれても、その、困る」

 

 以前にシャディクとの決闘で使われた狂気の沙汰のオンパレード、これも現在は資料のみであり、汎用性など皆無な仕様であろう。

 

「型式番号『RGM-89D』ジェガンD型、中期生産モデルですね。ジェネレーター出力及びスラスター推力の向上が施され、肩の形状など細かい箇所に仕様変更が行われてますね。先の『グラスレー本社襲撃戦』に投入されたジェガンはこれの特務仕様バージョンの、型式番号『RGM-89S』スタークジェガンです」

 

 この2つの仕様は、本社に数多く配備されており、見慣れたものとなっている。

 

「ジェガンPD型……グラスレー寮との決闘に投入した特別仕様の1つですね。MDのビルゴⅡの防御兵装『プラネイトディフェンサー』を搭載した事以外は変わらないですね」

「量産機に搭載出来るほどコスパ良い兵装とは思わなかったけど」

「まぁ無人自律兵器という部分で色々な倫理に引っかかるんですけどね! あと、一定以上のパイロットなら苦もせずに対処出来ますね」

 

 その一定以上のパイロットがどれほど上澄みの存在かは、語るまでもない。

 ファラクトMk-A.Eなら苦戦しないが、初見殺し過ぎる防御兵装だろう。……これを普及させたとしたら、喜々とこれを貫ける対策兵器を強く売り出す事だろう。

 

「ジェガンP.D.型……相転移変換炉『エイハブ・リアクター』を搭載した『ナノラミネートアーマー』採用機ですが、高コスト故に量産出来ない量産機なんて存在意義がありませんね」

 

 「此処まで来ると最初から超高性能のワンオフ機を造った方が良いんじゃね、となりますね!」と胡散臭く笑う。

 

 

「そして此処からが未公開の後期型モデル、ジェガン第2期型です」

 

 

 鳴り物入りで紹介された『第2期型』のジェガンは、普段のジェガンと比べて、1周り以上――。

 

「……小さい?」

「これが現時点での『アナハイム・エレクトロニクス』社の技術の最先端ですよ」

 

 「量産機としては、ですが――」と意味深に付け足すが、単純に小さくなっただけでは様々な面での弱体化は免れないのでは……?

 いや、もしかしたら――性能を一切劣化させずに小型化に成功したのならば……!

 

「18~20メートルだったMSを14~15メートルまで小型化したものです。旧来のMSと比べて小型且つ軽量、より高出力のジェネレーターとスラスターを搭載した――旧来と同等以上の火力を維持しつつ、より強力な機動性・運動性を発揮出来る、まさに新世代型ですよ」

 

 このジェガンは正史の宇宙世紀には存在しない『第2期型MS』仕様のジェガンである。

 『彼』の偏愛と、ニュータイプかつ卓越した技量持ちの『彼』が『アナハイム・エレクトロニクス』でテストパイロットを務め続け、尚且つ『アナハイム』の代表として時代の最先端を常に走り続けて未来を見据えた結果、宇宙世紀0123年の『コスモ・バビロニア建国戦争』への投入に間に合った傑作量産機の後期モデルの初期型仕様であり――。

 

「防御兵装に『ビームシールド』を標準装備しており、ビームシールド発生機が損傷しない限り何度でも再展開出来ます」

「エネルギー問題は?」

「消費量を大きく上回る高出力ジェネレーターで解決済みですね。武装面は対『ビームシールド』を主眼とした特殊兵装を多数用意しております」

 

 その特殊兵装の1つには、かつてのライバル会社として台頭しようとして出る杭を打たれた『サナリィ』製の『V.S.B.R』などが掲示されているのだった。

 

 

 

 

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