Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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79/『魔女』は事前準備を怠らない

 

 

 

 

「――武装面は、ほぼ基本的な構成なんですね……」

「奇をてらう必要は無い。王道が王道足り得る理由は、それが一番優秀だからだ。兵器に必要なのは奇抜さじゃなく、積み重ねた信頼と実績の数々さ。――生命を預けられるとは、そういう事さ」

 

 『決闘』で多種多様のイカれ……ユニークなMSを持ち込む『アナハイム・エレクトロニクス』社だが、今回、アスティカシア高等専門学園に持ち込んだMSは一般公開されてない秘蔵の中の秘蔵の類だった。

 

 ――珍しい事に、『アナハイム・エレクトロニクス』代表が直々にそのMSを選出し、細かく武装指定までしたのだ。事の重大さは今までの比ではないだろう。

 

「個人的には複合機構は嫌いかな。機能の圧縮・統合による効率化とは聞こえが良いが、機能不全によるリスクが集中し過ぎるのは頂けない。――仮に全局面に対応出来る万能兵装があったとしても、それが故障または損傷したら戦えません、では話にならないだろう?」

 

 社員の担当者に「グラスレー社のミカエリスの右腕戦術複合装備とか、まさにそれだ。最悪級だよ」と『彼』は愚痴る。

 他社のMSを真似る(魔改造込み)事に定評のあるMk-A.Eシリーズだが、残念ながらグラスレー社のミカエリスはコンセプトから酷評の嵐であり、選定基準すら満たしていない。

 

 ――多種多様のMSを平然と乗りこなす『彼』だが、意外な事に武装面に関しての要求は堅実の一言に尽きる。

 

「ジェネレーター直結型で半固定砲台の上に使い勝手が若干悪いが、ビーム・バリアの上から敵MSを撃破出来る『V.S.B.R.』は大好きだよ。サナリィは良い技術を開発してくれたものだ」

 

 ビーム・サーベル2基、ビームライフル2門など、基本武装すら普通の量産機と比べて増設されているのは、一般パイロットと比べて戦闘時間が遥かに長くなるからだ。

 特に、今回の事前予測では1対多が想定される上に補給は一切望めない。単機での継戦能力を何よりも重視している武装構成になっている。

 

 

「――まぁ此処まで来ると面白味が逆に皆無になるのは仕方ないかな。量産機としては完全に失格だし、そもそも『仮想敵』が存在しないからね」

 

 

 事前準備に最善を尽くすのは当然であり、足を引っ張る無能な味方もいなければ徹底的に邪魔する敵も存在しない。

 『アナハイム・エレクトロニクス』社が保有する能力を一切損なわずに振るえる環境が用意されているので――。

 

「唯一の遊び心であるファンネルの形状がこれに至ったのは――」

「ある意味原点回帰だね。技術的進歩で本体供給の必要がほぼ無くなったからね」

 

 ――小型高性能化、純粋な技術の積み重ねによる日々の研磨で辿り着く境地であり、満足の行く品質になっている。

 時代を逆行した高コスト化の一途を辿ったせいで一基でも撃ち落とされた際の損失は考えたくもないが――。

 

 

「――型式番号『RGM-148』ジェガン後期最終型、完成形MD搭載、V.S.B.R.及びFF換装仕様と言った処か」

 

 

 最初の宇宙での最終仕様、正史と違って『アナハイム・エレクトロニクス』社は没落せず、『地球連邦』は飼い殺しにする筈だった『ニュータイプの出来損ない(『赤い彗星』の真の後継者)』に影から実権を握られ、『ザンスカール戦争』前に配備完了した至高の量産機であり――。

 

「……あー、代表? 意見具申が――」

「却下。いらないよ」

「……まぁ必要無いのは先刻承知なんですがねぇ、万が一の事も考えて欲しいのですが?」

 

 言いたい事は理解しているが、応じる事は有り得ない。

 正直、ファンネル・コンテナを後付したジェガンA型でも過剰戦力なのだが、事前準備を怠るという選択肢は最初から存在しない。――したくても無能な味方に邪魔されて出来なかった、ロンド・ベル時代の苦々しい記憶は、今も『彼』の中に不動の教訓として息づいている。

 最適な戦備を整える環境設備は『彼』の中での至上命題であり、その為にはあらゆる選択肢を行使する。

 

 

「――『アナハイム・エレクトロニクス』社は『私』の為だけの手足だ。『私』という頭脳が無くなった後の事なんて『私』が考慮する訳無いだろう?」

 

 

 身も蓋も無い言葉だが、それが『アナハイム・エレクトロニクス』社の存在意義であり、組織としての実態である。

 ……それでいて、社員の全てが最初から納得している事でもある。

 

「確実に内乱多発で自動的に崩壊しますもんねー! ああもう仕方ない、存分に愉しんで来てくださいな。あと出来れば絶対生還して下さいね!」

「当然さ。まだ『私』はこの物語の終わりを見届けてないからね――」

 

 

 

 

 

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