Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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81/『魔女』は面倒な前日譚を最速で終わらせる

 

 

 

 

『……勘違いでなければ、前回の『グリプス戦役』で、第三勢力の『アクシズ』もとい『ネオ・ジオン』が漁夫の利を得て一人勝ちしてましたよね?』

『ええ、近年稀に見る見事な手際でしたよ! 『ティターンズ』は壊滅し、勝利を得たものの『エゥーゴ』は指導者の――クワトロ・バジーナもとい『赤い彗星(シャア・アズナブル)』が行方不明になり、熟練将兵も多数戦死、流石の連邦政府も死に体で各方面での再編成を迫られてましたよ!』

 

 『第四回目』のPV鑑賞会が終わり――ペイル社のニューゲンCEOの質問に『彼』が胡散臭い口調で答えるものの、『特定個人』の名称に声色を変えていた事に誰が気づこうか。

 なお、第三勢力の『ネオ・ジオン』の指導者である女傑の事に関して1mmも言及しないのは『彼』にとっては縁の無い歴史上の人物に過ぎないからである。

 

『……その『ネオ・ジオン』が、何で勝手に自滅してるのです?』

『ジオンのお家芸の『内輪揉め』が発動したからですよ! 内紛なんて外敵の脅威が無い時に行えば良いのに、どうして自分達にとって致命的なタイミングでやらかすのか、心の底から理解出来ないですね。――ちなみに『一年戦争』のア・バオア・クー攻防戦でも、総指揮官のギレン・ザビを実の妹のキシリア・ザビが最悪のタイミングで暗殺してやらかしてましたね!』

 

 『エゥーゴ』と『ティターンズ』を二虎競食させて一人勝ちしたのに、王手直前に内乱勃発して体制側&反乱側の指導者が仲良く戦死という、誰もが『何でそうなるの?』と首を傾げたくなるほど呆気ない結末に至った次第である。

 

 ……本来ならばハマーン・カーン率いる『ネオ・ジオン』が初陣の相手になる可能性が高かっただけに『正直、余りにも愚か過ぎると逆に感想が何も出てこないですね』と『彼』は感情無く評する。

 

『アナハイム・エレクトロニクス社としては後手後手に回った挙げ句、戦争の長期化を想定していたのに『ネオ・ジオン』の内乱による奇跡的自滅で早期終結した為、介入の機会が無かったですね! フラグシップ機の『ZZガンダム』があの『少年』の手に委ねられたのが最大の敗因だったりしますね!』

 

 『彼』は全力で嘲笑う。流石の『頭アナハイム』も、ジュドー・アーシタという特異点の存在は読み切れなかっただろう。

 ……まぁあの『頭アナハイム』に読み切れないのだから、『自分』すら予測不可能の域なんだが。

 

『……1つ、良いか? 劇中で『遠隔操作端末兵器』が多数登場していたが、あれは――』

『はい、『サイコミュ・システム』――ある種の特殊な感応波を用いて無線操作する遠隔操作兵装ですね。その『先天的資質』の事を劇中では『ニュータイプ』と呼称してますね!』

 

 グラスレー社のサリウスCEOの質問に対し、『彼』は何も隠し立てせずに答え、この場にいる全員が衝撃を受けて騒然とする。

 ……この作中劇はフィクションと銘打っているが、一部のMSは実際に『アナハイム・エレクトロニクス』社で開発されており――『彼』が常々口に零す『先天的資質』の正体が半ば露わとなっており――。

 

『……その『サイコミュ・システム』とやらは、現実には――』

『ありますよ? うちがメインに取り扱っている『遠隔操作端末兵器』の大半は『サイコミュ』で動いてますよ! 偶に別系統のもありますけど』

 

 ――卵が先か、鶏が先か。『アナハイム・エレクトロニクス』社が保有する技術を紹介する為の作中劇なら問題無い。色々問題あるが、とりあえず問題無い。

 しかし、急造とは思えないほど作り込まれており、尚且つ、泣く泣く断捨離して30分程度の動画に編集しているという『彼』の言を盲信するのならば、これは――。

 

 

『――技術提供ならお安くしておきますよ? 『先天的資質』があるのならばリスク無しで『GUNDフォーマット』を凌駕する性能を発揮出来ますからねぇ!』

 

 

 既に何処かで起こった『歴史』をそのまま動画化している――などという有り得ない結論が脳裏に過り、誰もが自身の持つ常識からそれを否定する。

 更に言うのならば、サリウス・ゼネリ自身に否定出来ない要素、作中における舞台装置『ミノフスキー理論』が『アナハイム・エレクトロニクス』社で現実として実証されている理論だと知っているが故に、既に到達している真実を疑ってより困惑する。

 

『まぁそれより先にその『先天的資質』持ちを確保してからで良いのでは? それとも劇中のように『強化人間』造ります?』

 

 何処までが真実で、何処からが虚実なのか、情報の渦に飲み込まれ、全員が見極められずに疑心暗鬼となる。

 仮にその『サイコミュ』の技術提供を受けたとして、その『先天的資質』持ちがいなければ貰った技術が本物か贋作の判別すら付かないのだから性質が悪い。

 

 ――ただし、実際に『強化人間』の製造に手を付けた企業が居た場合、個人的な感傷により事前勧告無しで初手殲滅する模様。

 

 そして恒例のMS紹介の時間となり、今回の主役機が表示される。

 

『――型式番号『MSZ-010』ZZガンダム、アナハイム・エレクトロニクス社が開発した『エゥーゴ』の可変合体試作MSですね。……Zガンダムを超えるガンダムとして名付けられた機体ですが、全くの別系統の変態機体ですね! この恐竜的進化を辿った第4世代のMSの特徴は大型化・高出力化・複雑化による個としての性能を極限まで追求した事であり、その究極系がこのZZガンダムでしょう』

 

 スポンサーの無茶振り要求を馬鹿正直に全部達成した結果、化け物みたいなMSが誕生しました、と。

 劇中での華々しい大活躍とは裏腹に、誰も良い反応を示さないのは、財政的に間違いなく破滅する、致命的なまでに馬鹿高い運用コストが事前に解り切っている為である。

 

『単機で発揮出来る火力の極限、と言えば聞こえが良いですが、エネルギー消費が激しすぎるので否応無しに短期決戦用のMSとなっていますね。短時間限定の殲滅戦なら最高のパフォーマンスを誇りますが、これを数多の作戦行動で運用するなんて正気の沙汰じゃないですね。継戦能力に難があるMSという時点で『私』は乗りたくないです』

 

 冗談が総動員したような超性能に仕上がっているが、個人的な好みとは対極に位置しているので『……どうもZ系列とは相性が悪いようで』と『彼』は珍しく苦々しい顔をしている。

 

『さて、どうでも良い説明が全部終わった処で――』

 

 そう、『彼』にとってこれまでの茶番劇は、その『どうでもいい』、この一言に尽きるものであり――即座に次の予告PVが流れる。

 

 無駄に頭部バルカン砲を連射しながら正面にアップする『いつものフェイスのMS』の姿が入り――豪華にも主題歌が流れながら『白いMS』と『赤いMS』の激しい殺陣が繰り広げられる。

 『見慣れないMS』に『ジェガン(見慣れたMS)』が編隊を組んで正面から激突し――。

 

 

『――君は『ガンダム神話』、衝撃のクライマックスを観る!』

 

 

 とりあえず強制的に見せられた者の感想としては、明らかに前回までとは力の入れようが違いすぎて、その落差にドン引くレベルだった、と。

 

『……ねぇ、今回のPVよりもこの予告PVの方に力入っているように見えるのだけど?』

『当たり前じゃないですか、これをやる為に長い長いチュートリアルを極限までカットして流していた訳ですし!』

 

 誰もが『身も蓋も無い事を言いやがった!?』と突っ込むも、『当人』はハイテンション過ぎて耳に届いてない様子。

 

『――実は劇場版1本分ぐらいの尺でしたが、やめました』

『……やめた、とは?』

『別に、多少、滅茶苦茶、時間超過しても構わないですよね! それが例え24クールぐらいでも!』

 

 『アナハイム・エレクトロニクス』代表の全力で血迷った物言いに『話数とクール数、間違えてるんじゃねぇよ!?』と即座にツッコミが入り――なお、後に本気で言っていた事が発覚し、より一層驚愕する事になったとか。

 

 

 

 

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