『30秒で解る、連邦の『白い流星』アムロ・レイとジオンの『赤い彗星』シャア・アズナブルの関係!』
今回の5本目のPV『第二次ネオ・ジオン抗争』――もとい『逆襲のシャア』と銘打たれたPVは見るからに、今までのPVとは比にならないほど気合が入っており――120分の劇場版仕様と、12話仕様の2パターンがあり、この30秒で解る解説は劇場版を観る際の事前特番みたいなものらしく――。
『構ってください』
『知りません』
『じゃあ小惑星アクシズを地球に落とします』
『じゃあ殺します』
「こんな雑な説明で解るかぁー! そんなにさらっと地球に小惑星落とすんじゃないよ!? コロニー含めて何回落としてるのよ!? あとその30秒、倍速のED曲が大半じゃない!?」
父親であるデリングから無断拝借して『彼』の作ったPV映像を見続けていたミオリネは、いつものキレのあるツッコミを炸裂する。真っ先に罵声を浴びせたい『相手』は、遥か彼方であるが。
あと、倍速であるが、このED曲を歌っているの、地味に『彼』だという事にも気づく。倍速で声の高さが変になっているが、素のバージョンは腹立つぐらい良い声で歌っていた。
「……短いバージョンはこれまでの傾向から、必要な描写すら削って『万人に理解出来なくても自己満足出来れば良い!』的な感じに仕上げてるよね……? 創作物にも普段の説明不足を反映するのは致命的よね……」
……このPVの力の入れようは異常極まるレベルであり、正直気色悪い域に到達している。自社のMS宣伝という当初の表向きの目的など『彼』自身が真っ先に忘れているだろう。
それだけに、何か――真に迫るものがある。そんな気がする。いつも胡散臭い笑顔の仮面で全部隠している『彼』の根幹に巣食う『何か』が見えてきそうな、そんな予感がして――。
「……全12話で6時間前後、1クール連続視聴するようなものね」
多少長いと感じるが、今回はその12話の方を選択する。途中で飽きたら120分版のを見れば良い話だし――。
――最初の描写は、ジム系列のMSで宇宙での、1対6の模擬戦だった。
6人側の技量は見るからに低く、集団で囲んで攻撃しているのに未だにその1機を落とせない。練度の低い訓練生なのだろうか?
その1機の方は6人よりは良い動きをしているが――グラスレー寮の面々を単機で一方的に蹴散らす『彼』とは違い、ひたすら回避に専念して攻撃に移れず、徐々に被弾してジリ貧に陥っている。
『本当に私闘ではなく、模擬戦なのか?』
『ええ、『彼』自身が望んだ事ですよ。訓練生の中では格別に優秀なのですが、若さ故の自尊心というものは度し難いですな。一度圧し折らない限り、増長の一途を辿るでしょう』
地球連邦系の制服を着た若い青年士官と年を食った教官が話し合っており、やや天然パーマかかった赤髪の青年は、その1機に注目している。
教官側は、やましい事があるのか、非常に浮き立った様子でその青年士官の様子を恐る恐る伺っており、程無くして『通信、借りるぞ』と一言伝えて赤髪の青年士官が動き――。
『――そうじゃない。後ろにも目を付けるんだ』
『……は?』
四方八方から射撃の嵐を受けている『訓練生』に、意味不明な助言をしたのだった。
「いや、感覚的過ぎて意味解らないんだけど!?」とミオリネは即座にツッコミ――。
『誰だか知らないですが、人類の後頭部に、目なんかありませんけど!?』
『普通の人間ならその通りだ。――だが、君は出来る方の人間だ』
その『訓練生』も同じ気持ちだったのか、余裕が無くて怒鳴る形で反論するも、赤髪の青年士官は千里を見通すかの如き眼で断言する。
『感覚を研ぎ澄ませて、相手の敵意を感じるんだ。――見えてくる筈だ』
そんな世迷い言を突然言われても――と、思いきや、その『訓練生』は背後の死角から撃たれた一撃を偶然にも回避し出す。
1回、2回目は『当人』にも困惑が混じり、されども3回目以降は意図的に回避出来るようになり、其処からは早かった。
コツを掴んだその『訓練生』は瞬く間に反撃に転じ、程無くして6機全部のコクピットに着弾させて撃破判定を下し、1対6の模擬戦に勝利する。
その模擬戦を見届けた教官は驚愕した顔で『――まさか、本当に『ニュータイプ』なのか……!?』と呟く。
『通信の方! ご助言ありがとうございます、お名前を伺っても!? ――いや、待って下さい……貴方が、あのアムロ・レイ大尉ですよね! あってますよね!?』
先程とは打って変わって、その『訓練生』は捲し立てるように喋り、自分で質問しておいて――常人とは異なるプロセスで様々な要素を省略し――勝手に理解して正しい結論に至る。
アムロ・レイ――これまでのPVに度々出てきた人物、『一年戦争』において伝説的な活躍をした地球連邦の英雄の名前であり――。
『今後ともご指導ご鞭撻宜しくお願いしますね――『先輩』!』
どうしてだろうか。ミオリネは、この年若い『訓練生』に対して、姿形・雰囲気、果には声に至るまで何もかも似てないのに、何処か『彼』みたいだと思ったのだった――。
――地球連邦軍の独立機動艦隊『ロンド・ベル』が結成される前に、宇宙に上がった『彼』と出会った。
後にも先にも、『彼』と出会えるタイミングは『ニュータイプ』としての片鱗を周知されていなかった此処のみであり、少しでもタイミングがズレていたのならば――『ニュータイプ』同士の邂逅を良しとしない地球連邦側の介入が起こり、永遠に遭遇しなかっただろう。
――『彼』に出会わなかった『自分』など想像出来ないし、出会えなかった『自分』など『自分』じゃないので、考慮の余地すら必要あるまい。
その日、『自分』は確かに――『運命』に出会ったのだ。