Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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84/劇場版『逆襲のシャア』

 

 

 

 

『……何というか、奇妙な読了感があるな……』

 

 劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』と銘打たれた120分のPV動画を視聴し終わったベネリットグループ上位企業の代表達は染み染みと感想を述べる。

 前の動画と比べて、戦争の規模自体は縮小の一途を辿っているが、劇中のクオリティは随一であり、様々な感慨が浮かんでは消える。

 『アナハイム・エレクトロニクス』社のPV映像という題目を忘れ、作中の世界観に魅入られた者も現れ始める始末だ。……まぁ劇中の宇宙は我々の現実世界の宇宙と比べても、なお上回る地獄に等しい環境だが。

 

『MSの戦闘描写は随一でしたが、MSで小惑星を押し返すのは、流石にやりすぎでは?』

『まぁ現実味はありませんが、敵陣営のMSまで加わって小惑星を押し返そうとしたのは劇中一の熱い場面でしたね』

 

 仮に小惑星アクシズを押す無防備な敵陣営のMSを射程に入れたのなら『スペーシアンとアーシアンじゃ、あの状況でも背後から狙い撃つでしょ?』『悲しいけど、違いねぇなぁ……』と、ある種の遣る瀬無さを感じる。劇中のアースノイドとスペースノイドも同じかそれ以上の溝があるように見えるが。

 

『ところであの『ガンダム』、敵の量産型MSを辻斬りすると同時にビームライフル奪って敵総帥に蹴り飛ばしてたけど、何で敵から奪取した武器をそのまま使えるんだ?』

『劇中でやんわり説明されているがあの戦場、ジェガンもギラ・ドーガも『ガンダム』も総帥専用MSまでも、驚異のアナハイム社製MS率100%だぞ?』

 

 その事実に気づいた代表達は『やっぱり諸悪の根源じゃね?』『死の商人として存分に暗躍した結果とは、斬新な宣伝動画だな……』と呆れ顔を浮かべる。

 此方の『アナハイム・エレクトロニクス』社と比べても、劇中のアナハイム・エレクトロニクス社の規模は訳が分からないレベルの1強環境である。

 

『……『アナハイム・エレクトロニクス』代表、以前に『サイコフレーム』を採用したMSの紹介があったが――あれはこの劇中のものと同一素材なのか?』

 

 かなり前に紹介された、特に曰く付きの『技術的特異点』と謳われたMSの紹介に『フル・サイコフレーム機』という、この動画を見た後では正気の沙汰とは思えない説明があり、サリウス・ゼネリは冷や汗を流して『アナハイム・エレクトロニクス』代表に問う。音声オンリーのやり取りなので、相手側の表情は伺えないが――。

 

『はい、サリウスCEO。名称が同じだけの素材ですよ! 常識的に考えて、こんな『星』を動かすようなオカルトを現実で起こせる訳無いじゃないですかー!』

 

 大多数の者がその回答に『ですよねー』と軽く流す。このとんでも結末の時点で『現実のものではない(フィクション)』であるという前提を受け入れているが故に疑問にすら思わなかったのだろう。

 ……『アナハイム・エレクトロニクス』代表の言葉に嘘は無いように感じたが、サリウスには違和感を拭えずにいた。『彼』は意図的に言葉を省く事を日常的に行っているので、どうも言葉がかなり抜け落ちている疑惑があり――名称が同じだけの『同一』素材、『『私』ではなく皆様の』常識的に考えて、が意図的に省かれていたりする。

 

『――結局、あの『ガンダム』のパイロットと敵総帥はどうなったんだ?』

『……さぁ? 劇中で描写されていないので、視聴者の想像にお任せします的な要素ですよ!』

 

 あの描写的に、両者共に帰らずに行方不明になったんだろうなぁ、と誰もが確信する。感情移入していた者はこの結末にもやもやするが――。

 

『さて、今回紹介するMSは我が社が誇る量産型MS『ジェガン』とほぼ同性能の量産機である『ギラ・ドーガ』です! 劇中ではアナハイム・エレクトロニクス社グラナダ工場で生産されたものですね。――生産している支部が違うとかいう言い訳、通じると本気で思っているんですかね?』

 

 いや、『アンタ』の会社の仕業だろう、と誰もが内心突っ込む。実際にやる時はそんな言い訳すらせずに堂々と行うだろうなぁという奇妙な確信は、誰もが胸に抱いた共通事項だった。

 

『ちなみに劇中ではジェガンと同じくアーム・レイカー操縦桿が採用されてますが――確かに先進的で便利ではあるのですが、衝撃で手が抜けやすい欠点が現場受けしなかったので、従来のスティック操縦桿に戻してます。劇中のネオ・ジオン残党は換装する余裕すらないので強制的に使い続けざるを得なかったですがね! 年中火が付いているお台所事情とか、心底同情しますよ!』

 

 劇中の事に関わらず、割りと本気で嘲笑しているのは何故なのだろうか? というか、『ネオ・ジオン残党』という事は、この話の続きも存在しているという事なのだろうか?

 

『さて、武装ですが――』

『話を遮って悪いが、それよりも『νガンダム』や『サザビー』の説明の方を聞きたいのだが? 何方も販売カタログに乗ってないようだが――』

 

 ジェガンと同レベルの量産機、という事はジェガンと同レベルの高コストという事なので、先にジェガンが存在している以上は商品的価値は皆無だろう。

 それよりも劇中で大活躍した超高性能機の説明こそ先に聞きたいと思うのが人情だろう。今回の場合は、販売カタログに詳細が載っていない為、暇潰しに性能を流し見する事も出来ないので尚の事であり――。

 

『無いですよ』

『は?』

『何方も非売品ですよ!』

 

 『アナハイム・エレクトロニクス』代表から返ってきた答えは異例のものであり――非売品という事は実際に製造出来るor実物が存在する事の示唆であり、例外の中の例外の事態に誰もが困惑する。

 

『……常に主役機は取り扱っていたのに?』

『赤いヤツ関連のなんて『地球外生命体』の侵略が無い限り生産しませんよ! ……ハルユニットをあれ関連と分類して良いのか正直疑問ですが、赤いから別に良いですね!』

 

 ……妙に『赤いの』に敵対心を抱いているのは、最初から赤が嫌いなのか、その『赤いの』のパーソナルカラーが赤だから嫌いなのか――まるで解らない。あの『アナハイム・エレクトロニクス』代表に限って、現実とフィクションをごちゃ混ぜで考えている訳は無いだろうし。

 

『……『ガンダム』の方は何故無いのだ?』

 

 敵総帥MSについては『個人的な嫌悪感』で製造拒否している事は説明されたが、全く触れられてない『ガンダム』側について尋ねる。

 どうしてあの『ガンダム』だけ露骨に特別視しているのか、誰にも理解出来ず――。

 

『おっと、急用が出来ましたのでこれで退出しますねー! 次回の開催を乞うご期待あれー!』

 

 言及すら許さず、『アナハイム・エレクトロニクス』代表は即座に退出し――奇妙な読了感の他に、拭い去れぬ疑問が残る。

 この一連の物語は本当に――『架空の物語(フィクション)』なのだろうか?

 

 

 

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