『――やっぱり、当代の最先端技術を限界まで詰め込んだ超高性能機! 高出力で高火力で武装も豊富! ついでにファンネルあれば天下取れる最強機体では!?』
『駄目だ。それでは確実に整備性の悪い短期決戦用のMSになる。いつでも満足に補給を得られるとは限らないし、燃費が悪くて継戦能力に欠けるのは特に最悪だ』
『なるほど、となると……』
恐竜的進化を遂げたような重武装のMSの設計図を見た整備士のアストナージは『……『ZZ』とか、まさにそれだったなぁ……』と感慨深く思う。
性能面は今でも化け物じみたスペックだが、その不安定さは『一年戦争』を戦い抜いたアムロ・レイからすれば「冗談じゃない」の一言に尽きるだろう。自分の乗るMSに整備性及び安定感を重視するのは数多の戦場を乗り越えたベテランならばの意見だろう。
『それじゃ燃費&整備性が悪くなる内蔵武装系は全排除――ぶっちゃけ『下駄』あれば、本体に複雑な変形機構組み込む必要無いですよね? 一部の消耗率激しい部品をジェガンと規格統一すれば、整備性が若干良くなる? 共通の部品規格をどの程度に? 解らないから専門家に丸投げで!』
可変機構によって抜群の機動性を得た代償に多重な整備難を齎した第3世代MSのコンセプトを否定し、恐竜的進化を遂げた大火力・大出力・内蔵兵装過多の第4世代MSのコンセプトを即座に遥か彼方に丸投げし――無駄を全て排除して逆に先祖返りしたスリムな基本構造に思わず息を呑む。
――『ZZ』の次、と言われれば、誰もがあれ以上の重武装を思い浮かべるだろう。現に最初はそうだった。
それが助言一つで――ジェガンという前例があるとは言え、この形に至るのは控えめに言って異常なセンスであり、カミーユ・ビダンともジュドー・アーシタとも異なる形の『ニュータイプ』であると言わざるを得ない。
『サイコミュ兵器に関しては腹案がある』
『おー、何これ格好良い!?』
精鋭揃いのロンド・ベル隊において最年少でありながら唯一、あのアムロ・レイの随伴を務められる腕前の持ち主であり、MSの設計者としてもまだまだ未熟なれどもアムロと同じぐらい芽があるだろう。
更には無鉄砲ながらも周囲全員を引っ張っていく行動力に――此処にいない『誰か』の片鱗を所々に感じるのは気の所為だろうか?
『MSの設計もイケるんじゃないか?』
『どう考えても『先輩』ほどじゃないですし、既存概念の流用及び応用ならまだしも、新しい概念を思いつく発想力が致命的なまでに欠如してますよ!』
――万能の天才ならば、全力で嫉妬するしかないが、この『少年』は病的なまでに貪欲な努力家だった。
未知の事象に対する鬼気迫る執着心は常軌を逸しており、その頑迷で頑固者っぷりは『先輩』であるアムロさえ手を焼くほどだ。
『ニュータイプ』ではない、『ニュータイプ』にはなれない自分には、時折、『彼』の事が恐ろしく見えるが――。
『……でもまぁちょっと悔しいので、勉強していつか完璧に設計出来るようになりますよ。目指せ、完璧な『先輩』専用機!』
『はは、出来るようになるまで、一体何年軍人生活を続ける事になるのやら――』
アムロが悲観的になるのも無理はない。軍人生活なんてものは長くするものではない。さっさと退役して、新たな人生のステップを踏むのが真っ当な人の道だ。
……アムロもブライトも、軍人としての功績を立て過ぎた。それこそ、政治家達が自分の椅子を危惧する程度には。
今更辞めたくても辞めさせてくれないのは目に見えている。若さ故の失言を流せないぐらいには――。
『――軍用MSじゃなくても良いじゃないですか。元々は宇宙用作業機ですから、そっち方面での万能を目指すのも悪くないじゃないですか? 人殺しだけじゃなく、もっと別方面でも活躍出来ると思いますよ、MSってのは』
誰もが思い至らなかった発想に、思わずはっとなる。
こういう常人離れした感性ってのは、やっぱり『ニュータイプ』なんだなぁと、素直に感心する。
MSを戦闘用の兵器として完全に割り切っている現場からは絶対に出ない意見であり――。
『――人類同士が仲良く殺し合って、命も資源も時間も無駄に浪費しているとか、勿体無いじゃないですか。折角、広大な宇宙に進出したんだから、それだけで満足せず、まだ見ぬ『外宇宙』まで手を伸ばさないと嘘でしょ!』
誰もが『宇宙世紀』という時代の呪縛に雁字搦めになる中、『少年』だけは輝く瞳で遥か彼方の虹を思い描いており――。
『――いつか、人類皆で手と手を取り合って、遥か彼方の『星の大海』を駆け抜ける『GUNDAM』があっても良いのでは?』
『もしかしたら地球外起源の『異星人』とランデブーも出来るかも!』と冗談を零し、『少年』は希望溢れる瞳で無垢に笑った。
『――全く、素敵な『思想家(ロマンチスト)』だな』
『――ええ、何処かの『誰か(先輩)』に似たんじゃないですかね!』
「……『アイツ』が本当に造りたかったのって、そういうものだったの、かな?」
ベッドの上を寝転がりながら、ミオリネはそんな事を呟いてしまう。
『GUND-ARM』が元は医療用の――過酷な宇宙の環境に抗う為の、人類の希望として生み出されたように、『彼』もまたMSに、『GUNDAM』に何らかの希望を託していたのだろうか?
――我が社の『GUNDAM』は、可能性を切り開く為の、ただの『力』なのさ。
いつしか、胡散臭くない笑顔で言っていた事を、今更ながら思い出す。珍しい事に包み隠してない本音、だろうとは思うけど、別の『一物』も含まれている気がする。
「……創作物は、作者の心の断片を書き綴ったもの、とは良く聞くけど――よくもまぁ此処まで歪んだ情勢を……」
新設された『ロンド・ベル隊』を取り巻く環境は、控えめに言って最初から詰んでいると言って良い。
先の『ティターンズ』からの教訓か、いや、それ以上に警戒されているせいで、味方側からの妨害工作及び軍備制限がとにかく酷い。
こんな小規模な部隊に任せて良い任務内容じゃないのは明々白々なのに、味方側の上層部が敵対陣営以上に危険視しているとか、創作物でも笑えないギャグすぎる。
「更には外部の眼からは悪名高き『ティターンズ』と同一視されるという悪循環……こんなんで任務を果たせとか、無理ゲーよね」
――宇宙世紀0092年12月22日、ジオンの『赤い彗星』、シャア・アズナブル率いる新生ネオ・ジオン軍の艦艇がコロニー『スウィート・ウォーター』を占拠する。
有事の際に警鐘を鳴らす『ロンド・ベル隊』はその役割を果たせず、『第二次ネオ・ジオン抗争』の火蓋が切られる――。