3ヶ月も待った『水星の魔女』セカンドシーズンが始まり、以前のようにいきませんが、更新していきたいと思います。
まぁまだ時系列的に12話まで辿り着いてないんですがね!
「……眠い」
久しぶりに帰ってきたアスティカシア学園は特に代わり映え無く、ミオリネは眠そうな眼で地球寮を目指していた。
目蓋が落ちかけているのは『株式会社ガンダム』の業務に専念していたから――だけではなく、12話に編集された『第二次ネオ・ジオン抗争』を一気に視聴した後に2時間の劇場版『逆襲のシャア』を連続で見たせいで貴重な睡眠時間が限りなく削れたという若気の至りの自業自得だった。
……意識が半分飛んでいるせいで、トマトを栽培している温室でのスレッタとのやり取りで多大なすれ違いが発生した事に全く気づいてなかったりする。
地球寮を目指しているのは購入した宇宙艦の船員確保――そして其処に居座っているであろう、眠気の原因である『彼』に文句という名の感想を言う為だ。
……あれを一気に見た事で、様々な感想が胸の内に浮かび、劇場版も見る事で『とある疑問』が生じた。これを問い質さないとろくに眠れない。現在進行形で眠いのだが――。
ミオリネのお目当ての『人物』は、地球寮の寮前で仁王立ちして待ち構えていた。
「――危機感が、足りない!」
「……は? 最初の一言目が何でそれ?」
私、怒ってます、と言わんばかりに自己主張する『アナハイム・エレクトロニクス』代表にミオリネは思わず首を傾げる。
眠気で思考が若干鈍っているが、いきなりそんな事を言われる理由が全く思い浮かばない。
「デリング総裁にも同じ事が言えるけど、護衛無しで帰還とか正気の沙汰じゃないぞ? もっと自分の価値をちゃんと正確に把握したまえ。ベネリットグループ総裁の一人娘にして『株式会社ガンダム』の代表、ミオリネ・レンブランさん?」
……その類の面倒事が嫌だから、自社で運用出来る宇宙船を購入して、一足先に勝手に帰宅した訳だが「こういう時こそ給料泥棒の『ドミニコス隊』の数少ない出番だろうに! 父親ならそれぐらいちゃんと手配しろよな……」と『彼』は愚痴る。『彼』視点ではあの悪名高き『魔女狩り隊』も給料泥棒と同列の扱いらしい。
「……別に短い航路だし、ベネリットグループのお膝元でだいそれた真似をする輩なんていないでしょ?」
確かに乗船を任せた相手は『彼』ほどじゃないけど胡散臭い人物達だったが。宇宙議会連合のエージェントだったのは黙っておこう。
「見も知らぬ他人に自分の常識が通じると考えるのは非常に浅はかだよ。――他人が落とし穴にハマる瞬間を知っていながら黙って見届ける趣味があったとしても、それが墓穴まで直通しているなら苦言の1つや2つ言いたくなる」
突然の暴露に「普通に悪趣味ね!?」「今回の無防備さは俺に言わせるレベルという事を自覚してくれ」と素で返され、少し頭が冷える。
とにかく胡散臭い『人物』だが、皮肉は多いけれども苦言を呈する事は非常に少ない。これは大多数の者の事を超然と『どうでもいい』と評している事もあるし、『どうでもよくない者』に対しても言葉足らずのケースが多いからだ。
……言っている事は正しいとは思うが、感情的に納得するかは別問題であり、反発心がふつふつと湧き出てくる。
「――確かに通常時ならば問題は起こり得ない。だが、それは前提条件が万全だった場合の話だ。糸が解けるように決定的な綻びが生じる場合もある。偶然か必然かはその時々だが。……例えば、悪意ある者が君の行動予定を把握し、その情報を第三者に流したのならば? 通る航路と時間を正確に把握し、果てには護衛無しと事前に判明していたら、そんな葱を背負った鴨など鍋にして食べてしまうだろ?」
……ミオリネの常識では、そんな馬鹿げた危険を犯すなど愚かしいにも程があるが、確かに違う者の常識など計れない。
「エアリアルが改修中だから、戦力が無いのは仕方ないと言えばそうだけど――」と、それに続く言葉を敢えて『彼』は止める。……思考が鈍っていて、それに続く言葉が咄嗟に思いつかない。
――後に、それに続く言葉が「――弱者は『死に様』すら自由に選べないんだよ?」だと思い知る事になるとは、今のミオリネには知る由も無く――。
「――な・の・で。プラント・クエタには俺も一緒に着いていくので悪しからず」
「はぁ? 何を勝手に決め――」
「MSの積み込みがあるので先に失礼するよ。『今回』のは『小さい』から、あの輸送艦でも帰りのエアリアル込みの積載量、多分大丈夫だろうしね!」
説教じみた苦言をちゃっちゃと終わらせ、いつもの胡散臭い顔で「1人で万人分働ける『エースパイロット』を無料で使えるとか、ミオリネは宇宙一の果報者だねー!」とにっこり笑う。
「――あ、そうそう。若いからって夜更かしはするもんじゃないよ。そういう無茶は後々響くんだからさ。あと、スレッタと些細な事で大きくすれ違っているようだよ。ミオリネ本人の自覚は無さそうだけど」
去り際にそんな事を言い捨てて、さっさといなくなった『彼』に対して、思考が鈍っていたミオリネの反応は一瞬以上遅れ――。
「……相変わらず1人で自己完結して人の話を全く聞かない! アンタは私の何? 全部、全部、余計なお世話よ……! ……って、しまった、言いそびれた」
久しぶりに会っても変わらない『彼』にミオリネは盛大にキレて文句を垂れるのだが、あのPV映像に対する感想と最大の疑問をぶつける事をすっかり忘れてしまっていた。
――あの『白い流星』の片割れの『後輩』、『劇場版』の方では影も形も無かったのは何故だろう?と。