『――全機、『例外(イレギュラー)』の撃破に向かう! ノレアとソフィは射出されたガンヴォルヴァを回収! ノレアはサブの制圧、ソフィは戻って俺達と『例外(イレギュラー)』の排除だ!』
デスルターに搭乗する、反スペーシアン組織『フォルドの夜明け』のMS隊指揮官、オルコットは口早に指示を下す。
『了解……!』
『あいあい、面白くなってきた……!』
最大戦力の『GUND-ARM』2機の一時的な戦線離脱は非常に痛いし、サブの、相手側の逃走手段である港の制圧が遅れるのは作戦上、余りにも致命的過ぎる。
――歴戦の勇士たる彼の勘が告げている。この『例外(イレギュラー)』には、可能な限りの戦力を投入して一秒でも早く潰さなければならないと。
2機の『GUND-ARM』が戦線離脱し、オルコットの隊長機を含む3機のデスルターが『例外(イレギュラー)』の殲滅に向かう。
超長距離狙撃が3射で打ち止めになっており――希望的観測であるが、使い捨ての狙撃兵装だったのだろうか。
『何なんだ、この動きは? 計器の故障か……?』
馬鹿げた超速度であっという間に敵MSの反応がロストし――再びレーダーに感ありと思えば、直角に何度も蛇行しながら有り得ざる超速度で急接近する……!
『――っ、来るぞっ!』
デスルター3機とも、全身全霊で身構えて射撃体勢を取り――相手の機体を目視出来ず、『緑の流星』は刹那に通り過ぎる。
『――は? ベッシ? グリスタン?』
隊長機のオルコットが無事だったのは偶然であり、ほぼ同時に他の2機のデスルターが胴体を両断されて爆散する。
――断末魔すら叫べず、長年付き添った戦友達が宇宙の藻屑と化す。
超速度で飛翔する『例外(イレギュラー)』に接敵した瞬間にビーム・サーベルで斬り捨てられた。状況証拠的に考えた死因はそれしかなく――。
『待て、何処に行く……!』
咄嗟に機体を反転させ、ビームライフルを構えた先には、既に射程外まで飛翔した『緑の流星』しかなく――そのまま、『例外(イレギュラー)』はプラント・クエタの港に突入していく。
――その区画はCブロック、真っ先に攻撃して隔離させた最重要目標が存在する区画であり――。
『俺を無視して――まさか上陸部隊の方を……!?』
『――グエル、聞こえるー?』
『……プラント・クエタ周辺への電波妨害が未だに行われてるのに、何で普通に通信出来るんだ?』
『規格が違うし、そもそも技術力が違うからね! ――喜び給え、君の初陣の相手は『GUND-ARM』とMS型ガンビット3機だ』
背後からデスルターのコクピットをビーム・サーベルで穿ち貫き、コンテナから出陣していた生身の兵士達に向かって蹴り飛ばし、効率良く一緒に爆殺させる。
プラント・クエタに侵入した3機のデスルターを同じ要領で処理したが――生身の害虫を『4匹』ほど駆除し損ねた。
ヴィム・ジェタークとのやり取り分、貴重な時間を出血した結果に『彼』は心の中で舌打ちする。
『――戦力の一部をサブの制圧、つまりは脱出手段となる港の制圧に当ててきた。凡そ1分後に接敵する』
持てる残存戦力の全てをこっちに回してくれば良いのに、と『彼』は非常に残念に思う。存分に壊せる『玩具』が減ったのは非常に非常に悲しい事だ。
『フィン・ファンネルの2基は輸送艦の護衛、もう2基はガンビットの排除に回す。――エアリアルという唯一の例外を除いて、本来の『GUND-ARM』は超短期決戦用の欠陥兵器だ。データ・ストームで人体に著しい損傷を受けながら戦わざるを得ない、呪われた兵器――有機的な挙動に桁外れの反応速度、特別な才能が無くても扱える『次世代群体遠隔操作兵器』は少々厄介だ』
初陣の難易度設定が容易なのは良い事だ。全監修出来るので、万が一の事態など許さずに済むだろう。
『スコアの向上による機能開放及び性能上昇には気をつけろ。――まぁ全分野において俺以下だから、楽勝っしょ?』
『……『お前』と比較されちゃ、テロリストも哀れだろうよ……!』
……感情の赴くまま、狂気のままに戦場を徹底的に蹂躙したい衝動に駆られるが、なけなしの理性を総動員して思考リソースの八割をグエル側に割く。
友の成長のお膳立てだ、刹那的な快楽よりも優先すべき重要事項であり――。
『――勝利条件は生き残る事。初陣という死の境界線を見事超えてみせろ、グエル・ジェターク!』
――あとは、此方に来た『玩具』を思う存分壊すだけだ。
『GUND-ARM』1機、ガンビット3機、予備機と合流したデスルターが4機。ああ、悲しくなるほど『玩具』が少ない。
弱小勢力と言えども、ネオ・ジオンぐらいは頑張って欲しいものだ。今なら100機程度、1機残らず鏖殺出来るのに――。
『……あの『GUND-ARM』は多分スレッタへの『贄』だろうけど、味見ぐらいは許されるよね? それで殺されるなら『脚本』に必要の無い存在だろうし』
ああ、そうだ。数が少なくなったから、その分、趣向を凝らして殺そう。
どんな殺し方が良いか、生憎と無数に思い浮かびすぎて即決出来ない。
――阿鼻と叫喚を撒き散らし、煌めく戦場を彩ろう。
戦場に音楽など必要無い。本物の戦争交響曲は散り逝く者の絶叫と死に間際の断末魔の二重奏で儚く醜く奏でられるのだから――。