プラント・クエタ宙域に射出されたMS型ガンビット、ガンヴォルヴァを回収し――ソフィ・プロネと3機ずつ分かち合い、ガンダム・ルブリス・ソーンを駆るノレア・デュノクは3機のガンヴォルヴァを引き連れてサブの制圧、逃走経路である港の破壊活動に従事する。
『――っ』
ガンビットの起動には、パーメットスコア・3以上を必要とし、『GUND-ARM』の呪いは着実にノレア・デュノクの身体を蝕む。
ガンビットを使用するからには短期決戦が望ましく――。
『――MS? もう1機いたの……! 蒼い機体、『A.E』、『アナハイム・エレクトロニクス』社?』
港前に仁王立ちするMSの反応を探知し、即座に望遠機能で肉眼で確認する。
未確認の形状のMS、新型か――右肩には『A.E』のロゴ。月の採掘屋風情が何を偉そうに。左肩にはツートンカラーの異型の竜のエンブレム――エースパイロット気取りか。成金趣味のスペーシアンらしい、とノレアは即座に苛立つ。
『蹂躙しろ、ガンヴォルヴァ……!』
挨拶代わりに、3機のガンヴォルヴァのビームマシンガンを撃ち放って牽制し――その蒼いMSは背部の巨大なバーニアをフルスロットルで吹かし、瞬時に宙を駆ける流星となった。
『何そのふざけた加速力……! 死ぬ気……!?』
このMSの設計者はパイロットの事を考慮しない、とんでもない狂人であると確信し――3機のガンヴォルヴァのビームマシンガンで乱射するも、殺人的な加速を誇る大出力のバーニア任せで強引に回避し、ルブリス・ソーンに切迫してくる……!
『――っ!』
即座に後退しながらビームディフューズガンのモードを拡散に切り替えて引き撃ちし――蒼いMSの両肩部の装甲板が分離して自律行動を取って前面に展開、ビームの散弾を全て弾き飛ばす。
『――シールドビット、『GUND-ARM』……!?』
乗るパイロットの事を一切考慮してないのは当然の事――協約違反の『GUND-ARM』の存在を堂々と、『アナハイム』社はやりやがったという事をノレアは舌打ちしながら理解する。
――3機のガンヴォルヴァのビームマシンガンで牽制しながら取り囲み、一斉に仕掛けて接近してビーム・サーベルで串刺しにする。
数の利を生かした理想的な選択であるが、突如現れた脅威に集中しすぎた瞬間、その刹那の合間を待ち望んで宙域に漂わせていた2枚の『白い放熱板』が即座に『コ』の字に変形し、擬似的なメガ粒子収束バレルを形成――撃ち放たれた2条の大出力ビームは2機のガンヴォルヴァのコクピットを無慈悲に撃ち貫き、爆散させる。
『他のガンビットを既に切り離していた……!? くっ……!?』
気を取られた刹那に、2基の『フィン・ファンネル』が不可視の超高速機動で宇宙の闇を舞い、棒立ち同然だった3機目のガンヴォルヴァをオールレンジ攻撃で仕留め、牽制という名の致命打がルブリス・ソーン本体にも乱射されるのだった。
『――機体性能の低いMS型ビットってさ、的がデカいだけの木偶の坊じゃね?』
『ワンオフの超高性能機を12機以上取り揃えている『ヤツ』が異常なんだよォ!』
数の不利を即座に覆し、グエル・ジェタークは『フィン・ファンネル』のオールレンジ攻撃に翻弄されるルブリス・ソーンに、更に自前のビームライフルで追撃する。
流石の『彼』も視界外の遠距離からのビット操作では若干精細さが欠くのか、この『GUND-ARM』のパイロットの腕が良いのか――実際は『彼』の意図的な手抜き&舐めプで命拾いしているに過ぎない事を知ったら、グエルは間違いなくブチ切れるだろう。
『量産性を優先した意図的な手抜きで、自爆特攻専用機だったのかな?』
……そんな悪魔的発想をする人間は『彼』ぐらいだろうと内心毒付く。例え思いついたとしても実際にやれるような財力の持ち主も『彼』ぐらいだろう。
敵MSは小型の利点を生かして超機動で回避し続け、飛び舞う『フィン・ファンネル』に乱射し続けて――無視して別方向に照準を向ける。何で明後日の方向に、とグエルが思考した瞬間、その銃口の先にプラント・クエタの港――地球寮の輸送船がある事に気づく。
『しまっ――!』
拡散ではなく、収束型の、破壊力と貫通力のあるビームが精密射撃され――港近辺に待機していたもう2基の『フィン・ファンネル』が即座に起動、『コ』の字ではなく『I』に広がって相互展開し――。
『護衛対象の位置は常に頭に入れておけ。失いたくなければな――』
――面上に展開された『Iフィールド』はルブリス・ソーンのビーム攻撃を完璧に弾いて防ぐ。
『エアリアルみたいな芸当も出来るのか……!?』
『汎用性はエアリアルの方が上だし、非効率な使用法……オミットしていなかっただけの機能だけど――役立つ場面もあるもんだね』
『彼』の声からは何処か感慨深い色が見えて――。
『――『アナハイム・エレクトロニクス』社! カテドラルの協約の裏で『GUND-ARM』を、ぬけぬけと……!』
『オープンチャンネル? あの『GUND-ARM』から?』と、グエルは困惑する。声色的に、比較的年若い女性、だろうか?
『GUND-ARM』を使用している者から『GUND-ARM』を使用しているという糾弾は、最早ギャグではないだろうか?
『寝言は寝てから言って貰えます? 何で我が社が、継戦能力の欠片も無い、愚劣極まる欠陥兵器なんかの製造を態々しないといけないんだか?』
『どの口が……!』
オープンチャンネルで律儀に返答するのは此処に居ない『彼』であり、実際に此処で戦っているグエルそっちのけで盛り上がるのはどうなのかと。
現在進行形で砲火を交えており、ビームの閃光が乱れ咲きする。
『ああ、ちゃんと言葉にしないと理解出来ないほどド低能なのかな? 『アナハイム・エレクトロニクス』社に限って言えば、基本性能だけで『GUND-ARM』の全性能を凌駕出来るので必要無いんだよね――無意味に命を削っている『地球の魔女』さん?』
オープンチャンネルの向こう側から息を呑む音が聞こえたような気がする。ビームの炸裂音で大半がかき消えているが。
それはそうと『地球の魔女』とは一体何なのだろうか――?
『それにしてもアーシアンは感動的なほど人道的だねぇ。『GUND-ARM』のパイロットもとい『生体部品』に手と足、必要? 最低限の部品だけ切り取って『エンジェル・パック(箱詰め)』した方が効率良く運用出来ると思うんだけどなぁ。――君達は使い捨ての塵屑だからさぁ、壊れてガラクタになった用済みを投げ捨てる時もその方が楽だろう?』
普段からアーシアン・スペーシアンの区分に何一つこだわってない……というより、両方を無価値と断じている『彼』が意図的に差別的な色を滲ますのは、それこそ意図的な挑発であり……いや、その挑発の仕方は一体何なんだ? 普通の感性の持ち主なら、怒らせるよりも逆にドン引くと思うが――。
『このスペーシアンがァ――! スペーシアンがァッ! パーメットスコア・4!』
見事に怒髪天を突き、相手のMSの動きが若干鋭く、滅茶苦茶なまでに荒々しくなった……!?
『――ヨシ!』
『何処がだよ!?』
『冷静な判断力を全部奪っといたから、防御に徹するだけで勝手にかつ短時間で自滅するよ! ダリルバルデMk-A.Eに通用する武装が無いのに可哀想に。――唯一の負け筋は接近戦からのビーム・サーベルでコクピットを貫かれる事ぐらいだが』
肝心な場面でグエルが殺人に躊躇してヘマを踏んだとしても『まぁそれも『ALICE』があるから問題無いけどね!』と付け足す。
此処まで初陣での緊張感を奪っておいて、よくまぁほざきやがる! 興奮しすぎて短絡的になっているむこうと違い、グエル側は非常に冷めた感覚で冷静に対処出来ているが――。
『――つーか、こっちに掛かりっきりでそっちは大丈夫なのかよ!?』
『――こっち? ああ、大丈夫大丈夫、もうお楽しみ中だよ! 『先輩』からも指摘された悪癖なんだけどね、結局治らなかったなぁ』