Q.これはガンダムか? A.ガンダムです   作:咲夜泪

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95/外付けの良心回路3個付きでも『魔女』は『魔女』

 

 

 

 

『……ど、どうすんだよ、オルコット!? こんな『化け物』、勝てる訳――』

『弾が尽きるまで撃ち続けろ! 港を背にしている以上、『ヤツ』は動きたくても動けない! 足を止めざるを得ない今が唯一にして最大、最後の機会だ!』

 

 デスルター4機、ガンヴォルヴァ3機、ガンダム・ルブリス・ウルの全火力がジェガン1機に集中しており――左腕部から展開するビーム・シールドで全攻撃を弾かれているが――回避行動を取れば背後のC区画は無事に済まない。

 

 

 ――そんな浅はかな思考を嘲笑うが如く、ジェガンの背部から両脇下を通して2門の『V.S.B.R.(巨大な砲身)』が前面に展開され――。

 

 

『――! 全機回避!』

 

 ビーム・シールド越しからも発射出来るのか、という技術的な問題に関する疑問はさておき、オルコットの咄嗟の判断に間違いは無かった。

 この『ジェガン(MS)』の性能が常識の範疇に無い事は一連のやりとりで否応無しに理解する事になったが――乗っている『パイロット』がそれ以上に人外じみた性能を保有している事に気づくべきだった。

 

『――!?』

『――、』

 

 ジェガンから自身のビーム・シールドを内側から貫く高出力・超高速の貫通力の高いビームが2発発射され――咄嗟の回避行動を取ったデスルター2機のコクピットを正確に穿ち貫き、木端微塵に爆散させる。……最期の声すら無く、2人の戦友が余りにも呆気無く戦死する。

 

『な、しまっ――』

 

 未来予知じみた偏差射撃――弾幕が途絶えた一瞬の隙間を突き、フルスロットルで港から飛翔し、ジェガンは目視不可能の『緑の流星』となる。……足を止めた、千載一遇の機会を逃す。

 

『速――!? ガンヴォルヴァ――!』

 

 ジグザグと不規則に超機動して飛翔する『例外(イレギュラー)』に対し、特性上、最も即応力・反応性の高い『GUND-ARM』を駆るソフィが自身のガンビット3機を操作して追撃する。――掠りもしない。此方のロックオン機能など完全に振り切って超機動する『例外』にどうやって直撃弾を加えろというのか。

 

『……あ、これ、どうにもならない、んじゃないかな……!』

 

 偶然を期待して継続的に弾幕を張る? 現在進行形で、偶然に頼った直撃弾だけを全て見切って意図的に回避行動を取れる『化け物』に対して?

 

 ――宇宙の闇を引き裂くビームの光が3条、3機のガンヴォルヴァの胴体部分を撃ち貫き、刹那の花火を散らせる。

 

『嘘ぉ!?』

 

 この『例外(イレギュラー)』は、目視するだけで精一杯の、複雑怪奇の超機動を繰り広げながら、正確無比の射撃で此方を一方的に屠る。

 他を隔絶した性能を誇る『MS』に、常識を踏み躙る『エースパイロット』が搭乗している――まさに悪夢の合作だ、これが現実である事を含めて最悪と評するべきだろう。

 

 

『――機体性能の低いMS型ビットってさ、的がデカいだけの木偶の坊じゃね?』

 

 

 ……電波妨害工作が有効だと言うのに、オープンチャンネルで『悪魔』からの嘲笑の声が戦場に響き渡る。

 そんな言葉に耳を傾けている余裕など一切無いのだが――思った以上に年若い事にオルコットは驚愕する。

 

 

『これは持論なんだけどさ――人間とは死ぬまで吼えずり回る雑音だ。常に不快で鬱陶しくて煩わしい。――けれども、縊り殺した後の静寂の余韻は、堪らなく好きなんだ。死人に口無し、死者は何も語らない。――殺した瞬間こそ、最も強く『生の実感』を得られる』

 

 

 那由多の果てに出たような狂った結論には、最早人間味など欠片も無く――。

 

『ふざけんなよ、スペーシアンが! 俺達はッ、テメェらの玩具じゃない!』

『はは、何とも的外れで面白い事を言うんだね。『人間(スペーシアン)』と『人間(アーシアン)』に区分も区別も無く『共通規格』だろうに?』

 

 実弾を乱射しながら、オルコットの他に残った最後のデスルターのパイロット、ジャリル・リ・ナランカは極度の興奮状態に陥りながらオープンチャンネルで言い返し――。

 

 

『――『私』は狂信的な平等主義者だからね、何方も等しく『玩具』として扱うよ。良い断末魔を聞かせてね!』

 

 

 馬鹿げた超機動で接近、一瞬にして四肢切断して背部ブースターも引き裂き――最後に威力調整したビーム・サーベルを、何の抵抗すら出来なくなったデスルターのコクピットにゆっくりと突き刺した。即死しないように丁寧に。

 

 

『アアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!? 熱い熱い熱い!? やめ、やめてくれえええええええぇ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――!? 一思いに殺せええええええええええええええええええぇ!?』

 

 

『ジャリル! ――っ!』

 

 足を止めて非人道的な残虐行為に耽る『例外(イレギュラー)』に対して照準を合わせ――最早手遅れだろうが味方への誤射に一瞬躊躇ったオルコットと、敵に対する殺意から微塵の躊躇無く撃ち放ったソフィ。

 

『――あ、っ』

 

 明暗が分かたれたのはその判断に要した時間であり、ジェガンは四肢損失した死に体のデスルターをソフィが駆るガンダム・ルブリス・ウルに蹴り飛ばして即時離脱。

 ガンダム・ルブリス・ウルから撃ち放たれたビームガトリングガンの弾幕は容赦無く死に体のデスルターを撃ち貫いてしまって爆散――如何に反応性に優れた『GUND-ARM』を使おうが、この瞬間での味方殺しは回避不能の凶事だった。流石のソフィも不慮の味方殺しに自失同然の状態に陥ってしまい――。

 

『――元ドミニコス隊とか、随分と面白い経歴だね』

 

 超機動で旋回する『例外(イレギュラー)』からの通信に、オルコットは内心驚愕する。

 何故それを――とは今更すぎる反応だ。最初から、目の前の『相手』は常軌を逸した超常的存在みたいなものだったじゃないか……!

 

 

『――ねぇ、聞かせてくれる? 自分の子供を見殺しにして生き恥を晒している理由ってヤツをさ! 生きていて辛いよね、自害すれば?』

 

 

 瓦礫に埋もれ、成す術無く焼け死んだ息子の姿がフラッシュバックし――。

 

 『悪魔』の嘲笑が戦場に鳴り響き――プラント・クエタから新たなMSの反応、泣き面に蜂とはまさにこの事であり――。

 

『――名残惜しいけど、時間切れか。遊びすぎたかな。……今の内に撤退すれば? 追跡可能距離だったら喜んで殺しに行くけど』

 

 目の前の敵を放置して『緑の流星』は遥か彼方に消え去る。新たに現れたMS目掛けて――。

 あれが此方を見逃す理由は解らない。だが、『死神』在中の絶死の戦場においてもオルコットはまた生き延びてしまい――。

 

『ソフィ、撤退する! ――ノレア、即座に撤退だ! 急げッ!』

 

 

 

 

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