「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
完全な見切り発車です。どこまで続くかは未定。
ここの一夏君がISを初起動したのは3年ほど前
第2回モンド・グロッソの少し前と想定してます。
また、織斑3人の生まれは織斑計画としています。
第1話
この物語は、類稀な能力を持たされた少年が
友人達と共に幸せを手にするまでの物語である──
(相変わらず視線が突き刺さるなぁ…)
キリッとした目つきの少年は今、入学した学校の教室で
自分の背に突き刺さる視線に辟易していた。
背中に無数に刺さるその視線に込められている想いは
それぞれだが、そのほとんどは好奇の目線である。
そういった視線を向けられてもあまりいい気はしない。
少年の名前は──
「織斑くん?…織斑一夏くん!」
「はっ、はい!」
少年織斑一夏は自分を呼ぶ声に慌てて顔を上げる。
そこにいたのはあまり教師には見えない童顔の女性。
緑色の髪に体格に見合わない素晴らしい双丘をお持ちの
このクラスの副担任である山田真耶先生だ。
「自己紹介、いま「お」の織斑くんの番なの」
掛けられる声に気付かないくらい気が抜けていたらしい。
気分を切り替えないとな、と一夏は軽く自分の頬を叩き
スっと立ち上がる。淡い期待すら出来そうにないが
出来れば注目は浴びたくないなと思いつつ
自分のクラスメイト達に──自分以外女の子しかいない
傍から見れば異色としか言えないクラスメイトに
己の特徴を軽~~~く語ることにした。
「まぁ知ってるとは思うけど、織斑一夏だ」
クラスメイトはじっと一夏を見つめている。
一言一句聞き逃さぬように、と。
「趣味はそうだなぁ、機械いじりと…」
もう1つの趣味を言うべきか一夏は迷った。料理だ、と。
料理の出来る男はモテる、と聞いたことがある気がするが
仕事へ出る女性が"異様なまでに"増えてきたこのご時世
料理出来ない男はそう多くはないだろう、として
一夏は悩んだ末にその趣味を明かすことにした。
「…あとは料理だな」
(!!!)
(マズった。盛大にマズった!注目の的じゃんかよ!)
その言葉を告げた瞬間、己を見る少女たちの目が豹変して
キラキラと輝き出した気がしてならなかった。
「あー…運動も座学もまぁまぁ出来る。
ISは…うん、そこそこ乗ってるってとこだな。以上!」
一夏はこの視線の雨から早く逃れたかった。
ココ最近も色々と追われてきたが、これほど逃げたくて
でも絶対に逃げられないというのは初めてだった。
が、助け舟は意外な人物から出されることになる。
「お前にしては微妙な挨拶、といったところか」
(千冬…姉…?)
教室へ入ってきたのは、スーツをカンペキに着こなした
抜群のプロポーションを持つ黒髪美人教師。
IS業界なら知らぬ者は居ないと言われるほどの女性が
一夏へ向いていた視線を掻っ攫っていった。
「織斑先生、会議は終わられたんですね」
「あぁ、任せてしまってすまんな山田くん」
絶世の美女という言葉も似合う素晴らしい容姿を持つのに
家ではズボラもいいところな自分の姉がこれほどまでに
キリッとしていて、威厳すらも放っている光景に
一夏は思わず感動を覚える。
「織斑…お前何か余計な事を考えているな?」
自分が教室に入るなりボーッとし始めた弟を見て
千冬は何か失礼なことでも考えているだろうと
一夏の頭に持っていた出席簿をポンと置きそう指摘した。
「あ、いや、凄くカッコイイなと思って」
「………」
ゴチンッ!!!
「あだっ」
「諸君、私が織斑千冬だ───」
教壇に立った織斑先生は、ここで扱う物が物なだけに
目の前の生徒たちに対してかなり厳しく、高圧的とも
思える態度で自己紹介を行った。自分の言うことには
必ずと従うように、と付け加えて。
弱冠15歳の少女であれば恐怖で萎縮しても不思議では無い
そんな態度だった。のだが……
「「「きゃ~~~っ!!!」」」
「──うおッ!?」
ズテーンッ!!!
「本物の千冬様よ!千冬様に指導してもらえる!」
「千冬様のご指導、どこまでもついて行きます!」
「ああっ、ここへ来るための努力が報われていくぅ!」
「……痛ってぇ」
耳を劈くとは正にこのこと。凄まじい黄色い叫び声に
一夏は驚きのあまり椅子から転げ落ちた。
「相変わらず今年も馬鹿者ばかりか、感心させられるな」
この光景を見て織斑一夏は、織斑千冬は。2人揃って
似たようなことを考えていた。
(ISがどんなモノなのか分かってない…のか?)
(ISを扱う覚悟がまるで足らんな…一夏以外は)
──インフィニット・ストラトス。通称「IS」。
稀代の大天"災"篠ノ之束博士が発明した、宇宙空間での
活動を想定したマルチフォームスーツ。
宇宙空間という極限環境下でも活動出来るようにするため
既存の発明では考えられないような高性能を誇る。
地球の凄まじい重力を無視する
宇宙の様々な危険から身を守るエネルギーシールド然り
スペースデブリの破壊は勿論、いずれ接触するであろう
異星生物の排除も目標にして鍛え上げられた超火力然り。
そのスペックはあらゆる存在を置いてけぼりにした。
そう、既存の軍事兵器も全て鉄クズと化すのだ。
ISはすぐに軍事兵器として活用されるようになり
瞬く間に世界を混乱の渦へ陥れた。
混乱の原因となった篠ノ之束、もとい日本はその責任を
取らされる形でIS学園を建設運用することとなったのだ。
がしかしこのIS、とんでもない欠点がひとつ存在する。
ISについて学ぶこの学園の生徒が女子しか居ない辺りで
察しのいい人間なら気付くことだろう。そう、ISは何故か
女性にしか動かすことが出来ないのだ。
………織斑一夏という例外を除いては、だったが。
「織斑、大丈夫か?」
「今後を考えると…ちょっとな」
ここに来たのは一夏自身の意思でもあったのだが
予想以上に自身がクラスから浮いている気がしていた。
疲れないわけが無い。
「SHRはこれで終わる。少しでも休むといい。」
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「少し、いいか?」
グッタリしている一夏にわざわざ声を掛けてきたのは
黒髪ポニーテールとこれまた抜群のプロポーションを持つ
一夏が3年前に会ったきりだった幼なじみ、篠ノ之箒だ。
「お、おう。廊下がいいか?」
「…廊下がいい、かな」
どう足掻こうが一夏はしばらく客寄せパンダだ。
ただ、箒は廊下の方で話がしたいらしい。
重い腰を上げた一夏は箒の後を追った。
「3年ぶりだな」
「…ああ」
お互いの口数は非常に少ない。一夏は疲れているから。
箒の方は───
「剣道大会、優勝おめでとう」
「なっ、なぜそれを!?」
「情報網に触れる機会くらいあるさ」
「あ、ありがとう」
箒はかなり顔を赤くしている。顔こそ逸らしているが
彼女が何かしらの理由で動揺しているのが見て取れた。
(これツンデレ…ってヤツなのか?なぁ、弾)
一夏は仲の良い親友が言っていた言葉を思い出す。
フラグブレイカーとの名で呼ばれていた一夏は
親友の五反田弾から恋愛事について、耳にタコができる程
これでもかというほど色々と聞かされていたのだ。
更に言えば、もう1人いる親友からも意味ありげな言葉を
掛けられたことがあり、一夏は恋愛とやらについて
ある程度調べたことがあった。
「なぁ箒、話って?」
「っ!?すまん、何を話すか忘れてしまった…」
色々考え事をしていても話を切り出して来なかったのは
箒が話したい内容を忘れてしまっていたからだった。
軽く顔を覗き込むとまたぷいっと顔を逸らされる。
「なぁ箒、放課後時間あるか?」
「あ、あぁ…あるぞ」
「じゃ、また放課後にな」
一夏は一足先に教室へと戻っていった。
(……………緊張した…まだドキドキしているっ)
箒はこの時、気が気ではなかった。
久しぶりに再会した一夏に声を掛けたまでは良かったが
この3年で何があったのか、より男らしくなっていた。
鋭さと優しさの増した目つき──体つきも程よく筋肉質。
くたびれていてあれなら普段はもっと格好良いハズ。
そう、好きな人がカッコ良すぎて動揺していたのだ。
果たして放課後に何を言われるのだろう?
もしかしたら、
そう思いかけて箒は首をブンブンと横に振った。
「まさか。アイツに限って…そんな事…」
学校中の女の子のハートを知らず知らずのうちに射止め
そしてその恋愛フラグを盛大にへし折っていった──
そんな彼に付いたあだ名が「フラグブレイカー」だった。
今回も放課後に剣道か何かにでも付き合ってくれとか
そういう事なのだろう。
けどそれでも良いな、と箒は思っていたが。
「っと、授業が始まるな。」
箒も、一夏よりかなり遅れて教室へ戻っていった。
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「──ISの運用には国家の承認が必要になりますから
枠内を逸脱した運用には刑法による罰則が与えられます」
山田先生の授業は丁寧で分かりやすい。
「皆さん、ここまでは分かりますか?」
分からないところが無いか時折確認を入れてくれる。
今やっている内容は基本的な部分であるからか
理解が追いつかない生徒は居なかったが。
「…織斑くん、教科書は見なくても大丈夫なんですか?」
山田先生は目の前の少年が教科書を開いていないことが
ずっと目に入っていた。内容は理解している様子だったが
分かってなかった場合良くないなと少し尋ねてみたのだ。
「えぇ、基本的な事は頭に叩き込んでありますから」
「なら良いんですけど…」
その様子を傍で見ていた千冬は自信満々な弟に対して
少し意地悪をしてみたくなった。まだ教えていない内容─
もう少し先の授業で教える事を質問してみることにした。
「織斑、イコライザとは何だ?教科書無しで言ってみろ」
教科書に載ってはいるがまだ少し先のページ。
クラスの少女達の何人かがペラペラページをめくりだす。
「
「…ほう。ならワンオフ・アビリティは?」
一夏の答えに面白がった千冬は更なる意地悪だとばかりに
1年ではまず教える必要の無い部分を問題に出す。
「基本的に
極限まで高まると使えるようになる特殊能力のことだな。
…織斑先生、俺をからかってますね?」
「そんなつもりは無いが?」
……隣に立っていた山田先生にはよく分かっていた。
これは間違いなく楽しんでいるな、と。
彼女を知る人間には丸分かりな位表情が綻んでいたのだ。
──HR。
「クラス対抗戦が再来週に行われることは知っているな」
クラスから一人クラス代表を選出し、代表がISを駆って
行う対抗戦であり、1年生にとって初の学校行事となる。
「立候補者はいるか?………自薦他薦は問わんぞ」
このクラス代表、学級委員長的な役割も兼ねていたため
立候補者は中々出てこなかった。がしかし自薦他薦は
問わないと千冬が言った瞬間、ある人物を推薦するとの
声が次々と上がり始める。それが誰かは言うまでもない─
「織斑くん、織斑くんを推薦しまーすっ」
「唯一の男子だもんね、私も織斑君がいいと思う!」
「そこそこ乗ってるって実力、見てみたいもの!」
面白半分という意味も含まれてはいるのだろうが
(まぁそうなるよなぁ…千冬姉、拒否権は?)
(んなもん無いに決まっているだろう)
クラス中が自分を推薦している以上はやるしか無いだろう
そう思って覚悟を決めようとした一夏だったが
一人の立候補者が現れる。
「
ブロンドカラーのロングヘアが美しい少女
イギリスの代表候補生セシリア・オルコットだ。
「物珍しいからという理由でクラス代表を選出するなど…
入試首席であるこの私を忘れてもらっては困りますわ!」
(あぁ、有難いが…それ通るのか?)
一夏はクラス代表はめんどくさいな、と思っていただけに
入試首席の彼女が引き受けてくれるなら渡りに船だった。
がしかし、それすら通るとも思えない雰囲気だ。
「IS操縦に関しても、唯一教官を倒したのですから!」
「…何だって!?」
「ひっ!?」
一夏が突然ガタッと立ち上がる。
一瞬驚愕の表情を浮かべていたが、何やら思案したあと
セシリアにひとつ質問を投げかける。
「なぁオルコットさん、教官って誰だったか分かるか?」
「へ?…え、えぇ。一介の教師だったと思いますわ」
「あぁっびっくりした…千冬姉に勝ったのかと」
鬼気迫る表情になったり気が抜けた表情になったり
表情がコロコロと変わる一夏にセシリアは困惑する。
少しして困惑から立ち直った彼女の思考回路は
先程の一夏の発言を思い出す。
自分がかの織斑千冬に勝ったのかと思って驚いた、と──
であるなら、彼の試験官を務めたは織斑千冬で
代表候補生は千冬が相手すると彼は思ったのだろう、と。
それを理解した瞬間、ひとつの結論にたどり着く。
「まさかっ…貴方は勝ったって言うの?織斑先生に!?」
信じられないと思いつつ一夏にそう問いかける。
「いや、10分ぐらい粘ったけど手も足も出なかったよ」
少し悔しそうな表情で彼はそう言った。負けた、と。
しかし、その発言にはクラス中が凍り付いた。
それも当然だろう。代表候補生でも
織斑千冬を相手にして5分も持てば大健闘だろう。
なにせ彼女はISの世界大会モンド・グロッソにおいて
剣1本で世界を獲った
セシリアは首をギギギと回して織斑先生を見る。
千冬はセシリアが言いたい事を理解して口を開いた。
「あぁ、だいぶ手加減はしてやったがな」
言外に一夏が10分粘ったのが真実であると証明していた。
織斑先生の表情にはウソや冗談を言っている様子は無い─
そもそもあの人は誰かを騙す嘘をつく人ではないだろう。
(織斑先生の弟…その実力、見てみたいですわね)
セシリアは織斑一夏という男に興味を抱いた。
代表候補生を凌ぐほどの力を持っているというのに
それに驕り高ぶることはしなかった。
セシリアが知っている男達は、ISが台頭した今でも
金や権力を振りかざしてまで尊大な態度を取ろうとする。
そうでないなら、力を持つ女に媚びへつらうばかり。
一夏にはそれらしい素振りが全く無かったのだ。
「織斑一夏さん」
「何だ?」
目の前の男が本当に己の想像通りの人間なのか。
相応の実力が伴っているかを自分でも確かめるため──
「決闘を申し込ませていただきますわ」
「……あぁ、いいぜ」
織斑一夏に決闘を申し込んだのだった。
「話は纏まったな?日時は1週間後の月曜放課後だ」
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「一夏、お前に話がある」
放課後、一夏は千冬に呼び止められていた。
一夏は自分を呼ぶ時の呼び方が生徒と教師のそれではなく
あえて弟と姉のそれを使った事に少し気分を切り替える。
「重要な話と?」
「あぁ。決闘の一件だがな──」
──既にそれが組まれている。一夏とセシリアが決闘を
行うことにならなくても、IS委員会からの命令で2人の
試合が行われることになっていたのだ。
「それもかなり強引にねじ込まれたらしくてな」
学園としても入学式を終えたばかりで忙しく、試合などは
せめてISとしての基本授業を最低限終えた辺りまで──
クラス対抗戦辺りまで待って欲しいと伝えたのだが
IS委員会はそれを押し退けて強引に日程を組んだらしい。
さらに言えば、唯一の男性操縦者がイギリス代表候補生と
戦うのだから試合を見たい人も多いだろうということで
その試合には多数の"観客"を招待したいとのこと。
「つまり俺はかませ犬って訳か」
一夏はIS学園に来るまでにISに乗ったことがあっても
国家代表候補生には及ばない実力だと思われている。
普段から弛まぬ鍛錬を続けている国家代表候補生は
一介の少年がそう追いつけるようなものではないからだ。
「組んだのはIS委員会だが…裏からの差し金だな」
「俺をこき下ろそうとしてるなら女性権利団体か?」
女性権利団体とは、投票権や労働権などといった権利を
男女平等にすることを目的に作られた団体である。
ISが台頭したことで、寧ろ男性権利団体などが現れても
不思議ではない情勢だというのに、団体は未だ活動を続け
女性の権利についてあれやこれやと訴えている。
ISは女性にしか扱うことが出来ない強力な"チカラ"だ。
それを覆しかねない一夏は女性権利団体にとって
目の上のたんこぶであり、叩き潰したい存在である。
「千冬姉、色々頼んでもいいか?」
「任せておけ」
波乱に満ちた一夏の学園生活は始まったばかりである。
セッシーのイベントは原作より少し控えめになりました。
こんなのセシリアじゃないと言う方もいるかと思いますが
一夏君が突然ガタッと立ち上がらなければ
恐らく原作と似たような展開になっていたかと。
今後どう展開していくかぼんやりとしか考えていませんが
読み続けていただけると嬉しいです。