「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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次回はドイツ周りと言ったな、あれは嘘だ。

白式と紅椿のお披露目も兼ねて
専用機持ち6人が一堂に会する様です。
あくまでも試験稼働ですが。

今回、試験的にルビ振りを行っています。
おかしな所があればご報告下さい。


第13話

 

 

 

「お前と模擬戦がしたい。受けてくれるか?」

 

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは織斑一夏に模擬戦の誘いを

持ち掛けていた。

織斑一夏の実力を見極める──個人的なものではあるが

それがラウラが学園へ転入して来た一番の目的だった。

 

彼の周りで、もとい彼とフランス代表候補生(シャルロット)の周りで

色々とトラブルが起きていたために中々声を掛けられず

やきもきしていたが、遂に提案する事に成功した。

 

「あぁ、いいぜ」

 

一夏もその提案に嫌な顔一つせずに乗った。

ようやく目的を一つ達成出来そうなこの状況に

ラウラは心の中で闘争心の炎を燃やした。

 

「手加減はしないぞ」

 

「勿論だ」

 

それじゃあ日程を──と話が進んだ時、一夏は

少し何か考え込み始めた。

 

「む?何か問題があるのか」

 

「…喧しくても構わないか?」

 

確かに喧しいのはあまり良い気はしないなと感じた

ラウラだったが、一夏と戦えることに滾った闘志は

その程度では衰えなかった。

 

「観客席が騒がしい程度だろう?構わん」

 

しかし、ラウラの想定は甘かった。激甘だった。

その想定がここIS学園ではキャンディの様に甘い事を

続く一夏の発言で思い知らされる事となる──

 

「いや、お祭り騒ぎレベルだ」

 

「………何…だと!?」

 

そう、一夏と箒によって行われたあの模擬戦以降

専用機持ちが参加する模擬戦には少なくない生徒が

そのテクニックを盗もうと訪れるようになっていた。

 

それが専用機同士での対戦となればその盛り上がりは

更に勢いを増す。アリーナの使用予約を入れた事が

事前に察知されようものなら、観客席はほぼ満席

上級生も観戦へやって来るのが常なのだ。

 

己の想定を遥かに超えていった学園の実態に

ラウラは空いた口が塞がらなかった。

 

「…そうだな」

 

──その時、一夏はある事を思い付く。

 

「先に6人でやろうか」

 

「6人で…?」

 

この学園で専用機持ち同士の模擬戦を行うことが

どういう事なのかラウラに体験してもらうついでに

アップデートを行った白式と紅椿の試験稼働も

済ませてしまおう、と一夏は提案した。

 

「ふむ…まぁいいだろう」

 

一夏がお祭り騒ぎと評する程の"度を越した喧しさ"が

どれ程のものなのか確かめるために

ラウラは6人での模擬戦の誘いを受ける事にした。

 

 

 

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──生徒会室。

 

「会長~トーナメントの件ですけど──」

「今年度の収支報告、今から纏め始めましょ」

 

水色髪の少女、生徒会長更識楯無が中心となって

今日も学校行事の詳細調整や溜まった書類の対処など

諸業務を淡々とこなしていく。

 

有能な生徒会長指揮の元割り振られた仕事をこなす──

臨時収入が既に多数ある事以外は特に変わった事も無い

生徒会室で見られる例年通りの光景である。

 

 

「会長!会長!大ニュースだよっ!」

 

そこへ1人の生徒会メンバーが大慌てで駆け込んでくる。

 

「何?そんなに興奮する話なの?」

「ちょっとほら…落ち着いて」

 

過呼吸になるほど大興奮な少女を少し落ち着かせて

どんなビッグニュースを掴んだか聞き出しにかかる。

 

「専用機持ち6人が模擬戦をするって!!!」

 

「「「ホント!?」」」

「それは大ニュースじゃない!」

 

とんでもない大ニュースに生徒会室が沸き立つ。

 

アリーナ使用申請の理由は機体の試験稼働がメインで

ISによる模擬戦はオマケ程度との事だったが

そんな事は重要な事では無かった。

 

たとえ模擬戦であっても専用機持ち6人による試合など

ISの祭典モンドグロッソですらまず見られないのだ。

普段は冷静な楯無会長もこれには大興奮である。

 

「1年1組が羨ましいって声も上がり始めてますし」

 

専用機持ちが大勢集まる1年1組を羨む声も

少なからず上がってきている。

この事態への対応の一つとして、今回の模擬戦も

活かせるのではないかと楯無は考えた。

 

「さぁて!忙しくなるわよ~!」

 

「教師陣の説得行ってきますね!」

「備品の準備、始めちゃいましょうか!」

 

生徒会メンバー達は学校中へと駆けていった。

 

 

 

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──IS学園、第3アリーナ。

 

 

 

「何だ…これは」

 

「…僕達大人気だね」

 

アリーナ内へと降り立ったラウラとシャルロットは

見事に満席となった観客席を見回し、2人揃って

驚愕の表情を浮かべた。

 

大歓声が飛び交っている訳ではないものの

空いている席はパッと見では一つも無い。

多くの生徒がノートとペンを手に一夏達の様子を

ジッと伺っている様に見える。

 

「外も大騒ぎだったしな」

 

「他のアリーナにも人が集まって居ましたわね」

 

箒やセシリアが言う様にこのお祭り騒ぎは学園中に

及んでおり、ここ第3アリーナ以外では巨大モニターを

複数設置してのパブリックビューイングが開催

放課後の部活動も全て中止となり、その結果学園生の

ほぼ全員と多くの教師が各アリーナに集う事態に。

 

「ちょっと集中出来そうにないなぁ」

 

「これが…お前の言う"お祭り騒ぎ"か」

 

一夏の言っていた意味をラウラは痛感した。

ザワつき始める観客席、自分たちへと降り注ぐ視線──

これは十分に集中を乱しうる、と。

 

しかし、これでもまだまだ甘いのがIS学園

第3アリーナのボルテージはこれから上がるのだ。

 

 

 

「箒、始めようか」

 

「うむ。…来い、紅椿!」

 

一夏と箒がそれぞれ自身の専用機(白式と紅椿)を身に纏う。

より洗練された姿へ変化した2機に、会場のボルテージが

早くも上がり始める。

 

『データリンク正常。お2人とも、始めて下さい』

 

管制室の山田先生から、2機のデータ取りが開始された

報告が入る。今回山田先生には2機の稼働データ採取と

ダミーターゲット関連の操作が任されている。

 

 

「やるぞ…白式ッ!」

 

『光が溢れていく!?』

『何て綺麗なの…』

 

静かな励起音と共に、白式の装甲の隙間から青白い光が

溢れ出す。内部フレームに鋳込まれたナノマシンが

フル稼働を始めた証拠だ。

 

そして、付けられた名(展開装甲という名前)を示す様に全身の装甲が

溢れた光のラインを境目にして展開を始める──

 

『カッコイイ…魔法みたい!』

『変身した!?』

 

美しい純白の騎士が隠していた力を解放するという

まるで御伽噺の様な光景を前に、観客席の生徒達は

目を奪われる。

 

『ダミーターゲット、展開開始します』

 

「了解!」

 

山田先生の操作で六角形のパネルが無数に現れる。

攻撃を当てると消失しヒットカウントが行われるものだが

その数なんと数百。それも1箇所ではなくバラバラに

アリーナ内全域に散る様に現れた。

 

「織斑一夏…お前の全力、見せてもらおうか」

 

「あぁ。…行くぜッ!」

 

一夏はアサルトライフルを2丁構えて駆け出した。

 

 

 

『なんて命中精度!』

『早いっ!?』

 

人間業とは思えない速度と精度で、次々とターゲットを

射抜いていく一夏。中には不規則に動くターゲットも

あったというのにその殆どが直撃判定だ。

 

『素敵…!』

『白い流れ星みたいね』

 

青白く輝く軌跡を残しながら空を翔ける一夏のその姿は

この光景を眺める少女達に流星を連想させた。

 

 

「状況終了…!」

 

全てのダミーターゲットを破壊し終えるまで

それほど時間は掛からなかった。

 

『あらら…戻っちゃった』

『カッコよかったのにね』

 

攻撃終了と同時に白式は元の姿へと戻っていった。

 

 

 

 

 

全てのターゲットをあっという間に破壊してみせた

一夏だったが、それだけの神業を何のリスクも無しに

実行出来るという訳では無かった。

 

『織斑君、バイタルサインイエローですっ!』

 

「あぁ…分かってる…キツイな」

 

「一夏!大丈夫か!?」

 

フラフラと地面へ降りてきた一夏の顔色は若干青い。

 

こうなった原因は実は展開装甲にあった。

白式の展開装甲は超高精度のセンサー系として機能し

得た情報をパイロットへと提供するのだが

その流入量が並の人間に捌ける量では無かったのだ。

 

「…まだ調整が要りそうだな」

 

やや震える手で調整すべき項目とその度合いを

メモに書き留めた一夏。

 

 

「次は私か…緊張するな」

 

その傍らで箒がウォーミングアップを始める。

紅椿のセンサー系は特別強力な訳ではないとはいえ

同じ第四世代機、少なからず緊張はする。

 

 

 

 

 

『では篠ノ之さん、どうぞ!』

 

再度ダミーターゲットが展開される。数は先程よりも

少ないが、その殆どが高速で移動している。

 

「…紅椿っ!」

 

搭載した近接武器「雨月(あまづき)」と「空裂(からわれ)」を手に持ち

展開装甲の起動を意識する。

 

『紅い!』

『似合ってるわねぇ』

 

紅椿が発した光の色は美しい紅色。

動作パターンの違いが発光色の違いに現れていた。

紅椿の持つ機能は主に加減速と姿勢制御だ。

 

「行くぞ!」

 

今までの紅椿からは想像もつかない速度を発揮し

高速でアリーナ内を移動するターゲットへと翔ぶ。

超高速で飛行しながらも姿勢は崩さずに。

 

『なんて速さ…目で追えない!』

『…剣の軌跡が見えるわ』

 

太陽に照らされ輝く2本の刀は、それが振るわれる度に

綺麗な白い軌跡を残す。紅椿が駆け抜け紫電一閃

そして散っていくダミーターゲット──

その様はまるで箒が剣の舞を踊っているかの様だった。

 

『織斑君が流星なら篠ノ之さんは彗星かしら』

『まるで赤いほうき星ね…』

 

出力が極限まで高められたスラスターの桃色の光と

合わさり、尾を引く紅い輝きは更に強さを増す。

白式よりも更に高速で空を翔ける紅椿の姿からは

その操縦者の名も相まって「ほうき星」が連想された。

 

 

 

「ぐっ…体中が痛む…!」

 

『篠ノ之さん、バイタルサインイエローですよ!』

 

しかし、凄まじい速度は箒の体にもダメージを与える。

特に急加速・急減速や急旋回を行おうものなら

ISの持つ絶対防御を貫く程の強烈なGが掛かるのだ。

 

「これで最後だッ!」

 

 

『…ターゲット全滅、お疲れ様です』

 

それでも箒は太刀筋を鈍らせる事無く、一夏同様

あっという間にターゲットを全滅させた。

 

紅椿は地面へと降り立つと紅い輝きがゆっくりと

失われていき内部フレームが元の金属色へと戻る。

それと同時に展開されていた装甲もスライドして

元の位置へと戻って行った。

 

「紅椿も調整が要るな」

 

「白式と合わせて調整しよう」

 

後日白式と紅椿は展開装甲のバランス調整が行われ

今回の様な尖った性能は鳴りを潜める事となるが

その戦闘能力は衰えることは無かったという。

 

 

 

 

 

「じゃあ、模擬戦と行こうか!」

 

『『『待ってました~~~っ!!!』』』

 

疲労から復活した一夏によって、専用機持ち同士による

熱い模擬戦の開幕が宣言される。

白式と紅椿には「展開装甲の一時封印」という

ハンデが課される事にはなったが、それでも観客席の

熱狂ぶりは今年度最高潮のものとなる。

 

バトルロイヤル、2対2対2、3対3と形式を変えながら

何度も模擬戦が行われる。

 

『行けーっ織斑君!』

『ファイト!篠ノ之さん!』

 

鍛錬の内容はあくまでも即興のものだったが

世界でもここでしか見られないであろう光景に

アリーナ内が──否、この試合を見られる場全てが

熱狂の渦に包まれる。

 

『オルコットさんナイススナイプ!』

『鈴ーっ!押せ押せーっ!』

 

一夏達はある意味で慣れ親しんだこの光景に

思わず苦笑いする。

 

『シャルロットちゃんカッコイイーっ!』

『負けるなーっ!ボーデヴィッヒさんーっ!』

 

マックスまで高まった会場のボルテージに

ラウラとシャルロットは少々混乱したが、大歓声の中で

戦う事に徐々に楽しみを感じるようになる。

ハイパーセンサーが拾ってくる自身への声援に

ラウラも思わず頬が緩んだ。

 

 

 

今までに無いほど高まった熱気はイベント終了後も

しばらく収まることは無かったという。

 

 

 

 

 

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──一夏の部屋。

 

「今日は疲れたな…」

 

「あぁ」

 

一夏と箒はゆっくりと夕食を堪能する。

2人とも模擬戦で疲労が溜まっていたために

余り物で適当に作ったものではあったが。

 

ちなみにシャルロットがラウラと同室になった事に伴い

1025号室は一夏の一人部屋となっていた。

 

 

「織斑、入るぞ」

 

唐突に訪ねてきたのは織斑先生。

 

一夏を「織斑」と呼んだ辺りからして仕事モードであり

何か一夏に用事があるのだろう。

 

 

「自宅へ行ける様になった事を伝えにな」

 

「あぁ、やっとか」

 

学園へ来てから今日まで、安全上の問題で一夏本人が

自宅へ立ち寄る事は出来なかったのだ。

今日こうして部屋を訪れたのはそれが解決された事を

伝えに来たとのことだった。

 

伝える事を伝えて織斑先生は引き上げていく。

仕事モードの織斑千冬とはこういう人物だ。

 

しかし、部屋を出る直前でくるりと振り向くと

2人にある異名が付いた事を告げる──

 

「…名前負けしない様にな。白き流星、赤い彗星」

 

御大層な異名が付いた事を。

 

「白き…?白なら俺の事か?」

「赤い彗星…私が"箒"だからか」

 

青い光を放つ純白の機体を駆り、流れる様に戦場を

駆け抜ける姿から一夏には「白き流星」の異名が。

赤い輝きを放つ機体を操り、その輝きがほうき星の様に

尾を引く様から箒には「赤い彗星」の異名が。

試合を見ていた生徒達の間で付けられていたのだ。

 

この2人の異名は既に学園中に広まっているらしく

これが外へ広がるのも時間の問題だろう。

 

 

 

「………マジか」

 

6人で模擬戦を行った事を──注目を集め過ぎた事を

少々後悔した一夏だった。

 

 

 




はい、白式も紅椿も未調整という事でね…
展開装甲にはフルパワーを発揮させました。
調整後で原作紅椿の1割増くらい、という想定。
でも下手すると福音の方が上なんですよね…

…かの天パとライバルの仮面男から
異名を拝借させて頂きました。
赤いほうき星、もとい赤い彗星──
そして対となる白き流星。
アリだと思いました、私は。
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