「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
ラウラ回、後編です。
「…俺も…作られた存在だ」
「なっ!?」
一夏は衝撃的な事実をラウラへと打ち明けた。
織斑一夏と織斑千冬、そして生き別れとなった妹の3人が
織斑計画によって作り出された存在である、と。
「織斑…計画?」
「最高の人間を作ろうって計画さ」
ありとあらゆる能力を兼ね備えた「最高の人間」を
作り出そうとした計画の事。
織斑千冬は既存の兵士を凌駕する最強の兵士として
戦闘能力や身体機能を極限まで高められて
織斑一夏は最高の作戦指揮官・ハッカー等を目指して
電子戦能力や情報戦能力を高められて
作り出された存在である。
「…俺は俺を作った奴に従う気は無い」
自分達の都合で生み出して自分達のためだけに
こき使おうとする奴に従う義理は一切無い
それはラウラも同じだと一夏は訴える。
「私にも…許されるのか?」
「当然だ!それを邪魔する奴は俺が黙らせる!」
ラウラはそう言われて少し考え込む。
自分が何をしたいかを。何を目指したいかを。
(むぅ…分からん)
今まで自分を作った人間に従って行動していたために
具体的に何をしたいかが中々思いつかなかった。
(それはこれから探すとして──)
将来的に何がしたいかはこれから探せば良い。
そう判断したラウラは、今何がしたいかを考え
導き出した答えを告げる──
「私はお前を嫁にしたい!」
戦友として、ライバルとして、友人として。
自分に新たな道を示してくれた一夏と共に
これからの人生を歩みたいと。
それを告げられた一夏はというと。
「へ?…何で嫁?」
先程までの複雑な感情はどこへやら、困惑一色だった。
何故かラウラは一夏の事を「嫁」にしたいと言った。
言うまでもないが嫁とは生涯を添い遂げる相手となる
"女性"へ使う名称のひとつであって、ラウラが語った
話を愛の告白だと取ってもそこは「婿」となる筈。
「…気に入った者を嫁と呼ぶのだろう?」
「あー…そいつは違うな」
ラウラが盛大な勘違いをしていた事が発覚した。
「油へポーン」を教えてくれた部隊の副隊長から
そう教えられたとのことだったが、一夏はその誤解を
丁寧に解く事にした。
「クラリッサめ…一度日本へ連れてくるか?」
日本の
お台場にある
静岡には超能力を持った
そういった日本への誤解はすべて解かれることとなった。
それらは全て副隊長クラリッサ仕込みとのこと。
「一夏には嫁と呼べる者はいるのか?」
殆どの誤解が解けたラウラは1つ気になる事が出来る。
それは、人生を添い遂げる伴侶を嫁と言うなら
一夏にそう呼べる人物が居るのかどうか。
「あぁ。篠ノ之箒がそうだ」
「む…羨ましいぞ」
ラウラは嫁候補筆頭の箒を羨ましがった。
しかしラウラが羨んだのは夫婦という関係ではなく
結婚した2人が「家族」となる事にだった。
「私には家族がいない…。だから一夏の嫁になれば──」
自分にも家族と呼べる存在が出来る。
家族と呼べる者がそもそも存在しないラウラにとって
それは宝石の様に輝いて見える"関係"だったのだ。
「なら、妹はどうだ?」
しょぼくれるラウラに一夏はひとつ提案を投げかける。
「妹?…いいな!私を妹にしてくれ!」
ラウラは妹という立ち位置にとても納得がいった。
一夏もラウラも共に作られた存在──
血が繋がっていないとしても、似た様な生まれを持つ
兄妹と考えればとてもしっくりくる。
「あぁ。俺たちは今日から兄弟だな」
「お前と私は兄妹だ…ふふっ、兄妹か」
ラウラは喜びでニヤケそうになる表情を全力で律する。
初めて手に入れた家族という存在はラウラにとって
それだけ嬉しい事なのだ。
「私とはどうなんだ?ラウラ」
ラウラの後ろから慣れ親しんだ声が聞こえてきた。
「姉さんと呼んでもいいんだぞ?」
それは、かつて教官と呼び尊敬した者の声──
「きょきょ、教官!?あいたっ!」
コツン、と出席簿がラウラの脳天に当てられた。
担当教員の名前欄には織斑千冬と書かれている。
織斑一夏が兄となったのなら、織斑千冬は姉となるが
今までのクセで
姉からのちょっとしたお説教を食らったのだ。
「プライベートでは姉さんと呼ぶ事。いいな?」
「は、はい………ね、姉さん」
数日後、ラウラの苗字が突如織斑に変わった事で
事情を伝えられた箒以外の全生徒に衝撃が走るのだが
それはまた別のお話。
「ひとつ…聞いてもいいか?」
ラウラは一夏に聞いておきたかったもう一つの疑問を
ここで聞いておくことにした。
それは、一夏が織斑千冬第2回モンド・グロッソ優勝の
影の立役者と呼ばれている理由だ。
「あの時お前は誘拐されたそうだが…」
「あぁ、それか」
織斑一夏はドイツで開催された第2回モンドグロッソで
何者かに誘拐された事があった。誘拐犯の目的は
織斑千冬の優勝の阻止。一夏を誘拐して脅しを掛け
決勝戦に千冬を出場させない事が狙いだった。
「…ただ逃げただけさ。追っ手からな」
「それだけなのか?」
自分の周囲に
気付いた当時の一夏は彼らを撒く選択を取った。
だが結局は警備をすり抜けた誘拐犯達に拐われてしまい
彼らの思惑通りになるかと思われたが──
「だが、その僅かな時間で私は優勝を手にした」
千冬は一夏の稼いだその僅かな時間で決勝戦に出場
見事優勝を掴んでみせたのだ。
優勝が確定した直後にドイツ軍から一夏誘拐の情報が
もたらされ、千冬は優勝インタビューへ出ることも無く
誘拐犯が潜伏する場所へ急行。傷だらけながらも
命に別状の無かった一夏が救出された。
「そんな事があったのか…」
ここまでが第2回モンドグロッソで起きた事件の詳細。
「別名の理由はアレだな」
その後改めて行われた優勝インタビューの際に
そのカギを訊ねられた千冬が一夏の名前を挙げたことで
事件の詳細を公には出来ないながらも優勝に大きく
貢献したとして一夏を影の立役者と呼ぶようになった。
これが一夏に付けられた別名の理由である。
「俺はその時出来る事をしただけさ」
「…やはり強い奴だな。兄さんは」
為すべき時に、為すべき事を為す──尊敬するに足る
兄だと再認識し一夏を絶賛したラウラ。
新たに兄と姉を手に入れ、強さが何たるかを知った彼女は
憑き物が落ちた様なニカッとした笑顔を浮かべていた。
──
ラウラ・ボーデヴィッヒが織斑ラウラになりました。
あとはVTを片付ければラウラ周りは解決…かな?
評価に色が付きました!ご愛読感謝感激ですっ!
これからも執筆続けていきますので
どうか気長にお待ちください。