「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
無事生還出来るのか?
第15話の続きです。
ドォーンッ!!!
「ここを戦場にするのか!?」
平穏だったハズのレゾナンスに突如響いた爆発音は
大勢の買い物客をパニックに陥らせた。
テロリスト集団の目的が一夏達であろうことは
容易に想像出来るが、無関係な大勢の一般人を
巻き込みかねない場所で事を起こしたことに驚く4人。
「グロック26…護身用に借りていくか」
「USPコンパクトか。IS以外になら通せるな」
男達から持っていた銃を奪い取り護身用に携帯する。
銃はどれもコンパクトハンドガンだったが
身を守るには十分に使えそうな銃だ。
『一夏、敵ISは出足が遅いようだぞ?』
「ならさっさと脱出するぞ」
突入した部隊のバックアップを担っているのか
捉えた唯一のIS反応はまだ動きを見せていない。
一夏達はこの隙を突いて突入部隊を素早く制圧し
学園から来るであろう救援と合流する作戦を取った。
「誘い出して奇襲、武器を奪えればベストか」
銃声が響いてきた方向から大勢の買い物客達が
逃げ出してくるが、一夏達はこれに紛れるようにして
行動を開始した。
「…2人、4人、3人か」
上層階へと移動し、吹き抜けになっている箇所から
下のフロアを動く人々に目を通していき
銃を乱射しながら走る目出し帽の男達を発見する。
人数はパッと見た限りでは9人。
「まずは2人の方からだな」
「…あれはM84か!」
男達がフラッシュバンとも呼ばれるスタングレネードを
手にしていたのをラウラが発見する。
あれを上手く奪い取れれば、テロリスト達を制圧するのに
大いに役立ってくれるだろう。
「持ってる銃はM4カービンかな?」
「もう1人はAK-47だな」
男達はそれぞれアサルトライフルも手にしており
反撃されると痛い目では済まなさそうだが
こちらも奪い取れれば制圧に役立ってくれるだろう。
「腕か足を狙えるか?」
「任せろ」
一夏がグロック26を、ラウラがUSPコンパクトを手にし
箒とシャルロットが拘束用ロープを構える。
「…3…2…1…GO!!!」
ダァン!ダァン!
「ぐわッ!?何しやがるッ!」
「何だっクソッタレめ!!」
男2人への奇襲は見事に成功した。一夏とラウラの撃った
弾丸はそれぞれ男達の腕や足に命中し
武装を相手に使われる事無く拘束にする事に成功した。
『一夏!ISが動き出したぞ!』
「マジか!?ちょっと早いな…」
敵ISの動向を探らせていたマドカから、遂に動いたとの
報告が上がる。これには一夏の表情に焦りの色が浮かぶ。
こちらがISを出さなければ、敵もISで突撃してくる事は
無いだろうとして最低限の機能しか使っていなかったが
敵側は割とお構い無しだったらしい。
「──居たぞ!目標だ!」
「くっ…隠れるぞ!」
ダダダダッと3人の男達の持つアサルトライフルから
弾丸がばら撒かれる。一夏達は咄嗟に近くにあった花壇や
階層を支えている柱などに身を隠す。
「ぐおっ!?銃が奪われてやがる!」
「危ねぇっ!…残弾が不安だな」
人が居そうな箇所目掛けて弾をばら撒いてくる男達に
カバーとなる物陰から少しだけ顔を出して射撃し
スタングレネードの切り時を探る。
アサルトライフル同士の撃ち合いなだけあって
一夏達とテロリスト達の居るこの場は
まるでガンアクション映画の一幕の様である。
「ええい!応援はまだかっ!?」
「チクショウ!鬱陶しいガキ共だな!」
「少し攻めるぞ!」
「応援が来る前に片付ける!」
熾烈な銃撃戦が続き、周囲のガラス窓やショーケースが
穴だらけになり、粉々に砕け散っていく。
「あがッ!?クソッタレめぇ!」
男の一人に銃弾が命中し大きく怯む。
「今だ!」
「ヤベエっ──」
ドンッ!!!
ラウラの手元から男達の足元へと投げ込まれた
M84スタングレネードが炸裂。
男達は強烈な爆音と閃光で視覚と聴覚をやられ
まともに歩くことも出来なくなる。
「よし、捕まえた!」
「これでひとまず…か」
スタングレネードで怯んだ3人の男を素早く拘束し
全員をキッチリロープで捕縛する事に成功した。
彼らの持っている武器も全て取り上げてある。
一度物陰の多い店舗の中へ駆け込み、弾のリロードや
負傷箇所のチェックを済ませる。
「ぐ…1発貰ってたからな」
「応急処置はこうか?ラウラ」
「あぁ。止血が出来ればいい」
一番積極的に敵へ反撃を行っていた一夏は右腕に1発
軽いものだが銃弾を貰ってしまっていた。
ラウラが奪った武器のメンテナンスを行いつつ
箒に指示を出して応急処置を行わせる。
『──ISのお出ましだ!来るぞ!』
「分が悪いなっ!」
何とか一夏の銃創の応急処置は終わったが
テロリスト達の持つISがとうとう一夏達を捕捉した。
ISの持つハイパーセンサーには一兵士の隠密行動など
筒抜けになって当たり前である。
「ガキ共が…手こずらせてくれるじゃない」
「………」
歪にカスタムされたISに乗った女が一夏を睨む。
作戦を滅茶苦茶にされたからか相当ご立腹のようで
半ばヒステリーを起こしているようである。
「死になさいッ!」
「やってみろよッ!」
一夏は白式を展開せずに回避行動に移った。
ISの運用には国家の承認が必要となり、それを得ずに
無断使用した場合は刑法による処罰を受ける。
当然今の白式も展開すれば法律違反となる。
が、一夏が気にしているのはそこではない。
「法律を破ってISを使った」という付け入られる隙を
目の前のテロリストの背後に居る何者かに
なるべく見せたく無かったからである。
「舐めるんじゃないわよッ!」
「ぐあっ!…まだだ」
しかし、ヒステリーを起こし滅茶苦茶に撃ってくる
ISを前にして完全な回避を決め続けることは
流石の一夏でも難しかった。
乱射されたビームが至近距離に着弾し爆発
足に中度の火傷を負った上で吹き飛ばされ
柱へ叩きつけられてしまった。
「死ねっ!織斑一夏ァ!」
「…どうする…っ?」
一夏へロックオンされたライフル。
法律違反を覚悟で箒がISで切りかかろうとしたその時──
バシュゥッ!
「何っ?」
上空から飛来した一条のビームが女の持っていた銃を
綺麗に撃ち抜いたのだ。
「ISだとっ!?」
その場にいた全員が空を見上げる。
砕かれた天井のガラス、そして上空から続けて飛来する
青い翼の様な武装を持った機体。
「やってくれる…っ!」
女がもう一本手に持っていたバズーカも短剣で切り裂き
「一夏さん、吉報をお持ちしましたわ」
青い翼の持ち主は目の前の女から視線を逸らさないまま
ISの使用許可が降りたことを一夏達へと告げる。
「おのれ…がはっ!?」
尚も一夏へ攻撃を加えようとした女だったが
空から放たれた"
上空からもう一機、赤色のISが降りてきていた。
青い翼に続けて、
「こいつで!」
「フィナーレですわ!」
ティアーズの一斉射撃と龍砲がクリーンヒットし
女のISは敢え無く一撃KOとなった。
「セシリア!鈴!」
「よく来てくれた!」
レゾナンス襲撃の一報を聞いたセシリアと鈴は
学園の教師の協力のもとIS使用許可を取りつけ
全速力で救援へと駆けつけたのだった。
「………白式ッ!!!」
一夏は一瞬で白式を身に纏うと、青白い輝きが
レゾナンスの一角に満ちる。
その輝きは以前よりも強さを増している様にも見えた。
──ここからの出来事はまさにあっという間だった。
各々専用機を纏って駆け出すとレゾナンス内で暴れる
テロリスト達の武器だけを綺麗に破壊し
店内の警備員達とも連携して全員を捕縛していった。
一夏達が奮闘した結果民間人に死者が出ることは無く
レゾナンス襲撃事件は小一時間で幕を閉じた。
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その日、世界に衝撃的なニュースが駆け巡った。
『やぁやぁ凡人共!束さんだよ~♪』
今まで行方不明だった世紀の大天災篠ノ之束が
なんとIS学園に居を構えると報じられたのだ。
「篠ノ之博士は何をする気なんだろうな?」
「また世界中を驚かせてくれるのかね?」
世界を一変させうる力を持つ天災の帰還に
多くの者の関心が彼女の動向へと向けられる。
しかし、興味や関心といった良い反応を示したのは
ISからやや疎い者たちだった。実際にISに携わる者たち
特に政府や企業との繋がりが深い者たちにとっては
このニュースは悪い意味で衝撃的だった。
──IS委員会本部会議室。
話があるから集まれ、と篠ノ之束本人から呼び出され
この会議室には委員会の主要メンバーと
ISを保有する国の大統領や首相が集まっていた。
「………」
「…篠ノ之博士。要件とは何だね?」
この錚々たるメンツを前にしても束は表情1つ変えない。
それどころか、軽蔑する様な視線すら向けている。
「私、学園に住むから」
言葉を交わす気すら起きないと言わんばかりの表情で
束は要件をその一言に纏めて伝えた。
「………学園に!?」
「…それは無理な話だよ」
余りにも突飛な話だったために一瞬理解が遅れたものの
委員会メンバーや首相達はその要求に対してNOを返す。
「君は我々の監視下に居てもらわねばならん」
篠ノ之束とは世界の軍事バランスを滅茶苦茶にした
ある種の危険人物であり、かつてそうだったように
IS委員会や各国政府の監視下に置かなければならない──
その思惑がどうであれ、IS委員会代表はそう理由を告げ
束の学園移住を拒否した。
「君は戦争の兵器を作ったのだよ?」
委員会代表は毅然とした態度で──さも当たり前の事を
言っているかの様な態度で告げた。
「ふーん……そう言うんだ」
──束の視線が絶対零度の冷たさを帯びた。
「な、なんだね」
本当に物を、人を
恐ろしく冷たい視線に場にいた全員が思わずたじろぐ。
「あの子達を翼から兵器へ変えたのは君たちだよ?」
そう呟いた束は一つの空間投影ディスプレイを開くと
ISに関して定められた条約や法律の詳細が映し出される。
ひとつはアラスカ条約。ISの軍事転用禁止を初めとする
IS運用上のルールをまとめた条約である。
もう1つはIS学園特記事項。IS学園に所属する生徒や
機体に対する扱いをまとめた規約である。
そして、明らかにそれらに違反しているであろう事例が
その後に続くようにして明かされた。
軍用ISの開発、学園生への過干渉など──
「それは…その…」
要するに、自分たちで作ったルールを自分たちで破り
好き放題やっている事の証拠だった。
流石にこれを突き付けられてはロクな反論など
出来るはずも無かった。
「私のやった事は私が精算する。私のやり方で」
束はここで、織斑一夏の卒業まで──約3年の猶予付きで
アラスカ条約違反の機体の凍結か解体と
学園生への一切の干渉禁止をIS委員会に求めた。
つまり、ISを軍事関連に一切使えなくなるうえに
学園に居る自国の生徒に対して指図が出来なくなる。
「それに加えて君の学園移住を認めろなど…!」
「少し図々しいんじゃないかね!?」
噴出した反発をせっかちだとあしらいつつ、今度は餌を
彼らの目の前へぶら下げてやる──
「呑むなら、学園のISに手を掛けてあげてもいいよ」
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──IS学園。
「何?何この可愛いの!」
「まんまる!めちゃめちゃ可愛いじゃん!」
今日学園には珍しい客が大勢訪れていた。
小さくつぶらな瞳を持ち、地面をコロコロと転がる
カラフルな球体状の小型ロボット達だ。
学園の中でも海に面したエリアを中心に活動しており
グラウンドに置かれている巨大な謎のコンテナとを
時折行き来していた。
「ねぇ一夏、これって何?」
その球体の正体について一夏に訊ねた。
彼ならば知っているのではないか、と。
「あぁ、
「ハロ?」
束の身の回りの片付け等を手伝っていたロボットを
元にして開発された作業支援用のロボットであり
資源の採取から部品の加工、そして組み立てまで
様々な作業をオートで行ってくれるAI搭載型ロボである。
「
略して「
「束さんのラボを建ててるのさ」
「篠ノ之束博士の?」
この無数のハロは今学園のすぐ隣にギガフロートを
もう1つ建造し、束が研究開発を行う為の大型ラボを
建てている最中だった。
「見に行きましょうよ!」
「少し見に行くか!」
レゾナンス襲撃事件の余波を受け、今日は休校。
6人ともあまりやる事が無かったために
暇潰しとして建造中のラボを見に行く事にした。
「凄い…光景だね」
コロコロ転がる可愛らしいハロ達が工具を片手に
本格的な土木工事を進めている異様な光景に
6人は何とも言えない表情を浮かべた。
「ここが宇宙開発の拠点になるのかな?」
「その一つにはなるだろうな」
束のラボとなるのならきっと大型天体望遠鏡や
スペースシャトル発射場などを完備した
それはそれは大きなラボになるのだろうな、と
6人は出来上がるラボの姿を想像した。
目の前に広がるスペースには一夏達の想像すら超えた
とんでもない大きさの宇宙開発拠点が建つこととなるが
それはもう少し先のお話である。
うさぎさんが学園に襲来しました。
あ、今回出てきた敵ISパイロットは
巻紙さんじゃありませんので。
ティアーズを青い翼と呼んだのは…
「Meteor -ミーティア-」を流しながら
そのシーンを読んで頂ければ分かるかと。
ハロは本来「HARO」表記らしいですがここのハロは
銀河ハローから名前を取っているので「HALO」で
合っています。
役割的には00のハロ達に近いかな。