「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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学年別トーナメントへ向けて
セシリア&鈴編です。

ここまであまり活躍させてあげられていなかった
鈴とセシリアにスポットを当てる回となります。
山田先生に叩きのめされたコンビですが
上手い事セットで活躍させてあげたい所さんです。



第17話

 

 

 

──学年別トーナメントまで、遂に残り1週間を切った。

 

多くの生徒が出場しトーナメント形式での試合を行う

特に熱狂的な盛り上がりを見せる一大イベントだ。

この時期になると学園全体の雰囲気がガラリと変わる。

 

「今日もトレーニング、やるわよ~っ!」

 

「アリーナへ急げ~っ」

 

複数あるアリーナの使用予約がほとんど埋まり

申し込みを行う時のグループの人数もグッと増える。

 

特に上級生になるほどこのイベントを重要視しており

3年生の多くは遊びに使う時間も投げ捨ててまで

トーナメントへ向けた鍛錬に打ち込んでいた。

 

 

 

生徒たちが学年別トーナメントを重要視している理由は

主に2つだ。

 

「今年の賞品、何になるんだろうね?」

 

「分からないわ。でも、良い賞品なのは確かよ」

 

ひとつは、毎年豪華な優勝賞品が用意されている事。

クラス対抗戦で賞品となっていた「デザート無料券」も

その例の1つであり、毎年用意される女子高生垂涎モノの

優勝賞品を狙っているのだ。

今年はまだ優勝賞品の内容は発表されていないが

やはりとても豪華な賞品が用意されているのだろう。

 

 

 

そしてもう一つ、特に上級生達が意識している理由で

各国からスカウトマンが訪れるから、という理由がある。

 

「スカウト、あのデュノアからも来るそうよ」

 

「最近業績良いらしいわね。…狙おうかしら?」

 

学年別トーナメントは学園が国家や企業に対して設けた

専属操縦者スカウトの場という意味合いもあり

各国政府関係者や大企業CEOなどが大勢訪れるのだ。

 

彼らに対して自身のIS操縦技術をアピールし

国家や大企業の専属操縦者としてスカウトしてもらう

これが上級生の、特に3年生が学年別トーナメントに

並々ならぬ情熱を注ぐ理由だ。

 

 

 

そして、学年別トーナメントへ向けて闘志を滾らせる

IS学園の1年生ペアがここにも──

 

「あっと驚かせてやりますわ!」

 

「アタシの実力、見せつけてやるんだからっ!」

 

第1アリーナを贅沢にもたった2人で貸し切った

2人の少女、セシリア・オルコットと凰鈴音だ。

 

 

セシリアと鈴は、今年の学年別トーナメントが

タッグマッチ形式だと聞いた時に2人揃って

真っ先にお互いにペア指名し合っていた。

 

かつて2人は、実機を用いた授業の際に行われた模擬戦で

ただの訓練機である打鉄を纏った(大きなハンデを背負った)山田先生を相手に

2対1で挑んだにも関わらず無様に敗北した経験があった。

 

「見返すわよ、セシリア」

 

「当然ですわ、鈴さん」

 

その汚名を返上すべく2人はペアを組み、連携の鍛錬を

これでもかと積むことを決意していたのだ。

 

 

 

 

セシリアと鈴の連携トレーニングは、最初のうちは

とても国家代表候補生とは思えない程グダグダだった。

 

「ちょっとセシリア!危ないじゃない!」

 

「鈴さんこそ!射線上に入らないでくださいません!?」

 

織斑先生に言われた事を参考にまず通信を繋げ

お互いに情報共有をしつつダミードローンを相手に

対戦を行ったが、2人が各々の行動基準に従って

動いていたために通信を繋げた意味があまり出ず

ダミー撃破のスコアもあまり伸びなかった。

 

「…役割を固定してやってみない?」

 

「そうですわね、固定しましょうか」

 

そこで、囮役や攻撃役といった戦闘中コロコロ入れ替わる

役割分担を一旦固定し、それぞれの役割の時の動きを

体にしっかり染み込ませる事にしたのだ。

 

 

 

まずは前衛で敵の近くを陣取る事となる鈴が囮役を務め

後衛になるセシリアが攻撃役を務める事となった。

 

「そっちには行かせないわよっ!」

 

囮役を務める鈴は常にセシリアの射線を意識しつつ動く。

セシリアと追ってくるドローンの間(スターライトmk.3の射線上)に入らないように動き

逃げるドローンは龍砲や回り込みを駆使して追い込む。

 

レーダーも駆使して味方機(ブルー・ティアーズ)の位置を把握する事で

誤射を防ぎつつ、セシリアに任せるべき敵はどれなのか

自分が意識を向けるべき敵がどれなのか──

これらを意識して敵を誘導する。

 

「そこですわ!もう一つ!」

 

攻撃役を務めるセシリアが隙だらけのドローンを叩く。

ドローン達が鈴の陽動で掻き乱されている隙を突き

自身へ迫ってくるドローンや鈴の逃げ道を塞ごうとする

ドローンから的確に撃ち落としていく。

 

4機のティアーズによる包囲網を敷き、陽動された敵を

素早く撃ち落とす。陽動に掛からずセシリアの方へ

向かってきたとしても、手に持ったライフル(スターライトmk.3)が火を吹き

見事な風穴が開けられていった。

 

 

 

「いいスコアになってきたじゃない!」

 

「とても重要ですのね、連携は」

 

セシリアも鈴も知識や技術を会得するスピードは早く

学ぶスキルをある程度絞って鍛錬を行えば

あっという間にそれを会得していく。

囮役と攻撃役の動きをそれぞれ身につけた結果

先程までのグダグダが嘘のようにスコアが伸びたのだ。

 

 

 

続いて、セシリアが囮役──もとい陽動役を務め

鈴が攻撃役を引き受ける形でトレーニングを再開する。

 

「さぁ…追い詰めて差し上げますわ」

 

セシリアは鈴の動きを見つつ牽制射撃を適度に撃ち込む。

敵を追うドローンを鈴の死角から引き剥がし

敵から逃げるドローンの逃げ道を塞いでやることで

鈴が攻撃を当てやすい位置へと追い込んでいく。

 

オールレンジ攻撃を行えるティアーズは敵の誘導に

相当の効果を発揮した。使用中セシリアは動けないが

陽動役を実質4人まで増やす事が可能だからだ。

 

 

「隙ありっ!まだまだっ!」

 

逃げ道を塞がれ、正面へ誘い出されたドローンを

攻撃役の鈴がバッサバッサと切り裂いていく。

より仕留めやすい位置から、より素早く。

 

ティアーズによって時に挟撃され、時に包囲攻撃され

動きの乱れたドローンは非常に刈り取りやすく

無制限の射角を持つ龍砲の特性と合わせて

サクサクと撃破スコアを稼いでいった。

 

 

 

「上手く行くと爽快ですわね」

 

「バッチリ決まると最高よね」

 

ドローンの撃破スコアに満足気な表情を見せた2人。

個人スコアと比較してしまうと少々劣るものだったが

まだ組んだばかりのコンビとしては良いスコアだ。

 

誘導と撃破が上手い事噛み合った時の爽快感というのは

個人戦では得られないもの。新しく得られた感覚に

2人のモチベーションはグングンと高まっていく。

 

「このまま連携の切り替えも実践したいですわね」

 

「切り替える合言葉とかあるといいかもね」

 

2人は役割分担を切り替える練習を行うために

再び武器を手に取り、ダミードローンを出現させる。

その数25体。

 

 

「誘い込みますわ!」

 

「任せなさい!」

 

トレーニングスタートの合図と共に2人が駆け出す。

プライベート・チャンネルで一言やり取りを行い

セシリアが敵の誘導に、鈴がその撃破に取り掛かる。

 

「ティアーズ!」

 

主の号令を受けたティアーズがプラットフォームを離れ

敵を4方向から包囲する。一見すると滅茶苦茶に放たれた

無数の光条は綺麗に敵の進路を絞り、順序良く鈴の前へ

誘い込まれていく。

 

「良い誘導だわ!助かるッ!」

 

見事に誘導されたドローンに双天牙月が叩き込まれ

戦闘開始からものの数秒でドローンが数機落とされる。

 

ティアーズが創り出す光の雨の真っ只中へと

吶喊する形になっているが、その雨からセシリアの意図を

読み取ることで鈴は雨に当たらずに戦えていた。

 

 

「このまま掻き乱すっ!」

 

周囲にいたドローンを切り刻んだ鈴は、陽動や撹乱を

連想するキーワードを叫んで別のドローンの集団へと

飛び込んでいく。

 

これから取る行動を連想させる短いキーワードを叫ぶ──

2人が連携の練習として取った役割切り替えのサインだ。

 

「狙い撃ちますわ!」

 

鈴の掻き乱すというキーワードを受け、セシリアは

敵を攻撃するという趣旨の言葉を返しながら

すぐさま狙撃行動に入った。

 

自分へ迫ってくるドローンに気を付けながら

素早くポジションチェンジを行い、トリガーに掛けた指に

明確な攻撃意思を込めて撃ち抜いていく。

 

「スイッチ!」

「代わりますわ!」

 

連携に慣れてきた2人は次々と役割を入れ替えながら

残ったドローンを的確に撃ち落としていった。

 

 

「25体に2分…まぁいいんじゃない?」

 

「ドローン相手にはこれ位出来ませんとね」

 

2人で25体のダミードローンを全て撃破するのに

掛かった時間は約2分。まだドローンのAIレベルが低く

攻撃の頻度は少なかったが、鮮やかな戦いだった。

 

 

 

セシリアは今のトレーニングで得た発見や反省点を

ノートに一つ一つ書き留めていくが、ここで鈴から

セシリアは気が付いていなかったある事実を聞かされる。

それは何気無く実行したティアーズのある操作──

 

「アンタ…ビットと本体の同時制御なんて出来たんだ?」

 

「え?…どういう事ですの!?」

 

鈴の告げた内容に己の耳を疑ったセシリアは

先程のトレーニングの映像を一から再生していく。

 

「…意識してませんでしたわ」

 

役割の切り替え練習を初めてから1分が経過した辺りから

セシリアはビットと本体を同時に動かしていたのだ。

特に深く意識などせず鈴との連携を楽しみながら

流れに任せて操作していたセシリアだったが

何度見直してもビットと本体を同時に操作している。

 

「自然体で居るのが良いってことかしら?」

 

「…みたいですわね」

 

鈴との連携を楽しんだ事で余計な緊張がほぐれ

コントロールに集中出来た事で良い結果を生んだのだ。

 

セシリアにとってこれは思わぬ大収穫だった。

今まで散々練習しても克服出来なかった苦手を

あっさりと克服する事に成功したのだから。

 

 

 

╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌

 

 

 

──学生寮。

 

「お邪魔いたしますわ」

 

1日の鍛錬を終えたセシリアは学生寮へと戻ってきたが

自室ではなく鈴の部屋を訪れていた。

 

「待ってたわよ」

 

タンクトップにホットパンツという非常にラフな格好の

鈴が出迎える。セシリアが此処を訪れた理由は

後で聞きたい事がある、と鈴に呼ばれたからだった。

 

 

「それで…聞きたい事というのは?」

 

「ちょっと教えて欲しい事があるのよ」

 

鈴はここを卒業したらやろうと思っている事があり

それに向けて色々と勉強をしていたのだが

どうしても独学だと難航する分野があった。

そこで鈴はその分野に詳しいであろう人物──

セシリアに教えを乞う事にしたのだ。

 

「料理店の経営、ですか?…私は厳しいですわよ?」

 

「ありがと!感謝するわっ!」

 

着いてこれるなら教えてやる、と暗に告げたセシリアに

厳しかろうが構わんとばかりに食い気味に礼を言った鈴。

 

「私からも1つ、宜しいですか?」

 

そんな鈴に、セシリアもやや食い気味に相談を求める。

苦手な分野の教えを乞うのであれば、その礼として

こちらもひとつ苦手克服のため教えを乞おう、と。

教えを乞うつもりで持ってきていた「材料」を取り出し

作ってみたいものの作り方を鈴へ尋ねる。

 

「酢豚の作り方を教えて下さらないかしら」

 

「もっちろんOKよ!任せなさい!」

 

セシリアの話を聞くために席を外してもらっていた

鈴のルームメイトに試食をしてもらうべく

2人は急いで調理に取り掛かった。

 

 

 

セシリアが豚肉や野菜のカットを、鈴が甘酢あんや

下味付けの準備を進めていく。

 

「包丁の扱い、上手くなってるわね」

 

セシリアの手には結構な数の絆創膏が巻かれている。

恐らくは料理の練習をしていた時に負った傷なのだろう。

包丁さばきは以前のホームパーティの時よりも

綺麗なものになっている事から彼女の本気度が窺える。

 

「さ、こいつを揚げていくわよ」

 

「油へポーン!ですわね」

 

下味を付け、片栗粉をまぶした豚肉を油へ投入する。

セシリアは慣れた手つきで丁寧に油へと入れていく。

──跳ねまくった油の熱さ(ラウラの暴走)を思い起こしながら。

 

 

「次は……フライパンで野菜を炒める、ですわね」

 

揚がった豚肉を取り出す作業は鈴に任せ、セシリアは

持ってきていた中華料理のレシピ本をめくって

酢豚のページを開き、次の手順を確認する。

 

鈴の指示に従ってコンロの火力をグッと高め

大きな中華鍋を使って豪快に野菜達を炒めていく。

 

「…うん、そろそろあんを投入よ」

 

「美味しそうな香りですわ~♪」

 

程よく火の通った野菜にあんをかけ、とろみが付くまで

2~3分ほど炒める。とろみが付くにつれて上がる湯気にも

香りが乗り、早くもセシリアの食欲をそそる。

 

「豚肉もそろそろかしら?」

 

レシピ本に書かれていた基準を参考にタイミングを図り

トレーへ引き上げられていた豚肉を中華鍋へ投入する。

 

セシリアはタイミングが合っていたかどうか不安で

鈴の表情をチラ見したが、無言で頷いていたの(OKサイン)を見て

正解だったと察し少しホッとした。

 

 

 

「さて!…完成ですわ!」

 

「中々やるじゃない!」

 

野菜や豚肉の大きさに少々バラつきがあるものの

とても美味しそうに湯気を立てる酢豚が完成した。

 

 

「鈴~、話は終わった~?」

 

「最高のタイミングだわティナ!」

 

丁度いいタイミングで鈴のルームメイトも帰宅。

3人で酢豚の試食をする事となった。

 

 

 

「「「いただきま~す」」」

 

以前のセシリアの料理は、見た目や香りはカンペキでも

何故か味だけが壊滅的という殺人兵器だったため

その事を知らないティナ以外は酢豚を恐る恐る口へ運ぶ。

 

「美味しい~!」

「…うん!良い出来よセシリア!」

 

「練習した甲斐がありましたわ」

 

酢豚を得意料理とする鈴も合格点を出すくらいには

美味しく作れていた。

 

 

(鈴さんに褒めて頂けるなんて…感激ですわっ!)

 

特別大袈裟な反応はしなかったセシリアだが

鈴から貰えたその評価に内心では飛び跳ねるように

大喜びしていた。

 

1年生の中でも一夏、箒、そして鈴が頭ひとつ抜けて

料理上手というのは1年生の間では割と共通認識なのだが

その内の1人からお墨付きを貰えたのである。

料理を上手く作れる様になりたいセシリアにとっては

これ以上無い評価だろう。

 

 

 

この日以降しばらくセシリアのテンションは最高潮で

今日身につけたビットとの同時攻撃にも磨きがかかり

学年別トーナメントを最高の状態で迎えることが

出来たのだとか。

 

 

 

彼女が手料理にどハマりしたのはまた別のお話。

 

 

 





セシリアは鈴と組むことになりました。
ラウラに機体を破壊されていなかった場合
原作でもここが組んでても不思議は無いかと。

次回は一夏か箒のどちらかとそのペア相手に
焦点を当てた回を予定しております。お楽しみに。

【設定・元ネタ解説】
「ダミードローン」
独自設定。ISの形をしたホログラムであり
AIレベルに応じた戦闘行動を取る。今回はLv1。
やられメカをザクやジムの様にポンポンと出せない分
今後の模擬戦ではコイツが何度か出演する予定。

「2分で25機」
ガンダムSEED DESTINYより。ストフリが初出撃時に
25機のグフ&ザクを2分で全滅させたシーンから。
ティアーズとストライクフリーダムって似てません?
今後も色々なオマージュ、出していきますので。
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