「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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勢いのまま第2話です。

原案は一年以上前のものなんで
整え直しや何やかんやで
勢いはすぐ衰えると思いますがね…


第2話

 

 

 

──放課後、学生寮。

 

 

「………………」

 

 

(織斑くんの部屋どこだろうね?)

(私達の部屋から近いといいなぁ)

 

一夏は一度荷物を部屋へ置きに行くことにしていた。

セシリアの試合について織斑先生に呼び止められた時に

箒に集合場所と時間を伝えてあるから時間的余裕もある。

 

 

「………足音が多いな、全く」

 

 

(バレたっ?)

(でも実際足音は多いよ~?)

 

一夏は後ろをコソコソとついてきている三人娘に

既に気づいていた。特に布仏本音という子の話し方は

実に分かりやすく、その声が先程から一夏の近くを

離れていかないのだ。

気にするほどでもないと一夏はスルーしていたが。

 

 

「1025号室、ここだな」

 

コンコンと扉をノックする。

別に誰が居る訳でも無いだろうが、一応である。

部屋を間違えていなければ心配はないだろうが。

 

「あぁ!今開ける!」

 

が、どうも同居人がいるらしい。声からして女性だ。

 

ガチャっ…

 

 

「…一夏!?」

 

「えっ?箒?」

 

 

部屋から現れたのが箒だった事に一夏は驚く。

クラスの生徒どころか、仮に同居人がいたとしても

自分の姉かこの学園で一夏以外の男である学園長との

どちらかになるだろうと、そう思っていたからだ。

 

しかし箒の装いは見るからに部屋着だ。

かといって箒はこんな服装で外出するような人ではない。

となれば──

 

「「一夏(箒)の部屋番号は?」」

 

(うわぁお息ピッタリ~)

 

「「………1025」」

 

(恋人同士みた~い)

 

「「……………」」

 

2人揃ってチラリと周りを見渡すと、先程まで一夏の後を

追ってきていた三人娘以外にも人が集まってきている。

気恥ずかしさで思わず固まる2人。

 

「部屋、入るか」

 

「あ…あぁ」

 

「篠ノ之さんに抜け駆けされちゃったかな?」

「お似合いの夫婦、って感じよね~」

「末永く爆発しろ~」

 

「「やかましいっ!」」

 

 

 

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「あ゛~~~っ…疲れた」

 

部屋に持ち込まれたダンボール箱の片付けもそこそこに

ベッドへボフッと音を立てて倒れ込む一夏。

 

「分かる。あれは疲れるよな」

 

ペットボトルのお茶を飲み終えた箒がそう返す。

今日1日だけで文字通り学園中から野次馬がやってきて

あれやこれや根掘り葉掘り一夏の事を何から何まで

聞こうとしてきた。それは3年生も例外では無かった。

 

「…俺は珍獣じゃねぇってのに」

 

一夏はむくりと起き上がると部屋に備え付けのパソコンを

立ち上げる。カタカタとキーボードを叩く小気味良い音が

1025号室に響く。

 

「む?何か調べているのか。女性権利団体?」

 

「あぁ、厄介な連中だよ」

 

一夏は女権団が何かアクションを起こそうとしていないか

片っ端から、このパソコンからアクセス出来る範囲で

調べあげていく。

 

「パッと見何の動向も無し…か。」

 

ハッキングでも掛けるかとキーに手を添えた一夏だったが

学園のネットワークに足跡が残ってしまいそうだな、と

立ち上げていたパソコンをシャットダウンする。

 

 

 

(………きっと見られてるよなぁ、この部屋)

 

一夏は放課後に箒に話そうとした事を思い出す。

が、どうもこの部屋は監視されているような気がした。

 

 

『モチロン見てるよぉ~いっくん♪』

 

(見てない聞いてないっ!ここには俺と箒だけだっ!)

 

一夏には一瞬悪巧みをする"ウサギ"の姿を幻視したが

あえてそれを無視することにした。

一々狼狽えていては精神が持たないだろう。

 

 

 

「箒、隣いいか?」

 

「とっ隣っ!?」

 

ベッドに腰掛けている箒のすぐ横を指差す一夏。

 

「………」

 

箒はまた顔を赤くして戸惑っている。

 

「ダメか?」

 

 

 

「………構わない」

 

一夏はそっと箒の隣に腰を下ろす。

 

「一体何を考えているのだ一夏」

 

箒は思わず一夏を睨みつけながらそう言うが

その顔色は何故か真っ赤だ。

やはりな、と確信を持った一夏は言葉を紡ぐ。

 

「なぁ箒、俺の事好きなんだろ」

 

「っ!?」

 

元々真っ赤だった箒の顔はトマトのように真っ赤になり

酷く狼狽えながら立ち去ろうとするが

一夏はそれをギュッと抱きしめて阻止すると

己の箒への思いを赤裸々に打ち明ける。

 

「『好き』って何なのかまだよく分からないんだけどさ

俺は多分箒が好きだ。考えると箒が真っ先に出てくる」

 

「……………!!!」

『!?!?』

 

誰かが椅子から転げ落ちた音が聞こえた気がしたが

一夏は恥ずかしさでどうにかなりそうな心を全力で律し

自惚れだったらぶっ飛ばしてくれて構わない、と続けた。

 

「………私も…好き、だ」

 

そう呟いた箒の腕はそっと一夏の背中へ回された。

 

「ありがとう。嬉しいよ箒」

 

最近で一番の安堵をしつつ、ギュッと抱きしめ返す。

そしてこっそりISを起動し覗き魔に一言──

 

『悪いウサギにはあとで何かお返ししないとなぁ』

 

『えっちょ待っ──』

 

 

 

 

 

「一夏、お前この3年間で何があった?」

 

「まぁそう思うよな」

 

しばらくして落ち着いた箒は一夏に質問をぶつける。

フラグブレイカーとまで呼ばれていたほどの男が

何をどうやったらそうなるのか、と。

3年前、第2回モンドグロッソの直前に一度再会した時は

まだフラグブレイカー感は残っていたのだ。

 

「弾、って知ってるだろ?アイツに散々言われたんだ」

 

あまりにもフラグをへし折り続ける一夏に、親友弾は

彼女達の行動の理由を1から叩き込みに掛かったのだ。

「付き合う」とはどういうことを指しているのか

「好き」にはLIKEとLOVEがあって、一夏に対しての好きは

軒並みLOVEの方であると。世の男が血涙をしぼるほど

羨ましい状況に置かれているんだぞ、と。

後ろから刺されても知らないぞと凄みながら。

 

「あげく少女マンガまで読まされたんだよ」

 

それでも理解できない一夏に対し弾は妹の部屋にあった

少女マンガまで例にとって散々説明を繰り返したのだ。

その後弾は妹からこっ酷く叱られてはいたが。

 

「気付いたのはもう1人の幼なじみのお陰だ」

 

「鈴、凰鈴音だったか?」

 

鈴は箒が転校した直後に一夏と同じクラスへ転入してきた

中国出身の少女だ。一夏のお陰でクラスに馴染む事ができ

それがキッカケで一夏に惹かれていった子である。

 

「酢豚を毎日作ってあげる、って。顔を真っ赤にしてさ」

 

「それはあれか、俺の味噌汁を作ってくれというアレか」

 

「あぁ。気になって調べてな」

 

普段言いたいことを一切の遠慮無くぶつけてきていた鈴が

やけにしおらしく、モジモジとしながら告げたため

何か特別な意味でもあるのだろうかとネットも使って

調べてみてやっとそれが愛の告白だと気付いたのだ。

 

その時に一夏は恋愛や結婚について徹底的に調べあげ

好きというのはどういう感情なのかを知った。

答えを返す前に鈴が転校し有耶無耶になってしまったが

それ以降もずっと、一緒に居たい人は誰だと自問自答を

繰り返していたのだ。

 

「それで浮かんだのが…私?」

 

「まぁそんなとこだ」

 

 

 

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「─これほど強力なISが世界には467機しか存在しない。

……織斑、続きを説明してみろ」

 

千冬は何度目か分からない意地悪な要求を一夏へと振る。

 

「…ISの要となるISコア、これは全てISの開発者である

篠ノ之束博士が作ったもので、技術の開示はされていない

つまりは篠ノ之博士にしか作ることが出来ない」

 

一夏は基本的に丁寧な解説込みで答えてくれるため

弟をからかうという意味でも度々回答を要求していた。

 

「だが博士はコアの製造要求を拒否して雲隠れしている。

いくら探しても博士を見つけ出すことが出来ないから

国も企業も研究機関も限られたコアを使うしかない。

だからこそ467個のISを皆で分け合って使ってる訳だ。

…どうです、織斑先生?」

 

「良い解説だ。…故にだ、専用機は国家や企業に所属する

ごく一部の人間にしか与えられていない」

 

 

 

そこでふと千冬は視線を一夏と箒へ向けた。

 

「織斑、篠ノ之。お前達に新たな専用機が与えられる」

 

「えっ!?」

「私もか?」

 

なぜ2人に専用機が与えられるのか、それの説明をする

織斑先生はやたら不機嫌な表情を浮かべる。

盛大なため息までつくとは何事だろうか。

クラスメイトからは2人を羨む声が次々と上がる。

そんな中一夏は──

 

(今俺に専用機!?俺がIS持ちなのは割とどこも知ってる

またどっかの組織が俺目当てでねじ込んできたか!?

箒も…箒も?となるとまさか!)

 

この状況を整理してそのISの差出人に見当がついた。

 

「先生、まさかその専用機を送ってきたってのは…」

 

千冬は面倒くささを隠しもせずその名前を告げる。

 

「あぁヤツだ。篠ノ之束だ」

 

(嫌がらせかよあんの駄ウサギっ)

 

ISを直接作ってもらえる2人の境遇を羨んでいるのか

クラス中はだいぶザワついていた。それに対して一夏は

クラスを静かにさせる意味も含めて、これがどれほど

厄介な状態なのかを告げることにした。

 

「みんなは世界中から追っかけ回されたいか?」

 

「えっ?」

「一夏くんは…そうなの?」

 

一夏はぽつりぽつりと語り始める。ISを起動させてから

どれだけ世界中から追い回されたかを。

家のインターホンは毎日数回鳴らされるのが常で

その殆どが研究機関や国家から送られてきた者ばかり。

街へ出れば市民とマスコミと誘拐犯と暗殺者がやってきて

丸一日ほど追いかけ回され続けたこともあった。

 

幸いISを持っていたから振り切ることが出来たが

心休まる時間などは無かった。

皆、一夏の持っているISは篠ノ之束の自信作だと思い

それを奪おうと押し掛けてくるのだから。

 

「俺と箒は元々追われる身だ。専用機が増えたところで

追ってくるヤツが少し増えるくらいで済むが──」

 

何の特徴もない一般人であっても、篠ノ之束謹製の機体を

持っているだけで世界から追われる人に早変わりだ。

それを告げられたクラスメイト達は黙り込んでしまう。

 

「お2人はそれを凌いできた、という訳ですか」

 

そんな話の中セシリアは一夏と戦う楽しみが増していた。

これだけの苦境に立たされてもなおひん曲がることの無い

その心の強さと、それによって培われた戦闘技術──

自身の理想とも言える姿が見れるかもしれない、と。

 

「専用機を持つことの重みは凄まじい、という訳だな」

 

千冬がそう話を纏めると同時に学園のチャイムが

昼休みの時間の到来を知らせたのだった。

 

 

 

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──IS学園、食堂。

 

学生寮も高級ホテルかと見紛うほどに立派だったが

この食堂も同様である。広さは言うまでもないが

並んでいる料理もありとあらゆる国のものが揃い

味、香り、見た目、何を取っても素晴らしいものばかり。

 

「おりむー、隣いい~?」

 

「ん?俺のことか、空いてるから構わないぜ」

 

箒と昼食を食べようとしていた所へ、のほほんさんこと

布仏本音とその友人が現れ、共に昼食をとる事になった。

 

「ここの料理はおいしいよね~♪」

 

所謂萌え袖というやつを揺らして楽しそうなのほほんさん

彼女に関しては積極的に絡んで来られても嫌な感じなど

一切感じない珍しい存在だった。

 

「ああ、美味しいよな。参考にならない位にな」

 

「おりむーやっぱり料理出来るんだぁ、凄いね」

 

「一度作ってやったらどうだ?一夏」

 

「ぜひ!ぜひ食べてみたい!」

 

箒もこの会話に割と積極的に入ってきた。

他の女の子と会話していれば拗ねてしまうだろうかと

一夏は若干不安があったが、むしろ堂々としていた。

 

 

 

「ねぇ、噂の子ってキミよね」

 

少し年上のような少女、リボンの色からして3年の少女が

一夏に対して声をかけてきた。

 

「代表候補生と試合をするって聞いたのよ。ホント?」

 

「噂が広まるのは早いな。はい、1週間後に」

 

少女は足を組んで机にずいっと腰掛ける。

 

「キミ、ISの稼働時間いくつぐらいなの?」

 

その質問は3年生の少女のみならず、その場にいた全員─

食堂でこの会話に聞き耳を立てていた全員が知りたい

疑問だった。食堂が少しだけ静かになる。

 

「え~っと……そうか…4桁にはまだ届かないか」

 

「「「えっ!?」」」

 

話を聞いていた全員が己の耳を疑った。

 

初心者だろうと思っていたその少年のIS稼働時間が

まさか3桁までいくとは誰も思わないだろう。

それを訊ねた3年の少女も驚きを隠せないでいる。

 

「…私で良ければ訓練相手になるわよん?」

 

再起動に数瞬の時間を要したものの、一夏に声をかけた

目的を思い出した少女は彼へ鍛錬の協力を申し出た。

──やけに色っぽく。

 

(色仕掛け…か?俺に近付こうって算段だな。なら───)

 

学園生にはまだ恋人持ちということを知られていないため

アタックを仕掛けてくる子がいるのは仕方ない事だろう。

だが、何らかの思惑を持って自分を口説こうとした少女に

一夏は少し頭に来た。そこで、周囲に大勢の生徒がいる

この絶好の機会を利用して少しだけ反撃をする事にした。

 

少女が取ったその行動は、IS学園の多くの少女達へ訪れる

絶望を少しだけ早く呼び込む結果をもたらす事となる。

 

一夏は隣に座っていた箒をグイッと抱き寄せて一言──

 

 

 

「恋人と切磋琢磨するんで、結構です」

 

「「「えええーーーっ!?」」」

 

 

 

学校というのは総じて噂話が回るのがとても早い場所だ。

「かの織斑一夏は既に彼女持ちである」という話も

あっという間に学園中に広まっていったのだった。

 

 

 




一夏は箒とくっつけました。

ヒロイン勢+‪αは完結までには何らかの形で
幸せにしてあげたいと思っとります。
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