「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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前回、次回何するって書いたっけ…?
まぁとにかくトーナメントへ向けて鍛錬回です。
どこがペアを組むかが明かされます。

…評価の色落ちたのが地味に効く(´・ω・`)



第18話

 

 

 

「むぅ…兄さんと組みたかった」

 

学年別トーナメントで盛り上がるIS学園を

しょぼくれてトボトボと歩く少女がひとり──

名をラウラ・ボーデヴィッヒ、もとい織斑ラウラ。

 

彼女は今年度の学年別トーナメントがタッグマッチ形式に

変更されると知った瞬間、自身の義兄(一夏)の元を訪ね

ペア相手になってくれと頼み込んだのだが

知っての通り彼はトラブル回避のためペア相手を

既に尊敬する姉(織斑先生)の手によって固定されている。

それ故に織斑一夏とペアを組むことは叶わず

落ち込んだ末に学園内をフラついていたのだ。

 

 

「…ラウラ?ど、どうかしたのか?」

 

「篠ノ之箒か」

 

普段あまりペースを崩す事も無く常に冷静なラウラが

明らかに動揺していたその姿には、すれ違った箒も

思わずギョッとする程だった。

 

 

「──なら私と組んでくれないか?」

 

一通り事情を聞いた箒はラウラにそう提案した。

自分もペアを組みたい相手が中々見つからなくて

困っていた所だ、と。

 

(…ふむ、そうだな)

 

ラウラは箒の提案を受け、凝り固まっていた頭を回す。

元々タッグマッチへの変更がやや急遽だったのもあり

トーナメント開催までそれほど時間は残っていない。

いつまでも落ち込んでいる訳には行かないのだ。

 

(実力に問題はない。行動も安定しているだろう)

 

実際に共闘すべきかどうかの判断基準とするため

箒とペアを組んだ時の利点等を脳内でざっと挙げる。

 

それらを列挙していく中で、ラウラは1つ重要な事実を

完全に忘れていたある事実を思い出す──

 

「いいだろう!ペアを組もう、箒姉さん」

 

「ね、姉さん!?」

 

篠ノ之箒が織斑一夏の嫁であるなら、一夏の妹になった

ラウラにとって箒は2人目の姉であるという事実を。

 

 

 

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──剣道場。

 

 

 

「手加減はしないぞ?」

 

「無論だ」

 

大勢の観衆(野次馬共)が見守る中、箒とラウラが得物を構える。

箒の手には打刀と同じ位の長さの木刀が

ラウラの手には硬質ラバー製のコンバットナイフが

それぞれ握られている。

 

互いの実力を確かめるべく手合わせをする運びとなり

直ぐにでも一戦交えることの出来る剣道場にて

試合が行われる事となったのだ。

 

 

「では…参る!」

 

「来いっ!」

 

試合のルールは至極単純。得物を一本だけ手に持ち

それを用いて攻撃、相手を「詰み」の状況へ追い込み

降参を宣言させれば勝利である。

 

 

「そこっ!」

 

「…甘いっ!」

 

両者共に目付きは恐ろしく鋭く、ほぼ無言で斬り合う

その様は観衆にすら「ここが死地である」と錯覚させ

声を上げさせることを許さない。

 

一歩でも踏み込めば、大声を上げてしまえば、

手に持っている得物はこちら(邪魔者達)へと牙を剥く──

そう感じさせる緊張感が2人の間には漂っていた。

 

「当てるッ!」

 

「…やるな!」

 

ドイツ軍特殊部隊仕込みのラウラのナイフ捌きは

リーチで劣っていても難なく相手の懐へと飛び込み

防がざるを得ない鋭い攻撃を差し込む。

 

 

「隙有りだ…っ!」

 

「ぐっ…」

 

しかし、同年代であれば並ぶ者も僅かな箒の剣術は

相手の持つ得物が取り回しに優れていようとも

刀の一閃は紫電の如し、遅れなど取らなかった。

 

深く踏み込んできた時の一瞬の気の緩みを突いて

ナイフを受け流し、返しの逆袈裟で弾き飛ばすと

素早くラウラの背後へと周り首筋に刃を添えていた。

 

 

「…剣では箒姉さんには勝てんな。降参だ」

 

転がっていたナイフを太腿のナイフホルスターへしまい

ラウラは降参を宣言した。

 

(私が前へ出るより姉さんに任せるべきだな、うむ)

 

同様の試合を一夏と行った時は勝ちももぎ取れていたが

箒の太刀筋は彼より更に鋭く、自分でも勝ちを拾うのに

何戦かかるか分からないとすら感じていた。

故にラウラはこの後射撃場での対決が控えているにも

関わらず、箒を前衛に据えることを即決した。

 

 

 

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──学生寮、箒の部屋。

 

 

「…作戦会議をするのではなかったのか?」

 

「モグモグ…美味しい、美味しい!」

 

タッグマッチでは箒が前衛を務めることが決定し

そのまま作戦会議をしようとなったのだが

それを提案した少女は机に置かれたおつまみを

皿を抱えながら食べ、その味に絶賛の声を上げている。

 

「そう言ってくれるのは…嬉しいのだがな」

 

ラウラが自室からマークしている対戦相手の情報を

纏めた書類を持ってくるという事で、箒はその間に

会議中につまめる食べ物を前日の余り物などから

作っていた訳だが、ラウラはそれに夢中になっていた。

 

箒はそんなラウラの反応に小さな喜びを感じつつ

彼女に抱いた「冷静沈着な軍人」という第一印象が

ガラガラと音を立てて崩れていくのも感じていた。

 

 

 

 

………数分後。

 

「では、作戦会議を始めようではないか!」

 

「………そうだな」

 

テーブルに並べられていたおつまみを一通り平らげ

ようやく作戦会議が始まった。

 

「トーナメントはこうなっている」

 

まず広げたのは対戦相手が記されたトーナメント表。

 

[篠ノ之箒&織斑ラウラ]

[織斑一夏&シャルロット・デュノア]

[セシリア・オルコット&凰鈴音]

[更識簪&布仏本音]

 

特に示し合わせてペアを組んだ訳では無かったが

なんと専用機持ち全員が誰かしら専用機持ちとペアを

組んでいるという状態になっていた。

それすなわち、ラウラ達の脅威となりうるのは必然的に

同じく専用機持ち同士のペアとなる。

 

箒とラウラはずらっと並んだ出場生徒一覧に目を通し

どのペアと当たる事になるかを調べていく。

 

 

「む、ここの2ペアがぶつかるのか」

 

「セシリア達が勝ちそうな気はするが…」

 

セシリア鈴ペアと簪本音ペアは当たっても決勝戦と

かなり対策が練れそうな位置におり、しかもその2ペアは

準々決勝でどちらかが敗退する組み合わせでもあった。

 

「…一夏達とは当たりそう、か」

 

「兄さんも強敵だからな。要マークだ」

 

しかし「当たったなら一番の強敵になる」と思われた

一夏シャルロットペアとは、かなり早い段階で

ぶつかる組み合わせとなってしまっていた。

これまで何度か合同訓練を行っている仲ではあるが

お互い手の内が分かりきっていない状態での戦闘となる。

 

「どうだラウラ、一夏は抑えられるか?」

 

「…うむぅ…少々不安が残る、といった所か」

 

ラウラは以前一夏と1体1での勝負をした際に

あわや敗北という所まで追い込まれている。

色々と吹っ切れ、彼の戦い方にも慣れてきたとはいえ

不安が残るのもまた事実。

 

(多分一夏も私を抑えようと動くハズ…)

 

箒は頭の中で、一夏シャルロットペアが自分たちに対し

どんな対策を取ってくるか思案したが、恐らくは

ラウラではなく自分を優先して止めに来るだろうという

結論にたどり着いた。

 

「私が一夏を抑える。ラウラはシャルロットを」

 

「よし。兄さんの相手は任せたぞ」

 

一夏もシャルロットも遠距離攻撃を苦手としないため

中~遠距離への対応力に劣る箒はダメージが蓄積して

撃破されてしまう可能性が少なからずある。

 

逆にラウラにはワイヤーブレードやレールカノンがあり

1対1で無類の強さを発揮する切り札(AIC)もあるため

シャルロットとは十分に渡り合えるだろう。

 

故に、箒が一夏に張り付き近接戦を展開しているうちに

ラウラがシャルロットをAIC等を用いて可及的速やかに

撃破してしまうのが理想と言えた。

 

 

 

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──一方その頃。

 

箒達が作戦会議をしていたのとほぼ同時刻

第1アリーナでは一夏とシャルロットが

トーナメントへ向けた鍛錬を行っていた。

 

ホログラムのドローンを相手に一夏と共に戦うのは

シャルロットとその愛機、鮮やかなオレンジ色が目を引く

「ラファール・リヴァイブ・カスタムII」だ。

拡張領域(バススロット)を2倍近くまで広げるカスタムが施されており

シャルロット自身もこの機体を「火薬庫」と称するほど

凄まじい量の銃火器が量子変換(インストール)されている。

 

 

 

「シャル!敵の支援砲撃が来る!」

 

「わわっ!?ちょ…まだ敵がっ!」

 

しかし、その戦況はやや劣勢。

襲い来るドローンを捌き切れておらず、マップ外から

何度も飛んでくる支援砲撃(大型ミサイル)でシールドエネルギーは

既に半分以下まで削り取られていた。

 

「条件がキツイな…っ!」

 

一夏が間近まで迫っていたドローンへ蹴りを叩き込み

別のドローンへ弾き飛ばして追撃を加える。

 

カチッ…カチッ…

 

「弾切れか…ちぃっ!」

 

一夏の持つライフルがカチカチと弾切れの音を鳴らした。

ただの鉄クズと化したライフルは投擲武器として投げつけ

残っていたハンドガンを取り出して更に敵を捌く。

 

「この剣扱いにくいっ!」

 

シャルロットが振り回したバスターブレードは

思う様にドローンを巻き込むことが出来ていなかった。

機体の特徴とも言えた大きな拡張領域はほぼ底を尽き

残っているのは数個のグレネードのみだ。

 

ピーッ!ピーッ!ピーッ!

[敵の増援が来ます]

 

「増援!?まだ来るの!?」

 

「あと3分何とか凌ぐぞ!」

 

敵ISの接近警報が鳴り響き、アリーナのカタパルトから

追加のドローンが次々と飛び出してくる。

インターフェースに表示される「救援到着まで」の

カウントは残り3分ほど。

少なくともこのカウントが0になるまでは今の状態で

敵を捌いて耐え凌ぐしか無いのだ。

 

「支援砲撃…次弾着弾予想…ここだっ!」

 

手持ち武装があとハンドガンとコンバットナイフしか

残っていなかった一夏は、敵の支援砲撃すら利用し

フレンドリーファイアさせてドローンを撃破する。

 

 

[救援が到着]

 

やっとのことで指定時間まで敵の猛攻を耐え凌ぐと

フィールド上に緑色で照らされたエリアが出現する。

ここが救援部隊との合流ポイントとなり、このエリアへ

一夏達2機が到達することでプログラムクリアとなる。

 

「よし!回収ポイントへ急ぐぞ!」

 

「あぁもうドローンが邪魔っ!」

 

射撃武装のほとんどを使い切っていた事もあって

蹴りやタックルなどの体術も目一杯使って敵機をなぎ倒し

回収ポイントへと歩みを進めた2人。

 

 

『指定ポイントへの到達を確認しました』

 

[プログラム終了]

 

あわや撃墜となる所で何とか回収ポイントへ到達する事に

成功したのだった。

 

 

 

 

 

「一夏…こんなトレーニングしてたの?」

 

「時々な」

 

2人が行っていた鍛錬は、様々な制限を受けた状況下で

指定されたいくつかの条件を達成する、というもの。

 

レーダー系が全て使用不可、機体SEが半分で開始

武装が全てランダム、敵ISの集団を相手に一定時間生存

設置されたフラッグを敵から防衛、などなど

通常の試合であれば有り得ないような状況・条件下で

戦闘を行うというものだった。

 

今回は「武装ランダム」と「一定時間生存」の条件を引き

時間経過で「敵の支援砲撃」が追加されていた。

 

「一夏の強さの秘密を1つ知ったよ」

 

このプログラムは、自分の命やISを狙う者たちに備え

一夏が束と組んだ地獄のトレーニングプログラムであり

時折このプログラムに挑んで戦いの勘を維持していた。

 

今回、学年別トーナメントへ向けて鍛錬を積むにあたり

シャルロットから「普段の一夏の鍛錬で最も厳しいもの」

という指定を受けて実施したのだ。

 

 

 

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「じゃあ僕はラウラを抑えればいいんだね」

 

「で、2vs1に持ち込ればベストだな」

 

一夏とシャルロットは場所を1025号室へ移し、

トーナメントへの対策も作戦会議へと移る。

 

「──こいつが調査結果だ」

 

各ルーム備え付けのパソコンから、ドイツ軍が公開する

国家代表のプロフィールページへアクセスし

ラウラが駆るレーゲンの詳細ページを表示させる。

スペックの詳細等までは書かれていないものの

簡易的な武装紹介やパイロットのコメント等(空欄のコメント欄)

掲載されていた。

 

それと同時に、前回の模擬戦の映像データを編集し

映像資料としたものを一夏自身のパソコンへ表示

特に厄介な武装(AIC)を持つラウラへの対策を練る。

 

「効果範囲は狭いみたいだね」

 

「あぁ。集中力も必要だろうな」

 

映像を見る限り、AIC発動時の一夏とラウラの距離は

ある程度接近した状態であった事から、AICの有効射程は

それほど広い訳では無い事は確かだ。

更に、敵機体のPICに干渉しそれをコントロールする以上

かなり制御の難しい武装であるのも確かだろう。

 

 

「僕は…中距離を維持して戦うべきかな?」

 

シャルロットの機体は拡張領域が非常に広い機体なため

後付武装(イコライザ)も豊富に用意されている。今回はその構成を

ショットガンやアサルトライフル等の中距離対応かつ

広範囲攻撃に適した装備を重視する方向性で変更した。

ラウラを釘付けにしつつなるべく時間を稼ぎ

撃破に成功した後は後方支援へ回る方針である。

 

「俺も構成を少し変えておくか」

 

白式も武装構成からバズーカやスモークといった

単発攻撃や撹乱用の装備を外し、空いたスペースへ

ショットガン等の近~中距離戦闘を意識した物を装備。

それに加え、箒の紅椿に食らいつくため展開装甲の

プログラム配分をより機動力重視の配分へと変更。

 

「方針は決まりだね。頑張ろ!一夏!」

 

「あぁ。そうだな!」

 

 

 

来る激戦に備えるため、学園生達は皆それぞれの形で

己が持つ鋭い牙を研ぎ澄ませていった。

 

──学年別トーナメント開幕まで、あとわずか。

 

 

 




原作ではランダムで組まれた箒ラウラペアですが
この作品ではラウラにとって箒は義姉ですので
ラウラも嫌な顔ひとつせず快諾しました。
ペアの組み合わせ自体は原作と同じですが
当然展開は全く違うものとなる予定です。
どうか気長にお待ちください。

次回からいよいよ学年別トーナメント編!
お待ちかね?のVT登場パートとなります。
早く書き進めてオリジナル機体とか出したい…っ!
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