「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
いよいよ学年別トーナメント編本番となる
一夏シャルペアvs箒ラウラペアの対戦です!
言い換えればVTシステム登場回ですね。
──学年別トーナメント、2日目。
『間もなく午後の部開始時刻となります』
試合を勝ち上がった生徒達がぶつかり合い
より熱く熾烈な戦いが繰り広げられる2日目。
その2日目も、早くも午後の部へと突入した。
『第4アリーナは既に満席となりましたので──』
「えーっ!?早くない?」
「こんなもんでしょ…あの試合は」
午後の部開幕の宣言に続けて、先程開場したばかりの
第4アリーナが早くも満席となった事が
アナウンスによって告げられる。
第4アリーナで今から行われる試合は、学園生はもちろん
世界すらその試合に注目を向ける──
「オリムラ少年の腕前、見たかったものだ…」
「公正な抽選の結果だからね。仕方ないよ」
このIS業界の"今"を見る事の出来る試合である。
「いよいよだね、一夏」
「あぁ。思いっ切りやろうぜ」
身にまとった機体をカタパルトへと載せながら
対戦相手を含む4人全員が「最も熾烈な試合になる」と
予想したこのカードのぶつかり合いに、心の中から
燃え滾る闘志が湧き上がってくる。
「…カタパルト起動よし」
リニアカタパルトに電気が通り、射出ルートを示す様に
ガイドビーコンの光がレールに沿って伸びていく。
「発進準備、完了!」
白式のカスタム・ウイングを後方へと向けて
スラスターへ火を入れる。ゆっくりとノズル内部から
光が溢れ、発進準備が整ったことを示した。
『選手の皆さんは発進をお願いします!』
そして、出撃指示と共に4機が一斉に空へ羽ばたく──
「織斑一夏!白式、行きます!」
「ラファール・リヴァイブ・カスタムII、行くよ!」
「…篠ノ之箒、紅椿出る!」
「織斑ラウラ。シュヴアルツェア・レーゲン出るッ!」
世界が注目する唯一の男性IS操縦者織斑一夏と
この魔境で第2世代機を駆り戦うデュノア社の御曹司
シャルル・デュノアことシャルロット・デュノア。
天災の妹にして学園一の剣の腕前を持つ剣士篠ノ之箒と
ドイツ軍特殊部隊出身にして世界最強の義妹
ラウラ・ボーデヴィッヒ改め織斑ラウラ。
時に1年生のIS乗り四天王とも称され学園全体で見ても
並ぶ者の少ない4人が、世界が注目するステージへと
躍り出る。
『それでは。試合開始まで…5!…4!』
3──
2──
1──
『試合開始です!!!』
「勝負だ!一夏ッ!」
戦いの火蓋が切られたと同時に真っ先に動いたのは紅椿。
スラスターをフルスロットルにして、一夏やシャルルが
行動を起こす前に駆け出した。
「箒!?ぐっ…!」
「しばらくお前の視線を釘付けにする!」
両の手に刀を握り、一夏へ肉薄する箒。
「一夏っ!?」
「俺はいい!シャルルはラウラをっ!」
一夏は心配したシャルルへ「作戦通り行くぞ」と返すと
己のスキルと勘を頼りに箒へ対応しに掛かった。
「俺も箒を足止めさせて貰うぜ!」
「…っ、考えている事は同じという訳か」
アリーナの中央で
火花を散らす。そして、人が持つには重すぎるIS用の刀は
鈍く重い金属音を奏で始めた。
「展開装甲、使わないのか?」
「そういう一夏こそ使ったらどうだ」
まだお互い展開装甲という切り札は切っていない。
仮にどちらかが切り札を切ったなら、その瞬間相手も
同じように切り札を切るだろう。
始まるのは互いに隙を探し合うピリついた戦い。
「──伊達に死線を潜ってきた訳じゃないからな!」
「これを凌ぐかっ…流石は一夏だ!」
織斑千冬の腕を以てしても仕留めるのに10分掛かった
一夏は、並ぶ者なしと言われた箒の鋭い剣撃を
綺麗に弾き、ダメージを防ぐ。
鳴り響く鈍い金属音を
「確実に仕留めさせてもらうよ、ラウラ!」
両手にアサルトライフルを構えたシャルルが
一定の距離を保ちながらレーゲンを撃つ。
「速攻で決着を付けてやる!シャルロット!」
レールカノンの砲撃でラファールカスタムIIの退路を
可能な限り潰しつつワイヤーブレードで攻撃する。
敵の豊富な射撃武装を躱しながら距離を詰める──
敵を足止めしている相方になるべく負担を掛けないよう
両者共に高いレベルを要求する戦いを繰り広げていた。
「近付かせない!」
「ちぃっ!ここまで厄介な相手とはな…」
──
様々な種類の武装を扱うシャルルの戦い方のひとつで
相手との距離感や戦闘リズムを常に一定に保つ戦闘方法。
これに惑わされた相手は誘われている事を忘れ
シャルルの得意な距離感で戦わされ力尽きるのだ。
まるで
「そういうラウラこそ!」
「私はしがらみを乗り越えたのだ!」
しかし、決してそれで惑わされるラウラではない。
迷いを断ち切り己の生きる道を見出した彼女は
制御されたその瞳は蜃気楼を前にしても進むべき道を
しっかりと捉えてくれる。
『これが…1年生の戦いだと言うのか!?』
『今年の1年は凄いと思ってはいたが、想像以上だな』
観客席でこの戦いを眺める者達は皆感嘆の声をこぼす。
いくら専用機持ちとはいえ、まさか彼らが自国にいる
国家代表達に匹敵する激闘を繰り広げるなど
誰も想像していなかったからだ。
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一方、管制室では──
「…まだ4人とも手を抜いているな」
この試合のオペレーターを務める山田先生と
状況を見守る織斑先生が、この戦いを眺めていた。
「そうですか?凄い戦いに見えますけど…」
「良く見ろ。誰も奥の手を切る気がない」
多くの者がこの激戦に見蕩れる中、織斑千冬だけは
4人がまだ様子見であることを見抜いていた。
指摘を受けた山田先生も戦いを注視して見て気付く。
展開装甲は未だ輝きを宿しておらず、シールド裏にある
突然ピタリと動きを止めたISなども居らず
切り札と言える切り札はまだ場には出ていなかった。
「しばらくはこのままだろうな」
織斑先生はコーヒーを淹れると、イスへ腰を下ろし
長引きそうな戦いをゆっくり眺める事にした。
「──ゔえっ!何だこの味はっ?!」
「それ、塩ですよ?」
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「更にやるようになったな、一夏!」
「いつまでも剣で負けてられないからなっ!」
近接戦闘での勝率は箒に軍配が上がる事が多かったが
学園へ来てから鍛錬を再開した一夏は太刀筋を研ぎ澄まし
その勝率を五分に近付けていたのだ。
つまり、距離を取りつつ近~中距離で戦う一夏と
高機動で距離を詰めながら近接戦闘を迫る箒とでは
中々決着が着かない。
「一夏!大丈夫!?」
「くっ…水を差す余裕があるのか」
時折シャルルから支援攻撃が飛んでくる。
類まれな器用さを持つシャルルは、ラウラと戦いながらも
時折素早く武器を切り替えて支援を出していたのだ。
「う〜ん、避けられるかぁ…っ!」
「厄介ッ!」
飛んできた弾丸に対し、箒は空裂が持つ特殊機能
飛ぶエネルギー斬撃で反撃を飛ばす。
「箒姉さん!すまないがもう暫く持ち堪えてくれ!」
「ラウラのヤツっ…誘いこもうとしてるな?!」
シャルルが支援攻撃へ意識を割いた一瞬の隙を突き
ラウラも一夏へ向けてレールカノンを撃ち込む。
一夏の退路を塞ぎ、箒の距離詰めを助ける様に。
シャルルは武装の切り替えを平均よりも素早く行うため
ラウラはその隙にシャルルへ飛び込むのは敢えて避け
一夏を牽制するための支援砲撃へ意識を向けたのだ。
『こんな激戦が見られるなんて…感動ものだよっ』
『試合映像もなんとかして買わなくちゃ!』
4人の専用機持ちがしのぎを削り合う激戦に
幸運にもこの試合を見ることの出来た生徒たちは
感動と興奮に沸き立つ。
『…一体どれ程鍛錬を積んだというの?』
『彼らの強さの秘訣、知りたいものですね』
企業所属として訪れていたIS乗り達もこの激戦に
驚き、興奮、感動といった感情を抱く。
何せ専用機持ちの2vs2などモンド・グロッソ以外では
基本的にここでしか見られないのだから。
「くっそ…何とか打破したいな」
「弾丸も減ってきちゃってるな…」
「迷えば敗れるぞ、私…っ!」
「うむぅ…もう少し支援を出せれば…」
観客席の盛り上がりとは対照的に、戦っている当人達は
いつまでも進展しない戦いにやきもきしていた。
一夏と箒は展開装甲を切り合っても状況の変化を
もたらすには物足りない。シャルルはラウラのAICを
警戒して、ラウラはシャルルの近距離射撃を恐れて
思うように距離を詰める事が出来ない。
要するに大変グダグダした戦いになっていたのだ。
シールドエネルギーはジリジリと削られているが
スラスターや武装の損壊は避けているため
戦闘機動に影響を与えることも無かった。
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「ええいっ!何をグダグダやっているの?!」
「さっさと目の前の
IS学園から遠く離れたある場所でも、この戦いに
やきもきした感情を抱えている者達が居た。
彼らは学園から公式に広域中継されている映像を
テーブルに置かれた資料がしわくちゃになるのも構わず
画面に食いつくようにして眺めていた。
「ダメージレベルは!?」
一人の女研究員が、自分達が手を掛けた機体の
今の状況を確認させる。
「シールド残り6割、ダメージレベルはまだEだ」
彼らが注目しているのはシュヴァルツェア・レーゲン。
ドイツ某所でその活躍を眺めていたという訳だ。
しかし、レーゲンはまだ劣勢という程の苦戦もせず
安定した戦いを展開出来ているというのに
画面に食いつく研究員たちは強い苛立ちを募らせており
眉間にも酷くシワを寄せていた。
「第2世代機相手ではダメージが足りんか…」
さらに言えば、
もっと素早く仕留めろと憤るのではなく、ダメージを
あまり受けていない事に対して腹を立てていた。
「どうする?」
「私達の手で"やる"のよ!」
痺れを切らした研究員達はこの状況を自分達の望む方向へ
好転させるべく、この戦いへ外部から干渉を行う事を
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「さっさと墜とすッ!」
「僕もそうさせてもらうよ!」
シャルルとラウラは膠着状態に陥った戦況を打開すべく
攻めの手を少しづつ強めていく。
あるいはより深く敵の懐へ。
「そろそろ本気で行くぞ!」
「来い一夏!受けて立つ!」
一夏と箒も更に攻勢へ転じ、2機の装甲の隙間からは
うっすらと蒼と紅の輝きが溢れ始める。
専用フレームに鋳込まれたナノマシンが励起を始め
装甲の内側で徐々に輝きを強めていたのだ。
4人の激戦は更に熾烈さを極めていく。
そして、4人全員の残りシールドエネルギーが
半分を切った頃、ひとつの異変が起こる──
「…何だっ!?機体が重く…ッ」
「ラウラ?!どうしたの!?」
まるで糸の切れてしまった操り人形のように
ラウラのレーゲンが突如動かなくなった。
「パワーアシストも切れて…ぐッ」
全ての機能を失い、ただの金属の塊に戻ったレーゲンは
全身のパーツが重たい音を立てて地面へと落ちる。
ラウラは
縫い付けられてしまっていた。
「機体を解除するんだ!ラウラ!」
「ダメだ!それも受け付けない!」
レーゲンは操縦者からのあらゆる操作を拒絶してしまい
ISを
[VALKYRIE TRACE SYSTEM]
「何だ!?ヴァルキリー…トレース?」
レーゲンのインターフェースが乱れていき
ラウラの眼前のポップアップには、起動したシステムの
ヴァルキリートレースとの名が表示される。
[……ManualStartUP]
「あ゙あ゙ッ…何だッ?!ぐあァッ…痛いッ!!!」
「ラウラっ!?」
「何が起きているっ?!」
突如ラウラの身を激痛が襲う。
まるで全身に木の根でも張っていくかのような
神経そのものへ突き刺さる激痛が走っていた。
キィィ……ン
「白式!?どうした!」
突如一夏の意思を外れて白式が覚醒を始める。
一旦は引いていた輝きが再び走ったかと思うと
気が付いた頃には全ての展開装甲が開かれる。
[競技用リミッターON/[OFF]]
更には普段決して外される事は無いハズの
競技用のリミッターすら解除されていた。
『あれは異常だ!このままでは殺されるぞ!』
「マドカ!?…くっ!」
一夏は白式からラウラへと視線を戻す。
「何だアレは…」
崩れ落ちていたハズのレーゲンは勝手に立ち上がると
装甲の裏から、関節部から、フレームから
全身から黒い液体が溢れ出し、機体を包み込んでいく。
『あの機体はッ!?』
『──織斑先生!』
溢れ出した黒い液体は徐々にその形を変えていく。
そのシルエットは、ISに携わる者であれば多くの者が
知っているある人物の、かつての愛機の形へ──
「
「兄さん!姉さん!…がァッ…助けてくれ…ッ」
「「ラウラ!」」
家族へ助けを求める声を最後に、ラウラの身体も
黒い液体へ呑まれる。
「千冬姉…雪片ッ」
操縦者をも飲み込んだレーゲンだったものは
"
次回、対決VTシステム。
今回シャルロットがシャルルなのはですね…
ロゼンダ「シャルロット、ちょっと来なさい」
シャル「何するの母さん!?」
ロゼンダ「これで格好よくなったわ!」
お母さんに捕まった時にシャルルにされ
トーナメント中は戻ってはダメよ、と
念押しされてたりします。
「理由?娘が素敵だからよ!」
VTシステムの強さは…言うまでも無いですよね。
競技用リミッター?ナニソレオイシイノ?