「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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VTシステム編、最終回です。

今回も所々エグい描写がありますので
ご注意ください。
とはいっても、ヘリがよく落ちるあの会社の
バイオなハザードのゲームを見れるなら
特に問題無いでしょうけど。



第22話

 

 

 

VTシステム事件から3日後──

 

 

 

(生きて…いる…?)

 

治療液に満たされたカプセルの中でラウラは目を覚ます。

 

麻酔の効果なのか全身の感覚が薄いが、身体へ伝わる

治療液の心地良い冷たさが生きている事を実感させる。

 

「…姉さんの寝顔…心配を掛けてしまったか」

 

ぼんやりとした思考を覚醒させると、カプセルの窓に

頭を預けて寝ている織斑千冬の寝顔がすぐ目に入る。

 

 

 

「よぉラウラ。目が覚めたか」

 

「兄さん!」

 

心配を掛けてしまった事を心の中で謝りつつ姉の寝顔を

堪能していると、白衣を羽織った一夏がカプセルの中を

覗き込んできた。

 

「今から麻酔を抜くから、色々質問に答えてくれ」

 

「うむ」

 

一夏がナノマシンの制御パネルをいじると、徐々に身体の

感覚が戻ってくる。

 

一夏の指示に従って手足を握り、首を左右に動かし

それぞれの部位が感じている感覚を報告していく。

 

 

「らーちゃんの回復力は凄いねぇ、想像以上だよ」

 

「ですね。もう動けるんじゃないか?」

 

神経細胞の回復も順調に進んでいる事が判明し

ラウラは一度カプセルから出て身体機能などの検査を

行う事となった。

 

「千冬姉~…起きろ千冬姉!」

 

「うあぁ…起こしてくれぇ一夏ぁ…」

 

姉の珍しい(寝ぼけた)姿が見れた事にラウラは喜んだ。

 

 

 

 

 

「どうだ?動けそうか?」

 

「あぁ!少々反応は鈍いが…問題無いぞ!」

 

愛用のラバーナイフを手に身体を少し動かしたラウラ。

本人曰くまだ全然本調子ではないとのことだったが

これだけ動けるなら後遺症の心配も当分の日常生活も

何の心配も無いだろう。

 

「まぁしばらくカプセルは必要だけどな」

 

あとは定期的にカプセルでの治療を続けていけば

2週間もすれば完全に本調子を取り戻せるだろう。

 

「1週間はこのカプセルがベッド代わりだ」

 

「構わんさ。で──」

 

 

ラウラは気になった事をひとつ訊ねる。

 

「これから消しに行く所だよ♪」

 

自分のISにとんでもないシロモノを積んでくれた

組織はどうなったのかを。

 

束は嬉々とした表情で"殺しに行く"と宣言した。

その表情にラウラは少しゾッとしたが、それを聞いて

今回の騒動に自らの手でケリをつけたいと申し出る。

 

「私も…私も同行させて欲しい!」

 

「えっ?良いのか?」

 

自分の国の不始末は自分達でつけたい、特殊部隊の隊長を

務める者としての一種の責務だと思う、と。

 

 

「よし、では今すぐ準備をするぞ!」

 

「ちょっ…千冬姉!?待てって!」

 

ラウラの覚悟を見た千冬は、少々黒い笑みを浮かべながら

「準備をする」といってラボを飛び出していった。

 

 

 

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「何ですかね、この打鉄」

 

「分かる、分かるぞ兄さん」

 

 

学園のグラウンドに待機している小型輸送船の前に

集まった、千冬・束・一夏・ラウラだったが

目の前に立つ織斑千冬はとんでもないIS(魔改造機)を纏っていた。

 

「束さん特製だぞっ!」

 

「いやまぁそうでしょうね!」

 

千冬が身にまとう打鉄は装甲がほぼ全て撤去され

その代わりと言わんばかりに大量のスラスターが

背中に、足に、肩に、増設されまくっていた。

 

「ふふっ…これが雪片弐型か…!」

 

スっと振るわれたその太刀は、本来打鉄が標準装備する

「葵」ではなく、雪片に似た形状の大太刀だった。

柄の先端からはエネルギーサプライヤが伸び

機体と直結されていた。

 

「千冬姉なら扱えそうだけどさぁ…」

 

一夏からしてみれば超ハイリスクハイリターン(高機動・高火力・紙装甲)

扱いにく過ぎるシロモノだが、千冬の手に掛かれば

デメリットを帳消しに出来てしまえるだろう。

 

「では行くぞ!」

 

「れっつごー♪」

 

──4人の刺客を乗せた船は学園から飛び立って行った。

 

 

 

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──ドイツ某所。

 

「…3…2…1…降下ッ!」

 

4人が輸送船から一斉に飛び出し、鬱蒼と茂る森へ

次々と降り立った。

 

「よし…データ上ではこの付近だな?」

 

「そうだよ~♪」

 

場所としてはドイツの山奥、周辺には住宅地など無い

辺境も辺境といった場所。

この大量の木と草しか無いこんな場所に人が使える様な

施設などあるのかと思ってしまうが、確かにこの付近に

あるとの事。

 

 

ピーッ!ピーッ!ピーッ!

 

「IS反応っ!?」

 

そんな辺境の地で突如ISの反応が捉えられる。

 

乗ってきた輸送船は高度なステルスを使用しているため

船が後を尾けられていた訳では無い。

となれば恐らくは偶然の出会いなのだろう。

 

「軍に気付かれたか!?」

 

「…待て!この反応は…っ」

 

接近してきているISの反応を見たラウラは、その反応に

何か気付いた事があったらしく、その2機のIS反応へ

専用の秘匿回線で通信を繋げる。

 

「こちらは黒兎隊隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒだ!」

 

『隊…長っ!?何故此処にっ?』

 

ラウラは今の織斑姓ではなく、かつて名乗っていた

ボーデヴィッヒ姓を通信相手に名乗った。

 

「ひょっとしてらーちゃんの部隊かな?」

 

「はい。間違いないです」

 

 

 

 

 

「隊長~っ!お久しぶりですッ!」

 

「すまないなクラリッサ。長いこと留守にして…」

 

何も無いドイツの山奥でラウラの所属する特殊部隊

黒ウサギ隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)」は思わぬ再会を果たした。

 

「隊長、前にも増して可愛くなりましたよねっ!?」

 

「ええ。きっと日本文化に沢山触れたのでしょう!」

 

副隊長クラリッサ・ハルフォーフを含む隊の5人は

思わぬ場所で出くわした隊長にとても嬉しそうである。

 

 

 

「──なるほど。隊長もその研究機関を」

 

「あぁ。私の手でケリをつけにな」

 

クラリッサから詳しく事情を聞いた所、黒ウサギ隊は

ドイツ政府が掴んでいた不審な動きを見せる研究機関を

調査するよう依頼されて動いていたとの事だった。

 

様々な情報からこの付近に施設が隠されていると判断

IS2機と特殊装備の隊員3名による捜索を行っていた。

 

 

「どうする?」

 

「私は良いよ。ちーちゃんは?」

 

一夏は黒ウサギ隊との共同作戦を実行すべきとし

同行者2人へ意見を求めた。束はそれで構わないと頷き

千冬は──

 

「奴らを共に潰すぞ!良いなッ!?」

 

「はいッ!教官!!!」

 

黒ウサギ隊の面々共々、ドイツで教官をしていた時代を

思い出し割とやる気満々のようである。

 

 

 

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「ここだな」

 

鬱蒼と茂る森の中に突如現れた、頑丈なコンクリート製の

巨大なゲート。ゲートの脇に認証を行うための端末が

取り付けられている所を見るに間違いは無いだろう。

 

「隊長、ゲートを爆破しますか?」

 

「…いや、必要ないだろう」

 

ラウラの言う通り、ゲートの破壊は必要無かった。

隊員達がチラリとゲートの方へ目をやると

既に天災()天才(一夏)がその猛威を振るおうとしていた──

 

「よしいっくん、やろうかぁ!」

 

「あぁ!セキュリティ侵入、隔壁解放」

 

電子機器を用いたロックである以上、この2人を前に

あらゆるロックはいとも容易く突破されるのである。

 

ズズズズ……

 

 

 

「我々黒ウサギ隊は施設の制圧を行うぞ!」

 

「「了解!」」

 

千冬とクラリッサが前衛として大きな障害を排除し

もう1人のIS乗りと特殊装備の3人が部屋の制圧

ラウラが後詰と作戦指揮、束達との連絡を行う。

 

「何者だ!ぐわあっ!?」

 

「侵入者だ!捕らえ…ギャアッ!!!」

 

早速飛び出してきた警備員、もとい重武装の警備兵(雇われた傭兵)

次々とアサルトライフルやグレネードの餌食になる。

ドイツ軍最強の特殊部隊に、世界最強が魔改造機を手に

合流したのだ。勝てる相手など居ない。

 

 

 

「いっくんはデータの吸い出しヨロシク!」

 

「腕が鳴るぜ…!」

 

一夏と束は施設の管理システムに侵入し、隔壁の解放や

警備システムのシャットダウンなどを担当する。

 

「さぁて…コンピューターは何処かなっ♪」

 

[警備員室]

 

「ここから侵入出来そうだな」

 

発見したのは、死屍累々となった警備員室に置かれた

1台の普通のパソコン。有線で施設内のネットワークに

繋がれており、これを利用すれば施設のシステムに

侵入出来そうである。

 

「セキュリティ解除、ぽちっとな♪」

 

「…研究データファイルはこれか」

 

あっという間に施設のセキュリティが解除され

あらゆるデータ、システムが丸裸にされていく。

 

厳重に保管されていたVTシステムなどに纏わるデータが

施設のデータベースから吸い出され、まるでそこには

元から何も無かったかの様に全てが消去されていく。

無論、侵入した形跡も含めて全てである。

 

 

「………いっくん!」

 

束が施設の警備システムと隔壁解放を行っていた時

部屋の名前に不穏な文字列(忌むべき実験の形跡)を見つける。

 

[特殊培養室]

 

「あぁ。少し、行ってくる」

 

「終わったら合流するよ♪」

 

 

 

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「何故貴様ら黒ウサギがッ!グハアッ!?」

 

「制圧完了!」

 

ラウラ達制圧部隊は警備システムと隔壁が無効化され

格段に進みやすくなった施設を片っ端から

制圧しながら進む。

 

途中で一夏も合流し、白式と共に更に施設の奥へ進む。

 

 

 

「この部屋か…」

そして発見した、特殊培養室と書かれた部屋。

 

「一夏…まさかこの部屋は──」

 

「あぁ。俺の想像通りなら…」

 

ラウラはクラリッサを含む黒ウサギ隊は待機するよう指示

部屋の中で待ち構えている現実を直視しないように

配慮すると、一夏と千冬と共に扉を開ける──

 

 

 

「ゔっ…やはり、か」

 

「酷いな…」

 

その広い部屋には円柱状の水槽が何本も置かれており

ほとんどの中身は濁り切った液体で満たされていたため

確認は出来なかったが、満たされている液体の色が

どす黒く濁った赤色(血の色)である事から何となく推察は出来る。

 

「強化人間試験体…ねぇ」

 

培養槽にはそれぞれ中に入っているモノの状態を

確認出来るモニターが付いているが、そのほとんどは

表示無し(培養失敗)、あるいはバイタルサインブラック(死亡)

 

「一夏…この培養槽は…!」

 

「まだ生きている?」

 

しかし、培養槽のうちのいくつかはまだ稼働しており

人の形を保っているものが4人ほど確認出来た。

 

 

『今そっち行くから待ってて』

 

「束さん?助けるつもりなのか」

 

施設のデータを抜き終わった束から、培養槽の子供達を

回収し輸送船へと運ぶ旨の連絡が送られてくる。

束曰く、助手として育てるつもりだとの事。

 

「まぁ人手は足りなくなるだろうしなぁ」

 

今後宇宙開発を進めていくに当たって、ハロ達だけでは

出来ることに限りがある。人手が必要になった時に

求人募集で集めた人達と自分達の元で育った子達とでは

束の場合後者にしか信頼を置かないだろう。

 

 

 

「束さん到着だよっ」

 

「早いな相変わらず…」

 

あっという間に培養室へ駆け付けた束は

ハロ達が運んできた治療カプセルへ培養槽の4人を

素早く放り込み、輸送船へと送り返していく。

 

「──4人目バイタル安定っと」

 

まだバイタルが安定しただけで施さなければならない

処置はいくつか残っているが、一先ずは安心である。

 

 

 

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「最下層だ。気を引き締めていくぞ」

 

武装警備兵をなぎ倒し、エレベーターで階を降りて

ようやく研究施設の最下層へと辿り着く。

 

まだVTシステムに関する書類などは見つかっていないため

この階層で探し出し焼却処分する必要がある。

 

「IS用の整備ツールだ。…近いな」

 

「これほどの施設が隠されていたとはな」

 

[特別実験棟]

[セキュリティレベル4]

 

そして、ようやくお目当てと思しき区画を発見する。

ここのセキュリティは施設内でも最高クラスだが

既にそれらは解除されているので、ゲームのように

キーを探してあっちこっち往復したり、凝った謎解きを

いちいち解き明かしたりする必要も無い。

 

 

 

「来ると思ってたわよ…織斑一夏ぁッ!」

 

「お前がここの責任者か!」

 

特殊実験棟へ入るなり白衣の女がISを纏って現れる。

ここのエリアエントランスはかなり広いあたり

恐らくは一行を待ち構えていたのだろう。

 

「…逃がす訳には行かないわねェ」

 

女はナチス復興がどうだの超人兵士計画がこうだの

ベラベラと長話を始め、その為にはVTシステムや

人体改造は欠かせぬ技術だとのたまう。

 

そして、貴重な研究対象が自ら此処へ来てくれたのだから

細胞のひとつまで残らず研究し尽くしてやる──

作られた存在は黙って造物主に従っていればいいのだ、と

そう、一夏と千冬、ラウラを指差して叫んだ。

 

「…ほう?」

 

──女は致命的な失敗を犯した。

 

「私は…私の意思で生きると決めたのだ!」

 

「我らが隊長を侮辱するか!」

 

「命を…何だと…」

 

殺気立つ黒ウサギ隊とその他の面々にも怯まず

女は自らのISのVTシステムを何の躊躇いも無く起動する。

 

「ならここで殺してやるわ!人形どもッ!」

 

狂気的な笑みを浮かべ、システムに呑まれていく。

 

 

 

「この………分からず屋ーッ!!!」

 

「……!?」

 

一夏はそう叫ぶとフル出力で展開装甲を起動させる。

脚部、スカートアーマー、腕部、胸部と全身の装甲が

展開されていき、最後にカスタムウイングの装甲が

一段展開され、蒼い輝きが部屋を満たす。

 

「AICッ!!」

 

「…!」

 

身体がまだ万全ではないというのに、ラウラは機体の

スラスター全開で懐へ飛び込み、AICを一発で決める。

そして───

 

「一夏…やるぞ!」

 

「あぁ!千冬姉!」

 

[[単一仕様能力:零落白夜]]

 

 

 

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「織斑ラウラ、以下6名!着任致しました!」

 

「ん、ようこそ白うさぎ隊へ♪」

 

 

 

──VTシステム事件。

 

禁止兵器を使用し、IS学園の襲撃を目論んだ一連の事件は

当該研究機関の爆発・崩壊および全容疑者の死亡により

強引に幕が下ろされる事となった。

 

この一件の責任を取る形でドイツ政府は篠ノ之束へ

黒ウサギ隊の隊員6名、IS3機を譲渡。

VTシステム禁止条約への違反については、ドイツ政府が

事件に関与していない点と発覚後の素早い対応を考慮し

罰則へは一定の酌量がされている。

 

黒ウサギ隊は名を白うさぎ隊へと改め、篠ノ之束や

織斑姉弟の身辺警護を主任務とする隊として再結成。

ISが3機追加配属され、白うさぎ宇宙開発所属として

IS学園の警備を担当する事になる。

 

 

 

ウサギ達はさらに一歩、宇宙へと羽ばたく──

 

 

 





VTシステム関連はこれで決着です。

雪片弐型、登場。エネルギーサプライヤは
GNフラッグやエピオンをイメージして頂ければと。
ちなみにその打鉄、学園の機体な模様。

束さん達白うさぎ宇宙開発は今回の施設の探索で
4人の強化人間と実験台にされていた孤児達数名を
死亡に見せかけて回収しました。
今後どこかで顔を見せるかもしれませんね。

次回からは夏休み~臨海学校編です!
あの等身大立像を見に行く回も予定してるので
…まぁ…あんま期待せず待ってて下さい。
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