「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
臨海学校へ向けた準備回として
セッシー機のパッケージ大改造回。
ティアーズのコンセプト丸潰しのあの装備を
一夏達があれこれ改造していく回です。
──7月某日。
IS学園だけではなく、世界中のIS開発企業を驚かせる
とんでもない依頼がこの日一夏の元へと舞い込んで来た。
「俺は別に構わないですけど…良いんですか!?」
『君の人柄と技術はフランスから聞いた。構わんよ』
依頼主はなんとイギリス政府。
学園外からのあらゆる干渉を拒否することの出来る
特記事項第二十一条があるのを承知の上で
イギリス政府はその依頼を一夏へ持ちかけていた。
『私達は君達とより良い関係を築いていきたいのだ。
この依頼はその証拠とでも思ってくれていい』
「にしたってこれは…」
デュノア社の急激な業績回復やEU圏のマフィア一斉摘発
フランス政府の内部腐敗改善といった大改革に
一夏達が関わっていると知ったイギリス政府は
丁度自国の代表候補生が彼らと親しい点を活かし
協力関係を築く足掛かりとして依頼をしたのだ。
その内容とは──
『我々もあの機体の改良には手こずっていたからね…。
ティアーズから得られたデータは君が好きに使ってくれ。
君の技術を見せてもらう報酬だよ』
そう、イギリス代表候補生セシリア・オルコットの駆る
第三世代ISブルー・ティアーズとそのパッケージである
「ストライク・ガンナー」の改修依頼である。
場合によっては国土防衛にも関わる超機密事項となる
国家代表候補生の専用機のパッケージ開発を
一個人に託すのは本来非常に危険な行為と言えるが
一夏の人柄と知名度はそれを覆したという事になる。
「セシリアはいいのか?」
「勿論大歓迎ですわ!ぜひお願い致します」
一夏は束のラボへと運び込まれたティアーズの前で
その搭乗者であるセシリアへ最終確認を取る。
セシリアはそれに対して笑顔で了承を返した。
──機体にもパッケージにも色々言いたい事があったから
容赦なく大改造してくれて構わない、と。
「まずは…パッケージからお願いしますわ」
「了解。さて、と──」
直近に控える1年生の学校行事「臨海学校」に合わせて
各国の専用機には換装装備である「パッケージ」が
稼働テストを行うために本国から送られてくるのだ。
ティアーズの場合ストライク・ガンナーがそれに当たる。
ストライクガンナーは強襲用高機動装備をコンセプトに
推進力および旋回性の向上を図る換装用装備であり
射撃武装とセンサーにも換装先が用意されている。
「一夏さん。この装備、どう思われますか?」
セシリアはまず装備に対する率直な感想を求めた。
一夏はコンセプトと実際の装備構成を見比べ──
「随分酷い構成だな…誰が組んだんだコレ?」
「ですわよね!そうですわよね!」
あまりにも滅茶苦茶だ、と酷評したのだ。
この装備の詳細を知らされて以降、セシリア自身でさえ
度々頭を抱えていたストライクガンナーの欠点とは
「追加装備がコンセプトと噛み合わない」事に加え
「ティアーズ本体のコンセプトを潰している」事、と
致命的なまでのモノであった。
「こいつってBT兵器のテストベッドだよな?」
「ええ勿論。本国からも嫌という程聞かされていますわ」
まず「ティアーズのコンセプトを潰している」点だが
なんとこのパッケージ、機動力の確保のために
BT兵器の射撃機能を封印してスラスターとして使うという
とんでもない本末転倒ぶりを発揮している。
回りくどい手を使わず純粋に機動力を強化した方が早い。
「で、強襲用パッケージに狙撃武器──と」
「強襲機とは?と言われてしまいますわね」
そして追加装備についてだが、その内容としては
現在の物より大型の狙撃用レーザーライフルである
「スターダスト・シューター」と、超高感度センサー
「ブリリアント・クリアランス」なのだが
ティアーズを封印してまで得た機動力を活かすには
あまりにも向いていない構成である。
「…んじゃ、ざっと確認し終えたし──」
「改造を始めてしまいましょうか!」
「やぁおりむー!私の出番だねぇ」
「プログラミングなら任せて…!」
「頼りにしてるぜ!のほほんさん、簪!」
一夏はまず、信頼の置ける優秀なメカニックとして
専用機開発の実績もある本音と簪に協力を依頼。
ストライクガンナーの大改造が始まった。
「まずはティアーズを使える様にしたいですわね」
「コネクターを変えなきゃだね~」
まず取り掛かったのは、最大の本末転倒ポイントである
ティアーズ固定化の改善。
取り付けた後固定してしまう接続箇所のコネクターを
従来通り分離が可能なコネクターへと差し替えた上で
マウント時にも推進力を発生させられるように
ビット側の推進器とプログラミングに改良を加える。
「プラットフォームの大型化は避けられないか…」
「せめて被弾面積を最小限に…こうすれば…!」
マウント部大型化による弊害が発生してしまうも
正面からの攻撃に対して被弾面積を減らす事でカバーし
4枚の翼で構成されたプラットフォームウイングが完成。
「──実弾装備を用意したいですわね」
「じゃあ作っちゃう~?作っちゃおうよ~!」
BT兵器のデータ取りのためとして実装が却下されていた
実弾武装──物理系統の武装も独自開発することを決定。
「ミサイルは既にありますから…そうですわね…」
「高初速のレールガン辺りになるか?」
最終的に採用されたレールガンは容量を食い過ぎないよう
腰部マウント型かつ折り畳み式のものとなる。
余った容量には、インターセプターに次ぐサブの近接兵装
プラズマナイフと中型の扱いやすいシールドを搭載。
ナイフは容量節約のためにプラットフォームウイングの
基部となるバックパックへ直接取り付ける形となったが
高い機動力と汎用性を手に入れる事に成功した。
「これが…私のティアーズの新たな姿──」
[強襲用高機動パッケージ
3人の天才メカニックが搭乗者から直接意見を聞き出し
改造を進めた結果、あっという間に新装備が完成した。
目の前に佇むのは新たな翼を手に入れたティアーズ。
背部に取り付けられたバックパックからは
4枚のプラットフォームウイングが伸び、その全てに
ピッタリとBT兵器ブルーティアーズが装着されている。
翼の基部となる両肩には白い柄の
そして、左腕にマウントされた中型シールド──
色々とチグハグな装備だったストライク・ガンナーは
一夏達の手によって生まれ変わり、強襲用高機動装備の
名に恥じない優秀な装備となったのだ。
「……この装備はどうしましょう?」
「パッケージ無しでも追加で積むには重いもんな」
──無事にウイングストライカーを完成させた
セシリア達の目の前には大型のライフルが鎮座していた。
ストライクガンナーの改良は粗方終了した訳だが
どう頑張ってもスターダスト・シューターと
ブリリアント・クリアランスは活用し切れなかったのだ。
「別でなんか組むか?」
「ですわね」
セシリア達はこの2つの兵装を活用し、追加パッケージを
独自で組み上げる事にした。イギリスからは好きな様に
使っても構わないと言われているが、折角用意してくれた
追加装備なのだから活用するべきだろう──と。
「じゃあせっしー、どんな装備にしたい~?」
新装備に求めるモノのコンセプトを本音が尋ねる。
「"これ"とは真逆のコンセプトで組みたいですわ」
セシリアが求めたのはウイングストライカーとは真逆
長距離以遠での運用を主軸とする支援用装備だった。
「となると、必要なのは機動力よりは防御力だな」
勿論ポジショニング等で移動する機会は沢山あるが
急加速や急制動といった所謂「高機動」を求めることは
コンセプト的にあまりないだろうとして
どちらかとしては防御力を重視する構成を選択。
「対レーザーコーティングを施せば──」
「いいね~♪何でもガード出来そうだねぇ~!」
防御用兵装として、半身を覆い隠せる程のサイズの
大型シールドを計2枚用意。これをバックパックと接続し
機体のほぼ全体を覆い隠す防御壁とする。
「ティアーズにも盾を付けてしまいましょうか」
「シールドビットか。いい案だなセシリア」
自由自在に操る事が出来るBT兵器に盾を取り付ければ
攻防一体の万能兵装へと早変わりする。
ビットの機動力は重さにより落ちてしまう事になるが
それを差し引いても汎用性の向上は大きい。
「──こんなところですわね」
「もう出来ちゃった…」
ウイングストライカーに続いて、新たなパッケージが
早くも仕上がった。学園随一のメカニック達が集まれば
この程度は造作もないのだった。
臨海学校でのテストはウイングストライカー優先なため
この新装備のお披露目はまだ少し先になりそうだが
間違いなく
「名前はどうする~?」
最後にこの新パッケージにも名前を付ける。
狙撃用に相応しい名前を与えたい、と4人で考え──
「『
この新装備の名はセシリア・オルコット提案の
「ロックオン・ストラトス」に決まったのだった。
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IS学園の一角にある「束さんのラボ」の一室。
「アメリカが静かすぎる?」
「うん。亡国機業の動きは常に追ってるんだけどね──」
無数のモニターが並ぶ薄暗い部屋で千冬と束が
それらに映る情報に目を通していた。
強奪された篠ノ之束開発の無人IS「ゴーレムⅠ」による
IS学園襲撃以降、把握している亡国機業関連企業の動きは
常時監視させ逐一チェックしているのだが
ここ最近アメリカを拠点に活動している亡国機業は
少しばかりその動きが小規模過ぎたのだ。
「何も無い…とは考えにくいか」
「そうだねぇ。必ず"何かはある"と思うよ」
普通の人間であれば見落としてしまう程小さな差異。
偶然だと言われれば納得してしまいそうな程の"波"。
しかしここにいる天才2人は、その意図こそ読めなくとも
そこに暗躍する何者かが居るという事を確信していた。
「IS絡みだと思うか?」
「ん、まぁ…6割ってとこかな」
千冬と束はその沈黙の裏にある目的を推察する。
亡国機業とは世界を裏から牛耳っていると思われる
巨大な組織の集まりだろう、と束は当たりを付けており
今回の目的も兵器や麻薬の売買、戦争や内紛等といった
世界の闇の部分に関わる物事だろうと踏んではいる。
が、それがISに絡んでくるかどうかは流石に断定出来ず
束はまたモニターに流れる情報の奔流を睨む。
「──ファング・クエイク…ヘルハウンドver.2.8…
あと試験稼働中だけどシルバリオ・ゴスペル…」
「米国は機体保有数も多いからな…」
数日後には丁度世界中で話題の一夏達を含む新1年生が
臨海学校へ向かうが、そこへ関われそうな部分に限って
動向を洗おうとしてもとてつもない時間が掛かる。
「後手に回らざるを得ん…か」
千冬と束は彼らに先手を打たれる事を前提とした上で
一夏達学園生の安全を確保する手段を模索する事にした。
「──ところで束」
「なぁに?ちーちゃん」
モニターまみれの部屋を出た千冬が束に1つ疑問を
今自分の視界に映っている"それ"が一体どこまで
大きくなるのかを尋ねる──
「この施設はまだ完成しないのか?」
窓越しに千冬の目の前に広がっているのは
学園の隣に建つギガフロート、そしてそこに建設中の
無数の建造物群。
「モチのロン♪まだまだ建設途中だよん」
「なに!?既に学園より大きいんだぞ!?」
白うさぎ宇宙開発のロゴが入った無数のビル群や
恐らくはISのハンガーと思しき施設、数本の滑走路に
学園のものに似た巨大なアリーナがいくつか
そして、このギガフロートの端の方には
真っ直ぐ太平洋側へと向かって伸びる巨大なレール
SF作品では「マスドライバー」等とも呼ばれる施設が。
ひとつの施設群の大きさという意味では
アメリカ航空宇宙局が所有する施設なども凌駕する
正真正銘世界一の規模となるであろう宇宙センターが
そこでは建設されていたのだ。
「…はぁ…まぁ好きにやってくれ」
やる事が毎回毎回大規模過ぎる──内心でそう呆れつつ
千冬は学園教師としての職務に戻って行った。
「──呆れるのも分かるよちーちゃん。…でもね。
私達はこれから世界に喧嘩を売るんだよ」
着実に近付きつつある見果てぬ宇宙へ思いを馳せながら
己がこれから成そうとしている事にどんな反応を
するのだろうか──と、親友の驚く顔を想像して
うさぎはまたひとつ笑みをこぼした。
ティアーズのパッケージはそれぞれ
ストライクガンダム系列(ウイング)
ガンダムデュナメス系列(ロックオン)
を参考にしました。
ディランディ君の活躍はしばらく後の予定。
多分次回から臨海学校編です。