「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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臨海学校へ向けた準備回として
セッシー機のパッケージ大改造回。

ティアーズのコンセプト丸潰しのあの装備を
一夏達があれこれ改造していく回です。



第24話

 

 

 

──7月某日。

 

IS学園だけではなく、世界中のIS開発企業を驚かせる

とんでもない依頼がこの日一夏の元へと舞い込んで来た。

 

「俺は別に構わないですけど…良いんですか!?」

 

『君の人柄と技術はフランスから聞いた。構わんよ』

 

依頼主はなんとイギリス政府。

 

学園外からのあらゆる干渉を拒否することの出来る

特記事項第二十一条があるのを承知の上で

イギリス政府はその依頼を一夏へ持ちかけていた。

 

 

『私達は君達とより良い関係を築いていきたいのだ。

この依頼はその証拠とでも思ってくれていい』

 

「にしたってこれは…」

 

デュノア社の急激な業績回復やEU圏のマフィア一斉摘発

フランス政府の内部腐敗改善といった大改革に

一夏達が関わっていると知ったイギリス政府は

丁度自国の代表候補生が彼らと親しい点を活かし

協力関係を築く足掛かりとして依頼をしたのだ。

 

 

その内容とは──

 

 

 

『我々もあの機体の改良には手こずっていたからね…。

ティアーズから得られたデータは君が好きに使ってくれ。

君の技術を見せてもらう報酬だよ』

 

そう、イギリス代表候補生セシリア・オルコットの駆る

第三世代ISブルー・ティアーズとそのパッケージである

「ストライク・ガンナー」の改修依頼である。

 

場合によっては国土防衛にも関わる超機密事項となる

国家代表候補生の専用機のパッケージ開発を

一個人に託すのは本来非常に危険な行為と言えるが

一夏の人柄と知名度はそれを覆したという事になる。

 

 

 

 

 

「セシリアはいいのか?」

 

「勿論大歓迎ですわ!ぜひお願い致します」

 

一夏は束のラボへと運び込まれたティアーズの前で

その搭乗者であるセシリアへ最終確認を取る。

 

セシリアはそれに対して笑顔で了承を返した。

──機体にもパッケージにも色々言いたい事があったから

容赦なく大改造してくれて構わない、と。

 

 

「まずは…パッケージからお願いしますわ」

 

「了解。さて、と──」

 

直近に控える1年生の学校行事「臨海学校」に合わせて

各国の専用機には換装装備である「パッケージ」が

稼働テストを行うために本国から送られてくるのだ。

ティアーズの場合ストライク・ガンナーがそれに当たる。

 

ストライクガンナーは強襲用高機動装備をコンセプトに

推進力および旋回性の向上を図る換装用装備であり

射撃武装とセンサーにも換装先が用意されている。

 

「一夏さん。この装備、どう思われますか?」

 

セシリアはまず装備に対する率直な感想を求めた。

 

一夏はコンセプトと実際の装備構成を見比べ──

 

 

 

「随分酷い構成だな…誰が組んだんだコレ?」

 

「ですわよね!そうですわよね!」

 

あまりにも滅茶苦茶だ、と酷評したのだ。

 

この装備の詳細を知らされて以降、セシリア自身でさえ

度々頭を抱えていたストライクガンナーの欠点とは

「追加装備がコンセプトと噛み合わない」事に加え

「ティアーズ本体のコンセプトを潰している」事、と

致命的なまでのモノであった。

 

「こいつってBT兵器のテストベッドだよな?」

 

「ええ勿論。本国からも嫌という程聞かされていますわ」

 

まず「ティアーズのコンセプトを潰している」点だが

なんとこのパッケージ、機動力の確保のために

BT兵器の射撃機能を封印してスラスターとして使うという

とんでもない本末転倒ぶりを発揮している。

回りくどい手を使わず純粋に機動力を強化した方が早い。

 

「で、強襲用パッケージに狙撃武器──と」

 

「強襲機とは?と言われてしまいますわね」

 

そして追加装備についてだが、その内容としては

現在の物より大型の狙撃用レーザーライフルである

「スターダスト・シューター」と、超高感度センサー

「ブリリアント・クリアランス」なのだが

ティアーズを封印してまで得た機動力を活かすには

あまりにも向いていない構成である。

 

「…んじゃ、ざっと確認し終えたし──」

 

「改造を始めてしまいましょうか!」

 

 

 

 

 

「やぁおりむー!私の出番だねぇ」

「プログラミングなら任せて…!」

 

「頼りにしてるぜ!のほほんさん、簪!」

 

一夏はまず、信頼の置ける優秀なメカニックとして

専用機開発の実績もある本音と簪に協力を依頼。

ストライクガンナーの大改造が始まった。

 

 

「まずはティアーズを使える様にしたいですわね」

 

「コネクターを変えなきゃだね~」

 

まず取り掛かったのは、最大の本末転倒ポイントである

ティアーズ固定化の改善。

 

取り付けた後固定してしまう接続箇所のコネクターを

従来通り分離が可能なコネクターへと差し替えた上で

マウント時にも推進力を発生させられるように

ビット側の推進器とプログラミングに改良を加える。

 

「プラットフォームの大型化は避けられないか…」

 

「せめて被弾面積を最小限に…こうすれば…!」

 

マウント部大型化による弊害が発生してしまうも

正面からの攻撃に対して被弾面積を減らす事でカバーし

4枚の翼で構成されたプラットフォームウイングが完成。

 

 

「──実弾装備を用意したいですわね」

 

「じゃあ作っちゃう~?作っちゃおうよ~!」

 

BT兵器のデータ取りのためとして実装が却下されていた

実弾武装──物理系統の武装も独自開発することを決定。

 

「ミサイルは既にありますから…そうですわね…」

 

「高初速のレールガン辺りになるか?」

 

最終的に採用されたレールガンは容量を食い過ぎないよう

腰部マウント型かつ折り畳み式のものとなる。

 

余った容量には、インターセプターに次ぐサブの近接兵装

プラズマナイフと中型の扱いやすいシールドを搭載。

ナイフは容量節約のためにプラットフォームウイングの

基部となるバックパックへ直接取り付ける形となったが

高い機動力と汎用性を手に入れる事に成功した。

 

 

 

「これが…私のティアーズの新たな姿──」

 

[強襲用高機動パッケージ ウイング(エール)ストライカー]

 

3人の天才メカニックが搭乗者から直接意見を聞き出し

改造を進めた結果、あっという間に新装備が完成した。

 

目の前に佇むのは新たな翼を手に入れたティアーズ。

背部に取り付けられたバックパックからは

4枚のプラットフォームウイングが伸び、その全てに

ピッタリとBT兵器ブルーティアーズが装着されている。

翼の基部となる両肩には白い柄のプラズマナイフ(ビームサーベル)が2本。

そして、左腕にマウントされた中型シールド──

 

色々とチグハグな装備だったストライク・ガンナーは

一夏達の手によって生まれ変わり、強襲用高機動装備の

名に恥じない優秀な装備となったのだ。

 

 

 

 

 

「……この装備はどうしましょう?」

 

「パッケージ無しでも追加で積むには重いもんな」

 

──無事にウイングストライカーを完成させた

セシリア達の目の前には大型のライフルが鎮座していた。

 

ストライクガンナーの改良は粗方終了した訳だが

どう頑張ってもスターダスト・シューターと

ブリリアント・クリアランスは活用し切れなかったのだ。

 

「別でなんか組むか?」

 

「ですわね」

 

セシリア達はこの2つの兵装を活用し、追加パッケージを

独自で組み上げる事にした。イギリスからは好きな様に

使っても構わないと言われているが、折角用意してくれた

追加装備なのだから活用するべきだろう──と。

 

 

「じゃあせっしー、どんな装備にしたい~?」

 

新装備に求めるモノのコンセプトを本音が尋ねる。

 

「"これ"とは真逆のコンセプトで組みたいですわ」

 

セシリアが求めたのはウイングストライカーとは真逆

長距離以遠での運用を主軸とする支援用装備だった。

 

 

「となると、必要なのは機動力よりは防御力だな」

 

勿論ポジショニング等で移動する機会は沢山あるが

急加速や急制動といった所謂「高機動」を求めることは

コンセプト的にあまりないだろうとして

どちらかとしては防御力を重視する構成を選択。

 

 

「対レーザーコーティングを施せば──」

 

「いいね~♪何でもガード出来そうだねぇ~!」

 

防御用兵装として、半身を覆い隠せる程のサイズの

大型シールドを計2枚用意。これをバックパックと接続し

機体のほぼ全体を覆い隠す防御壁とする。

 

「ティアーズにも盾を付けてしまいましょうか」

 

「シールドビットか。いい案だなセシリア」

 

自由自在に操る事が出来るBT兵器に盾を取り付ければ

攻防一体の万能兵装へと早変わりする。

ビットの機動力は重さにより落ちてしまう事になるが

それを差し引いても汎用性の向上は大きい。

 

 

 

「──こんなところですわね」

 

「もう出来ちゃった…」

 

ウイングストライカーに続いて、新たなパッケージが

早くも仕上がった。学園随一のメカニック達が集まれば

この程度は造作もないのだった。

 

臨海学校でのテストはウイングストライカー優先なため

この新装備のお披露目はまだ少し先になりそうだが

間違いなく依頼主(イギリス政府)を驚かせる結果にはなるだろう。

 

「名前はどうする~?」

 

最後にこの新パッケージにも名前を付ける。

狙撃用に相応しい名前を与えたい、と4人で考え──

 

 

 

「『ロックオン・ストラトス(成層圏まで狙い撃つ)』は如何でしょう?」

 

 

 

この新装備の名はセシリア・オルコット提案の

「ロックオン・ストラトス」に決まったのだった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

IS学園の一角にある「束さんのラボ」の一室。

 

 

 

「アメリカが静かすぎる?」

 

「うん。亡国機業の動きは常に追ってるんだけどね──」

 

無数のモニターが並ぶ薄暗い部屋で千冬と束が

それらに映る情報に目を通していた。

 

強奪された篠ノ之束開発の無人IS「ゴーレムⅠ」による

IS学園襲撃以降、把握している亡国機業関連企業の動きは

常時監視させ逐一チェックしているのだが

ここ最近アメリカを拠点に活動している亡国機業は

少しばかりその動きが小規模過ぎたのだ。

 

「何も無い…とは考えにくいか」

 

「そうだねぇ。必ず"何かはある"と思うよ」

 

普通の人間であれば見落としてしまう程小さな差異。

 

偶然だと言われれば納得してしまいそうな程の"波"。

 

しかしここにいる天才2人は、その意図こそ読めなくとも

そこに暗躍する何者かが居るという事を確信していた。

 

 

「IS絡みだと思うか?」

 

「ん、まぁ…6割ってとこかな」

 

千冬と束はその沈黙の裏にある目的を推察する。

亡国機業とは世界を裏から牛耳っていると思われる

巨大な組織の集まりだろう、と束は当たりを付けており

今回の目的も兵器や麻薬の売買、戦争や内紛等といった

世界の闇の部分に関わる物事だろうと踏んではいる。

が、それがISに絡んでくるかどうかは流石に断定出来ず

束はまたモニターに流れる情報の奔流を睨む。

 

 

「──ファング・クエイク…ヘルハウンドver.2.8…

あと試験稼働中だけどシルバリオ・ゴスペル…」

 

「米国は機体保有数も多いからな…」

 

数日後には丁度世界中で話題の一夏達を含む新1年生が

臨海学校へ向かうが、そこへ関われそうな部分に限って

動向を洗おうとしてもとてつもない時間が掛かる。

 

「後手に回らざるを得ん…か」

 

千冬と束は彼らに先手を打たれる事を前提とした上で

一夏達学園生の安全を確保する手段を模索する事にした。

 

 

 

 

「──ところで束」

 

「なぁに?ちーちゃん」

 

モニターまみれの部屋を出た千冬が束に1つ疑問を

今自分の視界に映っている"それ"が一体どこまで

大きくなるのかを尋ねる──

 

「この施設はまだ完成しないのか?」

 

窓越しに千冬の目の前に広がっているのは

学園の隣に建つギガフロート、そしてそこに建設中の

無数の建造物群。

 

「モチのロン♪まだまだ建設途中だよん」

 

「なに!?既に学園より大きいんだぞ!?」

 

白うさぎ宇宙開発のロゴが入った無数のビル群や

恐らくはISのハンガーと思しき施設、数本の滑走路に

学園のものに似た巨大なアリーナがいくつか

そして、このギガフロートの端の方には

真っ直ぐ太平洋側へと向かって伸びる巨大なレール

SF作品では「マスドライバー」等とも呼ばれる施設が。

 

ひとつの施設群の大きさという意味では

アメリカ航空宇宙局が所有する施設なども凌駕する

正真正銘世界一の規模となるであろう宇宙センターが

そこでは建設されていたのだ。

 

 

「…はぁ…まぁ好きにやってくれ」

 

やる事が毎回毎回大規模過ぎる──内心でそう呆れつつ

千冬は学園教師としての職務に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

「──呆れるのも分かるよちーちゃん。…でもね。

私達はこれから世界に喧嘩を売るんだよ」

 

着実に近付きつつある見果てぬ宇宙へ思いを馳せながら

己がこれから成そうとしている事にどんな反応を

するのだろうか──と、親友の驚く顔を想像して

うさぎはまたひとつ笑みをこぼした。

 

 

 





ティアーズのパッケージはそれぞれ
ストライクガンダム系列(ウイング)
ガンダムデュナメス系列(ロックオン)
を参考にしました。
ディランディ君の活躍はしばらく後の予定。

多分次回から臨海学校編です。
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