「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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VSセッシーを想定した箒ちゃんとのトレーニング回。
2人は護身用のISを既に持っているので
トレーニングは剣道のみではありません。
私は剣道ほとんど知らないので、あれこれおかしくね
となっても見逃して下さい。

…織斑弟と篠ノ之妹がISを使って戦うとなったとき
あの生徒会長さんはどう動くのか。


第3話

 

 

 

「一夏、放課後少し付き合え」

 

 

 

一夏は箒に呼ばれて学園の剣道場を訪れていた。

 

(この雰囲気…懐かしいな。気が引き締まる)

 

3年ほど前まで剣道を嗜んでいた一夏は道場の雰囲気に

自然と身と気持ちが引き締まっていた。

 

「…全力で相手をする、構わんな?」

 

「ああ。宜しく頼むよ箒」

 

残る防具である面を被り、竹刀をゆっくりと構える2人。

箒の構えは今もその道を歩むだけあり一ミリの隙もないが

一夏も3年離れていたとは思えない隙のない構えだ。

 

「いざ参る!」

 

「おう!」

 

両者共に相手の僅かな隙を見合う。

 

「面ッ!」

 

先に動いたのは箒だ。

 

バシンッ!!

 

竹刀同士がぶつかり合う乾いた音が響く。

 

「…流石一夏だ」

 

「俺の腕は伊達じゃない」

 

互いに引き技に持ち込もうと鍔迫り合いしつつ睨み合う。

 

「「…っ!」」

 

数秒の鍔迫り合いの後、両者は再び距離をとる。

 

(流石箒だ…毎回キッチリ対応してくる!)

 

数合打ち合うが両者は一歩も引かず、かつ打ち込ませず。

 

(一夏…コイツまるで隙がない!攻めにくいな…)

 

2人の美しい剣さばき、足さばきは見る者を魅了する。

 

「凄いね篠ノ之さん!」

「おりむーも凄いよ!」

 

バシンバシンという音と共に2人の剣が閃いたと思えば

道場に響く音が少しの間2人のすり足の音のみとなる。

 

「小手ーッ!」

「ぐっ…」

 

一際大きな音が鳴ると2人の鍔迫り合いが始まり

相手を逃すまいと睨み合う。

 

「篠ノ之さんの方が優勢じゃない?」

「おりむーも全部捌いてるみたいだよ~」

 

しかし、長引いた試合の決着は一瞬だった。

 

「胴ーっ!」

 

「……一本取られたよ」

 

勝ったのは箒。一夏のほんの僅かな隙を突いて胴を打ち

一本と取られるであろう一撃を差し込んだのだ。

 

 

 

「強くなったなぁ箒は」

 

防具を外して床に腰を下ろし一息ついた一夏。

対する箒は勝ったというのに何やら疑問でもあるような

そんな不完全燃焼な表情をしていた。

 

「私がそれほど強くなった…と?」

 

そう、箒にとって剣士一夏とは憧れの存在であり

彼に追いつく事を目標として日々鍛錬を積んできたのだ。

そんな彼にたった3年で追い付いたのが意外だった。

 

「…俺が強くなってないのは事実だよ」

 

「剣道を離れていたのか…何故?」

 

一夏は少し申し訳なさそうに己の過去を語った。

箒と別れて少ししてから家計が徐々に苦しくなり

姉を支えるために剣の道を離れざるを得なかったこと

己の身柄とISを狙う者達に追い回され、身を守るために

銃を使わざるを得なかったことを。

 

「立派だな…一夏は」

 

「そんなことはないさ」

 

謙遜というよりやや卑屈になりかけていた一夏に

箒は少し離れた位置に立って彼へ手を差し伸べる。

一夏が手を伸ばせばそれを掴むことが出来る距離だ。

そして、彼があの時言った言葉を思い出し──

 

「切磋琢磨していけばいい、違うか?」

 

「…!そうだったな!」

 

箒の手を取った一夏の瞳には闘志の炎が戻っていた。

 

 

 

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──IS学園第1アリーナ。

 

学校行事や試合が無いにも関わらず、このアリーナだけ

異様な熱気に包まれていた。

 

「例のカップルの試合見るんでしょ!ホラ早く!」

 

「やーばっ!もう始まってそうだねっ!」

 

一夏と箒は運良くアリーナの使用権を手に入れたため

放課後の第一アリーナでISでの模擬戦を行う予定でいた。

その情報をどこから聞きつけたのかは不明だが

一夏の試合を一目見ようと大勢の生徒が集まり

まるで一大イベントのような様相を呈していたのだ。

 

アリーナは生徒達でほぼ満席。生徒会の広報担当と思しき

生徒は三脚付きの大型カメラまで引っ張り出している。

 

『さぁさぁ!両者の準備が終わったみたいよ!

では!実況はこの私、更識楯無でお送りしまーすっ!』

 

スピーカーから聞こえてきているのは、学園の生徒会長

更識楯無の声。面白いことに目がないと言われる彼女が

生徒会を動かしイベント盛り上げへと走らせたのだろう。

揉め事かと駆けつけた教師も思わず困惑する有様だった。

 

そしてついに電光掲示板でカウントダウンが始まる。

 

3──

 

2──

 

1──

 

『織斑一夏、ラファールカスタム!行きます!』

 

『篠ノ之箒、打鉄改!出る!』

 

2人の機体が対角のピットから飛び出してくる。

 

一夏が駆るのは「ラファール・リヴァイブ・カスタム」。

フランスのデュノア社が開発した第2世代型の汎用機

ラファール・リヴァイブをカスタムした機体だ。

 

箒が駆るのは「打鉄・改」。日本国産の汎用型ISで

操作性に重きを置いた打鉄をベースとする機体である。

 

どちらも生存性を重視したカスタムが施されており

武装にもスモークグレネードや簡易ステルスを搭載。

強力な武装こそないがバランスの良い良機体である。

 

 

 

『遠慮はしないぜっ!』

 

まず動いたのは一夏。ラファールカスタムの両手に

アサルトライフルを装備させると、小手調べとばかりに

ロックオンもせず弾をばら撒き始めた。

 

『狙いが甘いぞ一夏っ!』

 

一夏がライフルを取り出したのを見た箒はすぐさま突撃。

やる気のない弾を通常の機体移動のみで躱しながら

一夏の懐を目指しスラスター全開で飛び込んだ。

利き手には近接用ブレード「葵」の改良型を握って。

 

『これでどうだっ!』

 

一夏が撃ってきたバズーカをバレルロールで避けつつ

懐へ潜り込んで逆袈裟一閃、バズーカの砲身を叩き切ると

後退する一夏へ肉薄し突きを放つ──

 

ガキィンッ!!

 

剣道で培った洗練された動きによる鋭い突きだったが

一夏のラファールは呼び出したシールドで突きを防いだ。

 

『これを防ぐか──ッ!?』

 

一夏が懐に隠して展開していた二本目のバズーカが炸裂

アリーナには轟音とともに爆煙が広がる。

 

 

 

「「「おおぉーーっ!!」」」

 

煙の中から現れた2機はどちらもほとんど無傷だった。

 

箒は左手に呼んだ短刀「茜」でバズーカ弾を両断し

咄嗟に距離を取ることに成功していたのだ。

一夏の方も箒がバズーカ弾を切った際の爆発から

壊れかけのシールドを放り投げて回避していた。

 

『…本気で行くぞッ!』

 

『来いッ!箒ッ!』

 

両者はそれぞれブレードを構え、一気に距離を詰める。

 

ガキィンッ!!

 

一瞬の鍔迫り合いの後、両者ともすれ違うようにして離脱

大きく弧を描くようにして旋回し再度斬り込みに向かう。

 

ガキィンッ!!

 

再びの鍔迫り合い、両者とも離脱を図ったその刹那

一夏のラファールが機体を思い切り捻って回転斬り。

箒の打鉄のカスタム・ウイングの先端を片方切り落とす。

 

『やるな一夏っ…次で決めるッ!』

 

カスタム・ウイングを損傷しややバランスが崩れた箒は

次の一撃で決着を付けるべく再度旋回する。

 

『…なら俺の戦い方、見せてやる!』

 

これに対し一夏は旋回の軌道に上昇を加える。

箒から見えにくい方の手に"秘策"を取り出しつつ

アリーナのシールドの上側スレスレで降下に入った。

 

『こいつを凌いでみせろよッ!』

 

カッ───!

 

アリーナに強烈な閃光が迸る。一夏が取り出していた

閃光手榴弾が炸裂したのだ。

 

『うっ!?眩しい…だがっ!』

 

閃光に続けて上空から弾丸の雨が箒目掛けて降り注ぐ。

弾丸の雨は上手いこと位置取りを変えるだけで

避け切ることが出来たが、そちらに気を取られたことで

上空から重力も合わせて吶喊してきていた一夏への反応が

ほんの僅かに遅れてしまう。

 

『うおぉーーッ!』

 

『…!!!』

 

 

 

 

 

『打鉄改シールドエネルギーエンプティ!

勝者、織斑一夏ーーっ!』

 

立っていたのは一夏だ。

 

箒の打鉄改は最後の一閃とそれによる地面への激突で

残ったシールドエネルギーを全て削り取られており

ほとんど一撃必殺といえる決着だった。

 

「「「わあぁぁぁーーっ!!」」」

 

アリーナは大歓声に包まれ、クラッカーの音とともに

「織斑君勝利おめでとう!」との垂れ幕が掛けられる。

 

「凄かったよー篠ノ之さーん!」

「大健闘だったよー箒さーん!!」

「かっこよかったよー2人ともー!」

 

一組の生徒からは箒を讃える声も上がっていた。

 

 

 

『大丈夫か?箒』

 

『…最後を剣で締めたのはお前の矜恃か』

 

『あぁ』

 

一夏に手を差し伸べられ立ち上がった箒。

未だ湧き上がる大歓声に、2人は気恥しそうに手を振ると

一夏が箒を背中に乗せてピットへと戻っていった。

 

 

 

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「良い戦いだったな。2人とも」

 

ピットへ戻った2人を待っていたのは織斑先生だった。

若干苦笑いしながらの出迎えではあったが。

 

「やはり生徒会長の独断ですか、アレ」

 

「あぁ。教師は少なからず混乱している」

 

織斑先生曰く、アリーナ前にスクリーンを多数用意しての

パブリックビューイングが開催されていたらしく

学園中の生徒が第一アリーナ前に大集合。

一夏とセシリアの試合の詳細が号外としてばらまかれ

「試合映像前売り券」なるものの販売まで行われている

このお祭り騒ぎに教師たちは大混乱だったそうだ。

 

「前売り券?なんですかソレ」

 

「………限定品付きで映像を先行販売するらしいぞ」

 

「ひょっとしてあのサインか?」

 

実は一夏と箒は昨日の放課後、生徒会広報にせがまれ

それぞれ50枚ほどサインを書かされていたのだ。

 

その前売り券で買えるのは織斑一夏と篠ノ之箒2人の

生のサインどちらかが入った先行販売品とのことで

アリーナ前でランダム抽選による販売が行われていた。

これで生徒会費の収入を増やすことが出来る!と

広報担当は相当意気込んでいたらしい。

 

「俺たち…IS操縦のトレーニングしに来たんだよな」

 

「まさかこれほど騒がれるとは…人気者だな。私達」

 

そう、今回のこの騒ぎは別に学校行事などではないのだ。

2人の生徒がアリーナでただのIS操縦練習を行う──

そんなありふれた内容であったハズ。

 

「「先が思いやられるな」」

 

波乱の予感をひしひしと感じる2人であった。

 

 

 

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──整備室。

 

「コアの差し替えまで俺の仕事かよ…」

 

ウサギのマーク付きで送られてきたメールの内容に

至極面倒臭そうな表情をしつつ、自分と箒のISを

メンテナンスベッドへセットした一夏。

 

『これはいっくんへの試練だから頑張ってね♪』

 

セシリアとの試合が数日後に控えているこの状況で

ラファールカスタムのISコアを送られてくる白式へ

移植する作業を行わなければならないのだ。

 

「最低限のメンテナンスでいいか…」

 

パーツの劣化のチェック、損傷したパーツの取り替え

稼働データの吸い出しなどやる事は少なくないが。

 

 

 

「──おりむーに協力してもらおうよ~」

 

「この子は私の力だけで組みたいんだってば!」

 

(…のほほんさん?)

 

ふと一夏の耳にそんな会話が聞こえてくる。

この学園で一夏のことを「おりむー」と呼んでいるのは

基本的にのほほんさん一人しかいない。

 

「大体倉持も倉持だよ…白式が来たからってさ!」

 

(…俺と白式絡みか)

 

一夏は倉持技研についてネットで軽く検索をかける。

軽く調べていくと、日本代表候補生である更識簪の

専用機を開発しているという事が判明したが

その開発進捗があるタイミングで途切れていたのだ。

 

(企業としてどうなんだソレ…)

 

心の中で倉持技研への愚痴をこぼしつつ

迷惑をかけてしまったであろう簪という少女に

せめて謝罪の一言と開発協力の申し出でもしたいと

この会話をしている2人に声を掛けることにした。

 

 

 

「お!おりむーじゃん!丁度いいね~」

 

自分の後ろに織斑一夏が来ているかのような本音の言葉に

簪はバッと後ろに振り向く。

 

「よっ」

 

「ひゃあっ!?…織斑君、何時からそこに?」

 

自分のすぐ後ろに立っていた一夏に

簪は飛び上がって尻もちをつく程驚いた。

 

「俺と白式について話してたから気になってな」

 

まだ頭が混乱しているのだろうか、簪は何か言いたそうに

口をパクパクさせるが言葉が続いてこない。

 

「おりむー、かんちゃんのISどう思う~?」

 

本音に促された一夏は置かれていた簪のIS「打鉄弐式」を

眺める。特に目を引いたある武装を重点的に

ざっと目を通した一夏はやや驚いたような表情で

未だ混乱気味の簪に打鉄弐式の感想を述べた。

 

「これを簪一人で作ったのか…凄いな」

 

「…へっ?」

 

この機体の最大の特徴となる武装「山嵐」は合計48発の

誘導ミサイルをマルチロックオンシステムを使って

複数の敵へ撃ち込むものだ。

これ程の武装をコントロールするためのプログラムは

並の人間に組めるようなものでは無いだろう。

それを、未完成とはいえある程度形にしているのだから

簪のプログラミングスキルは相当のものだ。

 

「誇っていいと思うぜ」

 

本音から「クラス一の天才」と紹介されていた一夏から

絶賛された簪は気分がぱあっと明るくなる。

 

「ありがとう…。もう少し頑張れそう」

 

簪の表情が綻んだのを見た本音は、一夏にある相談を

持ちかける。それは──

 

「ねぇおりむー、かんちゃんと私の専用機開発を

手伝ってほしいな~」

 

"2機"の専用機の開発の協力依頼だった。

 

 

 




今回の戦闘描写は機動戦士ガンダムUCより
クシャトリヤvsスタークジェガン
をある程度参考にしています。

アーキタイプ・ブレイカーからは
九尾の魂のみ参戦する予定です。

かんちゃん組み込むのすっごく大変だった
何度書き直ししたことやら
見切り発車すぎた感が凄いんじゃ…
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