「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
いよいよ、福音との戦闘開始です。
既に紅椿の絢爛舞踏が解放済みで
各機のパッケージも装備済み、と
原作からすれば少々過剰戦力ですが
私は「俺TUEEEE」は避けたいクチなのでね…
そう、敵さんも強くなります。
原作の一夏達のISに競技用リミッターが
掛けられていたのかは不明ですが…
キィィィーーー………ン
太平洋を4機のISが真っ直ぐ駆け抜けていく。
『目標との接触予想まであと120!』
白式と紅椿、ティアーズとレーゲンだ。
花月荘を飛び立った一夏達は事前の指示進路に沿って
銀の福音を捕捉するまでトップスピードで飛んでいた。
『進路再計算、接敵可能だよいっくん!』
「了解ッ!」
束が監視衛星からの映像を解析し福音の進路を予想
一夏達のISのインターフェースに表示される指示進路が
逐一更新されていく。
「………見えた!目標捕捉!」
程なくして、学園へ向け飛行する福音の姿を捉える。
「マドカ!接触ルートを再計算!」
『やっているっ!』
量子コンピュータにも迫る演算能力を誇る展開装甲の
電子回路が的確な接触ルートを割り出していく。
「やるぞ、兄さん!」
「あぁラウラ!」
目標を確実に捕捉した一夏とラウラは自身を牽引している
紅椿とティアーズの上で立ち上がり、
フルチャージ状態にして構える。
神経を極限まで研ぎ澄まし、必殺の一撃を叩き込む
僅かなチャンスが訪れるのをジッと待つ。
『接触予想算出!あと30!』
「了解!」
「決める…!」
音速をゆうに超える戦場、120秒などあっという間に過ぎ
福音を目の前に捉える。
「今だ一夏っ!」
「今ですわラウラさんっ!」
一夏が雪片改を手に取り、白式の展開装甲が起動する。
『接触まであと10、9、8、7──』
「「うおぉぉぉッ!!!」」
『敵機確認…迎撃モードへ移行…!』
「──なっ…!?…コイツっ!」
なんと、瞬時加速を乗せた零落白夜が回避された。
福音はただスラスターを吹かしただけだというのに
瞬時加速と見紛う程の速度を発揮し、一夏の袈裟斬りを
強引に躱してみせたのだ。
「だがまだだっ!」
『第二次接触、あと3、2、1──』
しかし、切り札はもう1枚ある。
ラウラが動きの止まった福音へAICを発動する──
『「
「ぐっ…!?」
福音はその巨大な翼を前方へ向けると、それに備えられた
36の砲口から無数の光弾をラウラへと射掛けたのだ。
流石のラウラでもこれは回避せざるを得なかった。
山嵐を遥かに超える弾幕の中でAICを正確に決めるなど
人の身で出来る技術ではなかった。
「第一波は駄目だった!頼むシャル!」
『分かった!いくよ!』
初撃を見事に回避された一夏達であったが
決して取り乱す事はしない。セカンドプランへと移行し
後続のデュノア隊との連携を組みにかかる。
「セシリア!デュノア隊と合流して援護を頼む!」
「了解ですわ!」
『ラウラ!鈴をそっちへ送るよ!』
「頼む!」
初撃を躱されたとはいえ、依然零落白夜とAICは
高い決定力を有している。ほんの僅かでも福音が隙を
見せた時にそれを叩き込んでやればいいのだ。
幸いにも福音は銀の鐘が主兵装であり唯一の兵装らしく
距離を取っていれば回避する余裕は多少ある。
織斑隊を追って来ていたデュノア隊は直ぐに合流し
磨きあげられたコンビネーション攻撃が始まった。
「行きなさいティアーズ!」
「山嵐システム起動…!」
「行くよぉ撃ちぬけビット!」
『敵弾迎撃』
雨の様なビームと無数のミサイルが福音を襲い
侵攻ルートを塞ぎつつその高機動を制限する。
特にセシリアのビームは敵の動きを制限しながらも
味方は逆に動きやすくなるという、福音にとっては
非常に嫌らしい軌道を取ったのだ。
「箒!切り込む!合わせろッ!」
「言われなくともッ!」
この弾丸の暴風雨の中へ一夏と箒は躊躇なく飛び込み
動きの鈍った福音に斬りかかっていく。
味方の砲撃をスレスレで回避しながら、福音の砲撃の
僅かなインターバルを突いて突っ込むのだ。
「──天眼もちゃぁ~んと動いてるね~」
この一見無謀な動きを助けていたのは九尾ノ魂が持つ
特殊システム「
天眼とは、山嵐との連動も視野に入れて開発された
広範囲レーダーを兼ねる情報処理用特殊システムで
九尾が捉えたISや熱源反応の位置を味方機へと共有し
インターフェース上に表示させるというもの。
敵ISのシールドエネルギー残量もHPバーとして
可視化してくれるスグレモノ。
味方機が何処にいるのか、敵機が何処に隠れているのか
それら全てを把握出来るため、味方の砲撃がどちらから
飛んでくるのか予想を付けやすくなっているのだ。
「くっ…シールドエネルギーが多すぎるっ!」
「あと幾つあんのよっ!」
しかし、流石は軍用機──シールドエネルギーの量が
一夏達リミッター付きよりも遥かに多かった。
幾ら叩いても福音のHPバーは中々削れていかない。
あちらは
だが、厄介なのはそれだけでは無かった──
「おりむー!近くに何か居るよぉっ!」
「何だって!?」
ピピピピッ…
九尾の広範囲レーダーが捉えていたのは、1隻の船。
それも、戦艦や駆逐艦等の様な戦闘能力を持つ船では無く
クルーザーか漁船か──まさに"ただの船"だった。
「どうする一夏!?」
「…ちいっ!…あれはもう
「無視するのかっ!?」
一夏は無謀な乱入者に対して非情な決断を下した。
元々この近辺の海域は福音暴走の報を受けた日本政府が
避難指示と侵入の禁止をJアラートで通達している。
民間船が許可なく侵入出来る海域では無いのだ。
更に言えば、一夏達が相手にしているのは軍用機──
一切気を抜く事が許されない強敵なのだ。
愚か者に一々構っている暇など無い。
「精々無事を祈る位しか出来んさ!」
「そうだね…っ!早く倒せるよう頑張ろう!」
代表候補生達はそれは重々承知のようで
民間船に目を向ける事はせず戦闘に集中する。
(………!………!)
「何だっ!?」
戦闘の最中、一夏は妙な"感覚"を感じ取る。
(戦場の空気感が変わった…?…違うな)
この空域は先程からピリついた雰囲気が漂っているが
一夏が感じたのはそれとはまた違ったもの──
(………殺してやる…!)
──暗く重苦しい感情と、鋭く尖った──殺意。
「ッ!増援が来るッ!!!」
「えっ!?」
「増援だとっ!?」
それを福音ではなく例の民間船が発していると理解した
一夏は、思考するより先に口を開いていた。
「おりむー!IS反応が来るよっ!」
その言葉が本当であると証明するかのように
自爆していた民間船から2機のISが飛び出してくる。
「織斑一夏!お前を…殺すッ!」
「ようガキ共!悪ぃが墜ちてもらうぜっ!」
「サイレント・ゼフィルス…っ!?」
片方は黒を基調とした禍々しいカラーリングをした
蜘蛛の様な形状の機体「アラクネ」。
アメリカから強奪された記録が残っている。
そしてもう片方は本来ならティアーズの姉妹機として
イギリスで運用されるハズだった青紫色の機体──
蝶を思わせる形状の「サイレント・ゼフィルス」だ。
「テメェが織斑一夏か!」
「あぁそうだ!それが何だッ!?」
「BT兵器の扱いが私と同等だと!?どけッ!」
「貴女は私が止めさせてもらいますわ!」
アラクネとゼフィルスの乱入で戦場が一気に混沌と化す。
ゼフィルスはセシリアがビット同士の戦いに持ち込み
何とか抑え込んだものの、アラクネに乗った女は
福音だろうが一夏達だろうがお構い無しに攻撃し
三つ巴の戦闘が繰り広げられる。
「ぐっ…マドカ!フレームの稼働レベルを上げろッ!」
『既に限界値だ!これ以上はお前が危険だぞ!』
「構わねぇ上げろ!頭数を減らすッ!」
一夏は展開装甲に掛けていたリミッターを解除する。
かつて模擬戦で一度だけ全力を発揮した事があるが
その際は一夏自身の情報処理能力を超えたために
酷い頭痛という代償を背負う事になっていた。
しかし、早急に頭数を減らさなければ劣勢になると
判断した一夏はデメリット覚悟で奥の手を切った。
「流石はブリュンヒルデの弟だな!白き流星ェッ!」
「伊達に名乗ってる訳じゃないんだッ!」
「当たらねぇっ!?」
フルスペックを解放した一夏の戦闘能力は凄まじく
アラクネの8本ある装甲脚から放たれるレーザーを
全て見切って敵へ肉薄する。
アラクネの女も零落白夜の存在は知っている様で
最低限の距離感は維持して戦っていた。
「えぇい邪魔だどけぇッ!」
「一夏さん!ゼフィルスがっ!」
一夏に呼応するように一気に攻勢に出たゼフィルスが
セシリアの包囲網を突破してきた。
「ならまずお前から墜とす!」
「殺してやるぞ織斑一夏ァッ!」
ゼフィルスの少女はまるで一夏に恨みでもあるかの様に
執拗に攻撃を仕掛け始めた。ゼフィルスのビットは
シールドとしても使用可能なようで、一夏からの射撃を
ビットでガードしつつ手にしたライフルで攻撃してくる。
が、少女はだいぶ頭に血が上っているらしく
一夏はビット防御のクセを読みながら攻撃を差し込み
呼び出した新装備「シールド付き連装ガトリング砲」で
的確に本体へとダメージを叩き込んでいく。
「墜ちろッ!墜ちろッ!墜ちろォッ!」
ゼフィルスはライフルからレーザーブレードを展開し
銃剣として使って切り込んでくる。
本体のバレルの長さ分だけ射程が伸びる事になるので
本来なら厄介なのだが、今の一夏には些細な事──
「えぇいッ!」
バキィンッ!!
「ぐうっ!?」
突き出された銃の本体を掴む様に攻撃を回避した一夏は
ゼフィルスの頭部に思いっきり蹴りを叩き込んだ。
蹴りを受けたゼフィルスは頭部のヘルメットが割れ
パイロットの素顔が明らかになる。
声からして同年代前後の少女だと一夏は思っていたが
想定よりも一回り若く、下手すれば小学生と言われても
納得してしまう程に幼い少女がパイロットをしていた。
「…お、お前っ…」
一夏はその少女の素顔にどこか懐かしさを覚える。
まるで過去に一度会った事があるような──
生き別れてしまった妹に良く似ているような──
「まさかっ!マドカ、か?!」
「煩いッ!私を…っ、その名で呼ぶなァッ!」
少女は一夏の問いかけに対し、肯定としか取れない
答えを再度の銃剣攻撃と共に返す。
そう、サイレント・ゼフィルスのパイロットとは
一夏がまだ研究施設に姉共々収容されていた時に
生き別れになってしまった妹「織斑マドカ」だった。
「千冬姉!マドカだ!マドカが生きてたッ!」
『何!?それは本当か!』
『良かったねちーちゃんっ!』
一夏は研究施設を千冬と共に脱走した日からずっと
マドカを見つけようと束の力も借りて探し続けていた。
「いつか必ず迎えに行く」との約束を果たすため
学園入学後もあらゆる伝手を辿って探していたのだ。
「マドカ!何で俺を攻撃するんだ!」
「えぇい黙れッ!黙ってくれッ!」
しかし、今目の前にいるその妹は修羅の様な気迫を纏って
一夏を殺そうとひたすら攻撃を繰り返してくる。
「織斑一夏は敵ッ!倒すべき敵ィッ!」
「マドカ、お願いだ!正気に戻ってくれッ!」
後方から飛んでくるセシリア達の支援砲撃にも怯まず
攻撃を繰り返すマドカ。まるで自分に言い聞かせるように
一夏は敵だと連呼している姿は、一夏を殺したくない、と
本当のマドカが抵抗している様にも見えた。
「マドカ!あいつの状態を調べられないか!?」
『分かった!コアネットワークアクセス開始──』
一夏はコア人格の方のマドカへ声を掛け
ゼフィルス経由で妹の状態を探ってくれと頼む。
操縦者保護機能などでISと操縦者は深くリンクしており
その気になれば心拍数や血圧ぐらいであれば測定出来る。
「ゴメン一夏!福音がそっち行った!」
「すまんシャル!対応するッ!」
ゼフィルスと戦っていても、福音やアラクネは容赦なく
痛烈な横槍をぶち込んでくる。
「一夏!シールドエネルギーは?!」
「頼む箒!」
単一仕様能力によりシールドエネルギーが実質無限の
紅椿と白式を駆る一夏と箒は積極的に敵と交戦し
セシリア達に攻撃が飛ばないよう注意を引きつける。
出撃時にシールドエネルギーの回復パックを目いっぱい
ただの試験稼働だったためにその総数は致命的に少ない。
ただでさえ攻撃力の高いISを3機相手にしているのだ
一夏と箒以外が攻撃を貰うのは避けなければならない。
が──
「そらそらッ!どうした中華娘ッ!」
「うっさいわね!セシリア!援護!」
「私達の連携、見せてあげますわ!」
ゼフィルスは一夏を執拗に狙っているため問題は無いが
福音とアラクネは気まぐれに標的を変えていくのだ。
箒はいつでも一夏をフォロー出来る位置取りが
求められるため、白式から大きく離れる事は出来ない。
つまり、状況によっては福音とアラクネの2機を
セシリア達6人で抑える事が求められる。
「山嵐の残弾が…もう殆ど無い…っ!」
「まだ僕のは少し余ってるから最悪貸すよっ!」
これだけ熾烈な戦いとなると、残弾も心配になってくる。
特に実弾兵装をバラ撒き続けているシャルと簪の機体は
徐々に残弾数がピンチになりつつあった。
『──解析が終わったぞ!』
「それを待ってた!報告頼む!」
弾幕飛び交う中で妹マドカの状態の解析が遂に終わる。
待ちわびた報告だ。
『あいつには監視用ナノマシンが打たれているらしい。
それを取り除かなければ奪還は難しいぞ!』
白式のマドカが言うには、妹マドカの体内には
裏切り防止のための監視用ナノマシンが投与されており
監視者の指示1つで全身に激痛が走るとのこと。
これがあるせいで妹マドカは裏切りが許されない中
一夏の殺害を強要させられているのだろう。
ナノマシンを除去出来ない場合、激痛に苛まれ続けて
最終的にはショック死してしまう。彼女を奪還するには
そのナノマシンを速やかに除去する必要があった。
『この束さんにお任せあれ~、だね♪』
「──頼みますッ!」
一夏は妹マドカ奪還と福音撃墜へ向け再び闘志を滾らせ
ゼフィルスの連続攻撃を器用に捌き続けていく。
──太平洋上の死闘は依然として熾烈なままだった。
アラクネ&ゼフィルス、乱入。
…すんません、マドカが2人居てややこしいですね。
福音戦後には解決させるのでどうかご容赦を。
あの密漁船、原作だと誰が乗ってたんでしょう?
特に描かれては居なかったので、マドカ達が
戦闘空域に接近するために使用させました。
8vs3って書くの大変~!戦闘回での出番は
なるべく均等にあげたいものね。
【天眼】
九尾ノ魂に搭載された情報処理用特殊システム。
言うなればバトオペ2の「観測情報連結」。
元ネタは2つ、ひとつはGE2RBに登場するアラガミ
「ムクロキュウビ」が持つ特徴のひとつ
HPが低いキャラクターを集中攻撃する点。
そしてもう1つがMHXXの「天眼タマミツネ」の特徴
全盲ながら敵の位置を把握する能力。
【シールド付き連装ガトリング砲】
白式に追加された"新装備"。
ユニコーンガンダムが装備していたシールドと
ほぼ同じ構造のもの。Iフィールドの代わりに
ビーム粒子偏向場で光学武装を無効化する。
なお燃費は元ネタ同様良くない模様。