「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
評価の色復活嬉しい…!ありがとうございます!
で、そんな状況で投稿するのがはばかられる
超シリアスパートが有る訳ですが…
別の小説の方でも見た事あるな?
閑話休題、現状解説パートです。
被害状況の確認とか今後の方針模索とか
そんな感じのパート。
「そんな…っ!?何でっ!?」
「一夏が…墜ちた…?」
花月荘の一室で呆然とする、織斑千冬と篠ノ之束。
[白式:SIGNAL LOST]
目の前には、2人が愛してやまない織斑一夏とその搭乗機
白式が銀の福音に撃墜された事を示す表示──
「嘘だ…さっきまで一夏は…っ!」
"何が起こったのか分からない"
千冬と束の思考回路にあったのはただそれだけ。
視線を逸らす直前には、福音のシールドエネルギーを
枯渇寸前まで削りトドメを刺そうとする一夏達の姿を
その目でハッキリと見ているのだ。
更に言えば、セシリア達代表候補生らはともかくとして
一夏と箒は、落とせる敵を見逃した時にどうなるか
追い詰めた敵に余計な時間を与えた時にどうなるかは
嫌という程理解しているハズである。
2人ともタチの悪い悪夢でも見せられている気分だった。
「織斑先生!織斑君が…織斑君がっ!」
しかし、現実は非情であった。
戦闘空域周辺へバックアップに待機させていた教師達が
真っ青な顔色のまま部屋へ駆け込んできた。
彼女達が運び込んだ担架に乗せられていたのは
目を覆いたくなる程に重体な一夏。
「──ッ!!」
「いやぁ…いっくん…そんなッ!!!」
福音の砲撃に直撃でもしたのか、全身に火傷を負い
左腕に至っては最悪切除せねばならない程に──
簡潔に言えば「生きているのが奇跡」と言うべき
重傷を負っていた。
「何が………あった…ッ!」
世界を滅ぼしたくなる程の怒りを必死に押さえつけながら
千冬は帰還した教師達に状況の説明を求める。
「私達も…目を疑いました…。あれは──」
千冬と束の"圧"に気圧されながら、教師の1人が口を開く。
自分たちの機体が記録していた全てのデータを
ディスプレイへと展開させて。
『──これでトドメだ!銀の福音ッ!』
8人での連携であっという間に福音を追い込んだ一夏達。
連携攻撃で大きくバランスを崩した福音に対して
一夏は
「確かに零落白夜は命中しました。ですが…」
そこまでは良かった。
最初の接触で起きた様な外しもしなかった。
むしろ、福音の胴体にクリーンヒットしていた。
「あれは…無人機なんかじゃありません…!」
「何っ!?」
問題は直撃してからだった。
『うおぉぉぉッ!』
直撃した零落白夜は福音の胸部装甲を切り裂きながら
福音の左肩へと突き抜け───
『うわっ!血…ッ!?コイツまさかっ…!』
装甲の裂け目から真っ赤な鮮血が吹き出したのだ。
福音は無人機だと知らされており、実際にその機動は
無人機特有の単調なものだったのだが
それが何者かによって仕組まれた"罠"であり
普通に人が乗っている有人仕様機だった。
恐らくはプログラムによって暴走していたのだろう。
「油断して墜ちた、と。…この…馬鹿者が…っ」
──篠ノ之束謹製の第4世代機を身に纏う一夏達を
プログラム稼働の軍用第3世代機で抹殺する事が出来れば
それは絶大な儲けものだろう。
仮に墜とせなくとも「人殺し」のレッテルを貼れる。
コネのある大手マスメディアに圧力掛けや裏取引を行い
「一夏達が米国のISパイロットを撃墜・死亡させた」と
誤解を招く様な形の偏向報道をさせれば
一夏や束らへ悪い印象を抱かせる事も容易い。
──織斑一夏や篠ノ之束を様々な意味で亡き者にしたい
そういったドス黒い思惑を持つ者達の手によって
一夏達は罠に掛けられたのだった。
恐らくは、リミッター解除の許可が中々降りなかったのも
一夏達の抹殺を目論む者達の手によって委員会の会議が
意図的に紛糾させられていたからなのだろう。
「それに、福音は
「二次…だとっ!?」
「やってくれるねぇ…」
最悪の報告は更に続いた。
ただでさえ圧倒的なスペックを誇る銀の福音だが
零落白夜の直撃を受けた事が良くなかったのか
強引に機体を二次移行させ、一夏の反応速度よりも早く
防ぎようの無い高火力を叩き込んだのだ。
初戦が撤退という結果に終わってしまった事は
委員会へ競技用リミッターの解除を迫る材料として
活用する事も出来るところだったのだが
福音が二次移行したというのであれば話は変わってくる。
その性能差が大して埋まらないのである。
「──取り敢えず、死は回避出来たよ」
「…ありがとう束」
千冬が状況確認をしていた裏で、束が一夏への応急処置を
完了させた。
今此処に持ち込んでいる設備では出来る事は少なかったが
マドカの治療用に念の為として持ち込ませていた
かつてラウラにも使用した治療カプセルを使うことで
ひとまずこのまま衰弱死してしまう事態は避けられた。
「左腕はここじゃあ治せないから──」
「…分かっている」
損傷の酷かった左腕は一時的に切除し、学園への帰還後に
人工の骨格と筋繊維を用いた再生療法を取る事に。
「そういえば…。他の専用機持ち共は?」
「別室で治療中です」
一夏が撃墜され、箒とラウラが戦意喪失したことで
シャルロットが即座に作戦中止と撤退を指示したのだが
負傷したのが一夏だけという訳には行かなかった。
特に殿を務めたシャルロットは軽度の火傷を複数負い
機体の方も
本体にもダメージレベルCを超える損傷を受けていた。
シャルロットの再出撃はほぼ不可能だろう。
「闘志は有り余ってるみたいですけどね…」
「…流石に迂闊には出せんさ」
それでも7人ともリベンジに燃えているとの事だったが
千冬は自分も打鉄で出撃したいという気持ちを抑え
7人が勝手に飛び出していかないよう釘を刺させる。
「束、福音は今何処にいるか分かるか?」
「勿論。ドイツの衛星が光学で捉えてるよ」
これほどまで暴れ回ってくれた銀の福音はというと
ここより30km程離れた沖合の上空に停滞していた。
電波・赤外線ステルスを展開し自己修復モードへと移行
先の交戦で負ったダメージを回復しているとの事だったが
幸い光学迷彩までは搭載していなかった様で
白うさぎ隊経由で依頼を受けたドイツ軍の監視衛星が
光学観測で発見する事に成功していた。
「さぁて…どうしようかねぇ」
束は少しばかり頭を抱える。
それは、福音とそれを暴走させた者への処遇だ。
(私が出ていっても構わない…けど、仕組んでくれた輩を
逃がすわけにもいかない…)
束がアリスで出撃し、JOKER隊による支援も交えれば
福音を逃がすこと無く仕留め操縦者の救助まで
完璧に行う事も不可能では無いだろう。
しかし束としては、一夏をここまで負傷させ
福音に余計な細工を積んでくれた相手を
逃がす気も無かった。地球の果てまで追いかけて
すべての罪を被せて社会的にも抹殺してやりたかった。
だがそうなると福音の撃墜にまで手が回らないのだ。
(1日に35時間生きるこの束さんと言えども…分身はねぇ)
一生涯掛ければ、自分自身を2人に分身させる事も
不可能ではないだろうなとは思いもしたが
今はそんなことをしている場合では無い。
「ゼフィルスとアラクネは確か亡国機業実働部隊の…
お、モノクローム・アバターへ配属された経歴があるね」
そうは思いつつも、鹵獲したサイレント・ゼフィルスから
吸い出した情報を元に"敵"を探っていく束。
ゼフィルスらが配属されていた亡国機業の実働部隊の1つ
モノクローム・アバターから更に情報を辿り
彼女達に依頼を出した人物や組織に当たりを付ける。
「む、流石に詳細は無いみたいだねぇ」
「全ては紙で、か。今頃は灰になっているだろうな」
電子情報というのは「デジタルタトゥー」という言葉が
あるように、一度データの海へ流れ出たが最後
それを完璧に消すことは不可能。
だが亡国機業もそれは重々承知──依頼主に辿り着ける
重要な情報は全て紙によってやり取りされていたのか
ある箇所から先は探る事が出来なくなっていた。
紙であれば、燃やしてしまえばそれまでである。
「でもね…束さんからは逃げられないのさ」
しかし、多少なりとも当たりが付いたのなら
篠ノ之束にとって追えない足跡など無い。
束がその気になれば、ネットワークに接続されている
世界中全ての電子機器が目となり耳となるのだから。
「福音はどうする?放っては置けんぞ」
「放っとくと学園行っちゃうもんねぇ…」
この事件の首謀者を追いつつ、千冬と束は学園の教師達と
今後の福音への対処についても話し合う。
今はステルスモードに入り微動だにしていないが
福音は全てのIS反応を攻撃対象として暴走している。
となれば、福音が自己修復を終えた時の行動は
強力な反応を追って進路を変え
反応が最も多いIS学園へと再侵攻するかのどちらか。
あまりモタモタはしていられないのだ。
「出来れば鹵獲したいね」
束が理想として提示したのは、福音の鹵獲。
福音を鹵獲すれば機体データから様々な事が判明する。
仕組まれたプログラムやその下手人すらも。
「鹵獲…っ、ですか?」
「我々に出来るでしょうか…」
だが、専用機もかなり酷く損傷させられているうえ
残っているのは訓練用の打鉄やラファールばかり。
幾ら腕の立つIS学園教師と言えど不安は残る。
敵機を殲滅するのと鹵獲するのとではその難易度に
天と地ほどの差が出てくる。敵を殺さない程度に弱らせ
抵抗を封じる必要がある以上は敵との実力差で
ある程度勝っていなければならないからだ。
「くーちゃん、剥離剤ってあったっけ?」
束は自身の助手であるクロエに、作戦の鍵になりそうな
「
「はい。学園のラボに試作品が幾つか」
「『束さんのラボ』かぁ…」
──少しばかり遠い。
現時点での巡航速度最速はブースターユニット全装備の
アリスか、展開装甲を推力に全ツッパした紅椿か。
学園へ全速力で飛んで剥離剤を取りに行くにしても
その間福音を足止めしておかねばならない。
白式に加えて紅椿かアリスのどちらかが抜けた戦力で
足止めするのは中々に骨が折れる。
「だが、剥離剤とやらがあるのならこれが最善だろう」
とはいえ、やらねば学園や日本も危ない。
綱渡りな作戦を少しでも成功させやすくするべく
千冬と束、学園教師達は奔走するのだった。
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(ここは……?)
一夏は不思議な空間で目を覚ました。
澄み切った青空と、それを鏡の様に映す薄く張った水面
ただそれだけが無限に広がる空間。
(俺は…死んじまったのか…)
ここは天国だろうか。
ここへ来るまでの記憶を辿ってみれば思い出されるのは
銀の福音が有人機だった事に驚かされた記憶と
目が眩むほどの"光"──
目の前で致命的な隙を晒してしまった事で
福音に命を奪われてしまったのかと推察する。
(箒…ラウラ…千冬姉………マドカ…)
現世に遺してきてしまった"家族"の顔が思い浮かぶ。
(すまねぇ…ッ)
悲しませてしまったか、と。
(──馬鹿者。お前はまだ死んどらんわ)
誰もいないと思っていた空間に少女の声が響く。
それは、自身の相棒である"機体"の声──
(マドカ…いや、白式か)
(直接会うのは初めてだったな)
織斑千冬とも織斑マドカとも違う、それでいてよく似た
黒髪の少女。「マドカ」と呼んでいたコア人格の少女。
ここはそう、白式と一夏の精神世界とも言うべき世界。
コアネットワーク内に構築された仮想空間であり
白式は仮の肉体を得て直接会話をすることが出来る。
(福音は…福音はどうなったんだ?)
(ヤツは無事だろうな。操縦者込みで)
かといって一夏と白式はこれが初の会話ではない──
自身が生きている事を知った一夏は、負傷させてしまった
福音とその操縦者がどうなったのかを尋ねた。
白式曰く福音の状態は接触回線で把握出来たとの事で
福音の操縦者は保護機能によって厳重に守られており
高速機動の負荷や零落白夜による負傷からも
回復しているだろうという予想だった。
(お前は…まだ戦うか?)
白式は一夏の目の前に立ってそう尋ねる。
(あぁ。俺は…行くよ…!)
果たすべき責任も目指していた夢も未だ果たせて居ない。
まだまだ一夏にはやる事が沢山あるのだ。
こんな所で折れるつもりは更々無かった。
(…そうか…。私も力を貸そう、一夏)
一夏の変わらない覚悟を見た白式は彼の肩に手を添え
少女の姿からISの姿へと姿が変わっていく。
(…ありがとう、白式)
白式を身にまとった一夏は、現実世界で目を覚ます──
原作だとラウラが福音の主砲に直撃して
かなりの高度から海に叩き落とされても
割とピンピンしてたんですが…
至近距離直撃してタダで済む訳無いですよね。
さて、次回は福音との再戦!
福音編に完全に決着をつけるまでに
まだあと2~3パート位かかりそうな予感。