「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
間が空いてしまって本当に申し訳ないです…
ちょっと構成の関係上文字数多め。
平均5000ちょいのところ今回6400。
長く感じるかも…ですね
「──それでは、銀の福音鹵獲作戦の概要を説明する」
軽い休憩を終えた箒達7人は、銀の福音鹵獲作戦のための
ブリーフィングを受けていた。
「基本となるプランは剥離剤を使った一撃必殺だ。
敵の火力は非常に高い。油断はするな」
ISを強制解除させる効果を持ったアイテム「剥離剤」を
福音に使用し一撃で決着を付ける方針をメインプランに、
AICを使用して動きを止め総攻撃で以て敵機SEを
一瞬で削りきる方針をサブプランに採用。
二次移行した福音の非常に高い攻撃力を考慮し
武装は遠距離対応のものを軸とした構成に。
また、持ち込んでいる全てのSE回復パックを携行し
常にシールド展開状態で戦闘が出来るよう準備。
「デュノアには戦闘オペレーションの補助を頼む」
「はい!」
機体が修復中で出撃が出来ないシャルロットは
山田先生やその他数名の教師と共に、軍艦でいうCIC
戦況オペレーターとしての任に就く。
学園での試合であれば精々教師が1人か2人
この役割に就く程度だが、今回は相手が相手なだけに
かなりの増員が行われていた。
「目標が移動を始めたら織斑隊で接触する」
「了解!」
前衛はラウラが隊長を引き継いだ織斑隊が務める。
織斑隊は今回ラウラ、箒、鈴というメンバー構成だ。
「凰…オルコット隊との連携、頼むぞ」
「任せといて!」
今回、箒とラウラが一夏負傷の件で報復に燃えているのか
少し闘志が溢れすぎている雰囲気があったため
鈴は織斑隊隊長の補佐として後衛とのやり取りを行う。
「そのオルコット隊だが、役割は福音の追い立てだ。
前衛から福音を引き剥がしつつ進路を塞げ」
「了解ですわ!」
後衛部隊オルコット隊は、セシリアと本音、簪の3人で
遠距離攻撃による牽制と進路妨害を行う。
織斑隊に過度に接近したり、福音の進路を学園や花月荘へ
向けさせない事が主な任務となる。
「束は既に準備を始めている。行くぞ」
「「「了解!」」」
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「これがアリス…凄いですわね」
砂浜では既に束が専用機アリス・イン・ワンダーランドと
JOKER隊の準備を進めていた。
大型ブースターユニットを装備したアリスの全長は
20mを優に超えており、JOKER隊を格納していなくとも
凄まじい存在感を放っていた。
ふとJOKER隊3機の整備をしていた少年がこちらに気付き
セシリア達の方へと歩み寄ってくる。
「──今回貴女方の援護を務めるレイ・クロニクルだ。
宜しく頼む。」
「え、えぇ。宜しくお願いしますわ」
プラチナブロンドのロングヘアにキリッとした水色の瞳
高いカリスマ性を秘めていそうな大人びた少年
レイ・クロニクルである。
「貴方はひょっとして篠ノ之博士の…?」
「あの時拾われた少年の内の1人か」
「えぇ。普段は姉と共に博士の助手を務めています」
彼は篠ノ之束がドイツのVTシステム研究所を
壊滅させた際にそこで拾ってきた子供達の内の1人で
現在はクロエの義弟として束の助手をしていた。
「そう言えば…JOKER隊は4機では無かったのか?」
ラウラが1つ違和感に気付いた。
あの時束と共に戦場へ現れたJOKER隊は4機だったのに対し
今目の前で彼が整備していたのは3機しか居なかったのだ。
それも恐らくは隊長機と思しき白い機体が居ない。
前回の戦闘では破損などしていなかったし、と
ラウラ達が疑問に思っていると──
「あぁ、『キング』の事ですか。それなら──」
「なっ!?」
「…2人目の…っ!?」
セシリア達は目の前の光景に驚愕した。
レイは造作も無く「キング」と呼ばれたISを纏ったのだ。
男か女か紛らわしかったシャルロットとは違い
レイは喉仏や体格が明らかに男性のもの。
つまりは、本来の「2人目の男性IS操縦者」となるのだ。
驚きもするだろう。
「俺の事は今は気にするな。作戦に集中するんだ。」
「そ、そうですわね」
「戻ったら色々聞かせてもらうぞ?」
レイは自分の素性を「作戦終了後に明かす」と言って
驚きの表情を浮かべたままだったセシリア達の意識を
戦闘前の引き締まったものへ切り替えさせた。
『束、準備は済んだか?』
「モチのロ~ン♪完璧だよ♪」
『セシリア、ラウラ。今回は僕もサポートするよ』
「頼りにしていますわデュノアさん」
「ふっ、お前の分まで暴れてくるさ」
仮設管制室にいる千冬から束へ、シャルロットから
織斑隊・オルコット隊の両隊長へ
作戦開始前の最終確認がなされる。
そして、全ての準備が完了したまさにその時──
「この戦い、俺も行くよ」
この場には居ないはずの少年の声が響いた。
「一夏…っ!?」
『いっくん?あれっ何で!?』
未だ意識不明の筈の織斑一夏がそこに立っていたのだ。
病衣を着た彼の素肌には痛々しい火傷の跡どころか
傷一つすら付いていなかった。つい1~2時間程前の撃墜が
まるで嘘だったかのように傷が消えている。
だが彼の左腕は肩口から先が無く、先程の撃墜が真実だと
それ以外の負傷が一瞬で完治した事を証明していた。
「心配させちまったよな。すまねぇ」
「いち…か…無事、なのかっ!」
「兄さんっ!怪我は…治っている?」
彼の身に一体何が起こったのか気になる所ではあったが
箒達はひとまず一夏の回復を喜ぶ。
一夏の身体をぺたぺた触ってもすり抜けはしなかったし
自分達の頬を思いっきりつねってもただ痛いだけだった。
理由はどうであれ彼の回復は事実だったのだ。
「───白式…!」
一夏は自身のISをコールする。
量子化されていた機体が脚部から順に具現化していき
足に、腰に、腕に、胴に、よりスマートになった装甲が
装着されていく。
『一夏!その白式の姿は──』
「…
そして、一角獣の様な立派なブレードアンテナを備えた
ヘッドギアが装着され、大型化しより翼らしさが増した
カスタムウイングが現れる。
[
二次移行した白式の姿は、翼を得た一角獣のような
以前お台場へ見に行ったユニコーンガンダムと
良く似た姿へ変化していた。
あの時立像の目の前で宇宙へ思いを馳せた事が
白式にとって印象に残ったのか、機体の自己進化に
少なくない影響を与えたのだろう。
キィィ……ン
「……光の色が…!」
「緑に…!」
呼び出された白式は展開装甲を起動させるが、その光は
普段の青色ではなく、薄らと虹色を帯びた緑色だった。
そして、緑色の輝きは白式に眠っていたある機能を
呼び覚ます──
「一夏っ!左腕が…!」
「再生…していますわ…!」
なんと、光の粒子が一夏の左肩へと集まっていき
切除した筈の左腕をあっという間に再生したのだ。
『束!この機能はっ!』
『そうだね…"白騎士"のものだね』
この能力は世界に最低でも467機あるISコアの中で
たったひとつのコアのみに発現していた能力。
現在は解体され存在していないが、「白騎士」と呼ばれる
ISの名を一躍有名にした機体が有していた能力である。
白式は、一時期建造を担当した倉持技研すら知らないが
最初のIS白騎士のコアを再利用して建造された機体であり
搭乗者が「大切な人達を守りたい」と強く願い
騎士として再び目覚めた事で能力が再覚醒したのだろう。
「…イケる!この"ユニコーン"なら!」
左腕の再生が終わるとフレームの輝きは青色に戻ったが
一夏は機体性能の向上を確と感じ取っていた。
「行こう、箒」
「…あぁ!」
一夏と箒はそれぞれ機体のスラスターに火を入れる。
紅椿も展開装甲が起動し全身の輝く内部フレームが
顕になると同時に背部ユニットがアクティブになり
大型ブースターとして稼働を始める。
『一夏!』
「何だ?千冬姉」
福音の元へ飛び立とうとした一夏達を千冬が呼び止める。
千冬は何と声を掛けるか一瞬迷ったようだったが
ただ一言だけ彼らへと告げる──
『…死ぬなよ』
「──あぁ!」
一夏達は花月荘を飛び立っていった。
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『一夏!もうすぐ福音の認識範囲内だよ!』
「サンキューシャル!助かる!」
一夏達はシャルロットから送られてくる福音の反応を
追って太平洋を進む。
一夏の早期復活というイレギュラーこそあったものの
束は当初の作戦通りブースターユニット付きのアリスで
全速力で学園を目指しており、福音に対して
イニシアチブを取るのも前衛の箒達が行う予定だ。
「箒、頼めるか?」
「…弓は言う程得意では無いのだがな」
ある程度福音へ接近した段階で箒は背部ユニットを
背中から取り外し、ウイング状の部分を広げる。
それは「穿千」と呼ばれる複合兵装であり
展開装甲を随所に採用し変形機構も備える特殊な武装。
展開された状態の穿千は
「……………」
箒は穿千の
得意では無いと言っていた箒だが、彼女は剣道だけでなく
弓や薙刀なども嗜んでいる身──
「…当てるッ!」
ドォンッ!
穿千から放たれた光の矢は音もなく静かに飛んでいき
吸い込まれる様に福音へと直撃した。
「行くぞ!」
光の矢の直撃によって、福音との再戦の火蓋が切られた。
「援護しますわ!ティアーズ!」
「いくよぉ!撃ち抜けビット!」
「ターゲット確認、マルチロック!」
「我々も援護する!」
移動を犠牲に全てのビットとライフルを構えたティアーズ
山嵐を起動させた打鉄弐式とその支援機九尾ノ魂
マスケットレーザー銃を装備したJOKER隊4機から
圧倒的な量の支援砲撃が撃ち込まれていく。
「──右っ!そのまま上昇っ!」
「攻撃成功!離脱するっ!」
そんな砲撃の雨の中、箒達近接組は鈴の指揮のもと
突入し攻撃、そして離脱を繰り返していく。
セシリアと鈴は最初期のズタボロな連携はどこへやら
陽動と撃破それぞれの役割を熟知し、連携する相方が
どこを狙っているのか、どこを叩いて欲しいのか
この団体戦であっても理解出来ていたのだ。
「………!…!」
「このまま押し切るッ!」
そんな中でも、二次移行した白式の性能は圧倒的で
近接戦闘では雪片改から進化した太刀「雪片・零」と
追加装備されたプラズマサーベル「雪片・白」
右手に増設された
遠距離戦闘では左手の
アサルトライフルを活用し応戦──否、圧倒していた。
そしてなにより──
「シールドっ!」
背中の
BT兵器に触れた事が切っ掛けか簡素なビットとして
使う事も出来るようになっており、使用中の移動こそ
出来なかったものの、ウイングの耐久性を活かしたガード
先端に仕込まれた小型レーザー砲による死角からの射撃
ウイング本体による突撃など、攻撃の多彩さが増し
獅子奮迅の戦いを見せていたのだ。
「…!?…!!!」
今まで競技用リミッターと二次移行による機体性能差で
戦闘を有利に運んでいた福音だが、1vs8という人数不利と
白式の二次移行という要素によりその利は吹き飛び
一気に劣勢に追い込まれる。
「逃がすかぁっ!」
「…!!?」
次第に攻撃への対応が追いつかなくなっていく福音へ
箒が追撃を仕掛ける。弓へと変形させていた穿千を
再び変形させ、今度はリム部分を完全に折りたたみ
展開装甲の機能変更によって硬度が増した刀身を
盾にしながら福音へと突撃し、銀の鐘を内蔵している
福音のカスタムウイングを片方ぶった切ったのだ。
「今だ!一夏ッ!!」
「うおぉぉぉッ!!!」
片翼にされてバランスを崩した福音を一夏は逃さない。
素早く雪片白を抜刀し、シールドエネルギーほぼ全てを
注ぎ込んだ絶大な火力の零落白夜を発動。
そこから瞬時加速をチャージし即座に加速開始
エネルギーをスラスターへリチャージし二連加速へと昇華
全加速力を乗せた「突き」を放つ──
「これでぇッ!!!」
「………」
残っていたもう片方の翼に直撃した零落白夜は
銀の福音に残っていた膨大なシールドエネルギーを
あっという間に削り取っていった。
『IS反応消失。作戦完了だよ皆!』
福音の装甲が量子となって消え、シャルロットからも
IS反応が完全に消失し作戦が成功した事が告げられる。
「…終わったな」
「あぁ。やっとな」
機体から放り出された福音の操縦者を箒が回収し
ようやく福音暴走事件に一区切りが付いた。
銀の福音やその搭乗者の処遇、この件の下手人の調査など
まだやらねばならない事は山積みなのだが
ひとつ山場を超えた事に一夏達8人は安堵したのだった。
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──その夜。
ザザーッ………ザザーッ………
一夏は旅館を抜け出し海岸線へとやって来ていた。
彼は専用機調整やら福音暴走やらでほとんど海では
遊べていなかったのだが、今こうしてココへ来たのは
決して海で遊ぶためではない。
人気の少ない場所である人物を待っていた。
「──一夏。その…用件、とは?」
「待ってたぜ箒」
一夏の元へ姿を表したのは浴衣姿の箒。
理由は告げられないまま呼び出されていた。
「………箒」
一夏はゆっくり箒の方へと向き直ると、手に持っていた
紙袋から2つ丁寧に包装されたプレゼントを取り出し──
「誕生日、おめでとう」
「あ…ありが…とぅ…」
そう、今日7月7日は篠ノ之箒の誕生日なのだ。
福音暴走とその後始末で時間を取られてしまったため
こんな時間にまでなってしまったが、箒を呼んだのは
彼女の誕生日を祝うためだった。
「これは…リボンと…ネックレス?」
箒は丁寧に丁寧に包装紙を剥がし中身を確かめる。
入っていたのは、赤いラインの入った白いリボンと
桔梗の花の装飾があしらわれたネックレス。
「そのリボン、だいぶくたびれてるだろ?」
「あ…まぁ」
今箒が髪留めとして使っている黄緑色のリボンは
幼い頃に一夏から誕生日プレゼントとして貰ったもの。
長い間大事に丁寧に使っていたが、だいぶヨレており
箒自身「そろそろ替え時かな」と断腸の思いで
新しいリボンを買おうとしていた所だった。
「…こっちは?」
箒はリボンを新しいものに付け替え、もう1つのプレゼント
桔梗のネックレスを送る意味についてそれとなく尋ねる。
何か理由があるのだろうか?と。
「ん?…その…まぁ、似合うかな──って」
一夏は珍しく言い淀んだ。どこか照れ臭そうな顔で。
(──意味はあるのか…となると、花言葉?)
一夏の反応から「何かしら意味はある」と悟った箒は
己の知識を引っ張り出し、桔梗の花言葉を思い出す。
彼の事だからわざわざ桔梗を選んだのにも
意味があるのだろうな、として。
(確か桔梗は『清楚』や『誠実』か。後は──)
桔梗の花に込められた花言葉を思い浮かべていく箒。
だが、そのうちのある1つを思い出した瞬間
箒の顔がボンっと真っ赤に染まる──
(……変わらぬ…愛………っ!!??)
(流石に…!…元フラグブレイカーだぞ?)
心臓ど真ん中をキューピッドの矢で射抜かれたような
凄まじい衝撃に襲われながらも、彼に限ってそれは無いと
平常心を手放さないようにし、今度はネックレスを送る
行為自体に秘められた意味を頭の中から探し出す。
『そういえばあの子、学園の外で彼氏出来たらしいよ~』
『まじ?実質遠距離恋愛じゃん』
"ネックレス"で思い出したのは、学園外で作った彼氏から
プレゼントを貰った子がいると噂話をしていた
上級生の会話を耳にした出来事。
『ネックレス貰ったの?うわぁいいなぁ』
『いいねぇ…意味って確か──』
その時は特別思う事も無く、成程そんな意味が──と
ひとつ勉強になったと思う程度だった。
(確か意味は…いみ…は………っ!!!)
意味に気付いた瞬間、元々赤かった箒の顔は
日が沈んだ後の暗闇でも分かるくらい
トマトの様に真っ赤になった。
「~~~~~ッ!!!」
「あっおい箒!?急にどうしたんだよーっ!」
箒は旅館の方へ逃げる様に全力疾走で消えていった。
ちなみにだが、男性から女性へ送るネックレスには
「絆を深めたい」「永遠に一緒に居たい」という
意味が込められているのだとか。
白式、第二形態覚醒でございます。
箒ちゃんに贈るプレゼントのアイデアは
Twitterかどっかで見かけたイラストから。
何のイラストだったかは忘れたけど
すごく良いなと思いまして。
次回は福音暴走事件の後処理とか
レイくんくーちゃんの自己紹介とか。
…また少し時間が空くかと思います
気長にお待ちください。
【一角獣の騎士(ユニコーン・ナイト)】
この機体を一言で言い表すなら…
ユニコーンガンダム・ペルフェクティビリティ。
ただしXCは設定が書けず未搭載。
外見としては「MS少女ユニコーンガンダム」と
白式を足して2で割ったような外見を想定。
肌の露出は一夏君の機体なので控えめ。
このユニコーン、「ガンダム」では無いので
ブレードアンテナは開かないものと想定してます。
「開いた方が良い」という方はご自身の脳内で
開いた形態を思い描きつつ読んで頂ければな、と。
【穿千(紅椿)】
元ネタはアストレイレッドフレーム改が装備する
「タクティカルアームズ」。
ロボットアニメで弓型の武装って少ないイメージ。
そんな中で機体色が赤系かつ弓型の武器を
保有する機体としてレッドフレーム改に
白羽の矢が立った、という訳です。